池井戸潤SP「ロスジェネの逆襲」他 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

 

 

 

今頃になって就職氷河期に直撃したロスジェネ世代に支援をするとかいって

いるが、支援といってもお役所や就職関連機関にそういう支援をするのが

おそらく現実だ。

子供がもらったお年玉が親のとこで止まるのと同じで、ロスジェネにダイレクトに

支援はない。腹が立つ。

 

大学在籍時から就職浪人時代のことを思いだすだけで腹が立つのに

今になってまた腹立つことをいってくるものだ。

 

心構えとしての良し悪しや、自分にとってメリットがあるかどうかという精神論は

別として、ひとつだけいいたいことがある。

 

「恨みに時効はない」

 

すべての人間がではないが、オレは学生時代と就職浪人時代に人格を徹底的

に破壊してノイローゼ気味にしてくれた企業の面接官たちを永遠に許すことは

できないだろう。

ロスジェネのひとりとして。

 

個性ある人材が欲しいといいながら、個性を否定し、マニュアル人間を愛した

可哀想な人たち……

 

今さらだけど人気を博したドラマ「半沢直樹」の原作シリーズここ最近読んで

ハマった。

銀行だとか融資だとか経営だとかまったくわからず、そもそも企業モノのドラマや

小説自体が難しそうで喰わず嫌いにあったオレが読んでもとてもわかりやすく

なおかつ、スリリングで面白い。

 

活字でここまで面白いんだから、そりゃ、わかりやすい映像になればいうまでもなく

面白いだろう。実際オレはラスト3話しか観てなかったが、それでもじゅうぶん

面白かったからすごい。

 

今回まずはじめに紹介する本はその「半沢直樹シリーズ」の3作目。

『ロスジェネの逆襲』

これはまだドラマ化されておらず原作のみ。

 

――

子会社・東京セントラル証券に出向した半沢直樹に、IT企業買収の案件が転がり込んだ。

巨額の収益が見込まれたが、親会社・東京中央銀行が卑劣な手段で横取り。

社内での立場を失った半沢は、バブル世代に反発する若い部下・森山とともに「倍返し」を狙う。

一発逆転はあるのか?大人気シリーズ第3弾!

(amazonより引用)

 

引用した解説にあるとおり、作品中に森山という半沢の部下が登場するのだが、

彼の過去や心境について書かれている描写が、もう、ほぼオレの代弁なのだ。

 

「就職の面接を受けるたび、プライドも自信もズタズタに引き裂かれながら、不平ひとつ

こぼす余裕もない。そのときの森山は、将来の不安と戦いながら、ただ打たれても這い上がる

だけのつらい日々を耐えるしかなかった」

 

「もう、就職先が一流とか二流とか、そんなことどうでもよくなっていた。どこか自分が身を

置く場所さえ見つかればそれでいい」

 

「身を削るような就職活動をくぐり抜けて会社に入ってみると、そこには大した能力も

ないくせに、ただ売り手市場だというだけで大量採用された危機感なき社員たちが

中間管理職となって幅をきかせていたのだ」

 

いずれも本文から引用。

これでも印象的だった文章のうちの一部分。

で、ロスジェネにとって自分を守ってくれるのは自分でしかない、とある。

3つめの危機感なき社員ばかりというのは、最初の会社というか移動先や転職先だった

けど、やはりそうなんだろうなとわかってくれるオトナがいたのはある意味、嬉しかった。

 

そして、声をあげないだけでオレ以外にも共鳴、共感しているロスジェネはきっとたくさんいる。

 

同じ世代でも、要領のいい連中は面接官相手に笑顔を明るさを安売りして、とっとと

内定をもぎとっていたりしたが、個と信念を大事にし、嘘をつけない人種は苦労した。

友人の知り合いでは自殺したロスジェネもいた。

ただでさえ氷河期だったうえ、マニュアル通りにアピールできないオレらみたいな学生には

まさに地獄の季節。熔けない氷河。

 

なので、この小説の森山には感情移入できるのだが、最初タイトルだけみたときは

バブルで銀行に入った上司の半沢と、ロスジェネである部下の森山が対立する意味の

タイトルだと思ったが、は違った。

 

バブル世代ではあるが、オレの言葉でいえば‘善玉バブル世代’である半沢が

後半でロスジェネである森山と、世代という壁を越えてともに‘悪玉バブル世代’と戦うと

いうような流れだった。

 

最初は半沢を嫌っていた森山。

しかし、行動をともにするうちに、バブル世代でも団塊世代のDNDを受け継いでいない

半沢のような正しい道をゆく人間がいるということをしって、尊敬しだす。

 

半沢のほうも、ロスジェネにたいして、「おまえらの文句は甘えているだけ」みたいな

ことはいわず理解をしめす。

 

時代の象徴として、バブル世代は裕福で、ロスジェネは地獄だったが、

金を湯水のように使っていた派手なバブルの世代でも尊敬できる立派な人はたくさんいる。

一方でロスジェネだからといって、すべてが辛酸をなめたわけじゃない。

 

作者の池井戸潤はそのへんを巧く登場人物に分散して割り当てていているのが良い。

作品の中で半沢直樹は、

「どんな世代でも会社という組織にあぐらをかいている奴は敵だ。内向きの発想で

人事にうつつを抜かし、往々にして本来の目的を失う。そういう奴らが会社を

腐らせる」

「組織に屈した人間に、決して組織は変えられない」

と森山に語る。

 

ドラマで既に有名だが、半沢は基本は性善説。

でも腐ったやつは許さない。やられたら倍返し――。

 

ドラマはラスト3回しか観てないが、半沢直樹シリーズは本当に読んでてスカッとする。

実際に会社とかじゃできないことばかりだけど。

いや、みんな実際できないことだからこそ、テレビや小説で見聞きして、スカッとするのだろう。

そこは複雑だ。

 

団塊世代が間違って作った耐久性のない神話を、オレらバブル世代が疑うことなく

引き継いでバンバン作ってしまったと、半沢が森山にいった。

 

なるほど。

じゃあオレなりに解釈すれば、それらが崩壊してその瓦礫の下敷きになったのが

ロスジェネといったところか。

半沢はロスジェネが戦って直してゆかないといけない、といった。

 

そう、不満をいうだけなら簡単だ。

 

オレらロスジェネがやるべきことは、セカンド・ロストジェネレーションを作らない

ようにすること。

失なわれた十年を経験したものだけがその辛さをしり、教訓を生かすことが

できる。

 

最初は火花バチバチ(というより森山の一方的な敵視)だったバブル世代半沢と

ロスジェネ森山による最終的な共闘は、読んでいて心地良かった。

 

最終的には見た目や年齢や世代とかでなく、人間としての価値で相手を決めろという

重要さがしっかり伝わってきた。

 

 

面白くて読み応えあったんだけど、もし今度ドラマの続編としてこのシリーズが

映像化されたら、流れがわかってしまっているというのだけが後悔といえば後悔(笑)

 

順番前後するが、最初の読んだのは1作目の

「オレたちバブル入行組」

 

 

 

面白くて、一気に読んで、続編すぐ読みたくなって読んだのが2作目

「オレたち花のバブル組」

 

 

2作目後半はギリギリ、ドラマでも観ていたシリーズだ。

香川照之が演じていた大和田常務が登場。

1作目と2作目はドラマを観ていた人は比較しながら楽しめると思う。

 

で、順番がいったりきたりで申し訳ないが、3作目「ロスジェネの逆襲」のあとの

4作目がこちら。

『銀翼のイカロス』

 

 

 

――

出向先から銀行に復帰した半沢直樹は、破綻寸前の巨大航空会社を担当することに。

ところが政府主導の再建機関がつきつけてきたのは、何と500億円もの借金の棒引き!?

とても飲めない無茶な話だが、なぜか銀行上層部も敵に回る。銀行内部の大きな闇に直面した

半沢の運命やいかに?無敵の痛快エンタメ第4作。

(amazonから引用)

 

モデルとなっている航空会社はいうまでもアレだと思う。

政治家なども絡んできて、ドラマで続編が製作されたらこれまた面白そうなエピソード。

すべての会社には、その会社に合った身の丈の欲ってのがあるんですよ。

(本文より引用)

 

 

 

 

※今回の記事を書こうとしたら、直前にいきなりワイヤレスマウスが壊れたので、

古いマウスを急きょ引っ張りだしたのですが、これもやはり調子悪く、そんななか

なんとか記事だけ書きました。

過去記事含め、今後コメ返など遅れるかもしれませんので、ご了承ください。

しかし、4年くらいで壊れるものか(-_-;)??