コンビニ人間 (文春文庫)
626円
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学生時代にガソリンスタンドで働いていたように、サービス業のバイト経験は
多少あるが、その勤務先を選ぶにあたって「コンビニ」という選択肢は最初から
最後までなかった。
それは純粋に向き不向きを自己分析出来ていたからだと思う。
今でこそ、商品を通すのがバーコード当たり前だが、高校生のころはまだスーパーは
手打ちの時代だったと思う。
いや、よく思いだしてみたらバイトしていたガソリンスタンドが改装したとき、待合室の
中にコンビニ同様の店を設けたけど、そのときは明らかに手打ちだった記憶がある。
正直、心の中では給油以外に余計な仕事増やしやがって、と思っていた。
バーコードでもただ商品を通すだけならばまだ問題ない。
でも機械の反応というのも決して完璧ではない。
ときどき、同じ商品を2つカウントしているときもある。
よく西友を利用して一気に買いだめとかしているんだけど、会計が終わったあと
なんだかちょっと支払いが高かったような気がするときがある。
改めてレシートを確認してみると、ひとつしか買っていない商品がふたつカウントされて
いたことが2,3回あり金額を多くとられていたので、今支払ったレジへ戻り係の人に
返金してもらったりした。
一品一品がそこまで高くない食料品をまとめ買いした際、みなさんはレシートをしっかりと
確認しているだろうか。
めんどくさくて見てない人も多いと思う。
意外と間違ってて多く支払っているケースがあるので要注意だ。
そして不思議なことに金額が少なく間違っているケースはない(笑)
ただ、こういうとき、客としても会計後「おい、ちょっと待ってくれよ」だと思うけれど、
レジ係のほうもカゴにたくさん商品入れた客が、ずらっと列を作っているときに
一度さばいた客にレジのうしろから、「ちょっとコレ間違ってるんだけど」といわれるのも
面倒である。
もちろん、その責任はレジ係本人に存在するわけだから、そこはしっかりと対応する
のが当然なんだけど、もし、自分がそのときのレジ係だとしたら、もうテンパりに拍車が
掛かって動揺が高速フル回転だ。実に恐ろしい。
コンビニに限らず、スーパーもそうだが、いろいろなケースを想定するとやはり自分には
無理な職業のひとつ。
金を受け取ってレシートを渡すだけじゃないのだ。
いれずみを入れたヤバいやつがレジ横にあるおでんケースの中のおでんをツンツンと
つつきだしたら、それも注意しないといけない。
万引きをみつけたら、追いかけないといけない。
各種公共料金や保険支払いなどの段取りもおぼえないといけない。
うん、やはりオレには無理。これまでも、そしてこれからも。
なによりも不特定多数の人間相手に愛想を振りまくことが苦手だから、もうその時点で
ドロップアウト。
接客業っていうのは、向いている人間と向いてない人間がきっちり2分する業種だと思う。
だから、いい変えればそれを分別する良い基準的な仕事ではあると思う。
普段から「とにかく人と話すのが好き!」「いろんな人と会うのが楽しい!」といっている
人間に限って、過去を聞いてみるとコンビニや飲食店ホールでのバイトや仕事をしたこと
がないといっていたり、またこれからもやりたいというようなそぶりもないことが多い。
そういう人はきっと、ほんとうは孤独派なんだけど、そんな自分を認めたくないから
周囲に言葉でそうアピールして、自分自身も社交的だと思いこむように必死なのかなと。
口でいうのは簡単。
でもそれを現実の作業にすると面倒だったり、自分の不向きを突きつけられる結果も
待っている。
だから実際にサービス業や接客業はしない。
もちろん一概にはくくらないが、あくまでひとつの分別基準になるんじゃないかとは
考える。
オレは自分自身の不得意やストレス起因要素をわかっているつもりだから、
下手に強がらず、できないモノはできないといえる。
同時にプロアマ問わず、モノカキは社交を苦手とするタイプが多いとオレ自身の性格から
そう思っていた。
なので作家の村田沙耶香がコンビニで長い間バイトしていて、しかも本人がその仕事を
好きだといっているのを一番はじめに聞いたときはかなり意外な印象だった。
対人や愛想ばかりの人付き合いが苦手なゆえ、ひとりでモクモクと作業をする仕事を選ぶ
のが作家にあるイデオロギーのベースだと思っていた。
なので村田沙耶香は作家の中でもかなりレアなタイプだと思う。
――
36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。
これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、
清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。
ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと
突きつけられるが…。
「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。第155回芥川賞受賞。
(amazonより引用)
このブログでも村田作品は何度か紹介しているように、彼女は好きな女性作家のひとり
なので、コンビニでバイトしながら作家をやっているということは芥川賞を受賞する前から
しっていたが、本作で受賞したときは、「ああ、やはり受賞すべきテーマで受賞したんだな」
と感じた。
内容も村田ワールドがしっかり繰り広げられてて楽しめた。
コンビニとそこで働く人間がメインなんだけど、純文学だけにビジネス的な視点でとらえた
コンビニの説明とか、さまざまなお客さんがやってきて展開される温かい人間交差点
とかいうような世界観はほとんどない。
メインは主人公の恵子と、バイトの白羽の間の不思議なやりとり。
恋愛でもない。友情ともまた違う。
しいていえば哲学? いや、そこまで大きなものじゃないかも。
読んだのがすこし前なので、もうあまり詳細はおぼえていないが、ここで登場する
白羽という男性。
読んでいた当時の印象で、自分の中に持っている世界観とか世の中に向けた
視線が悔しいけどどことなくオレに似ていた気がした(笑)
個人的な好みも踏まえていえば、読んで損はない1冊だと思う。
興味ある人は是非一読を。
そうそう、関係ないがコンビニといえば、家の近所にあってその前を何度も通っている
にもかかわらず、ローソンだったかファミマだったかいまだにはっきりおぼえていなかったりする。
セブンイレブンは配色が独立しているけど、ローソンとファミマは同じ青系統なのでね。
今回のもう1冊も同じく村田沙耶香。
『地球星人』
地球星人
1,728円
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――
私はいつまで生き延びればいいのだろう。
いつか、生き延びなくても生きていられるようになるのだろうか。
地球では、若い女は恋愛をしてセックスをするべきで、恋ができない人間は、
恋に近い行為をやらされるシステムになっている。地球星人が、繁殖するために
この仕組みを作りあげたのだろう―。
常識を破壊する衝撃のラスト。村田沙耶香ワールド炸裂!
(amazonより引用)
順番的には「コンビニ人間」の次に発行された小説。
これは好き嫌いがわかれるかなあと思う。
こちらのほうが村田沙耶香独特の毒が効いているなあと思えるが、オレは
「コンビニ人間」のほうがずっと好き。
改めて追記
このブログにおいて、紹介する「映画」「小説」「音楽」などは決してすべておすすめ
だとは限りません。
もちろん、本当におすすめだから記事にしている場合もありますが、なかには
ただ単純に最近観たり聴いたりりしたからだとか、とくに好きじゃないけどふと最近思いだした
からだとか、作品全体としてはイマイチだけどその中で一部分だけ印象的で紹介したい
セリフやシーンがあったからなどなど、理由はさまざまです。