仙谷氏から恫喝された官僚の書に森永卓郎氏「すごい本」!! | 東京リーシングと土地活用戦記

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田原総一郎氏&古賀茂明氏(経産省内閣官房付)Vol.1
「経産省現職官僚が明かす『なぜ菅政権が道を誤るのか』」

古賀茂明氏と田原総一郎氏

田原: 古賀さんの書いた『日本中枢の崩壊』の「中枢」というのは、日本の権力中枢っていうこと。いちばんトップが崩壊しているっていうことね。この本についてお聞きしたいんですが、とにかく今日(6月1日)自民党と公明党が内閣不信任案、つまり菅内閣不信任案を出しちゃった。で、明日採決です。まず、どうしてもこの問題から入らざるを得ないんですが、古賀さん、率直に言って感想、どうですか。

古賀: この不信任騒ぎの大義が見えないというのが率直な感想です。普通であれば信任か不信任かというときに、菅政権のこういう政策がおかしいということについて一つか二つ争点がある。それについて議論してにっちもさっちもいかないということで不信任が出るのが普通だと思いますけども、今回はなぜ不信任が出るのかというところがわからない。

 自民党が民主党の中の動きを見ながら出している。それを民主党の内部で利用しようという動き気もある。政策じゃなくてまさに政局だけのための争いです。その政局も何を目指しているのかもよく見えないということです。

田原: 国民のほとんどがとんでもないと思っている。この東日本大震災で岩手、宮城、そして福島をはじめとして、地震と津波で多くの命が失われ、多くの人が家を失い、あるいは原発の目処が付かない、という状況です。「こんな最中に党利党略で国会議員は、なに政治をもて遊んでいるんだ、ふざけるな!」と国民の多くは思っていると思うんです。

古賀: そういう見方をしている人が多いでしょう。普通だったらこういうときは国民も盛り上がるんですね、「俺は民主党だ」「俺は自民党だ」とか、それが全然聞こえてこないというのは・・・。

田原: しらけている。

古賀: ただ、一方でいまの菅政権に対して国民が「やっぱり頼りないな」とか「動きが遅い」とか、そういう不満はある。震災だけでなくいろいろな経済面をずっと見てきたときに非常に行き詰まっているという手詰まり感、閉塞感は確実にあると思うんですね。ただその不満がこういう形でやる話なのかなという、そこがしっくりこない。

田原: 今日、党首討論があった。僕は不信任案を出す前提なんだから、当然この党首討論で谷垣さんは、なぜ菅はダメなのか、なぜ菅内閣はダメなのか、その根拠を示すと思った。なんにも示さなくて「あんたがダメだ」「あんたがいるから空白だ」と、訳の分からない抽象論ですよ。何ですか、これ。だいたい谷垣て、どういう人なんですか?


古賀: 谷垣総裁とは個人的にそんなに親しいということはありません。産業再生機構を作るときに一緒に仕事をさせていただいて・・・。

田原: そうですね。

古賀: 非常にクリーンで真面目。だから産業再生機構を実際にわれわれが運営するときに、谷垣担当大臣だったからあまり歪められずに伸び伸びとできたという経験はしたことがあるんです。ただ、いまの総裁として動きを見ているとご自分がなにをされたいのか、われわれには見えてこない。

田原: 党首討論を見る限り、あるいは僕は何人か自民党の幹部にも取材しているんですが、谷垣さんは不信任案を出したいと思っていなかった。

 実は、もっと早く、東日本大震災で大変だから自民党も民主党も公明党も連立しろというのが、僕の意見なんですよ。一致団結して復旧復興に当たれと。何人かの自民党の幹部にそのことを言った。でも、「田原さん、いまは菅を潰すと言わないと自民党の中で孤立しちゃうんです」というのが反応でした。

 おそらく谷垣さんなんてね、自民党の誰かに「やれよ」と、言われてそれに反発できないでやったんじゃないですかね。

東電問題は国民に正直に説明せよ

古賀: 私は大連立的なことにはあまり賛成ではないです。

田原: ぼくはやるべきだと思う。

古賀: ただ、政策で連携するのも十分可能だと思うんですね。

田原: 僕が言ってるのは期間限定の連立で・・・。

古賀: 震災があるからっていうことですね。

田原: つまり東日本大震災の復興の目処が付くまでです。だから長くても1年と考えているんです。

古賀: それは一つの考え方かなと思います。

 地震対応をどうするのかというところでは、多分かなりの部分重なり合えるところがあると思うんですね、それも早くっていうことではね。いきなり政策の中身なしで大連立というとなかなか入れないと思う。だけど具体的な、例えば、原発被災者に対する補償。これは東電に払えと言っているんですけど東電はカネがないと・・・。

田原: 上限なしということですね。


古賀: 東電が払えても払えなくても、とにかく被災者に対しては全部払えというふうに、国民は一致していると思います。ですから、東電でも政府でもどちらに対しても、被災者へ払えと言えると思います。

田原: もちろん。

古賀: 要するに連帯債務にする法律にしたらいい。多分そういうのだと自民党も民主党も反対する人いないから、すぐ一致できると思うんです。そういう具体的なテーマをどんどん出して、一緒にやろうという動きを強めていったらいいんじゃないでしょうか。

田原: 政府は東電の無限責任なんて言っちゃった。無限責任と言っておいて中身はずいぶん甘い。なんか東電を救うのか救わないのかよく分からないですね。こういうところが菅内閣の問題点だと思いますね。

古賀: 東電の問題について言えば、東電を叩くことによってなんとなく自分たちの責任が薄まっている、そういう感覚があるんじゃないでしょうか。

 もちろん東電に責任をしっかり取ってもらうのは大事なんです。けれども、これから出てくるいろいろな廃炉問題、汚染水処理の問題とか諸々合わせたら、どう考えても普通の企業に払えるはずがないんですね。

 一方で政府は責任がないのかと言ったら、みんなあると思っているわけです。最後は政府あるいは国民に負担が来るのはやっぱり覚悟せざるを得ない。

ガバナンスが効かない菅政権

田原: 東電が原発を開発すると言ったら、認めたのは政府ですからね、これは。政府の知らないところで東電が勝手にやったわけではないんですから。

古賀: 東電を叩くことが国民を守ることだというようなロジックのすり替えがある。私は国民に対して、「東電だけではとても対応できません。だから国がやっぱり出ざるを得ません。その部分は最後は国民の負担は出てきます」と、まず正直に言うべきだと思います。

田原: 5月23日に自民党の谷垣氏が菅さんを突いた。3月12日午後7時、東電が1号炉へ海水注入を始めた。25分に海水注入をやめた。午後8時45分に海江田大臣が、また注入しろと言って8時20分にまた注入を始めた。この問題で谷垣さんは、菅さんに「なんで、25分に注入をやめろと言ったんだ」と。そしたら菅さんは「自分は注入していることも知らないんだから、注入をやめろと言うわけないじゃないか」と言った。

 谷垣さんもだらしなくて、これで下がっちゃった。ところが注入しているのを知らないならば、なぜ午後6時から注入について班目(春樹)さんたちとあんな論議をするのか。こんなもの注入を知ってるからに決まっているじゃないですか。


古賀: そこは僕は事実関係は分からないですけど、後で止まってなかったという話が出てきた。

田原: これは東電がだらしない。つまり東電の本社は、トップは止めろと言った。ところが福島第一発電所の責任者である吉田(昌郎)さん、彼が止めなかったということね。止めなかったのはいい。ところがそのことを東電はなんでずっと知らなかったんだと。

古賀: 組織としての体をなしていないというか、ガバナンスがまったくきかない状態になっていたと思います。

 僕はこの騒ぎの中で思ったのは、谷垣さんが菅さんを攻撃する材料として使ったんですけど、どうしてそういう微妙な話について谷垣さんが決めつけてワッと言えるような材料が自民党に揃ったのかということです。

田原: 揃ってないと思うよ。実は僕は自民党の幹部に聞いた、自民党は東電に確認したのかと、本当に25分になぜ注水やめたのかと。まったく聞いてないと言ってた。

古賀: これはやっぱりその情報を持って行った人がいるんですね、政府の中から。私は官僚が持って行っていると思うんです。

田原: 官僚がね。

古賀: 菅政権を叩こうという人たちがいますので、その人たちが持って行って「これで叩いて下さい」と。自民党は格好の材料だというので乗っちゃったと思うんです。

田原: なんにも材料なかったから。

古賀: ちょっと間違えれば昔の偽メール事件みたいな話になっちゃう。それくらい自民党も組織としてどうなのかという問題もあります。官僚が政治が混乱している中で情報操作をして・・・。

田原: より混乱させるために。

古賀: 少なくとも菅政権に対して窮地に追い込みたいという意図があっただろうなと思います。

官僚をどう使うか

田原: 政権から見ると。古賀さんもこんなときに政府を混乱させているのではないですか、こんな本を出して(笑)。まさに政権中枢がダメだっていうことは菅がダメだっていうこと。

古賀: 実はこれを書いているときは、日本中枢はこのままじゃ崩壊してしまいますよっていう意味で書いていたんですよ。そしたら地震が起きて、見ていたら、崩壊しますよじゃなくて崩壊しているじゃないかと・・・。

田原: そう、崩壊してる

古賀: 崩壊するぞと、警告のつもりだったのですが・・・。

田原: 崩壊するぞというのが、書いてるときに、あ、もうしちゃってると。

古賀: 永田町、霞ヶ関両方なんですが、中枢を形作っているのは崩壊している。

 政権交代という、ある意味夢が実現したんです。夢が実現するときのキーワードが「脱官僚」とか「政治主導」だった。これで変わるとみんな思った。ところが民主党には政治主導を正しく理解していなかった部分があるだろうし、政治主導を実行する能力が・・・。

田原: ない。

古賀: 欠けていたと

田原: 僕は菅さんの側近に忠告をした、脱官僚はないぞと。例えば航空会社でいえば、飛行機のパイロットも、CAも官僚だよと。いわば政治家は役員みたいもんですよ。パイロット抜きで飛行機が飛ぶかって言ったわけ。そのことが分からなかったみたいです、菅さんは。

古賀: 政治家と官僚を横に並べちゃってるんですね。「俺たちは官僚に負けないように頑張るぞ。だから官僚どけ」と、そういう感覚で入って行っちゃった。

 そうじゃなくて、本来仕組みとしては政治が上に立っているに決まっているます。だけども、政治がしっかりしていなくて官僚に非常に影響を受け官僚に操られているという構造なんです。逆に政治家は官僚をどうコントロールして使うかっていうのが政治主導なんですよ。

なぜ公務員制度改革はできなかったか

田原: そこが問題で、自民党のときから古賀さんが渡辺喜美(当時、行革担当大臣)と組んでやろうとした。政治がきちんと官僚を使えと。そのときに古賀さんは渡辺大臣に仕えたことがこの本の原点なんですよね。だけど、何でそれを渡辺喜美、自民党ができなかったの? 公務員制度改革を。


古賀: いろいろあるんです。例えば自民党の中でも改革派と言われる先生も結構いるんです。

田原: いまでもいるの?

古賀: 「言われる」という意味です。でも、もともと官僚によって育てられたという方が非常に多いと思います。

田原: ほとんどそうだと思う。

 まだ通産省といったときに、通産省のある課長が僕に言った。「いまの通産大臣をわれわれは『つうしょうさんぎょう』大臣と呼んでいる」と。「当たり前じゃないか」と言ったら、「字が違う。『通称三行』大臣だ」と。つまり三行以上で文書を書くと間違っちゃうから国会の答弁は三行以下にしなきゃと。バカにしきっているわけね。

古賀: まあ、そういうところはありました。自民党のときは当選回数で派閥の割り当てで大臣が来る。だからプロでもなんでもないですね、必ずしも族議員とも限らない。そういう先生が大臣になって官僚にいろいろ教えてもらうんです。しかし自分はこれをやりたいというものがない人が多い。仮にあったとしても、それをやろうとすれば官僚と戦わなきゃいけない。そうするといろいろな問題が起きます。官僚はサボタージュします。

 大臣の任期は昔は1年が多かったですから、1年くらいで替わっちゃう。その間に官僚と戦ってなんにもできなくて、場合によっては大失敗させられてクビになるか、それよりは本意ではないんだけど官僚が書いた作文を読んでいると・・・。

田原: 無難だと。

古賀: 無難です。国会で野党にやられて仮に大変になっても、そこは官僚が全力で支えてくれますから、こんなに安心なことはない。

 ある総理の秘書官の話を聞いたことがあるんですけど「総理は、なったときはやっぱり俺はこれをやりたいとか、これを変えたいと思う。思うんだけれども、それをやろうとすると役人にああだこうだといろいろ言われる。毎日いっぱいいろいろ案件を、はい、決めて下さい、これやって下さいとやられて、そうなるとどうしても時間もないから、『しょうがない官僚が用意したこの想定問答でいくか』となる。で、やってみると案外スイスイ通っていく。その心地よさ気楽さにどんどん流されていくんだよ」と言ってましたね。

田原: それ、よくわかりますが、菅さんなんてなんかやりたいことあったのかな。なにも聞いてない。

「思い」の定義とは

古賀: 民主党の政権になってから総理がなにをやりたかったかっていうのが、あんまりはっきり分からない。菅さんの場合は特に分からないですね。

田原: 鳩山さんにしても全部ウソついてる鳩山さんが民主党内閣ができたときに「自民党の予算は無駄が多い。民主党の政権になったらムダを省くから初年度で7兆円予算を減らせる」と。で、事業仕分けなんかやったんだけど事業仕分けの6,900億円だって減らせなかった。

 それから鳩山さんが国連総会で「2020年までにCO2を25%削減する」、しかも「1990年を原点にして」と言った。国連では受けた。じゃ根拠はあったのか? まったくない。いまや環境省ですらまったく問題にしてない。あれはなんですか、ああいういい加減なこと言うのは、次から次へと。

古賀: よく鳩山総理が「思い」って仰ったんですね、自分の「思い」って。

田原: 沖縄も「思い」だ。普天間を県外に移したいと。

古賀: 当時「思い」という言葉の定義は、「やりたいけど絶対できないこと」なんですよ。

田原: 本人がそう言ってるわけ?

古賀: いやいや、私がそう定義をした(笑)。そういうふうに考えると鳩山総理が「思い」と言われたときには、あ、できないことをこの人言っているんだなと思っていたくらいです。

田原: 古賀さんや僕らが「思い」を言うのはいいんだけど、総理大臣ですよ。総理大臣って日本でいちばん権限を持っている人物ですよ。

安倍政権に懸念をいだいた理由

古賀: 総理になる人は、もちろん自分がやりたいことをはっきり持っていなくちゃいけませんよね。だけどそれはただやりたいっていう気持ちだけじゃなくて、それをどう実現するのかということも総理になる前に考えておいてほしい。

 どうやってやるかというのはもちろん政策的な中身でもあるし戦略でもあるんです。非常に大事なのは、自分一人じゃできませんから、誰を使ってやるのかということを総理になる前から持っていないといけないと思うんですね。例えば私はこの本でも書いたんですけども、小泉政権を引き継いだ安倍政権のときに、安倍さんは総理になることは・・・。

田原: ずっと分かっていた。

古賀: 何ヵ月も前から分かっていましたね、はっきりと。だけど、総理になってから官邸のスタッフを公募したんですね。私はそれを見て、これはまずいなと思った。
何ヵ月も準備期間があったのに・・・。小泉さんのことを見ているわけですね。小泉さんは竹中(平蔵)さん始めチームを持っていた。それに習って、俺が総理になったらこういうチームで、この仕事はこのチーム、この仕事はこのチームと、いまから準備しておけよと言って、そのチームごとバッと入ってくると想定していたんです。入ってから公募したっていうので、これじゃ間に合わない。

田原: 安倍さんを弁護するわけじゃないけど、彼は公募がいいと思っていた。総理大臣になってから公募する、コネやなんかじゃないぞ、というのをむしろ主張した。

古賀: それはあったと思います。その後、渡辺大臣が公務員改革の事務局に人を集めるときも公募しようとしたんですね。公募と、それから核になるスタッフは自分が一本釣りで連れてくると。組み合わせはいいと思いますが、でもやっぱり見ているとチームを自分で持っているか持っていないかが大きい。安倍さんの後の総理は結局チームを・・・。

田原: 誰もチームを持っていない。

古賀: 福田さんにしても麻生さんにしても、基本的には官僚機構に頼るということをやってしまいましたね。鳩山総理の場合は政権交代だということで準備も相当されてたと思います。松井孝治さんとか、古川(元久)さんとかを使ってやろうということになっていたと思います。けれども、やっぱり官僚も必要なんですよ。官僚で本当に自分を支えてくれる人を探しておいて使わないと。松井孝治さんが元官僚だから・・・。


田原: 元通産でしょ。

古賀: われわれの同僚だったんです。それで鳩山さんは頼っちゃったんですが、ちょっとそれはまずかったなと思ってますね。

 やっぱり官僚を使うためには官僚OBだけじゃなくて、現役の官僚でも自分と考えを同じくしてもらえるような人、実力のある人を一本釣りで連れてこられないと・・・。

田原: それは脱官僚なんてことを簡単に信じ込んだんでしょう。政治家が何するか、分かっていなかったんでしょうね。菅さんについてもなにも言わないじゃないですか、彼なにか言った?

古賀: :選挙のときに消費税10%と言われましたけどね。

田原: だけど何も根拠なかった。

古賀 茂明
『日本中枢の崩壊』
(講談社刊、税込み1,680円)
発売中
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仙谷氏から恫喝された官僚の書に森永卓郎氏「すごい本」

2011.06.21 07:00

【書評】『日本中枢の崩壊』(古賀茂明著/講談社/1680円)
【評者】森永卓郎(エコノミスト)
 * * *
 久しぶりに永久保存版のすごい本に出会った。著者の古賀茂明氏は、経済産業省のキャリア官僚で、渡辺喜美行革担当大臣に請われて、2008年7月に新設された国家公務員制度改革推進本部事務局の審議官に就任した。そして官僚の利権に切り込む大胆な改革案を作り上げた。
 ところが、民主党政権が誕生した2009年9月のわずか3ヶ月後に、仙谷由人行政刷新相によって更迭され、さらに2010年秋には、参考人として呼ばれた参議院予算委員会で、仙谷官房長官から「恫喝」を受けた。公務員制度改革について発言することは、著者の将来のためにならないという公然の圧力だった。
 
 経済産業省の官房付として幽閉されるなかで、官僚支配の実態と望ましい改革案を描いたのが本書だ。本書の素晴らしいところは、まず官僚の利権構造を具体的に暴いていることだ。
 
 例えば、業界を持たない人事院からも天下りが行われている。人事院に高給を確保してもらう見返りに、各省が天下りポストを用意するからだ。正直言って、私はそんな官官癒着があることさえ知らなかった。
 
 ただ、本書のもっとすごいところは、多くの識者がいままで知っていても書けなかった事実を、堂々と書いているところだ。典型は、財務省に関する記述だ。なぜ財務省が国税庁を手放したがらないのか。それは、国税庁が本気を出せば、政治家やジャーナリストを脱税容疑で追い詰めることができる。だから、誰も財務省の正体を明らかにできない。
 
 著者は、東日本大震災のあと、すぐに便乗増税に走り出した財務省を批判し、そして実際に大増税が行われて、日本経済が奈落の底に落ちていく事態を危惧している。自らの利権拡大のために増税を目指す財務省の動きを、財務省に屈した民主党が止められるはずがない。
 
 もともと官僚と複合体を作っていた自民党と大連立してもそれは変わらない。私の一番の心配は、本書を上梓して真実を明らかにした著者が、今後冤罪で逮捕されるのではないかということだ。
※週刊ポスト2011年7月1日号

32 人中、32人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 なぜ日本が転落の道を歩み始めたのかを明確に説明, 2011/6/12
By monchat (東京都目黒区) - レビューをすべて見る
(VINEメンバー)
レビュー対象商品: 日本中枢の崩壊 (単行本)
本書は単なる暴露本でもないし、経産省から冷遇されたエリート官僚の私怨を晴らす本でもない。数頁読んだだけでもそれはわかる。どの頁にも憂国の情があり、明晰な知性の輝きに満ちている。普通、キャリア制度を否定するキャリア職などは想像できないが、それが出現したということはよほど日本の制度が腐敗していることの証というべきか。あるいは日本が衰亡の急坂を転げ始めたのか。役所を全然知らない人にとっては内容はかなり専門的、高度なものを含むので、予め次のことを念頭に入れた方が読みやすい。

 新首相のもとで諸大臣がそろうと政治理念に従い、本来だと首相の好きなように高級官僚の大半を任命しなおすことができる。官僚は政治家の道具だからである。米国だと大統領は数千人ものスタッフを連れてきて官僚とする。日本でも形式的にはそれが可能になっているが、実際には財務省官僚の影響力が強い。小泉内閣のように事前のチームがある場合は官僚達に負けずに政治家は自分達の政策を推進実現できるが、殆どの場合、官僚達の作文能力に負けてしまう。このような強固な官僚制を動かしている権力の源泉は人事権と国の予算編成権、さらに国税庁の査察権であり、財務省が3つすべて握っている。当然、日本を陰で動かすのは財務省ということになるが、本書は安易な財務省批判だけをしているわけではなく、むしろ経産省批判の箇所も多い。
 古代史が好きな人には、エジプトが王、神官階級、書記階級と3つに分かれ、争ったことを思い起こせば、官僚制が我々の文化に根深いものだとわかるが、現代の官僚制ははるかに巨大であり、地球上で巨大なまま残っているものは、旧ソ連崩壊の後、日本と中国だけである。勿論、他国にも官僚制の存在は不可欠となっているが、日本の中央集権化と規模は極めて特異であり、日本の諸問題の解決にはこれを避けては不可能だということが本書ではひしひしと読者に伝わってくる。
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57 人中、55人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 ここまで日本は崩壊していたのか・・ でも改革に遅すぎることはない, 2011/5/28
By mimi (港区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 日本中枢の崩壊 (単行本)
日本の中枢である政治経済行政がここまで危機状態にあると感じていた国民がどれほどいるのでしょうか。テレビや雑誌でときどき見かけていた経済産業省現役官僚古賀茂明氏が、なぜ安泰であったはずのエリート人生をかけてまで、国民に内部事情を知らしめているのかよくわかりませんでした。答えはこの本の中にあります。古賀氏は官僚の中では異端児なのでしょう。でも正義を知っている人間が官僚にもいるというのはわたしたちに希望を与えてくれます。本にも書いてありますが、日本を立て直すには残された時間がそんなにないことを知っておくべきでしょう。わたしたちひとりひとりが改革に参加していく必要性を確信しました。大新聞、テレビから得られる情報に惑わされることなく判断できる力を養うのにとても参考になる一冊だと思います。
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84 人中、79人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 腰砕けの民主党議員に読ませたい!, 2011/5/27
By 立花香 (神奈川県) - レビューをすべて見る
(トップ500レビュアー)
レビュー対象商品: 日本中枢の崩壊 (単行本)
過激な公務員改革論者、古賀茂明氏の本。
現役の経産省の官僚だ。

行革担当大臣時代の渡辺喜美氏のブレーンで
仙石由人に恫喝された、あの官僚
といった方が通りはいいだろう。

その古賀氏の官僚としての回顧録と
行革のプランがまとめられている。
巻末の電力会社の送電分離も大変興味深い。

天下り根絶はどこへやら、
事業仕分けはパフォーマンスで終わり、
国家公務員の人件費2割カットを公約しながら
原発というお国の一大事でも5~10%しかカットしない

何もしない民主党議員にこの本を読ませたい。
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15 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 正義を貫く姿勢に共鳴する, 2011/6/12
By Cineman (静岡県) - レビューをすべて見る
(VINEメンバー) (トップ10レビュアー)
レビュー対象商品: 日本中枢の崩壊 (単行本)
古賀氏は経産省現役官僚でありながら、民主党政権による国家公務員制度改革の後退に関する言論を批判的に展開してきました。結果、古賀氏への圧力は強まり、氏は1年以上もの間、「大臣官房付」という窓際ポストに置かれています。古賀氏は2010年10月15日の参議院予算委員会で、天下り根絶を進めるべきだという持論を述べました。
 
古賀氏の論旨は次の通りです。
(1)「天下り」のためのポスト確保が最優先され、無駄が大きくなっていること
(2)特に民間企業への「天下り」が、企業と霞が関の癒着を生み、行政が歪んでいること
(3)従って、「天下り」の弊害を無くすために、公務員改革が必要であること 
 
現民主党政権は、天下り根絶の方針を骨抜きにして、自民党政権以上に天下りを容認しているように見える。例えば、東京電力への資源エネルギー庁長官からの天下りですが、原発事故の遠因の1つになっているのではないか。さらに、氏の原発事故処理に関する私論の寄稿に関して、経産省大臣官房は寄稿を差し止めた。本書はこの国の中枢で何が起こっているのか分かり易く解剖して見せてくれます。福島原発のメルトダウンより先に国家の中枢がメルトダウンを起こしていたという恐ろしい話です。これでは福島原発事故は収束するはずはありません。

李下に冠を正さず。官僚や政治家、リーダーは自分の職責の重さを真摯に考えれば、国民から白眼視されない高潔さと清潔さを持ち合わせたいものです。正義が通らない国家では国民に元気は出ない。震災の復興と原発の収束ばかりが前面に出てくるが、その根本は正義と、正義を行おうとする矜持であると思います。国民を元気付ける政治・行政が行われることを切に願って止みません。
 
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15 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 現代の日本に興味のある人には必読の書, 2011/6/7
By あまのじゃく "天邪鬼" (東京都渋谷区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 日本中枢の崩壊 (単行本)
 橋本内閣からの歴代の内閣が改革にどう取り組んできたかを著者の視点で語ってくれている。体験に基づいているので生々しく、小説を読むような面白さがあり、一気に読める。

 電力行政に反対すれば経産省を去らなければならないなど、福島第一原発の事故は「電力業界を取り巻く政官業の癒着のみならず、学界、労働組合、そしてマスコミまで巻き込んだ電力分野の構造的癒着」が原因の人災というのがよく分かる。それは日本社会がかかえる改革すべき構造的問題の縮図ではなかろうか。今の官僚利権システムは、政治家の利権や汚職よりも罪深いのではないかと思った。

 財務省の意のままのマスコミの影響で、国民の過半数は消費税増税に賛成しているが、今のシステムのまま消費税を増税すれば、財務省を中心とした官僚利権システムが肥大化するだけだというのがよく分かった。

 ただ、あるべき日本の姿をグローバリゼーションに求めているのが気になった。地球規模での経済発展は、資源の枯渇や環境破壊をもたらし、早晩行き詰まるのは明らかだ。


13 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 日本凋落の一因, 2011/6/13
By 奇手仏心 (東京都文京区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 日本中枢の崩壊 (単行本)
官僚は優秀というのは嘘であり、せいぜい若い頃は優秀だった人が多いということがよく分かった。
しかし、そこそこはできるだろうから、その能力を保身と組織の維持に注力しているということだろう。
著者のような官僚は皆無ではないにせよ、当然少数派であろうから、内部から官僚組織がかわることはない。
変えられるのは政治家ということになるが、政治家にも能力がない、あるいは能力を持ったスタッフがいない。
我々にできることは、能力の低い官僚が日本の成長の足を引っ張らないようにし、若いやる気のある人を引き上げられるような政治家を選ぶ、あるいはそういう世論を盛り上げるということしかないだろう。

18 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 日本の裏支配者が誰か分かりました。, 2011/6/8
By Cat in Yebisu (東京) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 日本中枢の崩壊 (単行本)
「日本の裏支配者が誰か教えよう」という帯のコピーに引かれ、手に取りました。これまで霞ヶ関の官僚たちは優秀なのだと漠然と信じ込んでいましたが、本書を読んで認識を大きく改めさせられました。本来は国民のために働く彼らが、いかに霞ヶ関の掟に則り、総理や与党まで見下しながら、自分たちの既得権を守るために陰湿かつ無駄な活動に奔走しているか。驚愕の事実が綴られています。現役の官僚が自身も属する組織を糾弾しているのですから、一種の暴露本あるいは内部告発本と言えるかもしれません。それだけに内容には信憑性があり、著者の覚悟がひしひしと伝わってきました。公務員制度改革は待ったなしの状況なのだと。それに加え、福島原発事故の原因が役人以上に役人的な東京電力の体質にあったという考察も秀逸。さらには、経産省の役人だけあって、日本の産業界を活性化するための提言もたっぷり盛り込まれています。日本が今抱える問題の数々は同根なのだと思い知らされます。僕にとって心の底から読んで良かったと思える本は年に数冊程度ですが、本書は紛れもなくその1冊です。
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47 人中、42人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 四面楚歌での必死の『叫び』に感動, 2011/5/29
By GATARO - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 日本中枢の崩壊 (単行本)
日本はこのまま役人天国やおかしな政治主導を続けていては取り返しのつかないことになる。
もう、破滅の瀬戸際まで来てしまっている。
日本の再生には公務員制度改革を避けてはありえない。
原発問題をひきおこしている東電は、根底に役人とのなれあいの問題を抱えている。

そんな思いから、この本には現役経産省官僚である著者のチャレンジの記録と
こうあるべきではないかという筆者の提言が記述されている。

人によっては、都合の良い理屈を並べて好き勝手にモノを書いていると思えるかもしれない。
しかし、筆者は毎日、霞が関の役人から白い目で見られながら、たった一人の環境の中で、
いろんなことを覚悟して、この本を記述した。
だから中身は実名で、具体的で、言葉のやり取り中心の記述になっている。

私はそのことに驚きと感動を覚える。
そして私自身も守旧派に身を沈めてしまうことのないように、
生きたいと思った。

9 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 批判、懐古、反骨, 2011/6/12
By dsk (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 日本中枢の崩壊 (単行本)
経産省の現役官僚であり、大臣官房付として「干されている」、古賀氏による書である。

震災、福島原発の問題も含め、まさに現在進行形の事象も扱っており、
次官、前次官や、同期の官房長とのやり取り等、描写が生々しく、
昨年の国会の事件、出張報告書の削除等についての舞台裏や、
東電のひどい体質、役所、議員等の癒着が指摘されたりしている。
また、役人の体質を批判し、国家公務員制度改革について、
当時の渡辺大臣との共闘、改革に絡んだ利権の複雑さ等が記述されている。

彼は、好き嫌いが非常にはっきりしている。
渡辺喜美(=みんなの党)のことを高くかっているが、彼は本当にきちんと日本のことを考えているのかと思うし、
財務省が消費税増税と言うのは、権限拡大もその理由だ、とか、
若干、考えが合わないところもあるが、全体として軸はぶれていない。
(帯には、「日本の裏支配者が誰か教えよう」とある。本文には明示的にはなかったが、財務省のことなのだろうか。
 「歳入庁に反対するのは、国税庁の査察という強力な武器がなくなるからだ」等、財務省についての記述が多いのは経産官僚故か。)

また、本書は懐古録でもある。
彼が主導した独金法9条の改正のくだりは興味深い。
当時の橋本大臣、局長の大物ぶりや、公取に対してポストを増やすというカードを使うやり取りが面白い。
また、偽造クレジットカード問題における警察庁、法務省等のくだりも非常に面白い。

彼は本当に優秀な人だと思う。慕う人が多いと聞いたこともある。
途中までは出世コースに乗っていたのだろうが、今は組織からNOを突き付けられてしまった。
本当は、役所でもっと働きたいのだろう。本書には闘病生活を経た、まさに人生を賭けた覚悟が感じられる。

総じて暴露本は質が低く、ルサンチマンの塊となって誹謗中傷に終始することが多いが(財務省にさらばした人の本等)、
本書は、厳しい批判はあるものの、全体に気遣いはなされており、良質で、バランスが取れていると思う。

8 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 政権と官僚の問題点を憂国の士が内部から暴く, 2011/6/6
By 松下重悳 (東京都八王子市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 日本中枢の崩壊 (単行本)
宣伝にも拘らず本書は原発事故を踏まえて書かれた本ではなく、政権と官僚を批判する原稿が出来ていて、原発事故で急遽書き加えた本だと読書中に感じたが、末尾にそうだと書いてあった。しかし首尾一貫した著作になっている。
前半を読んで、筆者は不満たらたらの駄々っ子のような存在ではないかとの印象を持ち、危うく本書を投げ捨てる所だった。
提言を含む後半に至り、筆者は保身を顧みない立派な見識を持った尊敬すべき憂国の士であることが読み取れて、投げ出さなくて良かったと思った。尤もそうでなければ未だに本省に居られる訳がない。
私が誤解した原因は、公務員改革で妥協を知らぬ「行儀の悪い正論」で玉砕したかに見えたからだ。筆者の原発事故対応への批判にも、若干その傾向を見る。世論が喝采する直言も、体制から反発されては結果につながらない。
成功例として紹介されている独禁法改正や偽造カード対応で示された正論プラス実現戦略が、公務員改革と事故対応では充分読み取れなかった。
私は或る程度知っているつもりだが、政府と官僚の仕組みをこれほど赤裸々に内部から暴いた著作を私は他に知らない。


政治家に、嘘つきや、ペテン士は、いらない!!