小沢一郎、再び!12月には大風が吹く
飯島 勲 「リーダーの掟」
プレジデント 2010年10.18号
事件後20年以上経過した今、中井洽拉致問題担当大臣の主導で金元工作員を来日させた、この事実をどう見るか、ということだ。
内閣総理大臣、菅直人殿。
代表選期間中は、貴殿の臨機応変な発言に毎日感心しておりました。
とりわけ「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と繰り返しながら、具体的な雇用拡大策には一切触れないという、堂々たる態度には、私自身、驚きを隠せませんでした。
選挙演説でも、首相就任後の仕事内容に触れることはせず、1996年に自社さ政権で厚生大臣として取り組んだ薬害エイズ問題を強調するだけの謙虚な態度にも驚かされました。まさかご自身で副総理も担っていた民主党政権誕生以後に「目立った成果がないため」と考えることは、邪推ということでしょう。代表選最後のスピーチでの浮ついた文句の羅列は、総理大臣としての危機意識が感じられず、国民が一時的に平和な気持ちになることができました。
まずは民主党代表選挙の圧倒的勝利につきまして、心よりお祝い申し上げます。
小泉内閣をマネたい気持ちだけは伝わる
昨年から続く円高にさらに拍車がかかったのは、今年5月上旬のユーロ安を受けてだった。自国の通貨の高値を回避し、国内産業を守るために、韓国、オーストラリア、スイスなどは、早くからドル買いを進めてきた。日本では、5月5日の94円99銭を円安のピークに円高傾向が続いた。今になって介入を始めたがこの四カ月間に打てる手はほかにもあったはずだ。
続投が決まった菅首相は繰り返し「一に雇用、二に雇用、三に雇用」というが、デフレを進行させる円高が雇用状況を悪化させているという可能性を理解できているのか。円高の状況下でも、高い収益をあげている企業は、海外での製造、販売などで儲けている。国内にのみ拠点を置く企業、特に中小規模の企業は、円高による苦しみで雇用どころではない。円高が雇用を空洞化させているときに、菅首相の「雇用」という言葉は、いつも以上に空虚に聞こえた。
雇用拡大のためには、中長期的には内需に目を向けるのは間違ってはいないが、まずは、日本経済の根幹を担う輸出企業を立て直すことで、経済、雇用を持ち直すことが大事だ。中小企業視察の前に、政治家として考えることがあるだろう。
政治家の仕事、まつりごとの鏡となるのが、為替と株だ。私はこの認識のもとに、官邸の秘書官室に、リアルタイムで株価と為替がわかるボードを設置した。残念ながら民主党の官邸は忙しくてこのボードを見る暇がないのだろう。他の政策においても、菅首相に実施のための戦略があるのか全く疑問のままだ。
8月の概算要求もデタラメだった。各省の予算概算要求の1割カットを突然決めたことについて、代表選の討論会でも小沢に突っ込まれていたが、国の予算で何をするのかという意思表示はなく、「政策コンテスト」で他人に決めてもらうという。この政権には強いリーダーシップで国を導こうとする気概がない。
自民党政権下でもシーリングは決められていたが、次年度の予算について、ある政策にいくら必要なのかを想定し、どれくらい削れるか、どれくらい補充できるかということを審議したうえで、シーリングが決められていた。方向性がないまま、とりあえず一律1割カットというのは史上初めてだろう。
菅内閣が9月7日に設置を閣議決定した「新成長戦略実現会議」も噴飯ものだ。小泉内閣の経済財政諮問会議のスタイルをマネしたと聞くが、私の記憶では、菅首相は経済財政諮問会議を野党時代に否定し続けていた。
小泉内閣のいいとこ取りをすれば、うまくいくとする安直な意識は伝わるが、結果は厳しいだろう。
例えば「新成長戦略実現会議」には多くの閣僚が参画している。限られた閣僚のみしか参加しないからメリハリの利いた結論が出せるのだ。これでは官邸主導になりえない。場所が官邸になっているだけの「官」主導の会議になることが目に見えている。盗用するなら劣化コピーでなく、すべてをマネなくてはいけない。
就任3カ月で何もできなかったというのが、菅首相の限界だ。私は、高い支持率を回復した菅内閣は長くもたないと見ている。私は菅か小沢かという究極の選択の中では、小沢を選ぶ。カネの問題についてはいくら批判しても足りないぐらいだと考えるが、小沢には日本の閉塞状況打開の可能性があったのではないだろうか。少なくとも菅には可能性がない。
小沢一郎、民主党離党のXデー
代表選期間中の小沢バッシングはすさまじいものがあった。ほとんどの新聞・テレビは菅首相寄り。小沢が勝ってもいいという視点のメディアが一切ないという状態での代表選というのも珍しいと思う。
選挙戦後半には、青木愛衆院議員と小沢自身、それから小沢の秘書との不倫疑惑騒動が一気に出てきたり、鈴木宗男外務委員長の最高裁での実刑判決が確定したりと、小沢側に不利な報道が相次いだ。

小沢のスキャンダルについては、誰が利益を得たか、どうしてこのタイミングに集中したかを考えれば、どちらの陣営が火をつけてまわったかがわかる。反対に菅陣営のスキャンダルが出なかったのを考えると正々堂々と闘ったのは果たしてどちらなのだろうか。
逆に、菅首相のほうは、内閣支持率が50%を超えたなどと、マスコミに宣伝してもらえた。マスコミも知っているはずだが、内閣支持率は国会がない時期には、上昇傾向になる。野党によって批判されることがないため、言いっぱなしでも逃げ切れるのだ。国会が開会して、野党との論戦が始まれば、いつものように支持率は落ちる。あえて民主党の代表選びとは関係のない国民支持率を報道して、世論を誘導していた。
気になるのが、小沢の今後の動きだ。党員・サポーター票で51対249と大差をつけられ、国会議員票でも400対412と敗れた小沢が、このまま民主党内でじっとしていられるのか。
私が小沢だったら、12月31日の数日前、12月29日前後に離党する。権力やカネを菅陣営に掌握されて、小沢が黙っているわけがない。小沢にとっての政治生命の終わりを意味するのだ。小沢が過去に政党の解体、新党結成を行ってきたのは、政党助成金の支給額が政党所属議員の数に応じて決定する12月末だ。
マスコミのあれだけの集中砲火を浴びながら、党内の小沢グループは結束を乱すことはなかった。信者に近いような側近議員も多く、小沢が「離党する」と言えば、50人程度は、迷うことなくついていくだろう。
これまで私は、民主党政権が危機に瀕するのは、地方選挙の空白月で国会予算審議がゆきづまる来年3月と言ってきたが、小沢離党、新党結成が実現すれば、年明けからの通常国会で予算審議に入ることが難しくなり、政権はそこで終了となる。
代表選では、財源を顧みない昨年夏のマニフェストを実行するなどと極端な政策を掲げた小沢だが、いざ、離党してしまえば、「政権協議のため」「政界再編を進めるため」との大義名分がたち、政策の軌道修正を行うことができる。実現不可能とわかっている極端なマニフェストを主張できたのも、自分が勝った場合は「連立協議のため」、負けても「政界再編のため」修正できると計算できていたからだろう。勝っても負けても、逃げ道が用意できているあたりが、いかにも小沢らしい。この権謀術数を明日の日本のために使えないものか。 (文中一部敬称略)
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『小泉元総理秘書官が明かす 人生「裏ワザ」手帖』
飯島勲著(プレジデント社)
上司に「カラスは白いか」と聞かれた時、正答は何か?全ビジネスパーソン必読の危機脱出法
飯島 勲
いいじま・いさお●1945年、長野県辰野町生まれ。72年小泉純一郎衆議院議員秘書。永年秘書衆議院議長表彰、永年公務員内閣総理大臣表彰。小泉純一郎内閣首席総理秘書官。現在、松本歯科大学特任教授、駒沢女子大学客員教授。著書に『人生「裏ワザ」手帖』。
そして・・また・・・・政治の空白が・・
いろいろな問題を、どんどん先延ばしさせていく・・・
日本の株の上がらない原因は・・ここか・・
