ついにというか、やっぱりというか、、、

やはりこの日がやって来るのだなと、そう思った。訃報の知らせはある日突然やって来るとよく聞くがその通りだ。悲し過ぎる出来事。


生前は大変お世話になった。いつでも我々を暖かく迎え入れてくれた。この家に越して来た時に知り合ったので長いお付き合いをさせていただいたのだ。


かなりお年を召されていたので老衰だったのだろう。理由までは聞かなかったが、お疲れ様でしたと言った。口に出して。


しかし心の中は違う。老衰と言われても私には納得できない。もう蘇生術のような施しようは無いとその人は言った。電話の向こうで。






我が家の給湯器がついに壊れた。私がシャワーを浴びている時にだ。給湯器。ここではQちゃんと呼ぼう。Qちゃんは私の背中のあたりで力尽きた。その体温はどんどんと低くなってゆき、そして最後は氷のように冷たくなった。


おい!大丈夫か!?こんな所でどうしたというんだ。死ぬな!死なないでくれ!まだまだやり残した事があるはずだ!せめて、せめて、こ、この私だけでも、お、送り届けてくれないかい、、、切実。


Qちゃんはそんな私をよそに静かに息を引き取った。浴室にある心電図リモコンが無機質に点滅している。ダイイングメッセージなのか「112」の文字だけがこの世に残された。



笑ってほしい。甘く見ていた。先日、給湯器が怪しい事はすでにブログに書いていた。



そしてついに壊れた。夜の21時頃だったか。私はとりあえず最後までシャワーを浴びる事ができたので、なんとなく楽天的に構えていた。翌日は休みだったこともあり、家族も今日くらいは風呂に入らないで良いだろうと。1、2日は近所のスーパー銭湯に行こうかな?などと少し楽しんでいるような自分もいた。


風呂場から出ると家族にその事を告げてPCを開いた。家族は犬が怒った時に見せるような「ガルル〜ッ」と言いながら歯茎丸出し顔で眉間に皺を寄せながら私を見た。おお、わ、私は信頼されている。汗


とりあえずもう遅い時間なのでネットに出て来る給湯器交換業者のサイトを片っ端から見て見積もりを送るようメールした。6社ほどが我が街でも対応してくれそうだった。CMでよく見る会社も入っている。メールを送り終え一段落したので心地よく晩酌し、その日は眠った。



翌朝起きると給湯器が壊れたのが夢だったのではないか?もしくはまたお湯が出始めるのではないか?と思い、洗面所で顔を洗う。しかし出てくるのは氷のように冷たい水だけだった。夢じゃなかったのだ、、、くそっ。


10時を過ぎても見積もりのメールが来ない。多少の焦りを感じて私が勝手に第一候補にしていた見積もりが安くて在庫もたくさんあると書かれていたサイトの業者に電話してみることにした。


女性の声が聞こえる。私は昨日見積もり依頼した事を説明すると焦った様子で答えが返って来た。

すでに送ったはずなのだがもう一度送ります、と。要は誤送信していたようだった。な、なんということを、、、こんなところで怒ってもしょうがないので見積もりを待つことにした。


そうこうしているうちに他の業者からも何件か見積もりが届いていた。電話をした会社からも届いた。中身を見てみると、、、


在庫は持っていないのでメーカー問い合わせ後、その返事次第で取り付け日を相談させてほしい、最速でも二週間程度かかる、といった内容が全ての見積もりに書かれているではないか!


私は焦りの色を濃くする。さっきまでグレーだった焦りの色がこげ茶色くらいの焦りになった。家族には口が裂けてもこんな納期内容の事を言えないのだ。どうしよう。私はリビングの上に座禅を組んで両手の人差し指をペロリと舐めてから頭の表面にクルクルと円を書いた。


ポクポクポクチーン!

新右衛門さーん!スマホーっ!スマホ持って来てーっ!

とんちんかんちん のんべえさんは、片っ端から業者に電話することを閃いたのだ!最初からそうしろっ!


どこも同じような内容の回答だった。焦りが増す。家族は今日にでも給湯器がつくのではないか?と思っている。水風呂なんて入れる季節ではない。それは死を意味するキーワードだ。


4軒目の電話。営業歴12年目です、ハイ、と言った感じの好印象男性が出た。サイトからLINE登録して給湯器や風呂場の写真を送ってほしいと言ってきた。私は速攻で対応する。そして相手からはお待ち下さいというLINEの返信が来て、そこからパッタリと連絡がなくなった。


私は気を取り直して電話をかけまくる。7軒ほどかけただろうか。タイミングが悪いことにこの日は休日でメーカーが休みだから在庫確認ができず、返事は明日になるという業者ばかり。ついに諦めムードになり近くの数軒あるスーパー銭湯の情報などを調べ始めた。


距離的に行ける風呂が近所に3軒ほどあった。料金を見ると一番近いところが箱根高級旅館の日帰り温泉よりも高い値段だった。1日なら良いかもしれないが数日通う金額では無い。残りの2軒は現実的な料金だったのであらかた行く風呂は決まった。


家族にその事を説明すると、主に女性市民から猛烈な非難を浴びた。自分だけ昨日シャワーを浴びておいて呑気なこと言うな!はやく給湯器をつけろ!要約するとそのような事が書かれたプラカードをもって家の中を独裁国家のマスゲームのように行進しているようだった。ウゥッ、、、



と、その時である!私の電話が鳴った。見るとLINEのやり取りをした業者の営業君ではないか!私は家族に「静かに!」という意思の目配せをして電話に出た。


「ハイ、ハイ、ハーイ」


家族が固唾を飲んで私を見守る中、電話を切った私の言葉に注目が集まる。


「非常に残念なお知らせです。。。明日の午後、取り付けに来るそうです、、、」


ふざけて家族にそう伝えると、家族全員が一斉にバンザイした。


「やったーっ!」


私に対するデモ隊の列は歓喜に沸き、cornコールが鳴り止まない。マウンドの中央に連れて行かれ、ヌートバー選手の次に胴上げされたのは私なのである!みなさん!アホか。


よく調べると、我が家のQちゃんは現役生活27年間のベテラン中のベテラン。いつあの世に行ってもおかしくない骨董品だったのだ。業者に在庫があり、2種類あるうちのランクが低い方しか我が家にはつけられないそうだ。私がリクエストしていた機械だと風呂桶ごと改造しないと付けられず、工事完了まで2週間ではきかないだろうと言われた。1秒でも早く暖かなお湯を手に入れたい我が家に選択の余地などない。なんでも良いから明日取り付けられるモノをお願いしたのだ。


この日は夕方から息子が小学生の時に入っていたサッカークラブの親子が集まる同窓会が開かれる日だった。楽しみのその前に家族でスーパー銭湯に行って同窓会に出ることにした。


翌日、無事に業者がやって来て我が家に新しいQちゃんが仲間入りした。


お湯が出るって本当に素晴らしい。当たり前の事なのだが、、、




同窓会はプレミアムモルツだった!



久しぶりに見た顔、大人は変わらず、子供は全くわからないくらい成長していた!









同級生の中にはフットサルの日本代表に選ばれた子や、Jリーグの下部組織で活躍する子もいた。我が息子にも頑張ってもらいたいものである。


【この日のビール】

中ジョッキ:7杯

ロング缶:1本

芋焼酎ロック:2杯


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T川氏との反省会を開く事が決定された。

ビールをこよなく愛する皆さま。


まだまだ乾杯は鳴り止まないのである。

ムフフフフ。