懐かしさは年齢と共にセピアになる

街は再開発の波で真っさらになる

田舎は過疎化のせいで緑に還る

記憶の更新にいつも追われる

 

病室の窓に映る母親の顔は

僕の調子が悪いと幼く見える

子供が楽しそうに話しかけるのは

生命の起源に一番近いからか

 

日常と戦う人々の顔つきは

穏やかだとは口が裂けても言えないけど

生きてる事を讃えようとするのであれば

さっき見た窓に映る僕が笑っている事だろう

 

 

 

 

 

木枯らしにさらされた青い夏の輝き

化粧の崩れた木々の群れに

鳥が餌を探して飛び回っている

 

雪ってどんな形?

産まれたばかりの赤ん坊はまだ知らない

暖炉の灯が気に入ったらしく

色んな夢を見ながら眠る

 

木枯らしの歩道に咲くのはダリア

冬の街並は雪がないと暗い

待たなくても四季は巡っている

 

雪ってどんな形?

歳を幾つ重ねた大人もよく知らない

師走を駆け抜けながら今年こそ

子供達に教えてあげよう

 

 

 

 

 

案山子は空を見上げない

水田の波紋で天気を見る

近頃は覚えの良いカラスが

まるで人間の様な悪戯をすると

老婆に呟くのを聞いた事がある

表情を描いてくれる人もいる

その人の心が私に刻まれる

 

こけしは空を見上げない

家の中の声で天気を見る

近年は見覚えのない物だと

まるで人形の様な怨念があると

SNSに呟かれるのを聞いた事がある

表情を見てくれる人もいる

その人の心が私に映し出される

 

案山子とこけし

待ってる待ってる

平穏で特別な毎日を

願ってる願ってる

時に役立たずと言われようとも

 

 

 

 

 

争い事がなくなればいいと願う敗北者の弁は

優勝した者の2割程度しか理解してくれない

南風が寒さ続きの冬の日に吹けば

喜ぶ人 半分 煙たがる人 半分

溶けた雪が次の日凍るのが怖い

 

優勝と敗北

何を基準に争うのか

決められた物事に精一杯の努力をぶつける

心をひたすら争うのか

 

敗北者は北風に吹かれて

がむしゃらに寒さに耐えて

春の日射しに恋心を抱きながら

また昨夏の優勝者と争えばいい

 

 

 

 

 

幸せを探そう

かくれんぼみたいに

神社の境内に潜んでいるよ

猫が歩く道を辿ろう

普段と違う視界を知ろう

 

昔話では

老人も楽しそうな顔をしてた

近所の人たちが定期的に

寂しさを持ち寄って集まった

時代が感情の形を変える

 

全ての情景に

ひとつの心が宿る

幸せの探し方を見つけよう

コツをつかめば日が昇ることでさえ

笑える情景が生まれる

 

 

 

 

 

歪な形をした林檎の絵を描いた

人の優しさの裏側によく似ていた

甘い蜜を吸い続けた蜂が

巣に戻り甘い蜂蜜を産むとは限らない

 

裏の裏は表になる事を知って

人の優しさに少しだけ触れてみる

同じ景色を違う形で見ると

思い出が上書きされる瞬間に戸惑う

 

空っぽの花瓶に一本の薔薇を挿す

もう一方の花瓶には束のカーネーション

どちらも優しさの反面に値するから

人の出す答えはいつだって曖昧なまま

 

 

 

 

 

人が皆

青空に繋がれていると思うとき

君の呼吸は漣のように落ち着く

世界に国境があることを空だけは知らない

 

人が皆

地球に縛られていると思うとき

君の呼吸は地震のように揺れる

孤独が何故存在するのかを誰も知らない

 

人が皆

心に愛されていると思うとき

君の呼吸は風のように荒くなる

生きるという確かな音を心臓だけが奏でる

 

 

 

 

 

居間まで伸びる太陽光

今まで感じなかった

昼間の花火を見たせいで

月は夜と勘違いして現れた

 

誰もいない部屋にひとり

懐かしい唄を口ずさんでは

まるで思い出に恋したみたいに

鼓動が青春に似てくる

 

寂しさの質が変わってきて

涙には何通りかの道がある

出会いと別れはいつだって巧妙に

訪れるものだけれど

 

寝転がってばかりもいられない

扉は自分で開けるもの

布団の上で丸める猫を見て

急いで部屋の温度を確かめている

 

 

 

 

 

 

孤独に寄り添うとき

人は少しだけ臆病になる

思い出の迷路に彷徨う夜は

笑い方さえ忘れることもある

溶けないグラスの氷はまるで

煮え切らない後悔を表しているみたいで

 

孤独に寄り添うとき

人は少しだけ自由になる

飴玉の袋を解いたように

すぐにべたつく言葉を並べて

誰のためでもない時間を

地球儀を回すように遊んでいるみたいで

 

朝日が転がってきて

孤独は心の問題へと変化してくる

真の孤独に寄り添うとき

人は扉の向こうに光を求めている

 

 

 

 

 

出会う事への運命と偶然

別れる事への勇気と恐怖

優しさから遠く離れて街を彷徨えば

満月は雲隠れして新月の夜と化す

 

失う事ばかり増えてゆく毎日で

それに五感が慣れて勘違いする真実

優しさから遠く離れて人を見つめれば

星の灯は雲隠れしてただの暗闇と化す

 

愛する物ばかりを救おうとすれば

本当は遠ざかってしまう平和だったり夢だったり

たまには生まれたての優しさを持って目を凝らしてみよう

忘れかけていた言葉が見つかるはずだから