アメリカ研修 社員レポート①
アメリカ研修レポート
日本とアメリカの不動産事情の違いついて~「州格差」が示す市場の分断~
この度、9日間にわたるアメリカ研修に参加させていただき、現地の不動産事情や市場に対する考え方を見て、
聞いて深く学ぶことができました。本レポートでは、特に日本の常識が通用しない「州格差」に焦点を当て
調べさせていただきました。
1. 経済環境と日米不動産市場の構造
1-1. 金融政策の転換点と市場の複雑性
研修直前に政策金利が0.25%引き下げられ4.25%となったことは、金融引き締め緩和の兆候です。しかし、高
金利(ローン金利は一時7%台)にもかかわらず、インフレの懸念と地域需要の強さから、住宅価格が一律に
下落するような単純な動きは見られませんでした。
住宅を**「一時的な金利変動を超える長期資産」**と見なすアメリカの購買文化が、根強い需要を支えている
ことが再確認されました。
1-2. 日本市場との構造的違い
日本の市場特性・アメリカの市場特性
住宅概念
「居住する場所」としての消費財的側面が強い。
「居住と投資対象」としての資産形成の側面が強い。
流通構造
新築が約8割(新築戸建ての約65%が建売)と建売住宅が中心。
建売住宅や中古住宅が約6~7割と、リフォーム・リノベーションを前提とした活用が一般的。
2. 現地視察の結論:「州格差」による市場の分断
今回の研修では、フロリダ州からミシシッピー州、ルイジアナ州、サウスダコタ州など、ローカル都市を
中心に広範囲を移動しました。その結果、「大国アメリカの不動産市場は、マクロな金融政策よりも、州
ごとの実態(州格差)に強く左右される」という結論に至りました。
2-1. 生活コストの格差と人口移動の影響
州間の経済格差は、生活コストに直接現れており、これが不動産市場を牽引する最大の要因となっていま
した。この低コスト環境を求めた人口移動が、サウスダコタ州での需要を押し上げています。実際、ここ
数年で1万人近く人口が増加し、新築住宅(50坪前後で3,000万円前後)も多く供給され、価格が金利に逆
行して上昇していました。
フロリダ・デスティン
価格は横ばい~調整傾向。別荘(戸建て、区分)需要は根強いが、災害リスクに伴う保険料の高騰が価格
調整の主要因。
マイアミ
現在は調整局面。
海外資金の流入で急騰した後、金利上昇の影響を受ける。一部の投資家は「仕入れ時期」として捉えている。
ニューオリンズ
底堅く推移。
観光需要および短期賃貸の需要が市場を維持。
サウスダコタ(スーフォールズ)
むしろ価格上昇傾向。
継続的な人口流入があり、マクロな金利環境の影響を受けにくい強い需要が存在。
2-2. 地域固有のリスクと需要構造の多様性
フロリダ州(デスティンなど): 別荘需要は強いものの、災害リスクに伴う保険料高騰という地域固有のリ
スクが市場に影響を与え、価格調整要因となっていました。市場は一枚岩ではなく、都市ごとの人口動態や
地域固有のリスク要因が、マクロ経済以上に価格を決定づけていることを体感しました。
3. 現地から学んだ不動産観と立地価値
「金利は一時的で、下がれば借り換えればよい」「住宅は次のステップに進むための資産」という、合理的
な投資家マインドを学びました。また、立地価値の基準が日本の「駅近至上主義」とは異なり、「低コスト、
自然環境、快適さ」といったライフスタイルの側面が重視されていることを強く認識しました。
4. 日本市場への提言:事業部としての具体的な行動指針
アメリカの「州格差」や「ライフスタイル価値観」の事例は、日本の不動産市場が今後直面する「二極化」
と「価値観の多様化」を先取りする上で重要です。この変化を機会と捉え、以下の具体的行動指針を実行します。
1. 金融情勢の変化に対応する「仲介戦略」の柔軟化
行動指針 具体的なアクション例
賃貸仲介を「最重要チャネル」として強化金利上昇による購入見送り層の賃貸需要を確実に取り込むため、
リソースを賃貸仲介に振り向けます。投資家向け営業を「先行投資」と位置づけ強化価格調整期を「仕入れの
チャンス」と捉える投資家層へ、利回りや資産性に基づいた物件を積極的に提案し、将来的な市場回復に備えます。
2. 「地域特性」と「潜在需要」に基づくエリア分析の高度化
行動指針 具体的なアクション例
「人口動態と生活コスト」を軸にしたエリア分析へシフト
「人口増減」「生活コストの安さ」「外部需要」をデータで分析し、その結果に基づいた将来価値の高いエリア
を顧客に提案します。
地方・郊外の潜在価値を積極的に発掘
リモートワーク普及や低コスト志向を背景に、広さや自然環境に価値を見出す層が増加しています。独自の魅力
を持つ地方・郊外の物件を「ライフスタイル拠点」として発掘し提案します。
3. 「ライフスタイル」と「資産価値」の提案強化
行動指針 具体的なアクション例
築古物件の「価値再生」提案を主力に
リフォーム・リノベーションを前提とした中古物件の仲介を主力に育てます。「コストを抑えて、自分好みの理想
の家を手に入れる」というメリットを伝え、中古市場のイメージ向上に貢献します。
「家族・余暇」基準での住まい選びをサポート提案の軸を「通勤時間」から「広さ、学区、自然環境、趣味との
両立」といった家族や余暇の充実度へとシフトし、コンサルティング型の仲介を目指します。
5. 結論
本研修を通じ、不動産の価値が、金融政策という基準ではなく、「文化、生活様式、そして地域ごとの経済的実態
(州格差)」によって決定されるという本質的な気づきを得ました。
不動産事業部としては、日本の市場においても「ライフスタイル基準の住まい選び」へのシフトを予測し、上記の
行動指針に基づき、事業の多角化と提案力の強化を推進してまいります。