変革者の前には必ず敵が立ちはだかる。官僚機構、電力ムラ、大政党。国家の全身に回った毒を除くには、強烈な薬が必要だ。たとえ血反吐を吐きそうな味でも、飲み込んで初めて、再生への道が開ける。
橋下徹という劇薬が、いま激しく化学反応を起こし、この国の業病を焼き尽くそうとしている。
「批判をしてきた相手には100倍返しする」
そんなことを平然と言い放つ人間の周囲は、当たり前だが敵だらけ。それでも橋下氏が攻撃的な姿勢を崩すことはない。批判者に対しては、記者会見のネット中継やツイッターを駆使して、「バカ学者」「似非インテリ」などと徹底糾弾し、全日本的に晒し者にしてしまう。
このまま橋下氏が突き進めば、この国はもうすぐ、「橋下か、非橋下か」というたった二つの選択肢で、否応なく二分されることになるだろう。
民主党・野田政権は、いつになっても財務省・霞が関の官僚主導から抜けられず、それに反省もない。とはいえ、もともと既得権益どっぷりの自民党政権に、誰も戻りたいとは思わない。そんな二大政党に、ロクな抵抗もできない非力なその他弱小野党たち・・・・・・。
国民は知ってしまった。もはや中央の政党・政治家たちに、この国を変える能力は皆無であることを。放っておけば、安全無視で原発は再稼働し、消費税も上がり、官僚天国は改まることもなく、国民負担だけが増大して、日本はゆっくりと死んでいく。
つまり、我々には時間も選択肢も、もうそれほど残されてはいない。〝死ぬ〟のが嫌なら、機能不全に陥ったこの国のシステムを、根本から「ぶち壊す」しかないだろう。
そして、それをいま、公然と政治目的に掲げている者は、橋下徹という男しかいないのだ。
そのラディカルでエキセントリックな振る舞いが、好きか嫌いかは関係ない。橋下氏が向かおうとする方向---たとえ血を流すことになっても、日本再生へと茨の道を踏み出すか。それとも、現状を是として緩慢な滅びを受け入れるのか。我々は近い将来、必ずその厳しくも絶対的な「選択」をしなければならない。
時代が激震し始めた気配を読み取ったのは、日本国民だけではない。
「実は、米国の駐大阪・神戸総領事館が橋下・維新の会の情報収集に動き始めています。東京の大使館では、〝ハシモト〟の正確な情報が取れない。そこで、領事クラスが自ら動き、維新の会の幹部らとの直接の接触を図っています。米国も近い将来を見据え、本気で橋下さんの動向に注目しだした」(大阪維新の会所属府議)
米国の政府機関が、日本の一地方市長の情報収集に本腰で乗り出すなど、前代未聞の事態である。時代は「橋下徹」を中心に、確実に回り始めている。
果たして日本では、橋下氏という「劇薬」を服用することで何が起きるのか。飲めば苦い、というようなレベルではない。この薬品は一歩間違えば、体内で爆発するかもしれない。それでも橋下氏自身が、「飲んでくれ」と、市民・国民に呼びかける。なぜなら、我々自身がそこまでリスクを負って決断をしないと、国家のガン=橋下氏の敵は根絶できないことを、よく知っているからだ。
役人はクビにする
彼の前に立ちはだかる、最初の関門にして最大の敵は、この国の「統治システム」だ。そして、そのシステムの守護者が何かと言えば、まずは「霞が関」の官僚機構である。
嘉悦大学教授で、元財務官僚の騠橋洋一氏はこう解説する。
「橋下氏は『日本の統治のあり方を根本的に変える』と宣言しています。橋下政権が誕生したら、霞が関の官僚機構は事実上、解体され、現在の国家公務員のうち3分の2が地方公務員になる、というような変革が実施されると思います。中央省庁は、財務省、外務省、防衛省以外は、ほとんど不要になるでしょう」
歴代の自民党政権、そして民主党政権が、なぜ官僚機構におんぶに抱っこの仕組みを変えられず、口先だけのインチキとペテンばかりを続けてきたのか。理由は簡単で、彼ら〝旧体制〟の政治家は、官僚の手助けがないと国家を運営できなかったからだ。
「政治家が霞が関改革とか公務員改革と言いつつ頓挫してきたのは、結局、官僚を手足として使わざるを得なかったためです。官僚の力の源泉とは、法律の作成能力を持っていること。たとえ政治家にアイデアがあっても、法律を作るノウハウがないから、結局は霞が関の協力なしでは進むも退くもままならない。これが政官業の癒着の温床となってきました」(ジャーナリスト・須田慎一郎氏)
仮に政治家が「公務員の数を半減させる」と言い出しても、現実にそれを事務処理して法案化するのは、官僚の仕事だ。そして官僚たちが、自分たちをクビにする法案を、唯々諾々と作るわけがない。結局はすべてが〝なあなあ〟となり、現在の民主党政権のような体たらくに陥る。
「橋下政権」が斬り込むのは、まずはその〝官僚中毒〟からの脱却だ。
「まず、大臣に堺屋太一氏や竹中平蔵氏ら、政府中枢に身を置いた経験のある優秀なブレーンをつけます。その一方で、官僚の抵抗を抑えながら霞が関を解体するための施策、法案を作らなければなりません。そのために、言ってみれば〝第2霞が関〟を作ります。この新しい組織に、改革派の・脱藩官僚・(官僚経験者)を配置します。この大臣たちと第2霞が関機構が、橋下政権の頭脳、司令塔になる」(前出・騠橋氏)
従来の官僚機構が敵だとすれば、橋下氏の周辺にはいま、その官僚機構を飛び出して改革のための知恵を提供している〝脱藩官僚〟たちが、強力な「味方」として控えている。
最終ページの相関図を参照していただきたい。大阪府や市には、橋下氏肝いりの「特別顧問・参与」として、現在50名以上の改革ブレーンが参集しており、その中には元官僚が数多く含まれている。
「脱藩官僚が50人もいれば、旧霞が関にも十分対抗できます。たとえ現役官僚がサボタージュしても関係ない。50人いれば、彼らを無視して各種の法案を作成し、実行することができます。この〝第2霞が関〟が法案を作り、官僚機構に指示を出すようになれば、抵抗していた各省庁の幹部たちも総崩れになるでしょう」(騠橋氏)
霞が関解体への第一歩を踏み出した後、橋下政権が目指すのは、同氏の持論でもある地方分権の推進、そのための「人・カネ・権限」の地方への委譲だ。
「中央の官僚機構、とくに財務省が絶大な権限を持っているのは、徴税権と、その分配の権利を握っているからです。それを引っ剥がして霞が関をスリム化する。そうなると、ムダを大幅に削減できるだけでなく、たとえば消費税率も、各自治体が自分たちの事情と有権者の意見に合わせ、自由に設定できるようになるのです」(別の大阪府議)
具体的には、消費税はすべて地方税化する。現在は消費税のほとんどは国税として徴収されているが、これを地方税にすることで、地方自治体は安定的な収入源を得ることができるようになる。
一方で、各省庁の地方出先機関(地方支分部局)を、そのまま地方自治体の機関に衣替えし、そこにいる国家公務員の身分も地方公務員化してしまう。当然、そこで行われていた仕事や権限も、地方に移っていく。こうして「人・カネ・権限」の地方委譲を一気に進めるのだ。
「橋下氏は最終的に、道州制の導入を視野に入れているのです。道州制では中央政府のほか、全国10程度の州政府と、300程度の市政府(基礎自治体)によって国が構成されることになります。目安として、一つの市の人口は30万~50万人くらい。州は人口1000万人くらいになります」(前出・騠橋氏)
この体制では、市でやれることはすべて市の権限で行われる。そして州は、市では対応できない広域の公共事業や災害・雇用対策などを行う。さらに中央政府は、州でもできないもの、具体的には外交・防衛や国税の徴収、国家戦略の策定など、最低限の仕事だけをすることになる。
「国の仕事も官僚の数も激減するのですから、中央政府の規模も劇的に縮小します。当然、それに応じて国会議員も現在のような人数は必要なくなり、衆議院はいまの半分、参議院は不要になるでしょう。そして最終的には、橋下政権によって、首相公選制が導入されることになると思います」(騠橋氏)
まさに革命だ。「大阪維新の会」の名の通り、その改革が本当に実行されれば、まさしく日本は、明治維新以来の大変革の時代に突入する。
前出・大阪維新の会所属の府議は、「大阪府や市でやっていることを国に拡大して考えてもらえば、〝橋下流〟が見えてくるはず」として、こう語る。
「大阪でも公務員改革は難航している部分もあります。というのは、たとえば職員基本条例にしても、あくまで地方公務員法の規定内でしかイジれないので、地方首長がいくら頑張っても限界があるんですよ。しかし政権を取った場合には、この地方公務員法や国家公務員法そのものを、改正できる立場になるということです。
すなわち橋下さんは、公務員の甘えの元凶になっている、『身分保障』を完全になくすと思います。不良公務員はクビを切れるようにするのです。当然、天下り、現役出向も全面禁止にすると思いますね」
これは、全国の公務員に戦争を仕掛けるに等しい。「エリート」の国家公務員が、ある日突然、地方公務員になり、しかも即時クビになる危険に晒されるわけだ。その抵抗も、日本史上いまだかつてない、激しいものになるだろう。
新聞は日本最大の圧力団体
同時に、国会議員の数も権限も大幅に縮小される以上、現行の制度でギリギリ議員バッジを付けている議員、支持率を大幅に落としているダメ政党の所属議員は、震え上がるはずだ。
「ただ、橋下さんは決して個々の官僚・公務員を目の仇にしているわけではない。〝潰す〟と言っているのは、あくまでシステムです。彼はむしろ政治家の能力を信用しておらず、官僚がいなければ実務が動かないことはよく知っている。だから、やる気のある官僚にとっては、思う存分に力を発揮できる仕組みを作るはず。たとえば、事務次官は年功序列で定年前の人間がつくのではなく、実力次第で30代、40代でも抜擢するなど」(大阪維新の会幹部)
国を、地方を本気で支えたいという人材は大歓迎。だが、そうでない人間はクビ。この橋下流に気後れして抗議する公務員がいたとしたら、そんな者たちこそが〝敵〟ということだ。
一方、橋下氏にとっては、官僚機構のなすがままになっている野田政権の閣僚たちや、そのどさくさで旧来通りに原発を動かそうという電力・原子力ムラ、そこに群がる古い財界人・マスコミも、倒すべき敵に他ならない。橋下氏は言う。
「『暫定的な安全基準』で政府が日本国民を騙せると思っていること自体が腹立たしい。こういうやり方をやったら、えらいことになると痛い目に遭わせておかないと。霞が関は国民を舐めきっている」
「関西電力に値上げを宣言してもらいたい。値上げと言った瞬間に電力会社改革に切り込んでいける。『関西電力vs.市民の代表者』という対立構造ができあがる」
「本当に恐怖ですよ。国民は騙されちゃいけない。政権が言ってるのは、『自分たちの決めた手続きを進めていますよ』というだけで、安全かどうかなんてなんにも確認されていない」
実際、政府や関西電力が公表し、大マスコミが垂れ流している「電力不足」のデータは支離滅裂だ。
「原発を動かさないと電力不足になる」とさんざん関西市民を脅しておきながら、「電力の安定供給の責任を放棄するなら、電力ムラ解体だ!」との批判が高まると、当初「14・9%」としていた電力の不足分が、5月15日には「5%」にまで急減した。このままいけば、
「『やっぱり足ります』と言いだすのではないか」
と、関西電力やその数値を鵜呑みにする政府への不信感が高まっている。
こうした中、関西電力の森詳介会長は、5月15日に橋下氏と会談。あらためて「原発の再稼働は必要だ」と主張したが、橋下氏は「政府の考えている安全性と、国民の認識にギャップがある」として、引き続き、原発再稼働に反対する姿勢を明確にした。
「橋下氏の電力問題の知恵袋になっているのは、経産省出身の古賀茂明氏や、脱原発で知られる環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏。古賀氏は言わずと知れた超改革派の脱藩官僚で、発送電分離など、電力・原子力ムラの解体論者です。関電がこのままいい加減な数字を出し続ければ、橋下氏にとって、格好の『関電改革』の口実になるでしょうね」(全国紙大阪市政担当記者)
さらに、橋下氏の〝敵〟への攻撃は、マスコミに対しても容赦ない。5月8日の市庁舎での会見では、君が代の起立・斉唱問題に絡む、「口元チェック」騒動に言及した地元テレビ局の記者と大論争。その一部始終はネット上で誰もが確認可能で、賛否両論を巻き起こした。
「『朝日新聞や読売新聞は、日本最大の圧力団体』『テレビの影響力の前では、自分の発信力など微々たるもの』というのが橋下氏の持論です。だからあえて、会見でもテレビ局の記者に噛み付いて、すべてをネット上に曝け出した。『橋下はやっぱり頭がおかしい』と思った人もいるでしょうが、記者の質問の稚拙さと、マスコミのいい加減さがダイレクトに国民に伝えられたから大成功、というのが橋下氏のスタンスなんです」(別の全国紙記者)
ちなみに、いくつかの週刊誌の報道にも激怒した橋下氏は、それらを発行する会社自体「永久に取材お断り」だとしている。
身内でも斬る!
これほど過激な改革路線を突き進めば、既存の敵対勢力によって行く先に落とし穴が仕掛けられていることも十分にあり得る。それを危惧する声もあるが、維新の会関係者らは承知しているという。
別の維新の会幹部がこう語る。
「すでに、市議の一人による政調費の還流問題などが出ていますが、官邸や霞が関と対決するとなれば、大メディアも巻き込んで、カネ絡みの問題はこれからもっと抉られていくと思います。すでに『維新の会の幹部が、国税庁(財務省)に狙われている』という話もあるくらいですから。
ただ、良くも悪くも、維新の会は橋下氏たった一人の人気でもっている。橋下氏自身に決定的なスキャンダルでも出ない限り、致命傷を負うことはありません。橋下氏も、たとえそれが松井一郎府知事のような右腕的存在であっても、問題が発覚して〝戦い〟の妨げになると判断すれば、容赦なく切り捨てていくでしょう。野田首相のように、不良閣僚を無意味に庇って支持率を落とすような愚かな行動は、彼に限ってあり得ません」
その橋下氏は、現在までに2000人以上集まった「維新政治塾」の塾生を、6月までに1000人程度に選抜。同時に、松井知事と共に彼ら議員候補生を引き連れ、研修という名の全国遊説に出る予定だという。
橋下氏がこうした示威的な行動に出る理由は、中央政界での「政変」がいよいよ近づいているからだと見る向きも多い。
「6月21日が今国会の会期末ですが、会期が延長されるのは確実。8月くらいに消費税増税法案の採決になった際、政局が来ると思います」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏)
野田佳彦首相とその周辺は、仙谷由人民主党政調会長代行らが暗躍し、自民党と増税法案の修正協議に入っていると言われる。
「話し合いによる解散もなしで自民党の修正案を丸呑みし、場合によっては大連立をしてでも、解散総選挙を先延ばししようというのが野田首相らの考えです。総選挙になったら橋下氏ら第3極に負けてしまうので、そうせざるを得ない。
ただ、そんな談合政治をやると、いっそう既成政党への批判が高まります。もともと、来年の東京都議選、参院選とのトリプル選挙は受け入れられない公明党は年内解散を目指しており、自・民との対決姿勢に転じ、橋下・維新の会など第3極との連携に方向転換するでしょう。
民主も小沢グループ、自民も若手・中堅・落選組に反乱の兆しがあり、非常に緊迫した状況が出現すると思います」(鈴木氏)「週刊現代」2012年6月2日号より
批判をしてきた相手には100倍返しする橋下徹という劇薬とは??
なんて書くと・・勘違いする人がでてくるかもねーー
