鳩山首相の所信表明演説 「あいまいさ」と「甘さ」目立つ
2009.10.26 産経ニュース
衆院本会議で所信表明演説をする鳩山首相=26日午後2時4分
鳩山由紀夫首相の初の所信表明演説からは、政権交代を成し遂げた高揚感と「友愛」にかける首相の強い思い入れは感じられるものの、諸施策に関する具体的言及は乏しい。残念ながら日本が置かれた厳しい国際環境への危機感もあまりうかがえない。
演説作成にあたり「役所の要望は極力抑え、国民の心に響くメッセージにしたかった」(政府高官)という意気込みは理解できる。だが、通例の1・5倍という12905文字を費やした割には、抽象的で焦点がぼけた印象だ。
例えば「何よりも、人のいのちを大切にし、国民の生活を守る政治」を掲げているが、これは当たり前すぎてことさら強調する意味が分からない。「大きな政府とか小さな政府とか申し上げるその前に」という表記も、どこを目指したいのか方向性が見えない。
あるいは、1月のオバマ米大統領就任演説にある「今日問われるべきなのは、政府が大きすぎるか小さすぎるかではない」との言葉を意識したのかもしれない。しかし、オバマ演説は同時に国民に「忠誠や愛国心」を求め、義務を果たすことが「市民権の代価」であるとも指摘している。上面だけをまねても、本質があまりに違う。
これだけ長い所信表明演説の中で、教育についてほとんど何も触れられていない点も気になる。その半面、日教組のドンと呼ばれる民主党の輿石東参院議員会長(幹事長職務代行)のキャッチフレーズである「『居場所』と『出番』」は盛り込まれている。
そして、特に懸念されるのが外交・安全保障に関する部分だ。民主党の政権公約(マニフェスト)通り「対等な日米同盟」をうたい「日本の側からも積極的に提言」する関係を目指すとしているが、それには日米同盟の片務性をただす必要がある。端的に言えば「集団的自衛権の行使を可能にする以外にない」(首相経験者)が、鳩山首相にその考えはないようだ。
東アジア共同体構想は高らかに主張するが、喫緊の課題である米軍普天間飛行場の移設問題に関しては「在日米軍再編については」と表現をぼかした上で「真剣に取り組む」とあるだけだ。日本は何もせずに“いきがる”一方、「大統領には分かってもらえる」(政府高官)といった、甘えの姿勢すらうかがえる。
だが、米国は契約(日米合意)を重視する冷徹な国だ。演説からは、改めて鳩山首相の危うさが浮き上がってくる。(阿比留瑠比)
[東京 26日 ロイター] 鳩山首相の初の所信表明演説は、政権交代を成し遂げた首相の政治理念と目指す国づくりを、平易な言い回しで国民に話しかける異例の内容となった。歴代の演説との違いは表現手法だけでなく、所信表明演説ではめずらしい政治家の個人名が登場。
演説でただひとり名前が挙がった菅直人・副総理兼国家戦略担当相との一体感も印象づけた。
鳩山首相は戦後行政の「大掃除」を断行する意欲を語るなかで、税金の使い道と予算編成のあり方を徹底的に見直す必要性を強調。「今後もまた、私と菅副総理のもと、国家戦略室において財政のあり方を根本から見直し、『コンクリートから人へ』の理念に沿ったかたちで、硬直化した財政構造を転換していく」と語った。
首相周辺筋によると、演説に具体的な政治家の名前が出るのは極めてまれなこと。「鳩山総理の(菅副総理に対する)思いの表れではないか。菅副総理とは長年、一緒に闘ってきて、菅副総理に対する特別な思い、期待、連帯感があるのではないか」(首相周辺筋)とみる。
鳩山首相は「後世の歴史家から『21世紀の最初の10年が過ぎようとしていたあの時期に、30年後、50年後の日本を見据えた改革が断行された』と評価されるような強く大きな志を持った政権を目指したい」と大変革に立ち向かう決意を述べて演説を締めくくっている。政権の命運は、政治主導の統治機構の核として発足した「国家戦略室」を担当する菅副総理兼国家戦略・経済財政担当相の実績にもかかっているのかもしれない。
(ロイターニュース 吉川 裕子)
鳩山首相、初の所信表明演説
鳩山総理は、26日召集された臨時国会で就任後初の所信表明演説を行い、「友愛政治」の理念を訴えるとともに、政治主導の新しい政治に転換させる決意を表明しました。
「あの夏の総選挙の勝利者は国民の皆さん一人ひとりです。その一人ひとりの強い意思と熱い期待に応えるべく、私達は『今こそ日本の歴史を変える』との意気込みで国政の変革に取り組んでまいります」(鳩山首相)
演説の中で鳩山総理は、「官僚依存の仕組みを排し、政治主導、国民主導の新しい政治に180度転換させる」と表明。税金のむだを排除することや予算編成のあり方を徹底的に見直して、「戦後行政の大掃除」を行うと訴えました。
また、自らの信念である「友愛政治」については、次のように述べました。
「かつて多くの政治家は、『政治は弱者のためにある』と断言してまいりました。大きな政府とか小さな政府とか申し上げるその前に、政治には弱い立場の人々、少数の人々の視点が尊重されなければならない、そのことだけは私の友愛政治の原点として、ここに宣言させていただきます」(鳩山首相)
一方、自身の偽装献金問題については「誠に申し訳ない」と陳謝し、捜査に全面的に協力していくと強調しました。
鳩山総理は、子ども手当の創設やガソリン税の暫定税率の廃止、高速道路の原則無料化など、マニフェストに掲げている重点政策の推進にも言及しましたが、その財源をどう確保するかについては明確にしないままでした。
また、外交では「緊密かつ対等な日米同盟」を改めて強調しましたが、在日アメリカ軍の再編では、マニフェストに盛り込まれていた「見直しの方向で臨む」という文言が消えました。
今回の所信表明演説は1万2905字で、最近の自民党政権下での演説と比べると、およそ2倍という異例の長さでした。
演説には選挙戦や視察の時のエピソードなども盛り込まれていて、総理周辺は、「総理の思いをできるだけ国民が理解しやすいようにした」と説明しています。(26日TBS)
臨時国会:鳩山首相、所信表明 演説の要旨
第173臨時国会が26日、召集された。鳩山由紀夫首相の所信表明演説の要旨は次の通り。
<はじめに>
「今の日本の政治を何とかしてくれないと困る」という国民の声が政権交代をもたらした。総選挙の勝利者は国民一人ひとりだ。国民の強い意思と熱い期待に応えるべく、国政の変革に取り組む。政治と行政に対する国民の信頼を回復するため、行政の無駄や因習を改め、政治家が率先して汗をかくことが重要だ。官僚依存の仕組みを排し、政治主導・国民主導の新しい政治へと180度転換する。
まず行うべきは「戦後行政の大掃除」だ。「組織や事業の大掃除」として、行政刷新会議で政府のすべての予算や事務・事業、規制のあり方を見直す。税金の無駄遣いを徹底して排除し、行政内部の密約や省庁間の覚書も明らかにする。地域主権型の法制度へと抜本的に変え、国家公務員の天下りや渡りのあっせんも全面禁止する。国家戦略室で税金の使い道と予算編成のあり方を見直す。縦割り行政の垣根を排し、複数年度を視野にトップダウン型の予算編成を行う。個々の事業の政策目標と、それが達成されたか説明できるよう予算編成と執行のあり方を改める。
政治資金を巡る国民の批判は真摯(しんし)に受け止める。私の政治資金の問題で政治への不信を持たれ、国民に迷惑をかけたことを誠に申し訳なく思う。政治への信頼を取り戻せるよう、捜査に全面的に協力する。
<いのちを守り、国民生活を第一とした政治>
政治には弱い立場、少数の人々の視点が尊重されなければならないと、私の友愛政治の原点として宣言する。年金記録問題では集中的な取り組みを行う。医療・介護については、財政のみの視点から費用を抑制してきた方針を転換する。子育てや教育は社会全体が助け合い負担する発想が必要だ。子ども手当の創設などを進める。
<「居場所と出番」のある社会、「支え合って生きていく日本」>
新しい共同体のあり方として、子育て、介護などのボランティア活動や環境保護運動、インターネットでのつながりなどを活用し「誰かが誰かを知っている」信頼の市民ネットワークを編み直す。人と人が支え合い、役に立ち合う「新しい公共」の概念を目指す。
<人間のための経済へ>
経済合理性や成長率に偏った評価軸で経済をとらえるのをやめ、雇用や人材育成の面でのセーフティーネットを整備するなど国民の暮らしの豊かさに力点を置いた経済、社会へ転換させなければならない。子ども手当などで家計を直接応援し、物心両面から個人消費の拡大を目指す。低炭素型産業「緑の産業」を成長の柱として育てる。公共事業依存型の産業構造を「コンクリートから人へ」の基本方針に基づき転換する。
「人間のための経済」を実現するために地域のことは地域の住民が決める「地域主権」改革を断行する。地方の自主財源の充実、強化に努め、国と地方が対等に協議する場の法制化を実現する。
<かけ橋としての日本>
日本が地球温暖化や核拡散問題、アフリカをはじめとする貧困問題など地球規模の課題の克服に向けて立ち上がり、東洋と西洋、先進国と途上国、多様な文明の間の「かけ橋」とならなければならない。地球と日本の環境を守り未来の子供たちに引き継いでいくための行動を「チャレンジ25」と名付け、あらゆる政策を総動員し推進する。
日本を取り巻く海を友好と連帯の「実りの海」にすることは世界全体の利益となる。その基盤は緊密かつ対等な日米同盟だ。在日米軍再編については安全保障上の観点も踏まえ、過去の日米合意などの経緯も慎重に検証した上で、沖縄の人々が背負ってきた負担、苦しみや悲しみに思いをいたし真剣に取り組む。
アフガニスタンに対しては農業支援、元兵士に対する職業訓練、警察機能の強化など日本の得意とする分野や方法で積極的支援を行う。インド洋での補給支援活動は単純な延長は行わず、大きな文脈の中で対処する。
アジア太平洋地域では日本の防災技術などを役立てることが、より必要とされてくる。文化面での交流関係の強化も重要だ。次世代の若者が国境を越えて交流を深めることは相互の信頼関係深化のために極めて有効だ。他の地域に開かれた透明性の高い協力体としての東アジア共同体構想を推進する。
<むすび>
鳩山内閣が取り組んでいるのは「無血の平成維新」だ。官僚依存から国民への大政奉還であり、中央集権から地域・現場主権へ、島国から開かれた海洋国家への国のかたちの変革の試みだ。
つまずくことも頭を打つこともあるかもしれないが、後世の歴史家から「30年、50年後の日本を見すえた改革が断行された」と評価されるような政権を目指したい。私たちの変革の挑戦に力を貸してほしい。
2009.10.26 毎日新聞
私は・・・・・期待したいねーーー!!!
