疫学調査を行うなら、サンプル数は多いほうがよい。

 

どれほどランダムに被験者をグループ分けしても偏りが生じるのは避けられないため、「個体差を平準化」するにはサンプル数を増やすしかない。それによって「違い」を相殺するわけです。

 

例えば、「男7女3」の計10人の集団をランダムに二等分すると、「男性のみ5人」の組が出来てしまったり、うまく分けても「男3女2」と「男4女1」の組み合わせになってしまいます。母数が10人ぽっちでは、その「女性1人の差」が強調されてしまい、パーセンテージを大きく左右するおそれがあります。

 

 

最近、主に米国発の研究で

 

コロナワクチンががんに効く

 

という論文記事を見かけるようになりました。

 

果たして本当でしょうか?

 

この種の記事は、決まって対象者の総数が数十人~数百人程度で、調査期間も限定的です。といっても、コロナワクチン自体が登場してから、ほんの数年なので、致し方ありませんが。

 

科学的思考に疎い人々は、簡単にその手の「朗報」に飛びつくことでしょう(ワクチンを接種してしまった自己判断の正当性を得たいという願望も後押しして)。

 

でも、待って。

 

まず、数百人程度の研究では規模が小さ過ぎます。個人差を打ち消すためには、もっと多くのサンプルが必要です。

しかも、ほとんどの研究が「特定のがん」だけを対象に行われていて、作為的な臭いがプンプンします。

 

要するに、

 

さも効果があるように見える「都合のいい部分」だけを切り取っている可能性が高い

 

ということです。

 

 

私は専門の研究者ではありませんが、実は膨大な数のサンプルを手にしています(なおかつ、製薬会社から一円たりとも頂いていない)。

その数なんと1億人! たった数百人どころの話ではありません。

 

それは「日本人全体」です。

 

我が国では、1億3000万人の8割、およそ1億人がコロナワクチンを接種しました。研究調査を行うには十分過ぎる数でしょう。

 

もし本当に「コロナワクチンにがんを抑制する効果がある」なら、接種が開始されて以降、日本におけるがんの発症率・死亡率が急激な減少傾向を示していなければいけません

 

現実はどうか。

減少するどころか増加傾向にあり、しかも希少がんと呼ばれる、まれな病態のがんが増えているとのこと。

 

この事実一つだけで、

 

コロナワクチンががんに効く

 

というのが、与太話以外の何物でもないことは明々白々。

 

「ネイチャー」に載ろうが「サイエンス」に載ろうが、耳を貸す必要はありません。

だって、「都合よく切り取られたデータ」が、現実に観測できる世界をまるで反映していないのですから。

 

 

 

自分が現在いる場所を正確に知るためには、目に入る情報だけに頼ってはだめ。

常に全体を見回す「俯瞰的視点」が求められるのです。

 

 

 

 

 

 

トキソプラズマという寄生虫をご存じでしょうか。

 

本来はネコ科動物を最終宿主とし、その体内で有性生殖を行うのですが、ほぼすべての哺乳動物に寄生・感染の可能性があります。

 

人間も例外ではありません。というか、実に人類のおよそ半分が感染しているという研究もあります。

猫のフンに潜むトキソプラズマを経口摂取した羊や豚、牛などの肉を食することで、人間の体内にも移行するとされています。

 

もっとも、感染したところで症状はほぼ皆無。せいぜい数日間の風邪様症状で回復します。なので、よほど免疫状態が悪くなければ、かかったことにすら気づきません。

 

健康な人なら怖がる心配はないのですが、近年、なんと「人間はトキソプラズマに操られている」という驚くべき説が登場しました。

それは、こういう実験から明らかになりました。

 

猫のフンからトキソプラズマを摂取して接種してしまったネズミ。トキソプラズマは、ネコ科動物の体内でしか有性生殖を行わないので、ネズミの体内では子孫を増やすことができません。種の繁栄のためには、どうにかして猫の体に戻る必要があります。

 

そこで、トキソプラズマは驚くべき作戦を採用しました。

ネズミの神経系に侵入し、恐怖心を取り除くようになったのです。

実験では、トキソプラズマに感染していないネズミが猫の気配を察知しただけで逃げたり隠れたりするのに対し、感染したネズミは天敵である猫の前を平気でうろちょろします。その結果、あっけなく猫の餌食となってしまうのです。

猫が捕まえたネズミを食べることで、トキソプラズマは、めでたく猫の体内に戻ることができました、というお話。

 

もう一つ。

ロイコクロリディウムという寄生虫は、鳥類の体内で増殖します。鳥のフンと一緒に体外に排せつされ、地面に落ちますが、そのままでは鳥の体に戻ることができない。

そこで、カタツムリを利用するという作戦に出ました。

カタツムリは葉っぱといっしょに、そこにこびりついたロイコクロリディウムの卵も食べてしまいます。

カタツムリの体内で孵り、幼虫となったロイコクロリディウムもまた、カタツムリの神経系を操ります。目の突起部分に侵入し、植物の高い先端へと誘導していきます。

ロイコクロリディウムに感染していないカタツムリが、身を守るために葉の裏に隠れるのとは正反対に、堂々と姿を誇示するようになるのです。

もちろん、そんな状態では上空を飛ぶ鳥に簡単に見つかり、あっさり補食されてしまいます。

かくして、ロイコクロリディウムは再び鳥の体内へと戻るわけです。

 

いやー、生態系ってホントによくできていて、おもしろい!

 

 

トキソプラズマの話に戻りますが、宿主の「恐怖心を取り除く」という神経作用は、なにもネズミだけに限らないことがわかってきました。

我々人間も、トキソプラズマに感染すると、恐怖を感じにくくなってしまうのです。

皆さんの身の回りにも「豪胆」「怖いもの知らず」みたいな人がいませんか?

また、高所作業やスタントマンなど、多くの人が怖がる仕事に就いていたり、絶叫マシンやスカイダイビング、バンジージャンプを趣味にしている人たちもいます。

彼らは「勇気がある」と評されますが、もしかすると、トキソプラズマに操られているのかもしれません。

 

 

前回の記事で

 

近年、熊の行動が変わってきた

 

のは、人間が駆除しないことで「ずうずうしい遺伝子」が優勢になってきている可能性を取り上げました。

つまり、人里を漁ったほうが生存に有利に作用する「自然淘汰」の結果である、ということです。

 

今回は、さらなる可能性として

 

トキソプラズマの影響

 

を挙げておきたいと思います。

 

熊もトキソプラズマに感染します。

その結果、恐怖心の薄い=人間を恐れない熊が増えているのではないか。

だとすると、いくら熊鈴を鳴らそうと、爆竹で脅かそうと、熊スプレーをかけようと、学習放獣をしようと、その「トキソ熊」は必ず人里に戻ってきます。

熊自身は嫌だと思っても、脳を乗っ取った寄生虫の指示に従うしかないからです。

 

そして、

 

 熊を狩る

→その肉をペットフードに加工する

→加工処理が不十分だと、トキソプラズマの卵が猫の体内に取り込まれる

 

というルートができると、トキソプラズマは(人間を利用した)新たな「繁栄サークル」を手に入れることになります。

 

射殺した熊をよく調べて、トキソプラズマ感染が起こっていないか確かめる必要がありそうです。