ホッケーを通じて知り合った友人の一人。

モントリオール在住のキャロル・ロバートソンさん。

 

知り合ったきっかけは1冊の本でした。

ホッケー専門誌の The Hockey News の記事のなかにはそういう本があるということだけで、出版社名もどこで購入できるのかも書いてありませんでした。

その記事は The Hockey News の創立者の一人、ケン・マッケンジー (Ken McKenzie) さんのコラムでした。

そこでそのマッケンジーさんに手紙を書き、その本をどうやったら手に入れられるのかを問い合わせました。

すぐに、といっても手紙のやり取りですから2週間後くらいですが、返事が来て紹介されたのがNHL職員のキャロルさんでした。

そして、早速キャロルさんに手紙を書き、その本を分けていただくことができるかどうかを聞き、それがきっかけでキャロルさんとの交流が始まりました。

毎年グリーティングカード(クリスマスカード)をやり取りする程度のものでしたが、そこにはいつもお互いの近況を書いていました。

 

何度目かのモントリオール訪問のときにキャロルさんに会おうと、当時モントリオールにあったNHL本部の前まで行きました。

重厚なドアの横に「NHL」のロゴ。

そのドアの向こうがどうなっているのか、事前に会う約束をしていないのにいきなり行って良いものか、前もって電話をすると言っても代表電話番号しか知らないし、そこへかけてキャロルさんにつがなるのか、などなど、色々考えてしまい、結局そのドアをノックすることはありませんでした。

 

 

キャロルさんと会ったのは2004年のトロントでのワールドカップのときに、試合の合間にモントリオールを訪れたときでした。

宿泊していたホテルのロビーで待ち合わせました。

それまでグリーティングカードのやり取りでしか知らないキャロルさんはどんな人なんだろう。

若いのか年配なのか、太っているのか細身の人なのか、いろんな想像を巡らせながら待ちました。

そして、時間通りに現れたキャロルさん。

想像通りでもなく、予想外でもなく、綺麗な英語を話す素敵な女性でした。

話をしながらフォーラムまで歩きました。

 

 

フォーラムを見て愕然としました。

かろうじて「箱」はそのままでしたが、外観も内部もまったくかつての面影はありませんでした。

シネプレックスやショッピングモール。

所々にあるカナディアンズのロゴや客席の椅子が飾られていましたが、フォーラムを知る者にとっては懐かしさを感じさせるわずかな残骸ですが、知らない人たちにとっては単なる「飾り」でしかないのではないかと感じました。

 

 

 

キャロルさんと話している中で、私が会社で初心者を集めたホッケーチームを作ったという話をしました。

キャロルさんに私のポジションを聞かれたので、ディフェンスだと答えると怪訝な表情で「何故?体は大きくないのに。」と。

それに対して「後ろ向きに滑れるのは私だけだから」と答えると、ぷっと吹き出し、私に抱き付かんばかりに大笑いしました。

カナダでは初心者でもホッケーをやろうとする人は当たり前に後ろ向きに滑れるのでしょう。

そうでなくても後ろ向きに滑れることはけっして驚くことではないのだと思います。

 

 

ついでに書いておくと、当時のホッケーではディフェンスは体の大きな選手がやることが多かったのです。

それを変えたのが、私の記憶では、ボビー・オア (Bobby Orr) という選手です。

大柄ではありませんが、ディフェンスで、守りながらパックを持つとそのまま相手を交わしながら相手ゴールまで行き、点を取る。

その後、このようなディフェンスが多くなったように思います。

 

もう一つ。

私が後ろ向きに滑れるといっても、ヨタヨタで、とても向かってくるフォワードを抑えられるほどのものではありません。笑

 

そんな話をしながら歩き、お昼を共にしました。

その数時間がキャロルさんと会った唯一の時間です。

しかし、毎年のグリーティングカードのやり取りをしていただけですが、長年の友人のように感じていました。

その後も何年かカードのやり取りをしましたが、ある年から来なくなりました。

一昨年にも送りましたが、住所違いなどで戻ってくるわけではなく、返事はありません。

 

会ったときも決して若くはありませんでしたが、今、どうされているのか。

 

調べようがありません。

ホッケーに限りませんが、スポーツチームには愛称がついています。

モントリオール・カナディアンズ、トロント・メイプルリーフス、バンクーバー・カナックスのように。

メイプルリーフスはその名の通り、カナダの国の木であるメイプルから、カナックスはカナダ人を示す愛称です。

 

カナディアンズ(カナダ人)はそのものですね。

チームのロゴは添付した写真の通りです。

 

 

CのなかのHは何かというとカナディアンズの正式名称はフランス語で”Club de hockey Canadiens”といい、ロゴの真ん中の”H”はこの ”h”です。

カナディアンズにはもう一つ “Habs” (ハブス)という愛称があります。

応援するときも “Go Habs Go!” で、”Go Canadiens Go!” とはいいません。

この “Habs” はフランス語の “Les Habitants” からきています。

これはフランス系の移民者を指す言葉で、モントリオールはフランス系住民が多いケベック州にあります。

そのことから新聞記者が使い始めた略称とも言われています。

私が初めてモントリオールに行ったとき、街ではフランス語しか聞こえて来なかったので、英語すらたどたどしかったので、とても不安に思ったのを懐かしく思い出します。

 

チームの愛称にはさまざまな背景や理由があります。

最も多いのは「強さ」を示す言葉かもしれません。

シカゴ・ブラックホークス(先住民族の名前)、ボストン・ブルーインズ(獰猛な熊)、

フロリダ・パンサーズ(黒豹、凶暴な人)、ナッシュビル・プレデターズ(肉食動物)、タンパベイ・ライトニング(稲妻)、そして、昨シーズンの覇者カロライナ・ハリケーンズ。

 

その地域の産業や文化が由来となっているものもあります。

エドモントン・オイラーズは石油の産地、ユタ・マンモスはユタ州ではマンモスの化石が多く出土するからです。

このマンモスですが ”Mammoth”と単数形になっています。

普通、スポーツチームの愛称は複数形になることが多いのですが、あえて単数形にすることで「チームが一つに団結する」ことを表しています。
ベガス・ゴールデンナイツはラスベガスの夜の賑わいを印象づけますが、実はナイツは “Nights”(夜)ではなく “Knights” (騎士)なのです。

これはラスベガスがあるネバダ州が金の産地であることと初代オーナーの出身大学のスポーツチームの愛称が「ブラック・ナイツ」であることから「ゴールデンナイツ」とされました。

セントルイス・ブルースは説明の必要がないかもしれませんが、「セントルイス・ブルース」という曲をご存知の方も多いでしょう。

愛称ではありませんが、デトロイトのロゴはタイヤに羽がついています。

デトロイトといえば自動車産業ですね。

 

産業ではありませんが、ワシントン・キャピタルズのキャピタル “Capital” は首都という意味です。

 

他のスポーツについても少しだけ。

バスケットボール(NBA)のヒューストン・ロケッツ。

ヒューストンといえば、ロケットの発射基地があることで有名ですね。

ロサンゼルス・レイカーズは「なぜロサンゼルスにレイク”Lake” ?」思いますね。

これはレイカーズはロサンゼルスに移転する前のミネソタ州に湖 “Lake” が多く、ミネソタ・レイカーズだったときのチーム名をそのまま使っているからです。

ユタ・ジャズも同じように移転前のチーム名をそのまま継承しています。

このチームはニューオリーンズにありました。

ジャズといえばニューオリーンズですね。

 

最後にアメリカ大リーグ “MLB” のロサンゼルス・ドジャース。

今、私たちが日々必ずと言って良いほど耳にするチーム名ですね。

ドジャーズは元々ニューヨークのブルックリン地区を本拠地としていました。

当時のブルックリンには路面電車がたくさん走っていてその路面電車 (trolley)をヒョイヒョイかわしながら歩く人たちを “trolley dodgers” と呼んでいたので、チーム名を “Dodgers” にしました。

ついでですが、”dodger” は 「“dodge”する人」、ボールをヒョイヒョイかわすゲームをドッジボールといいますね。

 

スポーツチームのチーム名にはそれぞれ思いが込められています。

調べてみると面白いですよ。

 

最近のトップクラスは14,000,000ドル(21億円)です。

他のスポーツではどうかというと、アメリカ大リーグの最高金額は61,875,000ドル(約93億円)です。

いずれも1ドル150円換算です。

 

ずいぶん差がありますね。

これはNHLにはサラリー・キャップという仕組みがあるからなんです。

サラリー(報酬)に「キャップ」をする。

「蓋をする」とでも訳したら良いのでしょうか。

チームが選手に支払う報酬に上限を設ける制度です。

「上限を設ける」といっても単に、例えば、「一人当たり25億円まで」と金額だけで決めるわけではありません。

 

サラリー・キャップには大きく二つの上限があります。

一つはチームの全選手の報酬の総額の上限。

もう一つは選手個人の上限。

とても単純化した例ですが、例えばチームの総額上限が100、選手一人当たりの上限が20とします。

このときに、全選手が上限の20の報酬だとすると、選手は5人しかとれません。

一人当たり10の報酬だと10人の選手をとれます。

もちろん、こんなに単純ではありませんが、理屈はこういうことです。

個人の上限は絶対金額ではなくチームの総額に対する割合で決まります。

 

このようなサラリー・キャップという制度を導入することの利点は選手が一つのチームに偏らないということです。

そうでないと、資金力のあるチームが金にものを言わせて良い選手を集めることが可能になってしまいます。

サラリー・キャップによって、資金力が小さいチームでも良い選手を取って、強くなり、人気が出て、NHL全体が活性化することになります。

 

また、報酬の多い人気選手の力に陰りが出てきたとき、チームとしてはその選手をトレードに出し、その分の金額で報酬額の少ない将来有望な選手や補強したいポジションの選手を複数とることを考えることもできます。

ファンとしては応援するチームのスター選手がトレードに出されるのは残念なことですが、チームの経営側としてはこうしてチームの力を強くすることを考えることも必要です。

 

こういうことに慣れていない私たち日本人は、こうして選手が売り買いされるようでことに抵抗を感じますね。

スター選手はいつまでも応援するチームにいて欲しい、そして、そのチームで引退して欲しいと考えるのではないでしょうか。

先日、この場に書いたトレードもそうですね。

スポーツを一つの事業、ビジネスとして考えるNHL。

冷たく感じるかもしれませんが、事業だからこそ儲けようとする。

それはチームを強くすることに他なりません。

かつては公式戦82試合のうちわずか8勝しかできなかったワシントンは今では優勝するまでのチームになりました。

また、モントリオールやトロントといった寒い地域が中心に行われていたホッケーが、常夏のフロリダや灼熱のアリゾナにまでチームができ、しかも優勝したり、優勝を争ったりしています。

 

伝統のあるモントリオールを応援する身としては寂しい部分もありますが、NHL、ホッケーが一部の寒い地域だけでなく、北米全体に広がり活況を呈することは嬉しくもあります。

 

それでも、やはりモントリオールに優勝して欲しいという気持ちに変わりはありませんけどね。

 

(写真は本文と関係がありません)

私が手に入れた最初のNHLの本です。

この本でNHLにはどんなチームがあり、どんな選手がいるのかを知り始めました。

まさにNHLへの1ページ目を開きました。