株式会社ローソン 代表取締役社長CEO 新浪 剛史さん
自給率向上は国家的課題 コンビニも変わらなければ
日本の食料問題を考える上で、コンビニは無視することのできない存在。そこで、新浪社長にコンビニと食の未来について聞きました。農林水産庁
Profile にいなみ・たけし1959年、横浜市生まれ。81年、慶應義塾大学経済学部卒業、三菱商事入社。91年、ハーバード大学経営大学院修了(MBA取得)。95年に給食会社のソデックスコーポレーション(現・レオックジャパン)社長に就任。その後三菱商事に戻り、99年外食事業チームリーダー、2001年ローソン事業ユニットマネージャー、02年3月ローソン顧問を経て同年5月から社長。
「先進国中最低の39%という水準は、もはや『改善と向上』でクリアできるレベルの問題ではない。食料安全保障という観点から見ても、これは国家的な課題と言えるでしょう。危機が目の前までやってきたときには、もはや遅すぎるんです」
株式会社ローソン代表取締役社長CEOである新浪剛史さんは、日本の食料自給率についてこう語る。
「新たに農業に参入したいという人をどう増やしていくか、農業の法人化がうまくいかないのはなぜか……国、産業界、国民が一緒になって真剣に考えるときです。昨年の食品偽装事件や今年初めの冷凍ギョーザ事件の影響などもあって、消費者の『少々コストがかかっても安心して食べたい』というニーズは確実に高まってきている̶̶国産品の消費を拡大するには絶好のチャンスなんです。この機会を活かして『品質の高い国産品を応援しよう、国産品を食べよう』という国民運動にしていかなきゃならない。私たちもコンビニエンスストアという立場から、何ができるかを常に模索しています」
その言葉どおり、ローソンでは2003年から、全国17の都道府県と提携し、各地域の食材を使った商品づくりを行っている。
「各自治体に地元のおいしい食材を紹介していただこうという試みです。日本各地には、良質でおいしい食材がたくさんありますから。“地産地消”はすでに行われています。これからは“地産外消”が重要だと私たちは思っているんです。つまり地域独自の良質な産品を東京、大阪、名古屋といった大消費地のお客様に紹介したい。例えば、昨年9月に長野県産のリンゴを使ったジャムパンを名古屋のローソンで販売したところ、たいへんな好評を得ました。『信州産リンゴのジャムを使ったジャムパン』といった、食材の地域ブランド価値は、多くのお客様が認めてくれています。このように日本各地の食材を積極的に紹介していくことで、結果として生産者の方々を応援できればと思っています」
食料自給率低下の背景には、大量の食品を輸入し、大量に廃棄するという日本の食を支えるシステム自体の問題も横たわっている。コンビニエンスストアにとっても、大量の食品残(ざん)さは悩みの種だ。まだ食べられる食品でも、品質管理の徹底のため、消費期限前に棚から撤去されていく。
「豊富な品揃えの背景にある大量の商品廃棄は、コンビニのビジネスにとって、ある意味で必然だったともいえます。現在のコンビニのビジネスモデルが確立したのはバブルの頃。つまり “モノが豊富にある時代”のしくみなんです。しかし、パラダイムはもう変わってしまったんだと思います。今後はこれを“モノがない時代”のしくみに変えていかなければなりません。ローソンでは今年から試験的に弁当の店頭調理を始めています。お客様の注文を受けてから調理をしてお渡しする……このシステムが全国展開できれば、食品残さは劇的に減少します。また、これは横浜市のある店舗だけの試みですが、消費期限間近で撤去した惣菜や弁当を近くの食堂に提供し、料理の食材として有効に活用していただこうという取り組み(※)も始めています。ほかにも、発注の制度を改善するなど、廃棄を極限まで減らすしくみをつくります」
コンビニの将来に「夜も眠れないほどの危機感を感じている」という新浪さん。新たなコンビニのビジネスモデルが、日本の“食と農の風景”を変える力となることを期待したい。
横浜市南区寿町でNPO法人さなぎ達が運営する「さなぎの食堂」で、路上生活者や生活困窮者を対象に行われている取り組み。「横浜ローソン尾上町三丁目店」で売場から撤去されるパンやおにぎり、弁当などを食材に用い、300円程度の安価な定食として消費期限前に提供している。
内需伸びない根底に規制 政治に任せず民で解決を——ローソン社長CEO 新浪剛史 - 10/10/12
内需産業の優等生とも言えるコンビニエンスストア業界。だが、その成長も頭打ちとなり、新たな顧客層拡大が急務となっている。大手各社はこぞってアジアに照準を向けており、ローソンも上海に続き重慶に、中国内陸部では初の出店を果たした。同社の新浪剛史社長に、国内外での成長戦略を聞いた。
——急激な円高で輸出産業は痛手を被っています。景気の二番底が懸念される中で期待のかかる内需産業ですが、これまでの政策では十分に機能できていません。何が足りないのだと思いますか。
内需が伸びない根底には規制がある。生活者にとって価値があるかどうかの目線で抜本的に見直し、若い人たちがチャレンジできる社会を作っていかないといけない。特にヘルスケア分野は、地域密着型ビジネスが育ちやすいので期待できる。医療や福祉の分野で拡大することは、いずれアジアでの展開にも生きるはず。中国をはじめアジア各国も高齢化社会に向かっているからだ。
規制の見直しは政治に任せるのではなく、経団連や経済同友会、商工会議所といった経済界が、もっとかかわるべきだ。規制には官がうんぬんというより、実は民・民の問題がすごく多い。民が一つの権益を抱え込んでいるケースも少なくないからだ。価格を下げるためではなく、質をもっと上げていくために見直すべきだ。
──政府に対する経済界の要望の仕方に問題があると。
政治との対話は活発にしてきたが、最近は政治がポピュリズムになって経済界の言うことをあまり聞いてくれない。経済界はもっと「輿論(よろん)」形成をすべきだ。こうすれば生活レベル、QOL(生活の質)が向上するとか、利便性がよくなるとか、そういった輿論作りが必要。
一方で政治は輿論ではなく「世論(せろん)」で動いている。輿論とは健全な物の考え方、熟考できる人たちが議論して形成していく質の高い意見だ。経済界は輿論作りに自ら動かないとダメ。政治に要望するだけではなく、自分たちも行動を起こしていかないといけない。
──輿論形成には国民への啓蒙や教育も不可欠ですね。
これからの10年を見据えて、企業や社会全体が再度教育に力を入れるべきだ。弊社では教育は「共育」、育てることはともに育つことと認識している。だから、パブリック、コミュニティの中で教育をやるべきだ。日本は、歴史的に寺子屋や藩校というインフラがあったからこそ、今があると思っている。いわゆる、ワークエシックス(働くことの倫理観)は日本が世界一だと思うが、これが今、風化しつつある。ワークエシックスの中心は道徳だ。この価値を再度見直したうえで、10年の計をやり直さないといけない。
50代以上の市場開拓が持続的成長につながる
──国内消費低迷の中、コンビニ業界は今後成長し続けられますか。
コンビニは街の隅々にあり目立つので、小売業界の中でシェアが高いように見えるが、全体の1割前後にしかすぎない。お客様の中心は20~40代の男性なので、まだコンビニをそれほど使わない人も多い。たとえば50代以上や女性の支持は、私たちが考えるよりも低い。こうした方々に必要とされる商品やサービスがそろってないからだ。
パイを奪い合うだけで、イノベーティブとは言えない業界になっているのは、店舗をたくさん出してシェアを取ることだけを、各社が重視するようになったためだ。では今後伸びるためには、どうすべきか。他業態からシェアを取っていくのかと聞かれれば、そういうことではない。生活に必要な新しい提案や、新しい市場を創造することで、内需につなげるようにしたい。たとえば、伸びる可能性が高い50代以上のマーケットを攻略できれば、持続的な成長産業になれる。
──提携戦略が相次いでいます。ドラッグではマツモトキヨシ、調剤ではクオールと提携していますね。
ユニークなコンビニになるためには、アライアンス(提携)が必要です。その際、組む相手にないものを持っていたほうがコラボ(協力)しやすい。その点、大型コンビニ同士は補完するものがなく非常に難しい。
私どもは薬の売り方を知らないし、相談にあずかることもない。調剤薬局は処方箋を基にコンサルティングするが、こうした商品を介したコミュニケーションは、専門性が低いコンビニでは比較的少ない。異業種から学ぶことはたくさんある。
マツキヨさんと一緒に店を出していくとすると、100坪以上の大型店になるだろうし、調剤薬局をナチュラルローソン中心に展開していけば、高齢化社会を支えるネットワークになっていくかもしれない。
──高齢者をターゲットとした場合の店作りや商材は、どのようなものをイメージしていますか。
糖尿病の食事を例に取ると、重度の領域をやろうとは思っていないし、福祉の世界に入るつもりもない。いかに予防していくかという点でやれるのではないかと考えている。糖尿病の患者向けの食事を開発しても、ローソンでは売れないが、調剤薬局が入ったファーマシーローソンならイメージに合う。日常食べる物で、ミールソリューションを提供するのが役割だと思っている。
中国は出店地域拡大し10年間で1万店目指す
──中国展開では上海に加え、内陸の重慶に独資で出店しました。
上海に出店してもう14年になる。利益が出ていることは成果と言えるが、店舗のクオリティは大幅に落ちている。改装の時期が非常に遅かったり、現地のパートナーとコミュニケーションができていなかったりなど反省がある。ただ昔は、パートナー側はメンツを重視していたが、最近はリターンにこだわるなどコミュニケーションしやすくなった。改善できるのではないかと考えている。
──重慶市から招致の話があったそうですが、進出の決め手は。
人口密度が非常に高く、オフィス街の昼食難民も多い。2年前に実際に行って、早く出たほうがいいと思った。成長率も中国の平均より高い。今後の中国展開は北京、天津、東北部、広州、上海の周辺部なども視野に入れていく。10年で5000~1万店を展開したい。
──日本のコンビニというビジネスモデルは、中国で通用しますか。
コンビニは、ソフトとしても輸出できる。世界的に見ると、小売りはスモールマーケットにシフトしており、お客さんに近づいている。コンビニは中国でも十分に通じる。
中国の地元資本のコンビニは、取引先からのリベートなどで利益を確保しており、成長性があるビジネスモデルとして成功している例はほとんどないだろう。店舗はほかをまねているケースが多く、サプライチェーンを持っていないからだ。
── 一方で、国内市場は猛暑効果が出て、回復しつつある。
既存店が前年比をクリアしたといっても、消費の力は弱い。コンビニ以外で安く手に入るものも多く、正味はさほど強くない。
やはりコンビニは、いかに新しい価値を構築できるかだ。ヒットした「プレミアムロールケーキ」は、それまで100円がベースだった価格を150円にしたが、お客さんはその価値を認めてくれた。品質と価格から見て値頃感がある物を作るのは、人的資源も資金もかかる。だが、質を重視するのは、仕組み産業の代表たるコンビニの役目だ。
——半年以上前になりますが、チケット子会社のローソンエンターメディアで、元幹部による資金の不正流用という不祥事が発覚しました。子会社会長でもあった新浪社長自身が辞任するという選択肢は考えなかったのですか。
僕自身がもっと意志決定に絡み経営に携わっていれば、ああいうことは起こらなかったと思う。
加盟店にとって、チケットは重要なアイテムであり、チケットに強いのはローソンの特徴でもある。そうした火が消えてしまうのは困るわけで、自分自身がもう一度立て直し、企業価値向上につなげていく。
(鈴木雅幸・週刊東洋経済編集長、高橋志津子 撮影:田中庸介/アフロ =週刊東洋経済2010年9月18日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
にいなみ・たけし
1959年生まれ。81年三菱商事入社。2002年ローソン社長就任、05年社長CEO。10年より経済同友会副代表幹事。
やっぱり人ですね・・・
10年間で1万店なんて・・・・・すごいよね!!!
頭はげちゃうネーーー
今日の日経に、こちらの社長さん、上海常駐って・・・・
しかし、三菱系は、最近、商業施設とか、
いろいろと、積極的ですかねーーー・・・

