“恐竜企業”イオンの苦悶・消費不振の直撃を受け赤字転落!!?? | 東京リーシングと土地活用戦記

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“恐竜企業”イオンの苦悶

2009年5月13日 Nikkei BP Net

(桐原 涼=経営評論家)

消費不振の直撃を受け赤字転落

 2008年2月期決算におけるイオンの当期利益は28億円の赤字に終わった。主力のGMS(ジェネラル・マーチャンダイジング・ストア=総合スーパー)事業が不振であったほか、経営再建中の米アパレル子会社タルボットが大幅な特損を計上したことが響いた。拡大戦略を推し進めてきたイオンの経営も、大きな壁に突き当たったと捉えることができる。

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 イオンの業績にもっとも大きな痛手を与えたのが、金融危機以降の深刻な消費の冷え込みである。昨秋以降客足が急減するとともに、業界における価格競争が厳しくなり、収益の大幅な落ち込みを招いた。ただし今回の消費不況は、イオンの業績悪化の引き金を引いたにすぎない。イオンはそれ以前から、いくつもの構造的経営課題を抱えていた。

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逆風を受ける巨大SC路線

 イオンは郊外型SC(ショッピングセンター)を戦略の要におき、成長してきた企業である。地価の低い超郊外の敷地に、売場面積数万平米から数十万平米クラスの巨大な店舗と数千台クラスの大駐車場を確保し、その圧倒的な集客力により競合店を“壊滅”させてしまうことがイオンの常套手段であった。
 ところがこの巨大SC路線が、強烈な逆風に見舞われている。その要因の一つが「街づくり3法(大規模小売店舗立地法、改正都市計画法、中心市街地活性化法)」による規制強化である。2006年の法改正により大規模な郊外型SCの新規出店が困難になり、イオンは最大の“得意技”を封じられた。
 第二の逆風がモータリゼーション(車社会化)トレンドの終息である。消費者の車離れの進行とともに、郊外SCの集客力が減退しつつある。
 これらの逆風は一過性のものではなく、長期に渡りイオンの経営の足かせになると予想される。巨大SCを軸とする拡大戦略は、限界に付き当たっているのである。

失速気味のM&A路線

 イオンは創業家の家業であった岡田屋が、同業企業を併合することにより成長してきた企業であり、M&Aは同社の戦略の根幹に位置付けられる。イオンのM&A戦略は、2000年代初頭に経営破綻したマイカルを傘下に加えた時点までは、比較的うまく回転していた。しかしながら最近のM&Aは、投資に見合ったリターンを創出できていないものが目立つ。
 イオンは経営再建中のダイエーの株式を19.8%取得し筆頭株主となったほか、食品スーパー大手のマルエツや持ち帰り弁当大手のオリジン東秀などにも巨額の投資を行った。しかし業績低迷でダイエーの株価が低迷しているほか、各出資先との連携によるシナジー効果創出も十分に進んでいない。
消費者の支持を失った総合スーパー

 イオンにとってさらに深刻な問題は、GMS事業の低迷だ。GMSは草創期からのイオンの本業であり、現在でも売上高の7割以上を占める基幹事業である。ところがこのGMS業態からの客離れが著しい。
 イオン・イトーヨーカ堂など総合スーパー各社が加盟する日本チェーンストア協会の統計によると、全国スーパーの販売高は1990年以降ほぼ一貫して右肩下がりだ。そして2008年度の総販売額の伸び率は、前年比-5%と、過去に例のないほどの大幅な落ち込みとなった。

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GMSは、高度成長期以来の日本の大衆消費を担ってきた小売業態である。しかし消費者ニーズの多様化が進んだ現在、多くの消費者はGMSを見限り、専門店などに流れている。また価格競争力の点でも、GMSはディスカウント系の競合業態に対して劣勢を余儀なくされている。

イオンは今までGMSの客離れに対して、店舗の大型化とSC化により、その流れを押しとどめようとしてきた。大規模SCの核店舗にGMSを置くことにより、GMS自体の集客力の衰えをSCテナントの店揃えまで含めた総合的魅力でカバーしようとしてきたのだ。だがその戦略も、もはや限界に近い。SCに来店する消費者の「目的地」は専門店であることが多く、GMSに足を延ばす消費者は減少している。個性的でもエキサイティングでもないGMSの売り場は、消費者に見放されているのだ。
 GMSの市場が縮小し続けているにもかかわらず、イオンはGMS事業への投資を拡大し続けてきた。それはあたかも勝ち目の薄い戦に戦力を投入するようなもので、「危ない橋を渡る」戦略であったと言わざるを得ない。

崩れた“勝利の方程式”

 これまでイオンがあくなき拡大戦略を追求してきた背景には、“巨大化の誘惑”とでも言うべき誘因があったと考えられる。小売業界では、「規模=競争優位性」と見なされることが多い。特にGMSのような差別性の乏しい業態では、店舗の規模の大きさが集客力に直結する。また商品仕入れの面でも、規模の大きい企業ほど大量仕入れによるコストダウンを図りやすい。安く仕入れることができれば、その分安く販売することもでき、それによって集客力が高まる効果も大きい。
 このような理由から、GMS各社は巨大化競争を繰り広げてきた。イオンは巨大化競争の覇者であり、スケールメリットのうまみを最も強く享受してきた企業である。巨大SCを出店し、その集客力を武器に競合店を圧倒する。さらにSCの大量出店やM&Aにより売り上げ規模を急成長させ、大量仕入れを武器に仕入れ価格を引き下げる。これがイオンの「勝利の方程式」であった。
 イオンの店舗が巨大な集客力と販売力を持ち、成長を続けている限り、この「勝利の方程式」は神通力を発揮した。有力テナントは最優先でイオンSCに出店しようとしたし、商品のサプライヤーは厳しい値下げ要請に応じた。これが店舗の更なる競争力強化につながり、イオンは成長を加速することができたのである。
 ところが現在、郊外型SCに対する逆風が強まり、イオンは大量出店による売り上げ成長が困難になったのみならず、既存店の売上高も低落傾向が強まった。イオンの売り上げ成長は止まり、「勝利の方程式」はうまく機能しなくなった。

膨張戦略の蹉跌

 イオンをあくなき成長に駆り立てたものは、おそらくスケールメリットへの過信であろう。イオンは「勝利の方程式」の成功体験を信じるあまり、成長力の乏しいGMS事業に対し巨額の投資を行い、力ずくで成長鈍化を食い止めようとした。
 イオンは2006年度から2008年度までの3カ年で7700億円の設備投資を行い、そのうちの7割強の5600億円をGMS事業に振り向けている。ところがGMS事業はイオンの事業セグメントの中でも、専門店事業と並び、もっとも利益率の低い事業である。つまりGMS事業の収益性が大幅に高まらない限り、このセグメントへの集中投資はイオンの財務体質を悪化させる可能性が高かったのである。
 GMS事業に掛けたイオンの戦略は、完全に裏目に出た。GMS事業の営業利益率は高まるどころか、2006年度の2.0%から2008年度の1.3%に低下した。GMS事業への巨額投資は十分な収益をもたらさなかったのである。
 この状況を受け、イオンは出店戦略の抜本的転換を進めている。今後の出店の柱は、小型食品スーパーの「マックスバリューエクスプレス」と、コンビニエンスストア型の超小型スーパー「まいばすけっと」になる見込みである。しかしながら食品スーパー業界は既存企業も多く、市場は飽和状態に近い。またコンビニエンスストア型スーパーは、食品スーパーとコンビニエンスストアの間隙を埋める業態として期待されるものの、現時点では「ローションストア100」と「ショップ99」を擁するローソングループに事業展開で後れを取っている。
 大型店から小型店へと事業展開の軸足を移すことは、イオンにとって喫緊の課題と言ってよい。しかしながら、売上高5兆円に達するイオンの事業ポートフォリオを転換することは容易ではない。仮に「まいばすけっと」が成功したとしても、企業収益に対する貢献が見えてくるのは、1000店舗規模の事業展開になってからであろう。だがそれには時間がかかる。

財務の“メタボ”化が進む

 イオンは「生き残るためには規模が重要」との信念のもと、規模拡大に邁進してきた。そして膨大な設備投資を賄うために巨額の資金調達を行い、バランスシート上の資産規模も大幅に拡大した。2003年度末から2008年度末の5年間で、イオンの総資産は1.4倍の3兆7000億円、純資産は2.3倍の1兆1000億円に膨れ上がった。
 資産規模が拡大したにも拘らず、利益水準が低下したため、イオンの資本効率は大幅に悪化した。2003年度に11.5%あったROEは、年を追うごとに悪化し、2008年度には-0.3%まで低下した。


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 イオンは資産規模を急激に拡大してきたものの、新たに積み上げた資産の多くは十分な収益を生まない“不良資産”であったと言わざるを得ない。「体は大きくなったものの増えたのは脂肪ばかり」という具合に、財務の“メタボ”体質化が急速に進んだのである。

“恐竜企業”の苦悶

 近年のイオンは、ひたすら企業としての体格を大きくすることに邁進してきた。イトーヨーカ堂や西友などの同業企業と戦うためには、スケールメリットが大きな武器になった。しかしながら昨年来の急激な環境変化により、消費市場は“氷河期”に突入した。
 環境急変期の小売業には、規模の大きさよりも、小回りの利く戦略が求められる。たとえば消費者の車離れに対応し郊外の大型店から市街地の小型店に軸足を移すことや、日本市場の衰退を踏まえ海外にビジネスの軸足を移すことも、求められる戦略の一つである。しかし巨大化したイオンには、迅速に体勢を変えることが難しい。郊外の大型店につぎ込んだ資本を、短期的に回収することは困難だ。
 “恐竜化”したイオンは氷河期の到来を受け、苦悶しているのである。
脱“メタボ”に向けたスリム化は不可欠

 イオンが再生するためには、脱“メタボ”化戦略が不可欠だ。体のぜい肉を落とすように、収益を生まない資産を切り離し、身軽になる必要がある。今後のイオンは主力のGMSを含め、不振事業のリストラを進めざるを得ないであろう。
 小売業の経営においても、企業の贅肉を増やす過剰投資に対する誘惑は大きく、事業撤退や店舗リストラなどスリム化を図る施策は苦しいものだ。イオンは今、苦しい試練に立ち向かう覚悟を求められている。


桐原涼(きりはら・りょう)
株式会社セレンディップ・ラボ シニアディレクター経営コンサルタントとしての業務の傍ら、ネットメディアにて辛口の経営批評を展開している。ブログ「Critical eye for business—経営の視点/投資の視点—」を公開中。



そう、わたくしも、脱“メタボ”化戦略が不可欠なんです・・・・