NHLのシーズンが始まりました。
様々な注目点がある中で、シカゴがこの夏のドラフトで1位指名したConnor Bedard(コナー・ベダー)がどんな活躍を見せるかもその一つでしょう。
Bedardはさっそく開幕試合に先発出場し、試合開始のフェイスオフを任されました。
その今季最初のフェイスオフで、レフェリーがパックを落とす前に「Welcome to NHL」と声をかけるという粋な計らい。
さて、このドラフトですが、選手が希望球団を指名する「逆指名」とか、1巡目で複数球団が同じ選手を指名して抽選をおこなうという仕組みはいかにも「優しい」日本らしいと思います。
しかし、そもそもドラフトとは何かを考えたときに、「選手の希望」を考慮する必要があるのだろうかと疑問に思います。
人気があったり、資金があったりするチームに有望選手が偏るのを防ぐために設けられたのがドラフト制度のはずです。
そこに温情を入れてしまっては元も子もない。
選手はある意味「商品」であって、入団先を決めるに際しての「人権」はないと私は思っています。
では、NHLのドラフト制度はどうなっているでしょう。
まず、大前提として、ここには選手の意向や希望はまったく考慮されません。
これはおそらく北米の四大スポーツに共通していることだと思います。
指名されたチームに入りたくなければ、それはプロになれないことを意味します。
冷たく感じるかもしれませんが、そもそもそれがドラフト制度のはずです。
だからこそ、このドラフトを活用することで弱かったチームが強くなったり、その逆が起こったりすることで、その競技全体が面白くなり、発展につながるのだと思います。
一方、ヨーロッパのサッカーは異なる考え方をしているようです。
それは、ヨーロッパ・サッカーの場合はNHLやMLBといったように一つの組織にまとまっておらず、多くの国がそれぞれ独自のサッカー協会を持っており、また選手も国を超えて入団、移籍をするので統一したドラフトやトレード制度を持てないという事情もあるのでしょう。
NHLの最初のドラフトがおこなわれたのは1963年、今から60年前のことです。
日本のプロ野球のドラフトが始まったのが1965年といいますからほぼ同時期ですね。
当初のNHLのドラフトの仕組みはいたって簡単でした。
公式戦の結果の下位から順番に1巡目の指名権が決められていました。
例えば、全部で10チームあったとすれば、成績が最下位のチームが1位指名権、9位が2位指名権を得る、といったように。
その後、様々な変遷を経て、現在の仕組みはかなり複雑になっています。
大雑把に書くと、
1.プレーオフに出場できなかった16チームが抽選で1位から16位の指名権を得る
2.プレーオフに出場したが、勝てなかったチームによる抽選
以下、プレーオフでの成績に応じた抽選によって指名権順位が決められ、スタンレーカップを獲得したチームが、現在でいえば、32番目の指名権を得ることになります。
このようにして決められる指名権ですが、これがトレードの対象にもなります。
例えば、今年(2023年)の第1巡では、アリゾナ・コヨーテズが6位と12位で指名権を持っていました。
6位はコヨーテズ自身の成績によるもので、12位は選手とのトレードでオタワから得たものです。
ドラフト指名権のトレードはその年や1巡での指名権だけではなく、将来のドラフトでの指名権や2巡目、3巡目もその対象になります。
成績が振るわなかったチームとしては、ドラフトの上位指名で有望選手を獲得してチーム強化を図りたいところです。
しかし、上位指名された選手が必ずしもNHLで活躍するとは限りません。
また、活躍するまでに時間がかかることもあるでしょう。
そこで、そのチームとしては、他チームですでに実績がある選手を獲得することで即戦力とすることができます。
一方、強いチームの中には、今はスター選手でも先が見えていると判断すれば、その選手を放出して、代わりに有望な若手を獲得することで、チームの若返りを図りたいと考えることもあるでしょう。
このようにドラフト指名権やトレードをうまく使うことで、チームの強化を図る。
それがGM(Gneral Manager)の腕の見せどころというわけです。
選手とドラフト指名権を含めたトレードで、すべてのホッケーファン、関係者に衝撃を与えたのが1988年8月9日のWayne Gretzky(エドモントン)のトレードでした。
1987-88年シーズンのグレツキーの成績は40得点109アシストで149ポイント、Mario Lemieuxに次いで第2位でした。
2シーズン前の215ポイント(52得点、163アシスト)には及ばないものの、ルミューと並んでまだまだNHLの大スターだったと言って良いでしょう。
このグレツキーを、他の2選手とともにロサンゼルス・キングスに出し、代わりにエドモントンがロサンゼルスから得たものは、選手1人、その年にロサンゼルスがドラフト1位で獲得した選手、1989年、1991年、1993年のロサンゼルスの1巡目の指名権、そして、15億円(1ドル=100円換算)でした。
では、ドラフトで1位指名された選手は実際のところどのような成績なのでしょう。
ここ5年間の1位指名選手の昨シーズンの成績を見てみます。
2022年:Juraj Slafkovsky(モントリオール)フォワード
39試合4得点6アシスト10ポイント
Juraj Slafkovskyはスロバキア出身者で1位指名は初
怪我で1月以降欠場
2021年:Owen Power(バッファロー)ディフェンス
79試合4ゴール31アシスト35ポイント
2020年:Alexis Lafrenière(NYレインジャース)フォワード
81試合16ゴール23アシスト39ポイント
2019年:Jack Hughes(ニュージャージー)フォワード
61試合7ゴール14アシスト21ポイント
2018年:Rasmus Dahlin(バッファロー)ディフェンス
78試合15ゴール58アシスト73ポイント
ポイントは少ないものの、出場試合数を見ると、怪我で欠場した2022年のJuraj Slafkovsky以外はほとんどの試合に出場しており、チームの戦力とされていると考えて良いのではないでしょうか。
また、昨シーズンのポイント上位5人を見てみると、
Connor McDavid(エドモントン)
82-64-89-153
2015年の1位指名
Leon Draisaitl(エドモントン)
80-52-76-128
2014年3位指名
David Pastrnak(ボストン)
82-61-52-113
2014年25位指名、チェコ
Nikita Kucherov(タンパベイ)
82-30-83-113
2011年58位指名、ロシア
Nathan MacKinnon(コロラド)
71-42-69-111
2013年1位指名
5人中3人がそれぞれの年で3位以内の指名、また、David Pastrnakは25位とはいえ1巡目の指名ですから、上位指名。
こうして見ると、ドラフトの上位指名選手はプロでも活躍していると考えて良さそうです。
今年の1位指名、Connor Bedardはどのような活躍を見せてくれるでしょう。
楽しみです。