ちらっと目にした今朝の「モーニングショー」に出演されていた「医療統計が専門」という先生が、その「医療統計」をまったく誤解・誤用されていたので、簡単に触れておきますね。
よく見たわけではありませんので、私の見間違いもあるかもしれませんが、ともかく特集の内容は、ざっくり「たくさん歩くことが健康に良い影響を与える」というなものでした。
先生はビッグデータの解析から、それを導き出されたそうです。
それは構わないのですが、問題はそこから。
都道府県別のデータを比較し、「すぐに車に乗ってしまう地方部より、むしろ都市部のほうがたくさん歩くので健康で長生きする」という結論は、完全な誤り。
例によって目に見える相関関係だけにとらわれ、交絡因子(変数)を無視しちゃっています。
ビッグデータに価値があるのは、個々人の属性を超越することで個体差を相殺できるから。
このデータを「都道府県別」に整理してしまったら、せっかくの「ビッグ」の意味がなくなってしまうのです。
何のためのビッグデータか、という話。
健康や寿命に最も大きい影響を与えるのは「遺伝子」です。
特定の疾病にかかりやすい遺伝子やかかりにくい遺伝子が存在し、血筋(親族間)で共有されているケースが多い。
そのため、地域・地方別に分けるときには、その地域固有の「遺伝子特性」を考慮しなければなりません。
人の転居・移住が進んだのは、歴史的にはごくごく最近の話なので、例えば青森県なら青森県の、それも津軽地方なら津軽地方固有の「遺伝子特性(偏り)」が必ずあります。
つい最近まで、特に人口の少ない農村部などでは、親族間の結婚が当たり前でしたから、そうした特性はいっそう強化されていたはず。今は親戚関係のない人でも、ずっと先祖をたどっていけば、どこかでつながっているかもしれません。
あるいは、その地域特有の環境、食文化や風習も、少なからず影響を与えているでしょう。
そうでなくても「環境にマッチしない」遺伝子は、幾多の飢饉や疫病の際に淘汰され、似通った遺伝子の個体ばかりが子孫を増やしてきたのは間違いありません。
平成、令和になり、息子・娘が都会に出て、他県出身の相手と結婚し、地元に帰ってきたとしても、生まれた子どもは片親から遺伝子を受け継いでいるので、同様の「遺伝子傾向」を持っているでしょう。
これは「歩くこと」なんかよりもはるかに、その人の健康や寿命を左右すると考えられます。
この要因を無視して、単純に「たくさん歩くと健康になる」と結論づけるのは、(テレビ的にはおもしろくても)早計に過ぎます。
我々人間を含め「生命」は、信じられないほど複雑な仕組みで出来上がっています。
「こうすればこうなる」と簡単に断言できるようなものではありません。
案の定、玉川徹をはじめとするコメンテーターの誰一人、わずかでもそうした疑問を呈する人はいませんでした。(まあ、せっかくゲストにお越しいただいた先生に難癖つけることになるので、できるわけないのですが)。
でも、科学に疎い一般人は、単純な結論ほど鵜呑みにしてしまいがち。訓練を受けていないので、「本当にそうか?」と疑問を持つことをしません。
そうやって「真実かどうかわからない眉唾の情報」が広く巷間に流布するのは、SNSの根拠のないうわさ話が拡散するのと大差なし。
いや、メディアや「専門家」の太鼓判があるせいで、かえって悪影響が大きいと言えるかもしれません。
予断ですが、玉川氏は相変わらず「因果関係と相関関係」をよく理解されていないようです。「因果関係が潜んでいる場合があるので相関関係を読み取ることが大事」と力説されていましたが、安易に飛びついた「疑似相関」のせいでさまざまな不幸が生じてきた科学の歴史をしっかり学ぶべきです。
閑話休題。
私は決して「歩くことは健康によくない」と言っているのではありません。
健康に良い影響を与えるという信頼できるエビデンスが多数存在することも事実。なので、先生の結論には首肯しますが、その論拠には疑問符を着けざるを得ません(ここで「結論が合っているならどうでもいいんじゃね?」と思われた方は、残念ながら科学の素養が皆無です)。
ただ、せっかくのビッグデータを地域別に整理してしまうことに問題があると問題提起しているだけです。
そして、新型コロナ騒動のときにも、「専門家」を名乗る方々が同様の失敗を繰り返していたことを再度指摘したいのです。

