cotasoさんのブログ -78ページ目

佐藤さん

『分かるとこだけで

良いから

ざっと書いて待っててね』

名前、生年月日、住所…



ボールペンを持つ手が

小刻みに震える



『どうぞ』



男性スタッフが

烏龍茶を持ってきてくれた



『あ…

ありがとうございます』



声が上擦った



あれ

由美がいない

やだ…

一人にしないでよ



キョロキョロ

見回していると

先程の店長らしき人が

近付いてきた



『書けたかな?』



『あ…はい!一応…』



『責任者の佐藤です

えーと…

由美ちゃんの同級生だから

18歳だよね

おっ!

俺と誕生日一緒だ!』



私が書いた履歴書に

目を通しながら

佐藤さんが言った



『本当ですか!

同じ誕生日の人

初めてお会いしました!』



別に閏年でもないから

そんなに

珍しい事では

ないのかも

しれないけれど

自然と笑みがこぼれた



『あはは!

俺もだよー!

これも何かの

縁かも知れないし

とりあえず

働いてみない?』

身の程

中へ入ると

オープンの準備に向けて

慌ただしく

動き回る

男性スタッフと

出勤して来たのであろう

数名の女の子がいた



何人かと目が合うが

皆すぐに

各々の作業に戻る



『お待ちしてました

こちらにどうぞ』



店長らしき人が

奥から出てきて

ボックス席に

案内された



『ぷっ…』



後ろで談笑していた

女の子数名から

冷ややかな

鼻で笑った声が聞こえた



馬鹿にされてる



身の程知らずの

馬鹿女が来たって

笑ってるんだ



『でさぁー

あのクソ客ね

ただの金ズルのくせに

日曜会いたいだってー

マジうぜーし!

誰が金にもならないのに

店外で会うかっつーの!

あははは…!』



私の事じゃなかった



こんな自分

彼女達にとっては

眼中にも入らない

存在なはず

それを何勘違いして…



心臓がドクンと鳴って

顔が

カァァと熱くなった

CLUB LOOSE

通称キャバクラ街

と言われる

通りから

一本路地を入って

すぐのビルの前で

由美は立ち止まった


『ここの地下一階だよ!』



【CLUB LOOSE】



のちに私の人生に

大きな転機を起こした

店である



地下へと続く

階段を降る時

不思議と

もう足の痛みは

感じていなかった