あなたの隣に「フリーライダー」はいませんか? | 東京リーシングと土地活用戦記

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あなたの隣に「フリーライダー」はいませんか?

プレジデント 2011年5.2号

フリーライダーが原因で、直接的間接的に業務に支障をきたすケースが多く起こっている。

河合太介 道(タオ)代表取締役社長 渡部 幹 早稲田大学高等研究所准教授

キーワード: 上司と部下 コミュニケーション 人事・人材・雇用 経営・組織 職場の心理学 Size:
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高い給料をもらっていながら仕事をしない上司、業績を横取りする同僚……。あなたの職場にも、人の成果にタダ乗りする「フリーライダー」たちがいないだろうか。社会構造の変化とともに深刻化したこのテーマについて、2回続けてお届けする。

部下のヤル気を削ぐ“粘土層”上司が急増した背景とは

うちの上司は、朝出社して、パソコンの前に座るとずっとネットをやっています。申し訳程度に事務仕事をしたと思ったら、自分のブログを更新してたり、ひどいときにはゲームをやってたりするんですよ。部下が仕事の相談に行けば粗さがしと否定ばかり。そのくせ自分では何もやらずに、周りがどんなに忙しくても、定時になるとさっさと帰っちゃう。勤続25年以上だから給料は部下よりもずっと高い。いやになりますよ

ある広告代理店に勤める中堅社員(36歳)から聞いた言葉である。この方以外にも多くの社員から同じような「仕事をしない上司」「部下のヤル気を削ぐ上司」の報告を受けている。最近ではこの類の上司を「粘土層」と呼ぶそうだ。上に粘土のようにへばりついていて、はがれない。粘土なので風通しが悪く、コミュニケーションの障害になる。粘土なので重く固まっていて、新しいことにチャレンジしない。粘土なので見上げても暗く、希望は見えてこない。思いあたる人も多いのではないだろうか。

「プロジェクトの仕事の中で、わからないことがあるから、教えてくれって言われたので、こちらも忙しい中、いろいろと資料を集めたり、他の頼りになりそうな人を彼に紹介したりしたんです。で、その後しばらく連絡のひとつもなく、音信不通。あとからわかったのですが、そのとき私が調べて教えてあげたことを彼は自分の成果として報告書に書いて、それが認められて昇進だそうです。せめて感謝の言葉くらい言うのが礼儀だと思うんですが。まあ、彼の報告を鵜呑みにする評価制度も問題なんですがね」

これは某メーカーに勤める男性社員(32歳)の体験だ。他人の協力を踏み台にし、他人の業績を自分のものにする。若手から中堅社員に多いタイプである。このようなタイプは「アレオレ詐欺社員」と呼ばれている。自分がやってもいない手柄を「アレ俺がやったんだよ」と言って横取りするからである。

ここに挙げた例は、現在の日本の職場で起こっている、ある問題を象徴している。それは「フリーライダー」、あるいは「タダ乗り社員」とも呼ばれる人々の増殖だ。

フリーライダーとは、社会科学で使われる学術用語で、「集団でメンバー同士の貢献により付加価値を産み出すとき、他のメンバーに貢献させておいて、自分は貢献せず、得られた付加価値の恩恵にはあずかる人」を指す。本当は学術分野によってはもっと厳密に定義づけされている言葉だが、この稿ではこのような意味で使う。

フリーライダー問題は、集団の中で皆が貢献しあって何かをする際には必ず生じる。不正に税金を払わないでおいて公共サービスは享受したり、タクシー代わりに救急車を呼んで病院に行ったりする人もフリーライダーといえる。会社組織に当てはめると「会社に貢献する以上に、良い待遇や給料をもらっている人」がフリーライダーといえる。

このようなフリーライダーは、突然出てきたわけではない。昭和時代から、いわゆる「給料ドロボー」などと呼ばれる社員はいたし、ある程度の規模の会社組織になると「困ったちゃん」と呼ばれる社員は必ず存在してきた。それでも昔の会社組織はそれなりに機能してきたし、日本の高度成長期を担ってきた。

しかし、現在は劇的に状況が変わっている。先に挙げたようなフリーライダーが原因で、直接的間接的に業務に支障をきたすケースが多く起こっている。またフリーライダーの絶対数も増えているように思われる。私たちが行った取材では、フリーライダー管理職ばかりになってしまった会社が倒産してしまったケースもあった。なぜ、フリーライダー問題が今になって深刻化しているのだろうか。

その主な原因は、雇用形態と人口構成の変化である。かつて、終身雇用が一般的だった昭和時代、会社での「困ったちゃん」を、企業は時間とコストをかけて教育し、それなりに仕事のできる人材に育てていた。また、長い間同じ人々が同じ場所で仕事をともにすることによって、インフォーマルなルールがつくられやすく、度を越したタダ乗りはしにくい「空気」がつくられていた。つまり、この時代の日本の会社組織には、フリーライドすればしっぺ返しが返ってくるような組織風土が、意図せずしてつくられていたのだ。このようにお互いを監視できるような長期的な人間関係がフリーライダーを防ぐ機能を持つことは、社会科学の研究でも証明されている(※1)。

また、この時代には、冒頭の粘土層おじさんのような管理職がいたとしても数は少なく、それほど問題にならなかった。なぜなら、人口構成比がピラミッド型で、高年齢者が少なく、仕事のバリバリできる若い世代が多かったためだ。

終身雇用が崩壊し、高齢化社会を迎えた現在、職場の人間関係はより流動的になった。加えて、フレックスタイム、ノマドワーカーの普及で、一個所に同じ人々が集い、長い時間を一緒に過ごすことが少なくなった。職場での人間関係が安定的・長期的なものから、不安定で短期的なものに急速に変化している。

現在では、「困ったちゃん」を長い時間かけて教育するような余裕のある企業は少ない。また、かつてのようなタダ乗りできない「空気」もできにくい。そのうえ、冒頭に紹介するようなタイプの粘土層フリーライダーの数が急速に増え、問題となっている。人口構成比が逆ピラミッド型に近づき、高齢の労働者の絶対数が増えてきたためだ。加えて、彼らの中には、昭和時代に粘土層管理職として楽している上司を見ているがために、自分が年を取って管理職になれば、フリーライダーになったって構わないという価値観を持っている者もいる。

バブル期までの日本では、職場のフリーライダー問題は深刻化せず、特に対処する必要もなかった。それゆえに企業組織において、フリーライダー問題への対処のノウハウは蓄積されてこなかった。気が付くとバブルははじけ、雇用形態も人口構成も変わり、深刻なフリーライダー問題が起こってしまったのだ。

「腐ったリンゴ効果」で真面目な社員もフリーライダー化

経済学や心理学などの社会科学では、フリーライダーについて多くの理論・実証研究がおこなわれている。それら研究は膨大な数に上るが、少なくとも以下の点ははっきりわかっている。(一)フリーライダー問題は人々の「心がけ」の問題ではなく、「インセンティブ」の問題である。(二)フリーライダーの存在がますますフリーライダーを増殖させる。(一)について、前記の昭和時代と現在の対比を考えてほしい。昭和時代の会社員はフリーライドなどしない真面目な人ばかりで、今はそんな真面目な人が減ってきたのだろうか。筆者はそうは考えていない。

冒頭の粘土層上司だって若いころは「昭和のモーレツサラリーマン世代」であったし、筆者らが現在の大学生に行ったアンケートでは、大学によらず大部分の学生が「就職したらできるだけ仕事を頑張りたい」「上司とのコミュニケーションを大切にしたい」と回答している。世代による価値観の差は、一般に思われているほど大きくはない。それよりもむしろ、昭和時代にはフリーライドしにくい「インセンティブ」を提供する制度や空気がうまくつくられていて、現在ではそれが崩壊してしまったことのほうが重要だろう。(二)について、多くの実験研究で、フリーライダーを取り締まる術のない中で、ひとたびフリーライダーが出現すると、真面目に貢献していた人々までフリーライダー化する、という現象が観察されている(※2)。もし自分の会社で、冒頭に挙げたようなフリーライダーだけがいい目をみて、真面目に頑張っている自分が報われなければ、ヤル気がなくなってくるのは、直観的に理解できるだろう。そのうちに、やがて自分も、できるだけ楽して給料をもらうことだけに腐心するような社員になってしまうかもしれないのだ。

フリーライダーの存在は、周囲のヤル気を削ぎ、さらなるフリーライダーを生み、組織全体のモラルを低下させる。このようにフリーライダーがフリーライダーを生む現象を「腐ったリンゴ効果」と呼ぶ。ラテン語の「1個の腐ったリンゴは、樽の中をすべてダメにする」ということわざに由来した言葉だ。

腐ったリンゴ効果が意味するのは、フリーライダーを野放しにしておくと、その組織は必ず崩壊する、ということである。昭和の職場でこの現象が起きなかったのは、多くの若手社員が「いま頑張っておけば、俺も将来楽な管理職になれる」と思って働いていたからである。しかし現在の日本の雇用環境では、そのような考えを若手社員が持つことは不可能だ。それゆえ、一個の腐ったリンゴは確実に組織を蝕む。

モラルの低下には「ムチ」よりも「アメ」の活用が有効

筆者らは『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』(河合太介・渡部幹著 講談社現代新書)の中で、この問題の詳しい分析と対処法について述べている。前記の粘土層上司やアレオレ詐欺社員を含む、さまざまなフリーライダーを2つの軸を使って分類しているほか、個人的あるいは組織的にフリーライダーに対してどのような対処が可能かを論じている。

ここでは、その中で組織的なフリーライダー対策の肝になる「アメとムチ」の効用について、学問的な見地から述べたい。

組織の中のフリーライダーに対する対処法は大きく分けて2つある。ひとつは、フリーライダーの可能性のある者を組織に入れないこと、もうひとつは組織の中でフリーライドしても得にはならない環境をつくること、である。このうち今回は後者について触れる。

先に述べた通り、フリーライダーが生じるのはフリーライドすると得になるというインセンティブが存在するからである。論理的には、そのインセンティブを変えることができれば、フリーライダーは発生しなくなる。そのための方法は2種類ある。フリーライダーに罰を与えることと、フリーライダーではない真面目な社員に褒賞を与えることである。罰を与えられることで、フリーライドすることの「美味しさ」はなくなってしまう。真面目に働いているほうがいい目を見るのならば、フリーライドする気は起きない。

ただ、多くの実験研究の結果、懲罰によってフリーライダーを防ぐのは、非常に難しいことがわかっている(※3)。正確に言うならば、懲罰自体にフリーライダーを防ぐ効果は十分あるが、懲罰の与え方が難しいのだ。フリーライダーを罰するためには、誰がどの程度フリーライドしているかを見極めなくてはならない。それだけでも難しいが、その際、意図的にフリーライドしているのか、何か理由があってやむなくフリーライドしているのかで、与えるべき罰も変わってくる。これらを正確に見極めるのは相当困難である。大抵のフリーライダーは自分がそうであることを認めたがらないし、証拠も隠そうとするからだ。

したがって筆者はもうひとつの手段である「真面目な社員へのアメ」をうまく活用することが重要だと思っている。もっとも単純に考えられるのが、給与や賞与への反映であるが、そればかりではない。むしろ、もっと非金銭的な報酬のほうが良い場合もある。

実験経済学のある研究では、人々に協力を頼む際に、お金を報酬として渡す場合と、感謝のしるしとしてキャンディを渡す場合の比較をした 。結果は、お金の場合には渡す金額の程度によって人々の協力度合いが大きく変化したのに対して、キャンディの場合は、その量にかかわらず、皆かなりの協力をしてくれた、というものであった。脳科学の研究でも人から褒められると金銭をもらった場所と同じ「報酬系」という場所が活性化することがわかっている。このように、非金銭的な報酬でも人々の協力は引き出せるのである。では、現実の職場では、このようなアメやムチをどのように使ってフリーライダーを防ぐのか。次回触れることにしたい。

(※1)ロバート・アクセルロッド(松田裕之訳)(1984)『. つきあい方の科学-バクテリアから国際関係まで』ミネルヴァ書房など。
(※2)Marwell, G., and Schmitt, R.(1972).Cooperation in a three-person prisoner's dilemma. Journal of Personality and Social Psychology, 21, 376-383. 山岸俊男(2000).『社会的ジレンマ』PHP 新書など。
(※3)Kiyonari, T., & Barclay, P.(2008).Cooperation in social dilemmas: freeriding may be thwarted by second-order reward rather than punishment. Journal of Personality and Social Psychology,95, 826-842. 森本裕子・渡部 幹・楠見 孝(2008).サンクション行動および公正さの認知における信頼の効果: 戒めと報復 社会心理学研究 24 108-119.など。


プロフィール
河合 太介
かわい・だいすけ●人と組織のマネジメント研究所「道(タオ)」代表取締役社長。『不機嫌な職場』ほか著書・共著多数。http://www.kando-keiei.com

渡部 幹
わたべ・もとき●早稲田大学高等研究所准教授。専門は社会心理学。共著に『不機嫌な職場』『よくわかる社会心理学』などがある。



昔は、ぶらさがり社員って言っていた・・

会社になんの貢献もしない・・

今のきびしい不況の中、中小企業では、ありえない。

すぐクビにされる。

そして、まだまだ、大企業にはいるんでしょーか・・

そして、今は、お役所にいっぱいいるんじゃない・・・