コーチの名和です。
これは何をやっているのかわかりますか?
選手が手に持っているのは、水まきに使用する
「ひしゃく」です。
最近はほとんど見なくなりましたが、初詣などで神社に行くと、
参拝前のお清めをする水のところにおいてあるのを確認しました。
この場所の正確な名称は私も知りません。
この練習は元愛工大名電高校野球部監督の中村監督が考案した
練習方法です。
どのような選手に効果があるのか説明しますと、
ドアースイングになっている。
インパクトポイントが近い。
スイング時に脇があく。
腰の回転に対してバットのヘッドが遅れて出てくる。
身体の開きが早い。
インパクトですでに腰が廻りきっている。
などの修正に役立ちます。
メジャーリーガーのイチローも毎晩、室内練習場で黙々とこの練習を
したというエピソードもあります。
ひしゃくは100均でプラスチック製のものが売っているので、
それを購入してきました。
水を入れる部分は少し角度が付いているので、ライターの火で
あぶってプラスチックを柔らかくし、柄の角度に合わせて
ストレートにします。
そして、水を入れる部分にボールを一つ入れ、
バッティングのトップの位置までボールを入れたひしゃくを
振り上げ、それから腰の回転と共にひしゃくを振る。
正しい角度で振るとボールはピッチャー方向に発射されます。
ドアースイングで腕が大回りしたり、下半身を使わずに腕だけで
ひしゃくを振ると、ボールは横方向に飛んでいきます。
また、インパクトで腕がしっかり伸びていないと、この場合も
ボールは横方向へ飛んでしまいます。
バッティング前にこの練習をし、正しくピッチャー方向に
ボールが飛ぶようになったらマシンを使ってバッティング練習を
始めます。
例えば、ドアースイングを修正するのに、口頭で注意するだけでは
上手く伝わらず、なかなか直りませんが、この練習をさせることにより
グリップが身体近くから出るようになり、いわゆる最短距離で
インパクトまでバットを出す練習になります。
「バットの出し方はこうだよ」
と、手を取って教えても、なかなか上手くできるようになりませんが、
ひしゃくとボールを使えば一人でも数をこなす反復練習ができます。
上手くできているかどうかは、ボールが飛ぶ方向を見ればわかるので、
いちいち注意しなくても
「どうしたらピッチャー方向に真っ直ぐ飛ばせるか」と、
自ら考え、腕の出す角度、腰の回し方などを微調整しながら
練習できます。
何度も練習して行くうちに、ボールが真っ直ぐ飛ぶようになり、
ひしゃくからバットに持ち替えさせてスイングさせると、
理想的なバット軌道のスイングが出来上がっています。
この練習は見ているとバカバカしそうな練習ですが、
真っ直ぐボールを飛ばすのは、実際にやってみると難しいですし、
それができるようになった時の効果は絶大です。
クセのあるフォームの選手は、恐ろしいことに真後ろにボールが
飛ぶので、周りに注意が必要です。
この練習を自宅でも繰り返し練習したこの選手。
中学硬式チームの選手ですが、ひしゃくから放たれたボールは
いきよい良くピッチャー方向に真っ直ぐ飛び、理想的な
バッティングとなっています。
何を身に付けるにしても、正しい方法で数をこなす反復練習が
必要です。
練習嫌いが大成しないしないのは当然といえます。
元愛工大名電高校野球部監督の中村監督は、
例えばバッティングフォームを修正する時、
スイング全体を見て
「もっと前で打て」
「もっと下半身を使って打て」
「バットのヘッドを下げるな」
などと注意をしますが、
「前で打てるようになるための練習」
「下半身を使って打てるようになるための練習」
「バットのヘッドを立てて打てるようになるための練習」
を自ら考案し、選手たちにやらせます。
バッティングには腕(手首、肘、肩)、腰、足(もも、ひざ、足首)
など細かなパーツの動きがあります。
それぞれのパーツの動きが正しくないとバッティングは上手くいきません。
そのためにはバッティング全体でなく、
手首を上手く使えるための練習
肘を上手く使えるための練習
肩が上手く回せる、使える練習
など、パーツごとの練習をさせ、それが組み合わさると
火を噴く打球、オーバーフェンスする打球が
打てるバッターが完成します。
スクールでもこのような練習方法をとっており、
今回ご紹介した「ひしゃく」の練習もその一つです。
ひしゃくでボールを真っ直ぐ飛ばせるようになると、
インコースに食い込んでくる速球も怖くなく、難なく打てるように
なります。
バカバカしそうな練習に見えますが、バカになって試してみることも
大切です。
さあ、一緒にバカになって練習しましょう。