何度も書いているとおり、中学生時代というのはクラス内のカーストが
くっきりとピラミッド型に浮き出るものである。
中川翔子曰く、1軍と2軍と3軍。
1軍は目立つ連中。つまりヤンキー、スポーツマン、お調子モノなど。
2軍は中間の連中。あまり派手ではないが、クラスのなかで平均的にその存在を
認められている連中。ヤンキーじゃないが、勉強もスポーツもそこそこ出来る。
ルックスも平均点あたり。
そしてカーストピラミッドの底辺にいるのが3軍である。
クラスの中でも地味で、勉強もスポーツもダメ。
サバンナ高橋曰く、中学のときイケてないグループ。
オレもこのころそうだった。
ヤンキーはヤンキー同士でたむろするように、3軍も3軍同士で仲良い
グループになってたむろするのが、自然の生態系である。
それをふまえたうえで、中学生のときのある日の昼休みでの出来事。
オレはクラスの数少ない友人でおなじくイケてないやつであるニイハラ(仮名)の
席で、その他イケてない友人2人くらいとなにか話をして盛り上がっていた。
すると、そのとき、後ろから急につんつんと肩を2回つつかれた。
振り向くと、そこにはH子がいた。
H子はクラス内のカーストでいえば、2軍に位置して、とくにずば抜けて可愛い
というわけではないが、クラス内の男子で彼女を可愛いといっている男子は
多少いた。
オレは別にH子にたいして、特別な感情は抱いていなかったが、それでも
女子と話すことがないイケてない男子としては、ちょっとだけ、何だ何だ?
とドキっとした。
H子はオレの顔を見ると、人差し指と親指で、スカートをちょこんとつまみ、
すこしだけ上にあげた。
「今日の下着の色、白なの」
……???
H子はそういうとそそくさとオレの前を去り、2軍女子がたむろしている席へと
小走りで駆けていった。
今の告白はいったいなんだったんだろう。
オレはさっぱり意味がわからなかった。
すると、今度またH子がいる2軍女子軍団の席がなにやらキャアキャアと盛り上がっていた。
今度はその2軍軍団の中にいるI美が、オレの隣りにいるニイハラの名を呼んだ。
I美 「ねえ!ニイハラ!!」
ニイハラ「何?」
ニイハラが反応すると、I美はこういった。
「私を月に連れてって!」
わけがわからないながらも「ヤだ」と即答するニイハラ。
その様子を見て、ドッと爆笑する2軍女子軍団。
ここでオレは事態を把握した。
同時にプライドを粉々に砕かれたのを感じた。
内容まではわからないが、2軍女子軍団は何かのゲームをしていたのだ。
そして、おそらくそのゲームで負けた女子が、クラスの中でイケてない男子の
ところへいって、あらかじめ罰ゲームとして決められたセリフをいって戻って
くるという遊びを行っていたのだと思う。
つまりオレらみたいな女子と会話することを苦手とした男子の純情を
利用されたわけである。
オレが「女は残酷」だと思ったのはこのときかもしれない。
残酷なケン氏のテーゼ。
そういえばアンガ―ルスの田中も昔、まだ名前が知られる前、電車に
乗ってて、同じ車両にいる女子高生ふたりが、すこし離れたところで
こそこそと、「ねえ、ねえ、あそこに気持ち悪い人がいるよ」といわれ、
さらに「どっちかがあの人のところいって、ちょこんと触ってこようよ」
みたいなことをいわれ、キャラを罰ゲームに利用されたことをいっていた。
田中は芸人だから、それこそあとになってのネタのように話していたが、
オレには田中の気持ちがよくわかった。
そう、もちろん全体がそうだとはいわないけど、若いころ、とくに中学から
高校にかけての女子って、そういうイケてない男子にとっては残酷な遊びを
する生物だなって思う。
まあ、もちろん、男だって性格も悪いおブスにたいしてはいろいろいったり
するけれど、それでもやっぱり他人の純情を自分たちの遊びの罰ゲームに
利用したりするのは賛同しかねるものである。
で、なんで今回このエピソードを書くことにしたかというと、ある芸人が過去の
ことを綴ったエッセイを呼んでいたら、オレとまったく同じ経験をしていたようで
ついつい嬉しくなり今回の記事で紹介しようと思ったのである。
その芸人とはオレの好きなヒロシ。
――
ヒロシ、少年時代を振り返る。アイドルに本気で恋をしたり、ノストラダムスの大予言に怯えたり、
ファミコンの登場に学校中が騒いだ、あの頃。80年代に炭鉱の町で育った、エロ心を持ちつつ、
モテたいけれど女子とうまく話せない「ずんだれ少年」ヒロシのおかしくも懐かしいノスタルジックエッセイ。
(amazonから引用)
オレの場合は「今日の下着の色、白なの」といわれたが、ヒロシの場合は、
「昔からずっと好きでした」
といわれたらしい。
女子はそれだけいうと、返事も聞かず走り去ったという。
女性に免疫のなかったヒロシは、その言葉を信じ、トレンディドラマの主役になった気分に
なったと語る。
まわりからヒューヒューとひやかされたらどうしようとか、日曜日にデートするならばどこにゆこうかとか、
とにかく付き合っている光景を思い浮かべ、ありとあらゆる妄想をしたらしい。
ところがその後、告白した女子が仲間に
「私もちゃんと言ったとやけん、ちゃんとしてよ!」といっているのを聞く。
いわれた仲間たちは
「ごめん!絶対無理」という。
するとヒロシに告白した女子が
「罰ゲームなんやけん!ちゃんとやってよ!約束が違うやん!」
といったらしい。
その時点でヒロシはその女子が自分のことを好きで告白したのではなく、なにかの
罰ゲームで自分に告白してきたとしったようだ。
彼女の罰ゲームだったはずなのに、彼女以上にきつい罰を受けさせられたオレだった。
とヒロシは書いている。
読んでいて、「オレも同じような罰ゲームの対象にされたよ!」という嬉しさと、
ヒロシにたいする切なさが入り交じった。
でも、まあオレもこうしてネタとして書いているから、それはそれでいいブログ用の
ネタを仕入れられたとして良しと考えよう。
こういう面ではオレもヒロシもポジティブかもしれない。
しかし、まあ、読んでいると、オレの過去とヒロシの過去は本当に共通点が多いなと
感じた。
太宰治の小説はよく読み手に「これって、オレのことを書いているんじゃないの?」と
思わせるが、ヒロシはそれのエッセイ版。
ずべてがそうというわけではないが、本当にオレ、ケン74の過去をしってて、それに
あわせて同じ経験を書いているんじゃないかなと思う。
ファミコンがまだ世にでる前、知る人ぞ知るカセットビジョンというテレビゲームがあった。
子供のころ、うちの親がそれを買ってきてくれたのだが、その後すぐにファミコンが発売され
またたくまに人気はそっちに持ってゆかれた記憶があるが、ヒロシもまったく同じ経験を
してて、家のカセットビジョンがあったらしい。
ちなみにオレが持っていたゲームカセットは「パックマン」だったが、ヒロシが持っていた
のは「木こりの与作」と「ギャラクシアン」。そこは違っていた。
その他にもヒロシらしいエピソードがたくさん書かれている。
基本は子供時代の話。
ヒロシになる前の斉藤健一(本名)のエピソードだ。
バレンタインにチョコレートを何枚もらったとかいうような自慢話は正直面白くない。
だけど、ヒロシの女性にたいするモテたい願望からくるさっきの罰ゲーム告白みたいな
話は面白い。
他にも「ぽっとん便所」「ラジカセ」「不良に憧れて」など、時代を感じるヒロシっぽい
エッセイがいくつか。
男性は共感できるだろうし、女性は笑えるし、もっと男性の生態をしって
もらえると思う。
面白くてあっという間に読み進み、読み終えたあとは、
「ああ、もう終わってしまった……もっと読みたかったのに」
と思った。
ずんだれというのは九州地方で「だらしない」という意味らしい。
嗚呼、愛すべきダメ男。
たまに登場する本当におススメの本。
コミュニケーション能力が上達する本とか、人脈を広げる方法が書かれた
本なんかより、ずっと読む価値あり。
是非読んで頂きたい。
ヒロシってね、やっぱり下手な成功者とか経営者なんかより、ずっと人の心を
ムンズとつかむ能力を持っているとオレは思う。