Hendrix In The WestのCDは素晴らしいけど、LPレコードの魅力も捨てがたい | 続・公爵備忘録

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ジャズ・オリジナル盤の音質追及とエリントンの研究。

ジミ・ヘンドリックスの未発表音源やリマスターCDは、死後50年以上経過しているのにどんどん出てきて、しかも音質的に素晴らしいものが多いけど、LPレコードには違った魅力があるというお話。



アマゾンでお買物していたら、Jimi Hendrixの新CDがオススメに出てきて、また新たに未発表音源が発掘されたと知って早速購入した。



1967年のライブ。今までに発表された1967年の音源は少なく、しかも音が良くないものが多いので、新CDには興味深々。とにかく聴いてみたかった。

英国で大ブレイクしたあと、米に凱旋してママス&パパスの前座として演奏した時の録音で、ジミは全開の演奏。演奏が始まると歓声は少しだけ。ママス&パパスを聴きに来たファンたちのビックリ仰天が伝わってくる。

 


67年の音源としては、音質はまあまあ、と感じた。解説を読んでみたら、ジミヘン作品のマスタリングで有名なエディ・クレイマーのプロデュース。こんな良いものがまだ眠っていたのなら、今後さらに良いものが出てくるかも。ワクワクするね。

67年のジミヘンで一番オススメするのはBBCライブ。BBC音源は色んな形で世に出たけど、これが決定版。なにしろ67年物では一番音が良い。




最近はアマゾンだけでなく、お買物サイトはAI技術を使っていて、利用者が買いそうなアイテムを次々に紹介してくる。

ジミヘンのCDに興味があると判断したらしいAIは、次にMachine Gunというタイトルのライブ盤を表示してきた。Fillmore Eastでのライブ盤。



25年くらい前にLive at Fillmore EastというCDが出て、メチャ売れたけど、69年12月31日と70年1月1日の計4回のステージから選曲されていた。今回の新作は69年の1st Showを演奏順に収録しているという。もちろんポチった。

届いた新作と以前から持っているCDを比較してみると、ダブりは1曲だけ。



ダブっている曲はIzabella。どっちもエディ・クレイマーのプロデュースだから、同じ音だろうと思っていたら、全く違った音になっていて、かなり驚いた。新たにマスタリングし直して、違った音にしたのはどういうワケなのか?


同じ音源を2つ、交互に聴き較べて、音作りの考え方を探ってみた。

 

 

前作ではジミヘンが左チャンネル、ベースが右チャンネルだったのに、新作では全部中央に寄っている。音質的には同等レベルだけど、かなり印象が違った仕上がりになっている。

IzabellaはややR&Bっぽい曲で、War HeroesというLPでスタジオ録音が収録された。そのレコードはもう処分してしまったけど、音質的に貧弱で、粗製乱造と言っても過言でなかった。それと比べると上掲2枚のCDはライブながら、はるかに優れた音質。Izabellaを聴くならCDは両方とも良いと思う。

アルバムとしては、個人的には25年前の方が好きかな。計4回のステージから良いものを選りすぐっているので、全曲がすばらしい。



ジミヘンのCDを2回続けてポチったところで、AIは次もジミヘンを表示してきた。



Hendrix In The West。知らないうちにCD化されてたのね。

権利関係に問題があって、ずっとCD化されていなかったハズだけど、パッケージには2011年ドイツ製と記載されているから、筆者が知らなかっただけ。

LPレコードは擦り切れるくらいに聴いてきたので、音は頭の中に入っている。ずいぶんクリアな音質になったなあ、というのが第一印象。

 

 

ベースやドラムスの音がはっきり聴こえる。トリオのバランスはLPより明らかに良いと感じる。素晴らしいリマスターだと思う。




ただ、筆者はLPレコードの音が好きだ。LPの素晴らしさは、何と言ってもギターの音。ジミヘンのギターだけが突出していて、ベースの音なんかほとんど聴こえない。聴こえてくるのは圧倒的なジミヘンの爆音。

LPのマスタリングはギターの音を最高に仕上げることだけを狙っていて、ジミヘンの全てのレコード/CDの中で、ギターの音に関してはダントツに魅力的だと思う。

エンジニアはLP・CDとも同じエディ・クレイマーだけど、LPはジミヘンだけに焦点を当てたマスタリングで、リマスターCDはJimi Hendrix Experienceというバンドのライブとしてマスタリングされている。両者には30年以上の時間差があって、彼の考え方も変化したのだろう。

1970年代に出たジミヘン死後のレコードは、粗製乱造な感じで、音質的にイマイチな作品が多かった。War Heroesとかワイト島ライブなんか、当時は残り物だから仕方ないと思っていたけど、Hendrix In The Westだけは内容・音質共に素晴らしい出来で、今でも最高のライブ盤だと思っている。

CDをお聴きになった人は、是非LPレコードもお聴きになってください。全く違った音で、別世界ですから。


一方で、後年のリマスターCDは全部良いかというと、そうでもないという例もある。



1967、68、69、70年と4年間の代表的なライブ音源を4枚のCDにまとめた、Stagesというボックス物。1991年アラン・ダグラスのプロデュース。アラン・ダグラスというだけで、ジミのファンから嫌われそうな気もするが、、、

この中の69年のCDに、Hendrix In The WestのハイライトになっているRed Houseが収録されていて、同じ音源なので音を比較することができる。

 

 

Red Houseはジミお得意のブルース曲で、たくさんの録音があるけど、ここでの演奏が最高に素晴らしい。Hendrix In The Westが発表されたあと、全国各地にRed Houseというお店ができたほど。

それなのに、Stagesの音は全くショボくて、ジミヘン生涯最高の演奏のひとつであるRed Houseの魅力を台無しにしてしまっている。

Stagesは4年間にわたる演奏の変化を追体験できるように編集されていて、企画としてはとても優れているけど、音はダメだ。
 

 

エディ・クレイマーがリマスタリングしたCDは、素晴しい音がするものが多いけど、元が良くなければ限界がある。

 

 

1969年Los Angels Forumでのライブ盤。以前にCD化されていたけど、音質が悪くて繰り返し聴きたくなるものではなかった。

 

2年ほど前、エディ・クレイマーのリマスタリングという触れ込みでCDが発売された。演奏はアグレッシブで良いけど、音はあんまり良いとは言えず、Jimi Hendrix Experience最後のライブというのが価値かな?という感じ。



さて、他のCD作品にも触れてみよう。

 



Rainbow Bridge。ミュージック・ライフ誌が最高点の星5つをつけた、ジミヘンでは唯一のレコード。

ジャケットにはOriginal Motion Picture Sound Trackと記載されているけど、収録されているのは別の演奏。映画とは全く関係がないという紛らわしいタイトル。でも内容・音質共に最高に素晴らしく、筆者はHendrix In The Westと双璧だと思っている。

このアルバムに収録されたHear My Train A Comin'は、ジミの生涯最高の演奏のひとつだった。今はLive at Fillmore Eastでの演奏も同様に素晴らしいから、唯一無二ではなくなったけど。

この映画は後年になってDVD化された。



1970年という時代背景を反映した、ヒッピー(もはや死語ですね)文化を表現したドラマ仕立ての映画で、最後の30分にジミのコンサートがある。

今となってはジミの演奏が観れるDVDという点だけが価値で、音質的にイマイチだし、演奏は編集されて短くなっている。熱心なファンには価値があるでしょうけど、一般のリスナーは無視していいです。

実際のコンサートは2回のステージがあって、2枚組CDで発売された。

 

 

やっぱりハイライトはHear My Train A Comin'で、素晴しい演奏だけど、DVDより音質的に少し良くなっている程度で高音質とは言えず、やっぱりマニア向けです。

 

他にもジミヘンのCDはいっぱい持っているけど、長くなってしまったのでこれくらいにしておきましょう。