しばらくすると、ダーリンが帰って来た。

ダ「調子は、どう?」

私「ダーリン・・・ごめん!!」

ダ「え・・・」

私「本当、ごめんなさい!!

  私、無理です」

ダ「って、まだ一日しか行ってないじゃないか(^_^;)

  体だって徐々に慣れて行くって」

私「ごめん、本当にもう無理。

  行きたくない!!!


これから冬が始まる。

もっと寒くなる。

もっと体が辛くなる。

もっと体が重くなる。

体を壊すのは必至だった。


ダ「でも・・・」

私「ごめん・・・・・」


ダーリンは一瞬黙って、言った。


ダ「辛い思いをさせて、ごめんな・・・」


ちょっと自分が情けなくて泣けてきた。


もう少し暖かい時期に、アイドルタイムに仕事を教えてもらい、慣れてきたらピークタイムに持っていくというやり方をすれば良かったのかもしれない。

休日の昼間を使ってアルバイトに行けば良かったのかもしれない。

今回は、仕事が悪かったのではない。

私が自分で、無謀なタイムスケジュールを組んだのが敗因だ。

自分の器の小ささを実感できた。

もし、資金が溜まってカフェを経営する運びとなったら、今度は会社を辞めて時間のゆとりを持って取り組もうと思う。



仕事の休憩時間中に爆睡したせいか、薬を飲んだせいか、帰り際には元気になった。

21:00、帰宅するとママが心配そうに出迎えてくれた。


ママ「体調はどう?大丈夫なの?」

私 「ようやく大丈夫になりました」

ママ「でも、昨日の感じだと疲れ切っちゃって・・・続けられるの?」

私 「・・・・・・・・情けないこと言いますけど、無理かも知れないです・・・・・・・・・・」

ママ「そりゃそうよ。歳取ってないって言ったって、若くはないんだから・・・。

   ましてや、あんな真夜中から起きて働いて本業に行って、何もできないまま

   帰って寝るだけの生活なんて、面白くも何ともないじゃない。

   情けないかもしれないけれど、無理だってことが分かったんだもの、

   それも一つの大きな成果だわ。

   そう思わなくちゃ」

私 「そうですね・・・でも、いつまでやろうかな・・・」


しっかり挫折した私は、もうバイトを続ける気力がなくなっていて、どうやって電話しようかなってことばかり考えていた。

D店には、本当に申し訳ない。

私のせいで、無駄な人件費を使わせてしまった。

登録費や制服代だってかかっているだろうし、いろいろと無駄なことをさせてしまった。

ダーリンにも、申し訳ないと思う気持ちでいっぱいだった。

結局期待に応えられなかったし、がっかりするだろうな・・・。


ママ「やっぱり、飲食って厳しいのね。

   朝早くから夜遅くまで、走り回って働いて、寒い中でも半袖で笑顔で元気でいなくちゃいけないじゃない?

   それなのに、あんな安い値段で儲かってるのかね?

   って思うわよ」

私 「まぁ・・・儲かってないみたいですけどね・・・」

ママ「それなのに、どうしてあの子はカフェの経営なんてやりたがるのかしら?

   うまくいかないってB店のオーナーさんだって言ってたんでしょう?」

私 「そうなんですよね・・・でも、自分たちの手でまだ何もやっていないから、

   少しもがいてみようかってことになったんですよ・・・」

ママ「どうせ、カフェドリームで働いてて楽だからこっち本職にしちゃえみたいな安易な気持でしょうよ。

   働くのと経営するのは全く別だからね・・・

   あの子、絶対わかってないと思うわ!」

私 「借金作って経営難に陥って人生危うくするよりは、普通にカフェドリームの社員として働いてもらうべきなんでしょうかねぇ・・・

   そうすれば、借金は抱えずに済むし、好きな仕事をしてもらえるし」

ママ「私はその方が良いと思うわ!

   何にしても、体が資本なんだから、無理はしないことよ。

   体壊して本業の方まで影響でたら、生活していけなくなるわよ」

私 「そうですよね・・・」

翌日のコンディションは、最悪だった。

9時間も寝たのにもかかわらず、疲労は抜けなくて、頭がくらくらした。

寒くて寒くてたまらなかったし、

頭痛もするし、のどは痛いし、微熱もある。


私、弱すぎ!!!!!!


その後、本業に出勤したが

頭がぼーっとしていて、仕事にならなかった。

頭痛と咽頭通を感じながら、思った。


これは、まずいんじゃないの・・・?


やっぱり、ただ早く起きるだけと早くから働くのでは意味合いが全く違う。

私のようなぬるま湯につかったような生活をしていたものが、いきなり戦場に行ったって体を壊すだけなのかもしれない・・・。

本業も副業も中途半端になるな・・・。


くらくらする頭で、1日辞めることばかりを考えていた。

でも、続ければ倒れることだけは確実だった。

ダーリンにも申し訳ない。

D店には迷惑をかけて・・・合わせる顔もない・・・。

一度できると言ったことをたった1日で撤回するなんて、非常識すぎるよね・・・。

でも、1カ月とか2カ月とか続けるくらいなら、すぐに辞めた方がお互い傷は浅くて済む。


違う時間帯だったら―――――

もっと暖かい時期だったら――――――――

忙しくなかったら――――――――

いろいろあるけど、もう私の気力はなくなってきていた・・・・・・。


慣れていない仕事をしたせいで、精神的に疲れたのと同時にある程度の達成感を覚えた。

私ってば、意外とやるじゃない♪

沢山走りまわって動いたせいで、頭も爽快だった。

集中力が高まったかも!!


しかし、事態はそう甘くなかった。

15:00頃、急激な疲労感が私を襲う。

6:00から8時間勤務で働いたら、この時間が終業時間なのだ!!!

最近、残業も何もしていない私はどうやら8時間きっかりで疲れる体になったようだ。

17:30ごろ、倒れそうに眠くなってくる。


私 「休憩行って来て良いですか・・・?」

店長「あ、どーぞぉ」

そして、爆睡。


19:00頃からまた倒れそうに辛くなって来た。

仕事どころじゃない!!!

頭も痛くなってきたし、目が痛い。

普通の眼精疲労からくる頭痛って、眼の奥から視神経のあたりがずきずき痛み後頭部に痛みが走る感じが多いのだが

今回は、眼球が外に破裂しそうなイメージがした。

ウチから外に向かった痛みだ。

激しいドライアイも感じた。

こんなおかしな感覚は初めてだった。


20:00に終業すると、一目散に帰宅した私。

立ちながら眠ったのも久しぶり。

家に帰ると、ダーリンやママが心配そうに迎えてくれた。


「どう?大丈夫だった?」

「イエ…ダメです・・・」


ダーリンは休日でご飯を用意してくれていたが、眠すぎてあまり食べることができなかった。

2~3口食べて、眠りに落ちた。

危険なので、食事はやめて倒れるようにして眠った。


4:30は、本当に未知の世界だった。

5時間半の睡眠時間だったが、緊張していたせいか、早起きの練習の成果か、割とすんなり起きることができた。

数時間前までダーリンが起きていたせいもあって、部屋は暖かくそこまで辛くなかった。

しかし、外はやっぱり風邪が冷たくて12月!!?って感じのいでたちで出勤した。

朝は普段トイレが近い私ですが、この日は不思議と全然行きたくならなかった。

体が全然目覚めていなかったせいなんだろうか?


D店に着くと、もう灯りはついていた。

3階の事務所に登って行くと、男性社員が働いていた。

あいさつを済ませ、制服を受け取り、着替えをした。

制服は、半袖のシャツと長ズボン。

ズボンと表現するのが適していそうな素材感。

社員「ズボンは裾上げ自分でしてください。

   今日は、とりあえず別の人の制服適当に使って」

着替えをして、1階に降りると女性アルバイトが2名出勤していた。

朝はギリギリに来て、私服で準備をし、荷物を持って上にあがり着替えて降りて来て、オープンを迎えるってのがやり方らしかった。

社員「俺、新人さん教えるから二人で準備してて」

社員さんは、早口で雑巾の場所や掃除の個所やら看板の置き方やら説明してくれる。

早起き過ぎて頭がフル稼働していなかったのと、早口で理解しきれなかったのと、半袖シャツ1枚で11月の朝に外に立たされる寒さとで、訳が分からなかった。

っていうか、寒い!!!

ユニクロのヒートテック(キャミソールタイプ)を急いで買ったけど、半袖のシャツだもの、やっぱり寒い!!!


掃除の説明が終わり、カウンターの中の簡単な説明やら食器の種類やらを教えてもらった。

私が担当するポジションは、洗い物!!

食器を洗って、食洗機に入れ、食器をしまう担当だ。

食洗機を使っている間に、雑巾などを洗ったり、洗い終えた食器やトレーを拭いたりもする。

っていうか、お湯って出ないんですか!!!

水の蛇口しかない!!!!

しかも、文句言える雰囲気じゃない!!!

そして、雑巾の漂白・・・・・・・って・・・

思いっきり塩素入っているけれども・・・

素手ですか!!!!!


私「あの・・・これ・・・素手で触って平気なんですか・・・?」

社員「は!!?」

その眼は、当たり前だろ!?と物語っていた・・・。

ダーリンの働くA店では、みんな手袋使っているんですよ~~~。

社員「・・・・・・手とか、弱いんですか?」

私「え・・・ええと・・・大丈夫だと思います」


オープンすると、お客さんが一気に押し寄せた。

あっという間に店内はいっぱいに。

こんな世界があるなんて、今まで全然知らなかった。

5~6分すると、ドリンクを飲み終えたお客さんが食器を下げに来た。

意外に回転が速く驚いた。

急ぎながら洗っていると


社員「1階のお客さんは、洗い場近くに下げてくれるけど、2階のお客3分の食器は2階にあるままだから、取りに行ってください。

   帰って来る時に、2階席がどれくらい空いているかチェックして教えてください」


食器を洗って、食洗機にかけて、その合間に2階に食器を取りに行ってテーブルを拭いて、1階に戻って食洗機から食器を出して・・・

何度繰り返したことだろう・・・・・・。


女性バイト「もっと急いで!きびきび動いてください!!」

私 「はいっ、すいません!!」

社員「平日の朝は、出勤前のサラリーマンたちが一服しに来るから忙しいんだよ。

   もっと自主的に動いてくれないと、困るな!!」

つーか、一生懸命動いているんですけどぉぉ・・・・!!!


あっという間に、9:00。

私の代わりに別の方が出勤した。

ここの店は、朝と昼間がピークタイム。

そんな忙しい時間帯に、私みたいな訳の分からない人が一人いて、足手まといもいいところだったと思う。

みんながイライラしていた。

申し訳ないという気持ちでいっぱいだった。


代わりの人が来たという事で、社員は事務仕事に移った。

社員「みんなこの仕事の忙しさに面喰っちゃうんだけど、どう?

   続けられそう?」

私 「がんばります・・・」


女性アルバイトも一人休憩に来ていた。

私 「すごく忙しいんですね、びっくりしました」

女性アルバイト「これでも、社員さん入ってくれたから全然楽ですよ?

          普段なんてもっと忙しいんだから」


やるんだったら、もっと周りに迷惑を掛けないアイドルタイムに入れば良かった・・・。

何だか後味の悪い初日。

早く慣れないと・・・。

着替えを済ませ、本業の方に向かう。

前日、

21:00に帰宅し

21:30から入浴。

22:30にはお風呂からあがり、翌日の持ちものなどを準備。

23:00には寝る準備ができた。


しかし、一つ甘く見ていたことがあった・・・。

それは、電車のダイヤのことだ!!

ウチからD店までは普通に電車が走っていれば、10分くらいで着く。

なので、

5:45分に家を出て

5:55に店に到着。

6:00から働き始める

といったイメージだった。

しかし、電車が5:40と5:55しかない・・・。

5:55の電車に乗れば、

5:59に到着と言う危ないことになる。

いくら、ギリギリに来ていいよ、と言われても程がある・・・。

そうすると、

5:40の電車に乗らねばいけない。

逆算すると

5:35には家を出て

4:45には確実に動けるようにしておかないと。

なので目覚ましは4:30だな・・・・・・。


4:30か!!!!!



きっついなぁ・・・・・。

いよいよ5時起きのシュミレーションをしてみた。

5:00――――――――。

それは、未知の世界だった。

空も真っ暗で、静かでみんな寝てる。

そんな中で起きるって言うのは、なんだか不幸な気持になった。


45分で、化粧をして着替え、髪を整えなくてはいけない。

化粧をしようとして気付く。

化粧台は寝室に置いてあったが、真っ暗で何も見えない。

電気をつければ、2~3時間前に寝たばかりのダーリンの安眠妨害をしてしまう。

しかし、電気をつけないと何も見えない。

そして、恐ろしく寒い。

これは、別の部屋に化粧品を持っていき、明るく暖かい場所を作らないといけないな・・・。

とりあえず、オレンジ色の電球をつけ、ほとんど見えない状態で化粧をする。

服を着替え、髪を直し、ギリギリ45分。

着る服も、持ちモノも前日に用意しないと間に合わないな・・・。

シュミレーションすることで、いろんな事がわかって来た。


この日は、出勤までの6:00から10:00までの4時間で部屋のレイアウト変更などをしてみた。

これで、ダーリンも私も安眠妨害することなく快適に過ごせるはず!!!

いよいよ明日は、初出勤!!!


制服ができるまでの約5日間、私の早起きシュミレーションはどんどん精度を上げていた。

何とか、6:00に起きれるようにまでなった。

しかし、6:00に起きるのではない。

6:00から働くのだ。

もう少し早く起きなければ。


6:00に起きれるようになると、家事以外にもパソコンで遊ぶゆとりも出てきた。

早起きすると、自然に夜も寝つきがよくなった。

今まで寝起きが悪かったのは、もしかすると夜型の生活を送っていたからなのかもしれないな。

気持ちも清々しかった。


しかし、得るものがあれば失うものもあった。

それは、ダーリンとの会話。

というか、ダーリンと会えなくなった……。


【我が家のライフスタイル】


6:00 私起床・ママ起床

7:30 ママ出勤

9:30 私出勤

10:00 ダーリン起床

11:00 ダーリン出勤

21:00 ママ帰宅・入浴

21:30 私帰宅・夜ごはん

22:00 私入浴

23:00 私就寝

23:15 ダーリン帰宅・夜ごはん

23:30 ママ就寝

26:00 ダーリン就寝


てな感じで・・・

朝と夜、ママにはちょっと会って話ができるんだけど

ダーリンは寝顔を見るのみ・・・。


何だか寂しいなぁ~・・・。


店長「では、事務所の方にご案内します」


D店の面接に行ってきた。

実は、私ってばアルバイトの面接って初めてかも!!!

今までやってことがあるのって、応募すればだれでもって感じのところばっかりだったし・・・。

2階建てだと思っていたD店は、3階が事務所になっていた。

従業員用の扉を開けると・・・・・・


そこは、ものすごく薄暗い倉庫だった・・・・・・。


汚いな・・・。


いかにも掃除してなさそうな床。

モノはあちこち乱雑に置かれ

従業員が座って休憩をするのであろうテーブルとイスには、

かばんやら着替えやら文房具や書類や食べ物が適当に置かれていた・・・。


良いのか・・・?飲食店なのに・・・。


とにかく、働いてみれば掃除してキレイに片せるかも知れないし。

気を取り直して面接に挑む。

最近早起きができるようになってきた私は、根拠のない自信に充ち溢れていた。


店長「この時間帯って欲しかったので助かります!

   でも、朝早いですよ?

   他に仕事もされているという事で・・・大丈夫ですか?」

私 「はい、大丈夫です!!」

店長「では、採用です!!

   制服が届き次第シフトに入ってもらおうと思いますので、頑張ってください!」

私 「はい、ありがとうございます!!」


面接はあっさり終わった。

D店は賑わっていて、活気に満ちていた。

お客様から愛される、良いお店だな♪

少しずつ少しずつ、朝方の生活へシフトしている私。

一応、7時間は睡眠時間をキープしつつずらしています。


一番難しいのは、「早く寝る技術」。

家に帰ると、様々な誘惑が待っている。

テレビ・パソコン・ケータイ・ダーリンとの会話。

様々な誘惑を断ち切り、すぐにご飯を食べ、すぐにお風呂に入るのだ。

そして、早めに寝むり早めに起き、出勤前の時間に家事をしている。


まだ朝は眠たいので、体も動かないし頭はもっと動かない。

アイロンがけや食器洗いなど

あまり頭を使わないですむ仕事は最適だった。

部屋もなんだかきれいになって来た。


7:00に起きれるようになると、気分がよい。

朝って、こんなに爽やかなものなんだ♪って、初めて知った気がする。

このくらいに起きると、出勤前に洗濯や食事の準備ができる。


私って、結構やればできる子だな・・・。

段々気分がよくなって来た!!