押し寄せる「中国人観光客」の好物は和牛、ふぐ、フレンチ
週刊文春2010年8月26日号「THIS WEEK グルメ」
中国人観光客の勢いが止まらない。日本政府観光局によると、今年一月から六月に中国本土から日本を訪れた観光客は前年同期比四七%増の七十万人。さらに七月からの訪日ビザ要件緩和によって中間層も対象になることで、大幅な増加が見込まれている。
家電量販店や百貨店に比べ、これまで対応が遅れていた飲食業界でも、中国人観光客特需に期待が高まっている。
居酒屋「甘太郎」では、香港からのツアー客向けに焼肉ディナーセットを千六百円で提供している。コロワイドグループでは、中国人観光客を当て込み中国語対応の注文端末や中国語メニューの準備を進めている。しかし、中国人観光客を受け入れたがらない店舗も多い。
「富裕層といっても、大半は六、七万円の格安パックツアーで来る団体か小グループ客。店は旅行会社主導で決められ、その場合、昼はひとり千円前後で用意してほしいとなる。バックマージンを払ってまで、受け入れるには儲けが少なすぎる」(中国系の旅行会社と取引のある飲食業関係者)
その一方で、自由行動となる夜はミシュランの星付き店に殺到しているという。
「確かに『すきやばし次郎』などの高級すし店などに通う一部の富裕層はいますが、レストランガイドを見てここに行きたいというまで成熟していないのが現状です。一番多いのが和牛を食べたいというリクエスト。次いでふぐ、かに。『和牛が食べられる東京で一番高級な店に連れて行け』というレベルです」(前出・飲食業関係者)
和食と並んで富裕層に人気の高いのがフランス料理。「ポール・ボキューズ」など星付きレストランを抱えるひらまつグループでも、銀座の店舗では中国人客が増えているという。ただし店の方は「特に何もしていません。銀聯カードにも対応していません」(広報担当)とそっけない。今後、中国人観光客は、格安店と高級店のどちらに向かうのか? (依光晃宏)
中国人なくして実現不能の「観光立国」訪日外国人「3000万人」は達成できるのか
2010.08.27(Fri) 中野 哲也 漂流経済
年夏になると、都心のホテルではビジネス宿泊客が減少する。
このため、各ホテルは少しでも利用客を増やそうと、イベントの開催に知恵を振り絞っている。その中でもレストランが世界の美味や珍味をメニューに掲げるのは定番だが、財界や大手銀行などの首脳が一堂に会する「美食祭」は珍しい。しかも腕を振るうのは、中国の迎賓館「釣魚台」の総料理長である。(写真も筆者撮影)
2010年8月23日昼、ザ・プリンス パークタワー東京(東京・芝公園)の大宴会場――。猛暑の中をお歴々が「中国釣魚台国賓館 美食祭」の開幕式に続々と集まって来た。
日本側は米倉弘昌・日本経団連会長や、3メガバンクの首脳が揃い踏み。来賓として、三日月大造・国土交通副大臣が出席した。一方、中国からは程永華・駐日大使のほか、中国外務省釣魚台国賓館の幹部や総料理長以下のシェフが北京から駆け付けた。
来賓挨拶では、三日月副大臣が「釣魚台の料理は一つの芸術作品であり、中国の至宝として評されるべき存在」「美食祭が日本と中国の間の大きな架橋になる」とリップサービスを惜しまない。一方、程大使は「釣魚台管理局が強力な陣容のシェフを連れてきたから、日本の皆様にも満足していただけると確信している」と胸を張った。
中国・釣魚台国賓館のシェフ、伝統の技を披露
美食祭のホスト役であり、プリンスホテルチェーンを率いる西武ホールディングス(HD)の後藤高志社長は、満足気な笑みを浮かべて挨拶した。「今後ますます増えていく中国からのお客様が安心して快適なホテルライフを楽しんでいただけるよう、サービスの向上に努めていく」
釣魚台のシェフが壇上で披露する「野菜彫刻」を、日本の財界や金融界の首脳がじっと見守っている。もはや、中国抜きでは日本の観光・ホテル産業は成立しない――。
過熱するホテルの中国人客争奪戦
日本経済のプレゼンスが相対的に低下し、国内総人口が減少する中では、中国人客を取り込まないと都内のホテルは稼働率を維持できない。業界の競争は過熱しており、中国語によるサービスやテレビ放送の館内導入は今や当たり前。それに「プラスα」がなければ生き残れないと業界は危機感を強めている。
後藤高志・西武ホールディングス社長
プリンスホテルの場合、2009年には中国からの利用客が10万人を超えて日本人以外ではトップになり、今年はそれが2倍近くにまで急増する見通し。後藤社長は「流れをしっかり取り込んでいきたい。スピード感を持って態勢を整備していく」と気を引き締めている。今回は自ら北京に乗り込んで当局と折衝の末、釣魚台を東京へ引っ張り出すことに成功した。
今回のイベント自体は無論、日本人向けである。メニューには「イカの卵のスープ」「シカ肉のステーキ」など秘伝の宮廷料理の数々が並ぶ。ディナーコースは最高4万5000円だが、開催前から予約が殺到していた。
だが今回の美食祭の目的は、日本の富裕層に超高級中華料理を堪能してもらうだけではない。ザ・プリンス パークタワー東京の武井久昌総支配人は「釣魚台国賓館それ自体が中国人の間では(超高級)ブランドであり、(それを活用して)プリンスホテルのステータスを引き上げたい」と目論んでいる。
門外不出の「皇帝メニュー」と同時に、釣魚台国賓館が「一瞬の油断もない最上のサービス」(韓梅・管理局業務処支配人)と自負する接客スタイルを学びながら、プリンスホテルは中国人客向け「プラスα」を身に付けようと必死なのだ。パークタワーの宿泊客に占める中国人のシェアは3%(2009年)だが、「中期的には10%まで引き上げたい」(武井氏)という。
中国の旅行業界とコネクションをつくって訪日観光客を取り込む「川下作戦」だけでは、他のホテルとの差別化は難しい。過去半世紀余、中国外務省は1100人を超える各国の元首や首脳を招いて、釣魚台国賓館を外交舞台としてきた。その当局との間で太いパイプを築き上げ、プリンスホテルは中国人客争奪戦で優位に立とうという「川上作戦」に乗り出している。
個人観光ビザの規制緩和、中国の中間層にも日本ブーム?
日本政府観光局(JNTO)によると、2010年上半期(1~6月)の中国から日本を訪れた旅行客は70.5万人に達し、前年同期比では47.4%増を記録した。国別ランキングで中国は2007年に米国を抜き去り、08年には年間100万人を突破している。
2010年7月1日、日本政府は中国人向け個人観光ビザの発給要件を緩和した。従来は年収25万元(約350万円)以上の富裕層に限定していたが、大手クレジットカード会社が発行する「ゴールドカード」の所有者(=年収6万元以上が目安)など中間層まで対象を拡大。これにより、下半期(7~12月)は中国人の日本観光ブームに一段と拍車が掛かりそうだ。
訪日外国人の政府目標「3000万人」だが、「1億人目指せ」の提言も
民主党政権は2010年6月の「新成長戦略」で観光産業を経済再生策の柱の1つに掲げ、訪日外国人を2020年初までに2500万人、将来は3000万人を目指すとうたい上げた。それを達成するには、中国人旅行客を大幅に増やす必要がある。
中央三井トラスト・ホールディングスの調査レポート(2010/夏 No.70)によると、中国からの外国旅行者数は年間4584万人(2008年)に達する。このうち、訪日旅行者は100万人。その比率は2.2%にすぎず、韓国の19.0%や台湾の16.4%には遠く及ばない。
言い換えるなら、中国には潜在的な日本旅行需要を大いに期待できるわけだ。それを取り込めれば、日本の「観光立国」も夢ではない。上記のレポートも「世界中から注目される中国人観光客の招致競争は熾烈を極めており(中略)リピーターを増やすよう官民で知恵を出し合い、取り組む必要がある」と指摘している。
もっとも、政府目標の「3000万人」では不十分だという批判も、専門家からは聞こえてくる。
ちばぎん総合研究所の額賀信会長は、(1)フランスやスペインへの年間観光客は国内人口を上回る(2)日本の国際観光収入は1.1兆円で中国の4分の1程度(3)訪日外国人は東京はじめ大都会に宿泊する傾向が強く、政府目標が「地域活性化の切り札」になるのか。わが国全体の救世主としては力不足だ――と指摘している。
その上で、額賀氏は「あえて目標数字を掲げるとすれば、訪日外国人は、1億人を目指すべきだろう」と興味深い提言を行っている。(2010年8月18日付日本経済新聞「経済教室」)
2009年の訪日外国人は679万人。これをはるかに上回る政府目標の3000万人、あるいは額賀提言の1億人を実現するためには、現状の国内インフラは決して十分でない。
こうした中で、2010年10月21日に羽田空港の新国際ターミナル(地上5階建て、15.9万平方メートル)が開業する。総事業費約1100億円が投じられ、本格的な「24時間空港」となる。当初の発着枠は年間6万回、3年後には9万回まで増える見通しだ。
開業前の新ターミナルを取材して歩いた。JR浜松町駅から最短13分で着く東京モノレールの新駅と、ターミナルの出発階が同じフロアにある。改札口を出てから、最も近いチェックインカウンターまでなら1分足らずだ。京急電鉄も新駅をオープンし、都心からのアクセスを競い合う。
商業施設は「Made In Japan~羽田Only One」を全体コンセプトとして打ちだし、「日本」というコンテンツの発信を意識したデザインが採用されている。例えば、江戸時代の街並みを再現したゾーンは、まるで映画のロケ現場のように造られている。
新ターミナル開業でも、中国が発着枠を回してこないから・・・
開業準備は急ピッチ、羽田空港の新国際ターミナル
ただ、新ターミナルからは想像より「小ぶり」という印象を受けた。実際、3年後の発着枠9万回までは想定されていないという。今回は民間から資金や運営ノウハウを導入するPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)方式が採用されており、「無駄」を極力省いたというわけだ。
確かに、豪華な「箱モノ」に対する批判を意識せざるを得ない時代とはいえ、日本の新たな「空の玄関」がそれでよいのか。「安物買い」が結局、高くつかなければよいのだが・・・
もちろん、中国からの旅行客を取り込む上でも、新ターミナルに寄せられる期待は大きい。ところが開業前からいきなり水を差される事態が起こっている。
中国側が「国内線需要の急増」を理由に北京と上海の発着枠を日本に回さないため、日本航空と全日本空輸が新ターミナルからの中国便の増便を断念したのだ。止むを得ず、両社はその分の発着枠を日本国内路線の増便に回す。
日中航空交渉は中断していたが、訪中した前原誠司国土交通相が8月24日、北京で李克強副首相らと会談し、交渉再開にこぎ着けた。しかし、「中国の航空当局は極めてタフな交渉相手。日本から好条件を引き出そうと躍起になっている」(国交省関係者)ため、交渉再開後も難航が予想される。
「観光立国」は掛け声だけでは実現しない。外交も含めて日本の「総合力」が問われる政策課題だと認識しなければ、中国人旅行客をめぐる世界的な争奪戦を勝ち抜くことはできない。
外人さんが、さしのいっぱい入った
和牛をたべたらーー、びっくりするかもねーー
寿司、刺身、てんぷら、すきやき、ふぐ
牛丼、とんかつ、ステーキ、
カレー、日本はおいしいものいっぱいあるからねー・・
観光は、私も大好き!!!


