三木ネツレンのすべて
(旧・三木熱錬工業所)
【2023年7月20日 追記】
芝浦製作所向けのOEMスパナを見つけました。
⇒ 詳細は、本稿内のこちら。
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作業現場での工具に強みを持つ三木ネツレンのスパナを解説します。
1952年にスパナで初のJISを取得しています。(6社同時取得)
国内で一番歴史のある金物の街、兵庫県三木市(刀の播州三木)で明治3年に鉋および鋸の生産を始めた歴史豊かな企業です。
1967年に三木熱錬工業所から三木ネツレンに社名変更しています。
なお、ネツレンは大径スパナが主流ですが、私のコレクション置き場の関係から小径サイズの写真ばかりになります。
1.自社商品
① JIS取得以前モデル(1947年~1952年)
三木ネツレンのホームページ/会社沿革によると、1947年にスパナ専業メーカーに転換、1952年にスパナでJIS取得と説明されています。
したがい、JIS取得以前のJIS無しスパナがあるはずです。
しかしながら、三木ネツレンには記録が残っていないとのことで、どのようなスパナであったか不明です。
次の②のベースモデルになったと仮定すると、表面に"NETSUREN"、裏面には"STAMP FORGED"とだけ刻印され、スパナは真ん丸(または卵型)で、フラットパネルだったと勝手に推測しています。
↑第1号スパナの推測イメージ写真
※次の②の加工写真(実物ではありません)
② 初期モデル(JIS認定番号表示)
JIS認定番号"1976"が刻印された1952年製で、入手可能の範囲では三木ネツレンで一番古いモデルだと思います。
"1976"を製造年と勘違いしてしまいますが、25年後には西暦に追いついてしまうとは考えなかったのでしょう。
【JIS認証取得について】
・1952年11月10日に初のJIS-B4630認証スパナとして三木ネツレンを含む6社が同時取得しています。
(当時は、三木熱錬工業所という社名でしたが、呼称は三木ネツレンで統一されていました)
・JIS認定番号が"001976"であることから、表面にJISマークと共に"1976"が刻印されています。
・認定番号の表示が義務づけられていたとの認識に基づき、最初の頃だけ表示させていたとのことです。
・ただし、同時取得した6社の内、昭和スパナ製造(認定番号:001974)とKTC/京都機械工具(同:001977)にはJIS認定番号付きモデルは無く、必ずしも義務ではなかったようです。
・但し、大阪鍛工(001978)、服部スパナ(001979)、東亜鍛工所(001980)、さらにその次にスパナでJISを取得した池田工業(002174)は三木ネツレンと同様にJIS認定番号を表示しています。
・義務であったかどうかは別にして、当時JIS認証取得は工具メーカーにとってステータスだったでしょうから、宣伝のために表示した意味合いが強いと推測します。
【製造方法表示について】
・製造方法として"DROP FORGED"(落とし鍛造)と表示するのが一般的ですが、三木ネツレンだけが"STAMP FORGED"と表示しています。
・ホームページに製造機材として『加圧式エアードロップハンマー』が紹介されていて、ドロップながらエアーで加圧するからスタンプなのかもしれません。
【製作番号(4桁、5桁)について】
・JIS認定番号の"1976"だけでなく、ネツレンのJISモデルには必ず4桁と5桁の数字が付随していて、時代と共に数が増えているように見えます。
・私が手に入れたモデルでは"1976"の次は"5120"で、途中で5桁になって、現行モデルは片口で"68015"、両口で"73111"となっています。
・カタログには『製作番号』と説明されていて、累積で番号は大きくなっていますので、製造ロットを示しているのかと思います。
③ 片口/初期モデル(JIS認定番号表示)
・片口スパナにもJIS認定番号"1976"モデルがあります。
④ 別のJIS認定番号表示モデル(OEM?)
・表面に"SSS"と"1976"と刻印され、"NETSUREN"は裏面に移動しているモデルを見つけました。
・OEMスパナの定石では、表面がブランド名、裏面がOEM製造元になります。
・したがい、”SSS"というブランドに三木ネツレンがOEM供給したと考えるのが素直です。
・ただし、他に”SSS"と刻印されたモデルは見つかっておらず、また単にアルファベット文字を並べただけであり、ブランド名っぽくありません。
・”SSS"を使ったブランドとしてペンチ製造の三和製作所"サンエス印"がありますが、3つ並んだ◇"S"ですので、このモデルは別のものだと思います。
・JISのクラス分け(硬さ)を示す"N"と"H"表示がありませんので、クラス分けが規格設定されるまでの間、1952年~1955年の製品と思います。
・三木ネツレンのスパナとしては唯一の打刻刻印モデルです。(他は全て浮き出し刻印)
☆許可番号/001976の表示について
・OEM製品だとすれば、製造者表示として裏面に"NETSUREN"が刻印されていますので、JISマークさえ表示されていればJIS認定番号の"1976"は不要だと思っていたのですが、JISを規定している工業標準化法に以下と定められていました。
・『JISマーク、規格番号/B4630、等級、許可番号/001976、製造年、製造者表示は記載しなければならないが、記載事項の省略申請が認められれば省略できる』
・このモデル④の場合は、B4630と製造年が省略され、製造者NETSURENと許可番号/001976が規則通りに記載されていることになります。
・したがい、規格番号/B4630と製造年については非表示の申請し、認可されているのだと思います。(等級は初期スパナJIS規格には未設定)
・初認証6社で見ると、昭和スパナとKTCは許可番号の非表示も申請し、認可されているのでしょう。
↓工業標準化法施工規則 第65條(記載と省略)
⑤ フラットパネル
・"1976"が表示されていないフラットパネルです。
・一番上①の後継モデルで、1950年代中旬から後半の製造と思います。
・裏面の"STAMP FORGED"が、一般的な"DROP FORGED"に変更されています。
・裏面にBSF規格ねじと思われるインチサイズが併記されています。
(BSF9/16=ボルト2面幅23.37mm、BOLT1/2=20.83mm)
*BSF…英国の古いトライアンフやノートン用で、ブリテッシュ・スタンダード・ファインの略 ⇒ 換算表
・ちなみに、この"Bolt"表示は、他社では見たことが無く、三木ネツレンだけのようです。
↑ここまでは、正立文字"NETSUREN"、真ん丸なスパナ
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↓ここからは、斜め文字"NETSUREN"、つば付きまたはやり型スパナ
⑥ つば付き 第1世代
・ネツレンと言えば、つば付きスパナです。
・この第1世代に始まり、現在の第3世代まで約65年間、変わらぬ形状で販売続けられています。
・裏面の"REG. DESIGN"とは意匠登録のことで、 No.137237"は三木熱錬工業所(現三木ネツレン)が意匠登録を行った登録番号です。(出願1957年2月、登録1958年5月)
・この刻印表示は1972年頃まで継続していたとのことですので、第1世代は1957年~1972年となります。
・ちなみに、同じ形状の片口スパナも同時に意匠登録を行っていて、登録番号は"137228"。
⑦ つば付き 第1世代/片口
・同じく"REG. DESIGN"と共に"No.137228"が裏面に刻印されています。
・片口の第1世代は、右端に孔が開いたデザインになっていて、登録図の通りです。
⑧ つば付き 第2世代
・つば付きスパナの第2世代では裏面の"REG.DESIGN"が無くなり、代わりにスパナのJIS規定番号である"JIS B4630"が表示されています。
・この第2世代は約35年間(1972年~2007年)販売された後に、次のJQA付きの第3世代に引き継がれます。
⑨ つば付き 第3世代(JQA付き現行)
・三木ネツレンは、JQA(新JIS)を2007年に取得していますので、第3世代は2007年に販売が開始されてから現在に至っています。(JISマークが
から
に変わっています)
・色が黒からガンメタになり、非常に綺麗な外観になっています。
・裏面の"JIS B4630"表示は継続しています。
⑩ つば付き 第3世代(JQA付き現行)/片口
・JQAの片口モデルです。
・判読しにくいのですが、表面"JQA"の次が"JQ0607043"と読めますので、JQAの認定番号は"607043"なのだと思います。
⑪ つば付き /クロームメッキ
・つば付きスパナの第3世代にクロームメッキ仕様の6本組みセットがあります。
・三木ネツレンは産業現場のプロ向け工具を強みとしていますが、クロームメッキで目立つようにして一般市販を狙ったものと思います。
・つば付きでクロームメッキというのは珍しい存在です。
・一般向けと行ってもJIS-H/強力級です。
・JQA認証付きですので、2007年以降のモデルになります。
・現在のホームページに掲載されていますので、現行モデルとなりますが、入手できずにいます。
⑫ フラットパネル/ガンメタ (JQA付き現行)
・上のスパナ⑦はつば付きが基本ですが、一番小さな5.5x7だけはつば付きでは無く、フラットパネルになっています。
・ネツレンと言えば50mmや100mmの大径スパナを思い浮かべますが、こんな小さなサイズも作っています。
↓一番小さなサイズだけフラットパネル
⑬ フラットパネル/クロームメッキ
・上の⑩クロームメッキ6本組みの内、一番小さい6x7だけは⑪と同じようにフラットパネルになっています。
・写真がボケボケですが、早く6本組を手に入れて、差し替えます。
⑭ 凹尖り帯パネル
・同じく作業現場工具に特化していた大阪鍛工のブランド"KING"(下の写真)に酷似したネツレンがあります。
・JIS認証を受けていないため、製造者記号の表示が無く、誰が作ったのか判別出来ません。
・考えられるのは、[1]大阪鍛工製(1982年以前)、または[2]大阪鍛工の鍛造型が三木ネツレンに譲渡されて三木ネツレン製(1982年以降)のいずれかだと思います。
・残念ながら製造時期の表示も無いので、どちらか判別できません。
↓酷似している大阪鍛工モデル
2.OEM商品
OEM-① "大阪鍛工"向け/黒

・製造部門を閉めた後の大阪鍛工に三木ネツレンがOEM供給したモデルです。
・大阪鍛工の規格に合わせる形で裏面に材質を"ALLOY STEEL"と表示しています。
・実は三木ネツレンモデルには何故か材質が表示されておらず、OEM商品ゆえのこと。
("ALLOY STEEL"は単に合金を示しているだけなので、あまり表示する意味はありませんが)
OEM-② "大阪鍛工"向け/黒
・大阪鍛工向けに片口スパナも納めていますが、大阪鍛工スペック(形状)に合わせていて、つば付きや凹パネルでは無く、両口と同じフラットパネルになっています。
OEM-③ "大阪鍛工"向け/クロームメッキ
・一般市販向けのクロームメッキ仕様もありました。
OEM-④ 日野向け
・日野自動車にJIS-Hのつば付きスパナを納めています。
・表スパナ平面に"Hino"ロゴが刻印されています。
・裏面にはインチサイズ(ウイットねじ)が併記されています。
・裏に意匠登録No.が刻印されていますので、つば付きの第1世代になります。
・したがい、1952年~1972年での納入と分かります。
・この期間は日野(日野ヂーゼル工業)がルノー4CVを生産販売していた時期とぴったり重なります。(1953年ノックダウン開始、1958年完全国産化、1963年生産終了)
・当時のフランス車がインチとメトリックのどちらを採用していたかの情報がありませんが、両サイズが表と裏に刻印されていますので、ルノーにも使用可能です。
・したがい、このスパナは日野ルノー4CV用の可能性が高いと思います。
OEM-⑤ 芝浦製作所向け
・芝浦製作所向けのOEMです。
・上の日野向けOEM-④と同じくスパナ部根元に会社名(シバウラ)が打刻刻印されています。
・フラットパネル⑤と同様に、裏面に"インチ+Bolt"の表示があります。
・⑤の場合は、ボルト2面幅が換算表と一致していることからBSF規格と分かるのですが、このシバウラOEMは10mmの裏面が3/16Boltになっていて、BSF規格の3/16(ボルト2面幅8.63mm)と整合しません。
・また、ウィットねじサイズ表示だとしても3/16=11.3mmですので、これもぴったりしません。
・10mmの場合、BSF規格ならびにウィット規格に換算して表示させることに無理があるのだろうと思います。(BSF規格3/16のボルト2面幅は8.63mmになり、これに10mmのスパナを使うのには無理がある)
・裏面の"1.216"が何を示しているのか不明ですが、多くのネツレン製品に打たれている累積番号だとすると、かなり初期の製品ということになります。
OEM-⑥ ヤンマー向け
・ヤンマー向け専用ボディーのスパナです。
・スパナ部の平面中央を窪ませた特殊形状になっています。
・JISがH/強力級では無く、N/普通級になっています。
・古そうな形をしていますが、"NETSUREN"が斜め文字になっていますので、少なくとも1960年以降のモデルです。
OEM-⑦ 【参考】 マキタ
・マキタの片口スパナがネツレンに酷似しています。
・JIS無しのために製造者記号が無く、製造元が分かりませんが、下の比較写真を見る限りではスパナや右側端末形状からネツレン製の可能性が高いと思います。
(製造者記号など客観的に確認できる情報が無いため参考扱いとします)
・なお、マキタスパナは、スパナ厚みが7mmであり、JIS規格の10mmに達していないため、JIS付きにはなっていません。(使用目的を考慮し、JISよりも廉価を選択したのだと思います)
↓ネツレンとの比較写真
・JIS片口スパナ規格表からの抜粋です。
・サイズ21mmでスパナ部の厚みは10mmになっています。
・なお、JIS規格表内の片口スパナの絵がネツレンとそっくりです。
・ちなみに、JIS規格制定時に原案作成委員会のメンバーだった工具メーカーで当時片口スパナを作っていたのは三木ネツレンだけだと理解しています。
【参考】 コンビレンチ

・ネツレンのコンビレンチが1種類だけあります。
・2008年3月までホームページに掲載されていました。
・発売開始時期は不明ですが、1990年頃からではないかと思います。
・つば付きで黒いスパナが主流の三木ネツレンのラインナップに対しコンセプトがかなり異なり、良くも悪くも普通です。
・燕三条生まれのような気がします。(日本の金物2大産地のコラボレーション?)
・詳細はコンビレンチ専用ページのこちらにて。(1年半前に書いたものです)
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☆三木ネツレンについて(ホームページ画像より)
↑作業現場工具であることを示す写真(私のネツレン商品へのイメージはこれです)
↑戦後の初期には"スパナ専業メーカー"と称していましたが、今は吊り上げクランプ等が主流になっています。
↑ネツレンが出荷先として想定している作業現場
↑現行のスパナ商品群
大径スパナが主流で、例えば"O型片口スパナ"には80mm以上しかありません。
この回、終わり


















































