Count Basieのレコードは、大音量で楽しもう。 | 続・公爵備忘録

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ジャズ・オリジナル盤の音質追及とエリントンの研究。

レコードを再生する時、どれくらいの音量で鳴らしていらっしゃいますか?

筆者は楽器本来の音を基準として、トランペットやサックスが出せる音量を目安にしています。

なので、ピアノトリオを再生する時の音量と、ビッグバンドを再生する時の音量は大きく違う。

ビッグバンドは大音量で鳴らしたい。それが本来の音だと思うので。オーディオ好きの方なら、ご理解いただけると思います。

でも残念ながら、筆者の場合は昼間だけ。夜中に大音量で鳴らすことは、我が家のオーディオ部屋ではムリ。集合住宅にお住いの方はもっと神経を使うでしょう。でもビッグバンドは出来る範囲で、音量を大きくして楽しんで頂きたい。

今日はベイシーのレコードでそのお話をしたいと思います。



ニュー・ベイシーを代表するレコード。

1956年スウェーデンでのライブ音源ながら、翌57年のイギリス公演を盛り上げるために、In Londonというタイトルにされたらしい。ビジネスマンのNorman Grantzらしい発想ですね。

スェーデンは熱心なジャズファンが多いお国柄(と言ってもロックやポップスと比べたら少ない。あくまで他国との比較の話です)で、ベイシー楽団は聴衆と一緒に盛り上がって、とびきりの熱い演奏になっているところが素晴らしく、この録音が採用されたのだろうと推測します。

 

 

音質的には特別優秀とは言い難いですけど、雰囲気が良い演奏で、願わくば体が音でシバかれるような音圧で体験して欲しいです。





ニール・ヘフティの作編曲が切れ味バツグンで、どんどん音量を上げていきたくなる。内容・音質共にすばらしく、これぞ名盤。

ただ筆者は聴き過ぎたせいか、食傷気味。現在は5年に1回聴くかどうか。

目下の関心はステレオ盤。所有のモノラルは素晴らしい音だけど、ステレオを聴いてみたい。モノラルだとホーンとリズム陣の音量が巧みに操作されていて、場所によってピアノが大きすぎて、ホーンの音量が足りないと感じる部分がある。特にサックスの合奏部分。ステレオ盤はどのようにマスタリングされているのか、ぜひ聴き較べてみたい。

 

 

このYouTube動画はリマスター音源なのに、モノラル。

 

 



所有盤はセカンドジャケ。ピカ盤なのに1500円だった。DUさんはセカンド以降になると非常にお買い得。オリジナルのCLEF盤で同程度のコンディションなら8千円以上かも。

CLEF/NORGRANはプレス毎に限定生産。再プレスするときはタイトルを変え、ジャケットを変え、再カッティングする。材料を使い切って在庫を持たない。これがNorman Grantzのやり方で、ビジネスとしては合理的。ブルーノートが常に材料を持っていたのとは対照的だ。アルフレッド・ライオンはレコード制作をビジネスとして考えていなかったことを再認識させる。

所有盤はオリジナルとはカッティングが違うので、音質に言及するのはどうかと思うけど、一応触れておくと、ホーンとリズムのバランスがよくて、オーケストラらしい音を楽しめる。1954年の録音で、50年代後半のAtomic Basieみたいなハイファイではないけど、ベイシーらしさは堪能できる。




SESACはラジオ放送用の素材としてレコードを提供したレーベル。わたくしCotton ClubはSESACのレコードを片っ端から集めた時期があって、その頃ebayで入手。

 

60枚か70枚位集めたところで断念しました。ドルフィーが入ったChico Hamiltonとか、ズートが入ったWoody Hermanとか、コレクターズアイテムは良いとしても、内容がつまらない物が多すぎる。今は本盤を含めて10枚位に絞っています。

 

なにより、ラジオ番組を作るための素材なので、演奏時間が短い。だいたい2~3分。このベイシー盤も同様で、1曲は2~3分。物足りなさを感じる人は多いかもしれない。

 

 

ただ、あっさりしていて、聴きやすいという特徴もある。この辺は好み次第でしょうね。

 

 


1950年代初頭はバンドを縮小していたベイシーが、オーケストラを再編成して出した最初の10吋LP。ニュー・ベイシーの出発点みたいな位置づけのレコード。

 


ベイシー楽団らしい合奏は聴けるものの、マスタリングの焦点はソロイストに当たっていて、モダンジャズの影響を感じる。

オーケストラとしては中途半端な感じだけど、音質的には非常に素晴らしく、1952年のLPとしては最高レベルの高音質。EmercyのLPで有名なYMGスタンパーなので、Joe NewmanやPaul Quinichetteのソロを、大音量で楽しんでほしいレコードです。


ニュー・ベイシーはこれくらいにして、次からオールド・ベイシーのレコード。

オールド・ベイシーとは1930~40年代、特にLester Youngが在籍した30年代のベイシー楽団を指す言葉で、“ニュー”ベイシーが誕生してから、後で名付けられた表現。後付けではあるけど、分かりやすい表現だと言えましょう。

オールド・ベイシーにはBuck ClaytonやLester Youngのようなスターがいて、ソロも魅力的だけど、演奏のハイライトは合奏部分にあって、分厚い音のカベがグイグイ迫ってくる迫力がサイコーです。


オールド・ベイシー時代は米DECCAの録音が多く、もちろんオリジナルはSPです。

LPはどれもSPを編集したもので、厳密にはどれもオリジナルではないですけど、70年代以降に編集されたベスト盤はオススメしません。願わくば50~60年代の米盤を入手なさってください。

 

 

理由は二つあって、まず音が良いこと。盤質が良ければ、ですけど。70年代以降の編集盤より生々しい音がする盤が多いです。次にアルバムの個性があること。どれも編集者の意図が入っていて、聴かせる内容になっている。70年代以降のベスト盤には個性が欠けていると思います。


米DECCAの音源を編集したレコード。この時代、BruswickはDECCA傘下でしたので。

上掲のDECCA盤とは2曲ダブっているけど、どっちも魅力的なチョイスで選曲されてます。




これはオールド・ベイシーの中で、個人的にお気に入りの1枚。

 

 

音は素晴らしく良いし、ジャケ写真のベイシーはカッコいいし、内容はレスターのソロがいっぱいだし。

 

オリジナルでも3~4千円でキレイな盤が入手可能なので、オールド・ベイシーを聴いてみよう、と思った人にオススメ。




最後にオマケ。


この10インチ盤はFreddie Green, Walter Page, Joe Jonesという黄金のリズム陣をバックに、ベイシーを加えたカルテットのレコード。オリジナルは5枚組SPアルバムで、全10曲中8曲がこのLPに選曲されている。

わたくしCotton Clubはこのレコードが大好きで、オールド・ベイシー時代のレコードの中で最も愛聴している。オーケストラ演奏ではないので、あくまでオマケ。