国際通貨基金(IMF)が日本の金融機関に対し、金利が上昇した場合、保有する日本国債で損失がいくら生じるか試算を提示するよう要請していることが明らか になった。2011年9月末時点の資産内容を基準に長期金利(10年物国債)が約2.5%に上昇した場合、財務の健全性にどう影響するかを調査を通じて点 検する。今夏にも結果を公表する見通しだ。

 IMFの要請を受け、3メガ銀行は既に2013年度までの試算結果を窓口の金融庁に報告したもようだ。銀行ばかりでなく、生命保険会社など他の金融機関にも広げるか検討中だ。


 IMFは10年物国債利回りを現在の水準(1日時点で0.955%)より1.5%上昇した場合を想定。日銀の白川方明総裁が2月23日の衆 院予算委員会で、長期金利が1%上昇した場合、国内銀行で6兆3000億円の評価損が生じると明らかにしたが、IMF調査は日銀の試算より想定を厳しく置いている。


 IMFは、米リーマン・ショック後の2010年に主要国の金融状況を5年に1度調査することを決めた。債務危機が深刻な欧州は、英独などで同じような調査を実施済みだ。

 IMFは今回、日本の金融機関の日本国債の保有リスクのほか、景気が二番底に陥った場合などマクロ経済状況が急速に悪化した場合の損失リスクも調べる。

内閣府が8日発表する2011年10~12月期の実質国内総生産(GDP)改定値が、速報段階の前期比年率2.3%減から上方修正されるとの見方が広がって きた。民間10社の予測は平均で0.7%減だった。設備投資の上振れが主な理由で、東日本大震災からの復旧投資などが下支えした格好だ。

 財務省が1日発表した昨年10~12月期の法人企業統計によると、金融機関を除く企業の設備投資額は前年同期比7.6%増えた。3期ぶりに プラスに転じた。ソフトウエアを除いた値の季節調整済み前期比は11.9%伸びた。2桁の増加率は1989年1~3月期(12.1%)以来だ。


 10~12月期は、自動車や化学で被災工場を補修する動きが出た。震災後の先行き不安や資材不足で見送った投資案件も動き出したもようで、中堅・中小企業の投資が活発だった。


 設備投資の増額は昨年10~12月期のGDP改定値に反映される。民間10社すべてが、速報値よりマイナス幅を縮めるとみている。伊藤忠経済研究所は0.4%増とプラス成長になるとはじいた。


 12年の設備投資は「エコカーやスマートフォン(高機能携帯電話)関連のほか、再生可能エネルギーに絡む投資が期待できる」(明治安田生命保険の小玉祐一氏)と、緩やかな回復を見込む声が多い。

 ただ復興需要は「一時的にすぎず、建設業以外では設備投資につながらない」(みずほ総合研究所の山本康雄氏)との見方もある。

日銀は、環境事業など成長分野を支援する金融機関向け貸出制度を期限が到来する3月末以降も、延長する方向で検討に入る。利用額が3兆円強と高水準に達し ており、資金需要を掘り起こす「呼び水」の効果があったと日銀は判断している。ただ、民間には「銀行間の金利下げ競争を助長している」との指摘もある。対 象事業の範囲の絞り込みなど制度見直しも議論する。

 延長を検討する「成長支援貸出制度」は2010年6月に導入を決め、同年9月に資金供給を始めた。「環境エネルギー」など成長分野に融資す る金融機関が対象で資金枠の上限は3兆円。昨年6月には中小企業やベンチャーの資金需要を掘り起こすため、在庫や売掛債権など動産・債権担保融資 (ABL)を対象にした5000億円の新しい貸出枠も設けた。


 日銀が29日に発表した3月7日時点の利用見込み額は、3兆円の貸出枠部分が2兆9998億円、ABLなどを対象とした5000億円の枠は 891億円だった。3兆円の貸出枠は既に返済を受けた分を新たな貸し出しに回しており、累計の利用額は3兆5554億円に達している。


 貸付期間は最長4年だが新規貸し出しの対象期間は今年3月まで。利用が高水準に達しており、日銀は3月12、13日に開く金融政策決定会合で制度を延長する方向で検討する。


 ABLを対象とした5000億円の貸出枠は利用額が上限に達しておらず、受付期間を1年程度延ばして中小やベンチャーへの資金供給をさらに増やしたい考え。


 3兆円の貸出枠についても、受付期間を延長する案が浮かんでいる。3メガ銀や地銀が成長分野向けのファンドを創設するなど「資金需要の『呼び水』としての効果があった」(日銀幹部)とみているためだ。

 ただ貸出金利が年0.1%と低く、銀行間の金利引き下げ競争を招いたとの指摘もあり、貸出枠の拡大には慎重だ。3兆円の貸出枠は拡大せず、金融機関から返済を受けた分を新たな貸し出しに回して制度を定着させるなどの案がある。対象事業などを見直す可能性もある。


 制度導入時には、物価や市場の安定という中央銀行の役割から逸脱し、特定分野に資金供給する「政策金融」に近いとの批判もあった。ただ白川方明総裁は2月17日の講演で、デフレ脱却には日本経済の生産性の向上が不可欠と主張し「中央銀行がなしうる貢献は、金融面から企業が新分野にチャレンジ しやすい環境を整えること」と強調している。