島本理生「ファーストラヴ」他 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

 

 

「恐怖のママ友」

つい最近ニュースを観ていたら、そんなテーマが目に飛び込んできた。

ある母親が別の年下の母親を洗脳し、金銭を搾取し、その流れの

結果ひとりの小さな男の子が餓死してしまうという痛ましい事件だが

そこにあるセンセーショナルな背景には興味を持った。

 

 

オウム真理教、あさま山荘事件、酒鬼薔薇聖斗、宮崎勤、木嶋佳苗……

昔から事件に興味があるので、今でもその類の資料書籍が刊行されたら

読んだりすると同時にこのブログでも資料書籍を紹介したり

事件にたいする個人の見解を記したりはしてきたが、正直いうと「事件」に

関心を持つことに多少の罪悪感は持っている。

それらの事件に被害者や遺族がいるからである。

 

最近は和歌山毒カレー事件で死刑判決を受けた林眞須美死刑囚の

長男が書いた本「もう逃げない」を読んだ。

報道されなかったことなども書かれており、なかなか読み応えはあったが

死刑囚の子供となった長男からすれば、自分は悪くないのに家族ということで

マスコミはじめ周囲の好奇の目にさらされることはさぞ、辛かっただろうと思われる。

 

毒カレー事件もまたとても関心ある事件だったが、やはり遺族がいる事件

なので、第3者が根ほり葉ほり(軽く)興味を持つのもちょっとうしろめたい

ものがあるのが事実である。

 

それでもやはり興味を持ってしまうのが人間の当然の心理なのかもしれない。

世の中にはいろんな事件を追うライターやジャーナリストや評論家が山ほど

いるが、その中の純度100%で、似たような事件の再発を防ぐために取材

している人っていったいどのくらいいるのだろう。

きっと、ほとんどいないと思う。

第1にあるものはやはり好奇心で、それに付随して、取材内容などの

発表が次の事件の防止になればいいという程度の考えだろう。

別に批判でもなんでもなく、裁判の傍聴席抽選に並ぶ人たちも根底にある

ものはやはり好奇心だろう。

 

昨年12月に直木賞を受賞した島本理生の「ファーストラヴ」を読んだ。

ちなみにそのときは映画化されるということをしらなかったので、

映像化にあわせて読んだとかいうわけではなくたまたま偶然の

タイミングでの読書となった。

 

詳細はおぼえていないが、主人公である臨床心理士の女性が、

人から依頼されて、父親を殺した女子大生の心理に迫る物語である。

 

――

夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。

彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。

環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。

環菜の美貌も相まって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。

なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?
臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、

環菜やその周辺の人々と面会を重ねることになる。そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは? 

「家族」という名の迷宮を描く傑作長篇。

(amazonより引用)

 

大きな賞を獲得した作品なので、受賞当時からだいたいの内容はしっていたが、

読んでみると、想像していた内容とは構成が異なった。

 

概要だけパッと見すると、ミステリーまたはサスペンスっぽい。

だが読んでみるとわかるが、焦点はどちらかといえば犯人である女子大生の闇ではなく

その女子大生の闇を追う臨床心理士の女性の日常背景である。

 

映画のほうはどういう構成で話が進行しているのかはわからず、宣伝もサスペンスっぽく

演出しているが、少なくともミステリーではないような印象だ。

なので、個人的にはやや肩透かしを食らった感はある。

 

しかし、直木賞受賞作ということだけあり、書評を見ると評価はかなり高い。

一見、主人公女性の日常ライフを淡々と描写、進行させているだけの作品に

見えるが、実はこの作品全体が大きな仕掛けで、作者の投げかけたいことが

隠されているのかもしれない。

 

タイトルの「ファーストラヴ」。

はっきりいうと、最後まで読んだけれど、このタイトルがなにを意味するのか

わからず終わった。

だけれど、全部読んでしっかりとタイトルの意味を理解した人もいるよう

なので、そこはオレがきっと‘なにか’を見落としたのだろう。

 

おもしろいとか、つまらないとかではなく、そのオレが見落したモノが

なにかを教えてもらうために、他の人にも読んでもらいたい1冊である。

(決してつまらないというわけではない。面白いんだけれど結末だけがよく

わからず終わってしまった)

 

 

せっかくなので序盤で書いた和歌山毒カレー事件の林眞須美死刑囚の

長男が書いた本も張り付けておく。

外部の人間じゃなく死刑囚の身内が綴る告白。

長男は母の無実を信じたいが、もし本当に母が犯人ならば

死刑はしょうがないと語っている。

 

 

※この記事はタイマー更新です。