ティル・ナ・ノーグ Tir na n-Og -18ページ目
第4章の第2節は、厚生労働大臣が精神保健指定医を「指定」するための研修と、指定後五年ごとの更新手続きに係る研修義務に関して、厚生労働大臣からその研修機関として登録を受けようとする申請についてを規定した事項をはじめとして書かれています。
そのすべてが第19条の6に収められていて、さらに2~17まで細分化されている非常に長いものです。前節で現在登録されている研修機関が3団体あると明示しました。
しかしながら当該条文を解説する文献や図解がなく、いつもの前置きができません。条文の字面を追いながらでしか私も説明ができない点だけ、どうかご容赦ください。。。

第4章・第2節 登録研修機関(第19条の6の2~第19条の6の17)


(登録)
第19条の6の2  第18条第一項第四号又は第19条第一項の登録(以下この節において「登録」という。)は、厚生労働省令で定めるところにより、第18条第一項第四号又は第19条第一項の研修(以下この節において「研修」という。)を行おうとする者の申請(※1)により行う。

欠格条項(※2)
第19条の6の3  次の各号のいずれかに該当する者は、登録を受けることができない。
一  この法律若しくはこの法律に基づく命令又は障害者自立支援法 若しくは同法 に基づく命令に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日(※3)から二年を経過しない者
二  第19条の6の13の規定により登録を取り消され、その取消しの日から二年を経過しない者
三  法人であつて、その業務を行う役員のうちに前二号のいずれかに該当する者があるもの

(登録基準)
第19条の6の4  厚生労働大臣は、第19条の6の2の規定により登録を申請した者が次に掲げる要件のすべてに適合しているときは、その登録をしなければならない。
一  別表(※4)の第一欄に掲げる科目を教授し、その時間数が同表の第三欄又は第四欄に掲げる時間数以上であること。
二  別表(※4)の第二欄で定める条件に適合する学識経験を有する者が前号に規定する科目を教授するものであること。
 登録は、研修機関登録簿に登録を受ける者の氏名又は名称、住所、登録の年月日及び登録番号を記載してするものとする。

(※1)申請登録を申請する場合は、以下の事項を記載した『申請書』を厚生労働大臣に提出しなければなりません。
氏名及び住所(法人にあっては、その名称、主たる事務所の所在地及び代表者の名前)
研修の業務を行おうとする事務所の名称及び所在地
研修を開始しようとする年月日
研修の種類
また、『申請書』に加えて次に掲げる書類を添付する必要があります。
申請者が法人である場合は、その定款又は登記事項証明書
申請者が個人である場合は、その住民票の写し(外国人にあっては、外国人登録証明書の写し)
申請者が第19条の6の3各号の規定(欠格条項)に該当しないことを説明した書面


(※2)欠格条項何らかの事柄に当てはまるため、その資格を有することができなくなる事項です。例えば、医師免許は未成年は取得することができません(未成年である、という事由がある為に医師の資格を欠く)。本条では、指定医に係る指定前研修や更新時研修を実施する機関が、厚生労働大臣による登録を受けることができない欠格事由を定めたものです。

(※3)刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日刑の執行が終わった日または恩赦や刑の時効により刑の執行を免除された日のことをいい、それから2年を経過した場合に登録を受けることができるという意味です。
なお執行猶予の場合は、刑に処されることなく猶予期間を過ぎれば、刑の言い渡しの効力がなくなることから(刑法第27条より)、執行猶予期間を経過したその日から登録を受けることができます。

(※4)別表別表とは次のとおり定められており、登録研修機関が行う指定医の研修科目、教授する者の資格等を規定しています。

登録研修機関別表


(登録の更新)
第19条の6の5  登録は、五年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う。
 前三条の規定は、前項の登録の更新について準用する。

(研修の実施義務)
第19条の6の6  登録を受けた者(以下「登録研修機関」という。)は、正当な理由(※5)がある場合を除き、毎事業年度、研修の実施に関する計画(※6)(以下「研修計画」という。)を作成し、研修計画に従つて研修を行わなければならない。
 登録研修機関は、公正に、かつ、第18条第一項第四号又は第19条第一項の厚生労働省令で定めるところにより研修(※7)を行わなければならない。
 登録研修機関は、毎事業年度の開始前に、第一項の規定により作成した研修計画を厚生労働大臣に届け出なければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

(変更の届出)
第19条の6の7  登録研修機関は、その氏名若しくは名称又は住所を変更しようとするときは、変更しようとする日の二週間前までに、その旨を厚生労働大臣に届け出なければならない。

(業務規程)
第19条の6の8  登録研修機関は、研修の業務に関する規程(以下「業務規程」という。)を定め、研修の業務の開始前に、厚生労働大臣に届け出なければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
 業務規程には、研修の実施方法、研修に関する料金その他の厚生労働省令で定める事項(※8)を定めておかなければならない。

(業務の休廃止)
第19条の6の9  登録研修機関は、研修の業務の全部又は一部を休止し、又は廃止しようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を厚生労働大臣に届け出(※9)なければならない。

(財務諸表等の備付け及び閲覧等)
第19条の6の10  登録研修機関は、毎事業年度経過後三月以内に、当該事業年度の財産目録、貸借対照表及び損益計算書又は収支計算書並びに事業報告書(その作成に代えて電磁的記録(※10)(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)の作成がされている場合における当該電磁的記録を含む。次項及び第57条において「財務諸表等」という。)を作成し、五年間事務所に備えて置かなければならない。
 研修を受けようとする者その他の利害関係人は、登録研修機関の業務時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号の請求をするには、登録研修機関の定めた費用を支払わなければならない。
一  財務諸表等が書面をもつて作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二  前号の書面の謄本又は抄本の請求
三  財務諸表等が電磁的記録をもつて作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を厚生労働省令で定める方法により表示(※11)したものの閲覧又は謄写の請求
四  前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であつて厚生労働省令で定めるものにより提供(※12)することの請求又は当該事項を記載した書面の交付の請求

(適合命令)
第19条の6の11  厚生労働大臣は、登録研修機関が第29条の6の4第一項各号のいずれかに適合しなくなつたと認めるときは、その登録研修機関に対し、これらの規定に適合するため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

(改善命令)
第19条の6の12  厚生労働大臣は、登録研修機関が第19条の6の6第一項又は第二項の規定に違反していると認めるときは、その登録研修機関に対し、研修を行うべきこと又は研修の実施方法その他の業務の方法の改善に関し必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

登録の取消し等(※13)
第19条の6の13  厚生労働大臣は、登録研修機関が次の各号のいずれかに該当するときは、その登録を取り消し、又は期間を定めて研修の業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一  第19条の6の3第一号又は第三号に該当するに至つたとき。
二  第19条の6の6第三項、第19条の6の7、第19条の6の8、第19条の6の9、第19条の6の10第一項又は次条の規定に違反したとき。
三  正当な理由がないのに第19条の6の10第二項各号の規定による請求を拒んだとき。
四  第19条の6の11又は前条の規定による命令に違反したとき。
五  不正の手段により登録を受けたとき。

(※5)正当な理由登録研修機関が業務を休止している場合等です。

(※6)研修の実施に関する計画
年度を通じて適切かつ計画的に研修が行われるよう、登録研修期間は毎事業年度の研修計画を作成し、これに基づいて研修を実施するとともに、当該計画を厚生労働大臣に届け出なければなりません。
研修計画には、研修を的確かつ確実に実施するために最低限度必要な情報として、少なくとも次に掲げる事項は記載されるべきと考えられています。
・当該事業年度における研修の開催日程
・開催日ごとの研修実施会場の所在地
・その他必要な事項(研修受講申込みの手続き等)

(※7)厚生労働省令で定める研修研修の課程については(※4)の別表のとおりです。

(※8)業務規程に係る事項指定医の研修制度の円滑な運用を図るため、厚生労働大臣は登録研修機関の業務内容(業務規程)を把握する必要があります。業務規程とは、厚生労働省令にて次のように定められています。
①研修の実施方法
②研修に関する料金
③料金の収納の方法に関する事項
④研修課程修了証の発行に関する事項
⑤研修の業務に関して知り得た秘密の保持に関する事項
⑥研修の業務に関する帳簿及び書類の保存に関する事項
⑦法第19条の6の10第二項第二号及び第四号(後述)の請求に係る費用に関する事項
⑧その他研修の業務の実施に関し必要な事項
これらの業務規程を定めたものを、登録研修機関は厚生労働大臣に届け出を義務付けています。

(※9)休廃止の届け出登録研修機関が研修を休廃止しようとする場合には、厚生労働大臣にあらかじめ届け出をする必要があります。その届け出は、厚生労働省令にて次の事項を記載した書面で行うことになっています。
①休止し、又は廃止しようとする研修の業務の範囲
②休止し、又は廃止しようとする年月日
休止又は廃止の理由
④休止しようとする場合にあっては、休止の予定期間

(※10)電磁的記録登録研修機関は、毎事業年度終了後3か月以内に財産目録、貸借対照表、損益・収支計算書、事業報告書(「財務諸表」という)を作成し、5年間備え付けることを義務付けしたものです。その作成に当たっては電子計算機(法律用語→パソコン等のこと)でも可能であるとしています。
研修を受けようとする者等は、いつでも財務諸表の閲覧、謄写(とうしゃ:書き写す)等を請求できます。

(※11)表示厚生労働省令によれば、財務諸表が電磁的記録(パソコン等)により作成されているときの閲覧方法は、当該電磁的記録に記録された事項を紙面(コピー)又は出力装置の映像面(ディスプレー)に表示する方法とされています。

(※12)提供電磁的記録に記録された事項を電磁的方法により提供する方法は、厚生労働省令により次のように規定されています。
①送信者の使用に係る電子計算機と受信者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用する方法であつて、当該電気通信回線を通じて情報が送信され、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該情報が記録されるもの
②磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができる物をもつて調製するファイルに情報を記録したものを交付する方法
※①と②に掲げる方法は、受信者がファイルへの記録を出力することによる書面を作成できるものでなければならないとされています。

(※13)登録の取消し等次の規定に該当した場合に、厚生労働大臣は登録研修機関の登録取消しや業務停止を命じることができます。各号に定める規定は各条文に記載されていますが、一つずつ解説を加えます。
、欠格条項に当てはまるとき
、研修計画の届出を怠ったとき、登録研修機関の変更についてその届出を怠ったとき、業務規程の届出を怠ったとき、登録研修機関の業務休廃止についてその届出を怠ったとき、財務諸表の備付けを怠ったとき
、正当な理由なしに、財務諸表の請求を拒んだとき
、登録研修機関としてその登録基準に適合しなくなり、厚生労働大臣が適合に必要な措置を講ずるもそれを怠ったとき
、不当な手段によって登録を受けたとき

(帳簿の備付け)
第十九条の6の14  登録研修機関は、厚生労働省令で定めるところにより、帳簿(※14)を備え、研修に関し厚生労働省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない。

(厚生労働大臣による研修業務の実施)
第19条の6の15  厚生労働大臣は、登録を受ける者がいないとき、第19条の6の9の規定による研修の業務の全部又は一部の休止又は廃止の届出があつたとき、第19条の6の13の規定により登録を取り消し、又は登録研修機関に対し研修の業務の全部若しくは一部の停止を命じたとき、登録研修機関が天災その他の事由により研修の業務の全部又は一部を実施することが困難となつたときその他必要があると認めるときは、当該研修の業務の全部又は一部を自ら行うことができる。
2  前項の規定により厚生労働大臣が行う研修を受けようとする者は、実費を勘案して政令で定める金額の手数料を納付しなければならない。
3  厚生労働大臣が第一項の規定により研修の業務の全部又は一部を自ら行う場合における研修の業務の引継ぎその他の必要な事項(※15)については、厚生労働省令で定める。

(報告の徴収及び立入検査)
第19条の6の16  厚生労働大臣は、研修の業務の適正な運営を確保するために必要な限度において、登録研修機関に対し、必要と認める事項の報告を求め、又は当該職員に、その事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2  前項の規定により立入検査を行う当該職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
3  第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

公示(※16)
第19条の6の17  厚生労働大臣は、次の場合には、その旨を公示しなければならない。
一  登録をしたとき。
二  第19条の6の7の規定による届出があつたとき。
三  第19条の6の9の規定による届出があつたとき。
四  第19条の6の13の規定により登録を取り消し、又は研修の業務の停止を命じたとき。
五  第19条の6の15の規定により厚生労働大臣が研修の業務の全部若しくは一部を自ら行うものとするとき、又は自ら行つていた研修の業務の全部若しくは一部を行わないこととするとき。
(※14)帳簿登録研修機関は、厚生労働省令にて帳簿の備付けと記載および保存を義務付けられており、研修に関して帳簿に記載しなければならない事項は、研修修了者の氏名・生年月日・住所・勤務先・修了年月日・研修課程修了証の番号及び修了した研修の種類とされています。これらは研修の業務を廃止するまで保存しなければなりません。

(※15)研修業務の引継ぎと必要事項登録研修機関による研修業務の実施が困難となるなど、厚生労働大臣が必要と認めるときは、厚生労働大臣が自ら研修業務の全部又は一部を行うことができるとされています。その場合、登録研修機関は次に掲げる事項を行わなければなりません。
①研修の業務の厚生労働大臣への引継ぎ
②研修の業務に関する帳簿及び書類の厚生労働大臣への引継ぎ
③その他厚生労働大臣が必要と認める事項

(※16)公示本条は研修登録機関の登録に関して厚生労働大臣が公示しなければならない事項を定めたものです。各登録研修機関について、具体的に公示されている内容としては、次のとおりです。
一、登録研修機関の名称及び住所
二、研修の業務を行う事業所の名称及び所在地
三、研修の業務を開始する年月日
四、研修の種類
五、登録期間
今日、終戦記念日。夏休み、あと10日

気付くの今更なんですけど、もう夏季休暇半分消化しちゃったんですよね…
ガクリ
度々記事に上げている「精神保健福祉法」の法解釈の勉強も、進んでるようでまだ3割程度しかやれてない。おまけに他の教科がお座成りになってる。

学校始まるとブログ活動ができなくなっちゃうので、記事が上げられそうなのも残り数回しかないです。最近はもう現実逃避しようとビール
何杯も飲んでます。仕事していた頃よりオッサンですわ(笑)
分かってますよ。。。お酒が薬に及ぼす影響くらい。だけど今までが今までだっただけにやりたいことをやりたいお年頃なんです(←アラサーのくせに!とか言わないで)
てへぺろ

どうやったら勉強に集中できるかなぁ


そうそう、今日はハロワに行ってきました。新たな遊び場?…職安だよ!!

アラサープロ

友達からメール⇒「よっ!そろそろ職決まったか?」
決まってないよ!!ハロワ行っても横浜の遠い場所ばかりでなかなか見つからないから、隣の川崎市の求人票を家でプリントアウトして相談したよ!!
職員⇒「いやね、ここは横浜だからさ」
ハネられたよ!!もうどうしろっていうんだよ!!(涙)

こんなんばっかだからいつまで経っても前に進まないんですな
( ̄∩ ̄#


というわけで晩酌継続
おんぷ
精神保健福祉法の中で条文が多いトップ3に、今回説明を加える第19条があります。「第4章 精神保健指定医、登録研修機関、精神科病院及び精神科救急医療体制」以下第1節~第4節までほぼ全てを第19条で説明しています。字数的には約7000文字。長い
これまで章ごとに解説をしてきましたが、これらをいっぺんに載せるとなると私のキャパを超えますので、おとなしく節ごとに分けて解説します。それでも今回取り上げる「精神保健指定医制度」だけで全4節の35%くらいは量があるので、図を使います。逃げじゃないです(笑)

さて、前置きはこのくらいで第1節へ入りましょう。
「精神保健指定医(以下、指定医)」──そう、精神医療審査会の医療委員として出てきた単語です。この指定医は本法第22条以降に出てくる様々な入院形態と大きく絡んでくるので、此度の説明ではなかなか解釈がし辛いかと思います。
そのためごく簡単にですが、下記に本法に規定される入院形態を示します。

精神科病院入院形態


これが全ての入院形態です。より緊急性の高いものを下段にして並び替えました。このように5つ全ての入院形態に対して判定事務があり、その重要性がうかがえます。宇都宮病院事件以来、精神科医療における入院患者の人権確保の重要性は云われ続けてきてはおりますが、治療を行う上で患者を制限しなければ医療に支障の出る恐れがある場合がある為、患者の保護と制限は紙一重です。そのため一定の資格(精神科実務経験と研修を修了し、厚生労働大臣から指定を受けること)を有する医師がその必要性を判断しなければなりません。なお、本法第18条にはその指定を受ける要件として以下が挙げられています。指定を受けようとする者は①~④まで全ての要件を満たさなければなりません。

精神保健指定医要件

指定医はこのような入院に関する事項に幅広い職務を負っています。つぎは入院形態に拘らず、指定医の職務全般をみてみましょう。大別すると、勤務している精神科病院で行う『一般的職務』と、行政の適正な執行を図る『公務員としての職務』の2つがあります。

クローバー一般的な職務クローバー
患者の人権に配慮しつつ必要かつ適切な精神科医療を確保するために、精神科病院等の臨床現場でおこなう医療保護入院等の入院や一定の行動制限の要否を医学的に判定することです。その具体的な職務は本法第19条の4第一項に規定されています。

指定医一般的職務


クローバー公務員としての職務クローバー
厚生労働大臣及び都道府県知事が行政権限として行う措置入院を行うに当たっての判断や精神科病院への立入検査及び対象者となる患者の診察などを行うことです。この場合は「公務員(非常勤国家・地方公務員)」としての職務となります。その具体的な職務は本法第19条の4第二項に規定されています。

指定医公務的職務

これで一通りの指定医の大筋の役割を説明し終えたかと思いますので、ここからまだ長いですが、条文をみていくことにしましょう。図の方が咀嚼しやすい場合が多いので、重複する部分は割愛し、行政の背景があるものについてはもう少し解説を加えます。

第4章・第1節 精神保健指定医(第18条~第19条の6)


(精神保健指定医)
第18条  厚生労働大臣は、その申請(※1)に基づき、次に該当する医師のうち第19条の4に規定する職務を行うのに必要な知識及び技能を有すると認められる者を、精神保健指定医(以下「指定医」という。)に指定(※2)する。
一  五年以上診断又は治療に従事した経験(※3)を有すること。
二  三年以上精神障害の診断又は治療に従事した経験(※3)を有すること。
三  厚生労働大臣が定める精神障害につき厚生労働大臣が定める程度の診断又は治療に従事した経験を有すること。
四  厚生労働大臣の登録を受けた者(※4)が厚生労働省令で定めるところにより行う研修(※5)(申請前一年以内に行われたものに限る。)の課程を修了していること。
 厚生労働大臣は、前項の規定にかかわらず、第19条の2第一項又は第二項の規定により指定医の指定を取り消された後五年を経過していない者その他指定医として著しく不適当と認められる者については、前項の指定をしないことができる。
 厚生労働大臣は、第一項第三号に規定する精神障害及びその診断又は治療に従事した経験の程度を定めようとするとき、同項の規定により指定医の指定をしようとするとき又は前項の規定により指定医の指定をしないものとするときは、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。

(指定後の研修)
第19条  指定医は、五の年度(※6)(毎年4月1日から翌年3月31日までをいう。以下この条において同じ。)ごとに厚生労働大臣が定める年度において、厚生労働大臣の登録を受けた者が厚生労働省令で定めるところにより行う研修を受けなければならない。
 前条第一項の規定による指定は、当該指定を受けた者が前項に規定する研修を受けなかつたときは、当該研修を受けるべき年度の終了の日にその効力を失う(※7)。ただし、当該研修を受けなかつたことにつき厚生労働省令で定めるやむを得ない理由(※8)が存すると厚生労働大臣が認めたときは、この限りでない。

(指定の取消し等)
第19条の3  指定医がその医師免許を取り消され、又は期間を定めて医業の停止を命ぜられたときは、厚生労働大臣は、その指定を取り消さなければならない。
 指定医がこの法律若しくはこの法律に基づく命令に違反したとき又はその職務に関し著しく不当な行為を行つたときその他指定医として著しく不適当と認められるときは、厚生労働大臣は、その指定を取り消し、又は期間を定めてその職務の停止(※9)を命ずることができる。
 厚生労働大臣は、前項の規定による処分をしようとするときは、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。
 都道府県知事は、指定医について第二項に該当すると思料するときは、その旨を厚生労働大臣に通知することができる。

第19条の4  削除

(※1)申請
所定の申請書に、履歴書、医師免許の写し、精神科実務経験を証する書面(実務経験証明書・ケースレポート)、研修修了書、写真を添えて、住所地の都道府県知事(政令指定都市の市長)を経由して厚生労働大臣に提出しなければなりません。

(※2)指定厚生労働大臣による精神保健指定医の「指定」とは、その者が本法第18条第一項第一号から第四号までに列挙されている要件を満たしていること、その職務を行うのに必要な知識及び技能を有していることを公に示す行為であり、学問上は「確認行為」として法的性格を有するものと解されます。
「指定」を受けた者には、精神保健指定医証が交付されます。

(※3)経験自ら精神障害者の診断・治療に当たるなかで、患者の人権を確保し、個人としての尊厳に配慮した医療を行うのに必要な精神科医療の実務を3年以上の期間内に経験するとともに、これとは別に、医師として必要な基礎的な知識及び技能を習得していることが必要不可欠な医学的基盤になります。
例えば臨床研修の期間として求められている2年以上の間に、疾病の診断及び治療技術の習得及び向上、患者に接する態度の習得に努めること等も経験することが必要であるとして、5年以上の医療実務経験が指定の要件とされたものです。

(※4)登録を受けた者「研修」は、厚生労働大臣の登録を受けた者が行うこととされており、現在は社団法人日本精神科病院会社団法人全国自治体病院協議会(JMHA)および日本総合病院精神医学会(JSGHP)が登録されています。

(※5)研修患者本人の意思に基づかない入院や著しい行動制限に係る判断を行う指定医として必要な、患者の人権に関する知識等を習得することを目的としています。そのため関連法制度、最近の精神医学の動向、精神障害者の社会復帰及び精神障害者福祉の動向や、精神障害者・精神科病院に関する不祥事件等、近時の精神保健をめぐる問題やケーススタディ等についての十分な研鑽を積むことができる研修を、集中的に実施することとされています。

(※6)五の年度患者本人の意思に基づかない入院、著しい行動制限に係る判断を行う指定医については、精神医学の進歩や精神障害者の人権擁護に関する制度の変化、精神保健福祉・精神科医療を取り巻く状況の変化に対応して、常時求められている適正かつ十分な精神科医療の知識と患者の人権に対する配慮を十分に備えていることが必要であり、指定後五年ごとの研修受講を義務付けしたものです。

(※7)効力を失う研修を受講しなかった場合の失効の規定が設けられたことに伴い、規則により定められている精神保健指定医証の様式には有効期限を記入する欄が設けられました。
この有効期限は、次回の研修を受講すべき年度の末日とされており、指定医証の更新(五年後の有効期限を記載した新たな指定医証の交付)を受けるか、あるいは、受講できなかったやむを得ない理由があることについての厚生労働大臣の承認を得て、有効期限が延長された指定医証の交付を受けるかしなければ、記載された有効期限の到来とともに、指定医の指定の効力が失われることになります。

(※8)やむを得ない理由
研修を受けるべき年度において実施される、いずれの研修も受けることができないことについて、災害、傷病、長期の海外渡航その他の事由があること、とされています。

(※9)指定の取り消しと職務の停止
指定医は、精神科医療の特殊性に鑑み、患者の人権確保を一層図る観点から設けられた制度であることから、指定医として著しく不適当と認められたときには、厚生労働省の医道審議会の意見に基づいて、指定の取消し又は期間を定めてその職務の停止を命ずることができます。
「期間を定めてその職務の停止」とは平成11年改正において加えられたものです。「指定の取り消し」については、平成9年に提出された参考資料として以下のような具体例があります。
・不当に高額の診療報酬を要求した場合
・診療義務違反を反復した場合
・指定医の職務に関し、刑法上の罪(暴力行為など)に科せられた場合
・入院患者が違法な処遇を受けている(不当な身体拘束など)ことを知りながら解除しなかった場合
・薬物中毒症等により、指定医の職務を継続することが困難であることが明白な場合

(職務)
第19条の4  指定医は、第22条の4第三項及び第29条の5の規定により入院を継続する必要があるかどうかの判定、第33条第一項及び第33条の4第一項の規定による入院を必要とするかどうか及び第22条の3の規定による入院が行われる状態にないかどうかの判定、第36条第三項に規定する行動の制限を必要とするかどうかの判定、第38条の2第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)に規定する報告事項に係る入院中の者の診察並びに第40条の規定により一時退院させて経過を見ることが適当かどうかの判定の職務を行う。
 指定医は、前項に規定する職務(※10)のほか、公務員として、次に掲げる職務(※10)を行う。
一  第29条第一項及び第29条の2第一項の規定による入院を必要とするかどうかの判定
二  第29条の2の2第三項(第34条第四項において準用する場合を含む。)に規定する行動の制限を必要とするかどうかの判定
三  第29条の4第二項の規定により入院を継続する必要があるかどうかの判定
四  第34条第一項及び第三項の規定による移送を必要とするかどうかの判定
五  第38条の3第三項(同条第六項において準用する場合を含む。)及び第38条の5第四項の規定による診察
六  第38条の6第一項の規定による立入検査、質問及び診察
七  第38条の7第二項の規定により入院を継続する必要があるかどうかの判定
八  第45条の2第四項の規定による診察
 指定医は、その勤務する医療施設の業務に支障がある場合その他やむを得ない理由がある場合を除き、前項各号に掲げる職務を行うよう都道府県知事から求めがあつた場合には、これに応じなければならない。

(診療録の記載義務)
第19条の4の二  指定医は、前条第一項に規定する職務を行つたときは、遅滞なく、当該指定医の氏名その他厚生労働省令で定める事項を診療録に記載しなければならない。

(指定医の必置)
第十九条の5  第29条第一項、第29条の2第一項、第33条第一項、第二項若しくは第四項又は第33条の4第一項若しくは第二項の規定により精神障害者を入院させている精神科病院(※11)(精神科病院以外の病院で精神病室が設けられているものを含む。第19条の10を除き、以下同じ。)の管理者は、厚生労働省令で定めるところにより、その精神科病院に常時勤務する指定医(※12)(第19条の2第二項の規定によりその職務を停止されている者を除く。第53条第一項を除き、以下同じ。)を置かなければならない。

(政令及び省令への委任)
第19条の6  この法律に規定するもののほか、指定医の指定に関して必要な事項は政令で、第18条第一項第四号及び第19条第一項の規定による研修に関して必要な事項は厚生労働省令で定める。

(※10)第19条の4および同条その4第二項に規定される職務
本法各条文に規定されている事務を行うことで、「一般的職務」「公務員による職務」のことです。詳しくは前述の図を参考にされたし。

(※11)各条文の規定により精神障害者を入院させている精神科病院つまり、措置入院、緊急措置入院、医療保護入院又は応急入院を行う精神科病院のことです。これらの入院を行う精神科病院には、常勤の精神保健指定医を必置しなければなりません。ただし任意入院のみを行う精神科病院については、精神保健指定医の職務が想定されないため、必置義務を免れます。また、本法では「精神科病院」の定義を設けていませんが、総合病院等の他科の病床を備えている施設に精神病室が設けられている場合、その病院の管理者は公私立問わずして本条の適用を受けます。

(※12)常時勤務する指定医
一日に8時間以上且つ、一週間に4日以上当該精神科病院において精神障害の診断又は治療に従事する者とされています。