地価の先行きを占うポイントの1つとなるのが中古マンションの価格動向。不動産情報サービスの東京カンテイ(東京・品川)の調査による と、2011年7~12月の都内の駅別の中古マンション価格は約3割の駅で前年同期より上がった。同社の井出武主任研究員は「上昇した駅周辺は今後の地価 に影響する可能性がある」とみている。


 中古マンションは更地に比べて買い手がつきやすい。新築マンションに比べると設備など立地条件以外の要素が販売価格に影響しにくいことも あって「地価の先行指標の1つになる」(井出氏)という。同社が都内の主要な487駅を最寄り駅とする中古マンションの取引状況を調べたところ、160駅 で面積当たりの平均単価が前年を上回った。


 駅別では東京スカイツリー効果で京成押上線の押上駅が7.9%上昇したほか、JR常磐線の金町駅も8.2%上昇した。「開かずの踏切」を高架化したJR中央線の武蔵小金井駅も4.8%上がった。

 東日本大震災で液状化などの懸念を持つ人が増えた湾岸部は中古価格も下落した。東京メトロ有楽町線の月島駅で5%、豊洲駅で1.8%、都営大江戸線の勝どき駅で2.9%それぞれ下がった。

 国土交通省が22日発表した2012年の公示地価は4年連続の下落となった。ただ、都市部を中心に下落幅は縮む傾向にある。東日本大震災直後には住宅の 買い控えが起きたが、「安全性」を見極めつつマンションなどを買う動きが戻り始めた。一方、商業地では大阪圏の回復が東京圏を上回る「西高東低」も起きて いる。

 東京・湾岸地域。震災後に低迷していた高層マンションの需要が昨年末ごろから急回復している。野村不動産が開発中の「プラウドタワー東雲 キャナルコート」(東京・江東)は昨年12月に販売を開始。これまでに分譲した366戸は完売した。入念な地盤改良工事を実施したことを打ち出し、購入者 の不安を減らす作戦が実った。


 東京では多摩地域の不動産取引が急回復している。津波被害を受けにくいことから、一戸建てを購入する動きが目立つ。武蔵野市の住宅地は、調査した19地点のうち14地点で地価が横ばいとなった。


 東京・墨田の押上駅周辺の地価が上昇している。公示地価の上昇率は前年比で3%に達した。同駅周辺では今年5月に「東京スカイツリー」が開業する。土産物屋や飲食店の開発が急ピッチで進む。都市部では再開発が進む地域の地価の回復が目立つ。


 商業地の地価でも「安全性」が注目されている。12年の公示地価で地価が「上昇」「横ばい」だった地点を前年と比較すると、東京圏は前年比 7割増の79カ所だった。一方で大阪圏は同2.7倍の110カ所。震災をきっかけに東京に設置していた本社やデータセンターを関西に移転する動きがあり、 「西高東低」の傾向が続いている。


清水建設と千葉大学の中井正一教授は、大地震が起きた際の低層マンションなどの揺れを半減できる技術を開発した。建物と地中に埋めた基礎部分のくいとの間 に砂の層をつくり、くいから建物に伝わる揺れを減らす。くいを太くしなくても耐震性が高まるので、建物全体の建設費用も約1割圧縮できる利点もある。

4~5階建て以下のマンションなどは地盤沈下や大地震時の倒壊を防ぐため、地下数十メートルの硬い地盤まで鋼管のくいを打ち、その上端を建物とつなぐケースが多い。近年は太いくいで耐震性を高める傾向があり、建設費用を押し上げていた。

 新技術はくいと建物を直接つながず、建物の真下に厚さ数十センチメートルの砂の層をつくる。大地震が起これば建物が砂の層の上を滑り、揺れが軽減される。砂の層とくいの間には、特殊な合成繊維の布をはさみ、建物の沈下を防ぐ。


 実物の30分の1の模型で実験した。建物の揺れを示す加速度を従来の約半分の約600ガル(ガルは加速度の単位)に抑えることができた。従来工法で震度6強の場合、新工法では5強に小さくなる。

 低層マンションはくいが直接つながっていなくても問題ないが、中高層マンションは転倒の恐れがあるので、不向きだという。