前回から続く
前夜にしこたま飲んでバッチリ寝落ちした私だが気にしない。酔った姿は家族にとって見慣れた立ち居振る舞いだろうが妻のお母さんには非常に珍しかったようで、翌朝その姿をチクチクいじられてしまった。
朝は7時半に朝食の準備ができるというので全員その時間に合わせて各々の朝を迎える予定だった。しかし、息子が朝風呂を浴びると言って6時くらいに起きてゴソゴソしだした。それにつられて全員が起きる形になり、私も朝風呂を浴びることにした。
前日に宿泊した宿でも朝風呂を浴びた。凛と張りつめた冷たい空気の中に入る露天風呂には独特の感覚があり非常に心地よいものである。そのような話を息子としていると妻と娘も朝風呂を浴びることなった。お母さんは部屋で待機するようである。
この宿では時間帯によって男風呂と女風呂が入れ替わるスタイルだったので朝に入る風呂は昨日と違ったのでこれまた非常に良かった。平日であり宿泊客が少なかったのでこの朝の風呂も息子と二人で貸し切りになった。最強の朝なのである。
二人きりで入っている風呂なのだが、なんだか遠くの方で子供の声が聞こえてきた。息子がそのように言うので耳を澄ますと確かに聞こえたような気がする。しかし、仮に心霊現象だとしても大きな窓から朝日が燦燦と降り注ぐ明るい浴場では怖いという感覚が出てこない。「座敷童だろう」と笑いながら湯船で天井を見上げた。
サッパリ気持ちよくなってお腹もすいてきたぞ。髪を乾かしたりしていると朝食にはばっちりの時間になった。
朝食も前夜と同様個室で準備されているそうである。
ドーン!
ザ・朝食である。
息子のご飯はやはり大盛りによそっていただいた。普段私は1日1食主義なのだが、このような時は思う存分食べるようにしている。息子に触発されてしまい羽目を外しておかわりを3杯もしてしまったが気にしない。この旅行から毎日膨満感に襲われるという副作用を発症したが楽しい旅行なので仕方がないのである。
皆で朝食を食べながら、息子が先ほど風呂場で体験した心霊現象のような子供の声の話をした。すると娘が大笑いしながら話し始めた。
「あまりにもお風呂が素敵だったので、速攻でおばあちゃんを呼びに行って、3人で入ったの。そこでお兄ちゃんの名前を大声で叫んだからその声だよ!」
心霊の正体が明らかになった今、息子は安堵の表情というよりは娘の行動に呆れて苦笑い、および怖がり男児と思われないように凛々しく眉間にしわを寄せて話を無理やり終わらせるのであった。
ゴチソウサマでした。腹が膨れすぎて動きづらくなった体をノソノソと動かし、無料で振る舞われているというモーニングコーヒーを飲みにロビー横にあるカフェへと向かった。準備されているサーバーから注いだコーヒーを飲んでいると、我々が座っている場所の横は昨日子供たちとお母さんで白熱した試合が行われた卓球場だということが分かった。お母さんは初めてやったということなのだが、これが非常に上手なのである。息子は何度かやったことがあるようで、すぐにコツをつかんで一方的な試合運びになった。しかし娘とお母さんが互角のレベルくらいだったので激闘が長い間続いた。娘は昨日のその卓球が非常に面白かったようで、またやりたいと言い出した。フロントに聞いておいで、と促したあと、しばらくして残念そうに娘が返って来た。
「15時からしかやれないんだって。」
昨日、特に楽しそうにラケットを振り回していた娘の姿を思い出すと、やらせてあげたい気持ちはやまやまだがルールなので仕方がない。コーヒーを飲み干すとみんなで部屋に戻った。
部屋から見下ろした景色。チェックアウトの時、支配人のような人に聞いたのだが、山の手前に煙って見えるのは朝モヤでもなんでもなく、花粉だそうである。そういえばなんだか花粉症ではない私なのに顔がヒリヒリして目が粉っぽい気がしてきた。そろそろ私も花粉症デビューかな?
名残惜しいがチェックアウトの時間である。10時に宿を出て昨日お母さんを出迎えた上毛高原駅へ今度はお見送りのために出発である。昨日通って来た道と違う道を通ってゆっくりのんびり走ることにした。途中で滝があるという案内があったので立ち寄ることにしたのだが、山の中にある駐車場まで来た時点で妻が熊が出ると怖いと言いだし、車から一歩も出なかった。そんなことを聞くと私もなんだか怖くなって、車からあまり離れない位置で滝を探してみるのだが全く見えないので滝はあきらめることにした。怖がり一家なのである。
二日連続でやって来た上毛高原駅。
お母さんは12時45分発の新幹線に乗る。
手前は高崎、次は越後湯沢というあまり距離感覚がつかめない場所である。
ホームの端まで来てパチリ。東海道新幹線は車両の端から端まで400メートルあると聞いたことがあるが、上越新幹線も同じくらいの長さなのだろう、非常に長いホームである。
ああ、ついに別れの時が来た。お母さんを迎えてから見送るまでちょうど24時間だった。あっという間で短すぎる。次回は2泊で計画しようと家族全員で話しながら別れを惜しんだ。
またすぐに会える距離なのだが、子供達の部活やイベントなどで、なかなか会えないのが現実である。毎度お別れの時はお母さん、妻、娘が涙して、それを横目に私もしんみりとなるパターンが続くのだが今回も同じ。
「では、また会いましょう!」
全員でがっしりと握手を交わし、乗車した車両の窓際の席にお母さんが座る。動き始めた新幹線の車窓にあるお母さんの顔が見えなくなるまで全員で手を振り続けた。ああ、やっぱり別れは寂しいね。俯いていた娘がそう言って顔をあげた。
さあ、今度は我々が東京まで無事に帰る番だ。
お疲れさまでしたの群馬家族旅行は、これにて終わりなのである。
あー、楽しかった。
完
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ついに4連休が終わった。
4月になると猛烈に忙しい毎日が始まるので、寂しさこの上ないのである。
こうなったらコンチクショー!
エエィッ!ヤケ酒だ!
ビールをこよなく愛する皆さま
であるからして
やっぱり今宵も
キンキンに冷えたビールで
乾杯ッ!
なのである。
ムフフフフ。











