[東京 27日 ロイター] モータリゼーション普及の起爆剤となった「T型フォード」を米フォード・モーター(F.N: 株価, 企業情報, レポート)社が世に送り出してから約100年。産業界のチャンピオンとして世界に君臨した自動車業界は今、歴史的な転換点に差しかかった。
環境問題の重要性が意識される中、次世代自動車の心臓部はエンジンからエレクトロニクス技術を基盤とする蓄電池に代わるとの見方が強まっている。クルマを取り巻く産業地図が大きく塗り替えられる可能性が高まると同時に、電力インフラやIT(情報技術)ネットワークと融合し、従来は想像もしなかったような新ビジネスが生まれる可能性も指摘されている。自動車、エレクトロニクス、エネルギーなど広大なビジネスのすそ野に波及しそうな一連の動きは、「新・産業革命」と呼べるほどのインパクトを予感させる。ロイターは次世代自動車を中核とした巨大なうねりの一端を3本の記事で紹介する。
<普及台数で電気自動車に水を空けるハイブリッド車>
千葉市(幕張)で開かれている「東京モーターショー」では、ホンダ(7267.T: 株価, ニュース, レポート)が近距離用小型電気自動車「EV-N」を初出展し、三菱自動車(7211.T: 株価, ニュース, レポート)が既に発売済みの電気自動車「i―MiEV(アイ・ミーブ)」をベースにした小型商用車を出品した。トヨタ自動車(7203.T: 株価, ニュース, レポート)のプラグイン・ハイブリッドは12月に国内発売予定で、3時間充電すれば電気のみで20キロメートル走行でき、事実上の電気自動車である点も注目された。
中でも電気自動車に社運をかけている日産自動車(7201.T: 株価, ニュース, レポート)は、前後2人乗りで、カーブで二輪車のように車体が傾く超小型電気自動車「ランドグライダー」や、2010年から日米で投入し年産20万台の量産を計画している電気自動車「リーフ」を展示した。カルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)は19日、都内の外国特派員協会で講演し、「自動車の排気ガスと地球温暖化との間に因果関係があるかないかにかかわらず人々は(排気ガスが)ゼロの車を求めている」と力説、電気自動車に経営資源を集中投下する意気込みをみせた。
しかし、エコカーの主流は当面、ハイブリッド車とみられている。調査会社の富士経済によると、ハイブリッド車の世界市場は2009年見込み68万4000台だが、電気自動車は2010年で3000台程度。2020年の予測でもハイブリッドは375万台まで急増するが、電気自動車は13万5000台程度にとどまる見通しだ。
電気自動車は、搭載する電池が300万円程度と高い上に、現在の電池容量では走行距離が最長160キロ程度(日産「リーフ」の場合)にとどまる。電池の容量や充電施設などインフラの整備が不可欠で普及へのハードルは高い。
このためトヨタは、家庭で充電可能で、ガソリンも併用できるプラグインが「現実的な解」(内山田竹志副社長)との立場。同社の豊田章男社長はモーターショーが報道陣に公開された21日に「短距離は電気自動車、長距離は燃料電池車という住み分けになっていくと思う」と述べ、次世代技術は全方位で取り組む姿勢とともに電気自動車は当面、短距離輸送手段に限定されるとの見方を強調した。
<充電済み電池の交換方式、電気自動車の将来変える可能性>
これに対し、電池に充電するのでなく、充電済みの電池を丸ごと交換するビジネスモデルを提案しているのが米ベンチャーのベタープレイスだ。電池に充電する時間がかかるうえ、電池の容量拡大が今後急速に進むとみられるため、車全体でなく電池のみを交換する方が合理的と判断しているからだ。同社はイスラエルで仏ルノー(RENA.PA: 株価, 企業情報, レポート)・日産グループと共同で事業展開を予定しているほか、日本でも経済産業省の支援を得て、タクシー最大手の日本交通と提携。来年1月から都内で電池交換式タクシーの実証実験を行う。
8月末に自動車・機械向け大容量リチウムイオン事業への参入を表明した三菱重工業も、電池交換式の電気自動車に期待。「ベタープレイスと共同事業化について情報交換している」(福江一郎副社長)ことを明らかにしている。
日本法人ベタープレイス・ジャパンの藤井清孝社長は、15日ロイターの取材に答え「人間が乗る自動車は、パソコンと同じスピードで技術が進化するとは思えないが、(自動車業界も)パソコンやIT業界から学ぶレッスン(教訓)がある」と語り、電池や半導体のように特定の部品の技術進化が急速に進む場合、部品メーカーと組み立てメーカーの分業化が進む可能性を指摘した。
コンピューター業界はCPUとOS(基本ソフト)のメーカー、および組み立ての分業体制が浸透し、組み立て側が付加価値を生みにくい構造ができ上がった。自動車も電動化が進展すると、電池メーカー側に主導権が移る可能性が考えられるからだ。
<攻める電機メーカー>
日産の山下光彦副社長も、20日都内で開かれた自動車関連セミナーで、自動車の電動化が進めば「トランスミッションのような精密機械のような部品が不要になるため、まっすぐな道を進むだけのような(機能の限定された)クルマであれば、参入障壁が下がってくる」と指摘した。
自動車メーカーは、あくまで中核技術を自社内にとどめたいため、トヨタがパナソニック(6752.T: 株価, ニュース, レポート)、日産がNECグループ(6701.T: 株価, ニュース, レポート)、ホンダ(7267.T: 株価, ニュース, レポート)と三菱はジーエス・ユアサコーポレーション(6674.T: 株価, ニュース, レポート)とそれぞれ合弁を設立し、電池技術の内製化を目指している。
東京大学准教授を兼任する日産の堀江英明・EV技術開発本部エキスパートリーダーは、「自動車メーカーは当初ガソリンエンジンに相当する電気自動車のコア(中核)部品はモーターと考えたが、モーター技術はある程度完成されており、電池こそが電気自動車の性能を左右する中核部品だ」と話す。
自動車の電動化が進めば、従来は自動車メーカーの開発分野ではなかった二次電池の大容量化が開発のカギとなり、自動車業界の構造が大きく変わる可能性もありそうだ。
(ロイターニュース 竹本能文:編集 田巻 一彦)
やっぱり、自動車が、気になるネーー!!
アジア好調 ホンダ強気 通期予想上方修正、2年ぶり増益へ
2009/10/28 フジサンケイビジネスアイ
ホンダは27日、2010年3月期の連結業績予想を上方修正したと発表した。最終利益は前年同期比13.1%増の1550億円(従来予想は550億円)となる見通しで、通期での増益決算は2年ぶり。コスト削減効果に加え、自動車販売で政府の支援策の追い風が吹くアジアなどでの販売が、奏功するもようだ。
10年3月期の連結業績について、ホンダは本業のもうけを示す営業利益で前年同期比0.2%増の1900億円(従来見通しは700億円)に、売上高は前年同期比15.6%減の8兆4500億円(従来見通しは8兆2800億円)になるとしている。
上方修正を支えるのは、アジアでの好調だ。政府の購入支援策で「フィット」「シティ」が売れる中国をはじめとするアジア諸国について、販売を従来予想比で7万台上積みした。国内販売も、負けていない。エコカー減税や補助金により、従来比で3万台プラスの68万5000台になると強気の計画を立てている。
アジアと国内を合わせて10万台のプラスだけに、320億~330億円の利益押し上げ効果を見込む。販管費などコスト削減も、約500億円の利益押し上げ効果があるという。
同時に発表された09年4~9月期の連結業績の売上高は、前年同期比28.7%減の4兆588億円。四輪販売が前年同期比15.4%減の160万4000台にとどまったことが響いた。営業利益は同74.8%減の907億円、最終利益が同79.2%減の615億円で、2年連続の減収減益となる。ただ、営業損益は09年3月期の下期の赤字から黒字に転じており、回復傾向にあることをうかがわせた。
今後を左右するのは主要市場である北米販売だが、この日、記者会見した近藤広一副社長は「来年半ばには(回復が)可能」と指摘した。
ホンダを皮切りに、大手自動車メーカーの09年度中間決算発表が相次ぐが、8月の4~6月期決算発表時に上方修正を行ったトヨタ自動車の場合、「固定費削減や原価低減で戦う」(幹部)努力がどこまで反映されるか注目される。
スポーツ用多目的車(SUV)が北米や中国などで好調な富士重工業の場合、すでに4~9月期の業績予想を上方修正。マツダも10年3月期の業績予想を上方修正している。「切り札」となる売れ筋の車種をどれだけ持っているかも、業績回復を占う試金石ともなりそうだ。(山口暢彦)
[東京 27日 ロイター] 自動車メーカーが相次ぎ投入する環境対応車(エコカー)の「心臓部」である蓄電池は、パソコンなどIT機器のデバイスとして使われているリチウムイオン電池が本命だ。
電機メーカーでは、自動車用市場のフロンティアをめぐって、大型化したリチウムイオン電池の増産競争が始まった。電池技術で先行する日本勢は、世界市場で主導的な地位を獲得できる可能性があるが、韓国・中国勢の追い上げは激しい。実用化で先行しながら価格競争に巻き込まれて追い抜かれた半導体や液晶パネルのように、電池がコモディティ化することで、相対的に地位を低下させる懸念もある。
<自動車にリチウム電池の採用が本格化>
ハイブリッド(HEV)自動車や電気自動車(EV)などエコカーにとって、電池の技術が自動車本体の性能そのものとなる。電池の容量が増えればEVの走行距離が伸び、高価な電池の価格が下がれば、EVの値段は普及価格帯に近づくことになる。
エコカーブームをけん引しているホンダ(7267.T: 株価, ニュース, レポート)の「インサイト」やトヨタ自動車(7203.T: 株価, ニュース, レポート)の「プリウス」は、量産実績のあるニッケル水素電池を搭載している。だが、容量やエネルギー密度に優れるリチウムイオン電池が、安全面や耐久性などの課題が克服されつつあって採用が本格化している。世界初の量産EVである三菱自動車(7211.T: 株価, ニュース, レポート)の「アイミーブ」や富士重工業(7270.T: 株価, ニュース, レポート)のEV「プラグインステラ」はリチウムイオン電池を搭載。トヨタが年末に発売予定のプラグイン・ハイブリッド車(PHV)の新型プリウスもリチウムイオン電池を採用する予定だ。
リチウムイオン電池はソニー(6758.T: 株価, ニュース, レポート)が1991年に世界で初めて実用化したのが始まりで、電機メーカーは、小型電池としてノートパソコンや携帯電話などデジタル家電向けの量産化で実績がある。
これに対し、自動車を動かすための大型電池は、小型の家電用電池の数百倍を超える容量が求められる。特にEVの電池容量はHEVの20倍を超える。EVが50万台普及しただけで、家電用を中心とする現在のリチウムイオン電池容量の世界的な規模に達するという。
眼前に横たわる巨大市場に対し、電機メーカーは取り組みを強化している。パナソニック(6752.T: 株価, ニュース, レポート)はトヨタと1996年に共同出資で設立した「パナソニックEVエナジー(静岡県湖南市)」でプリウスにニッケル水素電池を供給しているが、年末の新型プリウスにはリチウムイオン電池を提供する計画だ。
ただ、共同出資会社はトヨタが過半数を握っていることから、パナソニックは独自路線への布石も打つ。買収を予定している三洋電機(6764.T: 株価, ニュース, レポート)はその中核で、家電用の小型リチウムイオン電池で世界シェア首位の三洋は、ホンダと米フォード(F.N: 株価, 企業情報, レポート)に自動車用のニッケル水素電池を供給してきた。フォルクスワーゲン(VOWG.DE: 株価, 企業情報, レポート)のHEVに、リチウムイオン電池を提供する予定となっている。
21日の事業説明会で三洋の本間充副社長は、自動車用電池の戦略は「特定の自動車メーカーと組むことなく全方位でやる」と強調した。パナソニックグループでの戦略について「パナソニックはトヨタと(共同出資を)やっているが、われわれは(日米欧の)複数メーカーとの事業を拡大する。これでパナソニックが拡大できないところを補えるし、グループにとって全方位の販売戦略になる」との考えを示した。
また、パナソニックの電池部門の「エナジー社」は10月、家電用の小型リチウムイオン電池140個を直列・並列につなぎ合わせることで大容量・大出力のEV用電池として応用する技術を開発したと発表した。エナジー社の野口直人社長は「トヨタだけでなく他社にも売っていく」と自動車市場で商機を探る姿勢をみせた。
<GSユアサ、三菱・ホンダ以外にも供給へ>
三菱自動車のアイミーブ向けにリチウムイオン電池を供給しているのが、老舗電池メーカーのジーエス・ユアサ コーポレーション(6674.T: 株価, ニュース, レポート)だ。同社は07年に三菱自動車と三菱商事(8058.T: 株価, ニュース, レポート)と共同出資で「リチウムエナジージャパン(京都市)」を設立し、3つめの工場建設を計画中。12年度末に年産3万台分(同300万個)の生産能力への増強を目指している。
さらに今年4月には、ホンダと共同出資でHEV用のリチウムイオン電池の製造会社「ブルーエナジー(京都市)」を設立した。ホンダのHEVへの供給は来年秋以降で、11年度以降に年産20―30万台(2000―3000個)規模の量産を目指している。
GSユアサの依田社長によると「同じリチウムイオン電池でも、HEV用とEV用では瞬発力や持続力など求められる特性が違う」という。同社は、HEV用とEV用に分かれた共同出資会社2社で、それぞれの技術を蓄積していく考えだ。さらに依田社長は、両社ともGSユアサが過半数の出資であることを強調した上で「三菱自動車やホンダの専属工場にするつもりはない。機会があれば他の自動車にも供給していく」として、日米欧の顧客を開拓していく方針を示している。

