ガルシアの首 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

このクソ暑い中、大変申し訳ないが「検便」の話から。

 

小学校のころの検便の容器って、なんか携帯用ハンドクリームの

丸い容器みたいなモンだった記憶だけど、ここ数年前から棒状のモノの

先にブツをつけたものを検査液が入った専用容器にカチって差し込むキットに

なった様子。

 

それはそれでひとつの進歩としていいのだ。

だけど、あれっておそらく2回ぶんあるはず。

2日にわけて検便をとらないといけない流れなのだ。

 

つまり、2日目はもうそんまま提出日になるかもしれないが、それまで最低1日は

「1回目に採取した便」を自分の部屋で保存しておかないといけない。

キットに同封されている用紙に書かれた注意事項を読むと、

「冷暗所で保存してください」

と書かれている。

 

は!? レイアンショ???

 

その検便の季節が冬ならいい。

部屋全体がヒンヤリと冷えているわけだから、どこか片隅においとけば、それが

自然に「冷暗所保存」になる。玄関でも洗面所でもトイレでも。

 

でも今みたいな夏の場合、部屋の中で「冷暗所」といえる場所ってどこだ!?

すべての部屋全体が温まっている中で、冷たくて暗い場所なんて「冷蔵庫」くらいしか

ないだろう。地下室でもない限り。

それか24時間エアコンが効いている部屋か。

 

正直いまだに「夏場の冷暗所」というのがどの場所なのかという正解がわからない

ので、正解をしっている人がいたら是非教えてほしいのだけれど、オレは今まで

夏に検便をして1日ぶん保存する場合、これは遠回しに

「冷蔵庫に入れて提出日まで保存しろ!」

という意味かととらえ、ずっと不快だった。

 

それ、イヤでしょ?

 

いくら自分の身からでたブツであって、蓋もしっかり閉まって漏れる心配がなく、

さらにプラ袋に入っているから実質衛生面に問題がないとしても、さすがに「便」を

冷蔵庫に入れるのは気分的に1秒でもイヤだ。

 

でもユニットバスやトイレの隅だと湿度も温度の高いから、しょうがなくワンルームの

部屋の棚にそっと置いて、提出日まで保存しているわけだけど、それでもやはり

自分が普段からくつろいでいるスペースの視界に入る場所に、自分のモノとはいえ

「便」があるのは快いものではない。

 

オレ、ヘンなところで神経質なので、実害なくても部屋に置いておきたくないモノって

あるのだ。

コワいページがある本や漫画も同じ。

たとえ本を開かない限り、そのコワいページが目につかないとしてもなんとなく部屋に

置いていきたくない。

 

叩き殺した蚊の死骸はそのままゴミ箱にポイできても、Gの死体はもう生き返らないと

わかっていても、部屋にあるゴミ箱の中じゃなくて、トイレに流すかティッシュにくるんで外で

燃やす人は多いだろうと考えるけど、おそらくその感覚。

 

なので、たまに殺人事件のニュースとかで、死体の存在を隠すために何日も自分の

部屋において死体と一緒に暮らしていたとかいうのを聞くと、残酷さと同時にその犯人の

メンタルが信じられないところである。

よく平気だったなと。

死体全体じゃなく首だけ部屋に置くのもイヤだ。当然だけど。

 

 

サム・ペキンパー監督の代表作のひとつであるといわれていたようなので

「ガルシアの首」という映画を前に観た。

1974年製作でこれまた古い映画だ。

 

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――

メキシコの大地主は自分の愛娘を妊娠された男、ガルシアに100万ドルの賞金を懸けた。

賞金の匂いを嗅ぎ取った酒場のピアノ引きベニーは、自分の情婦エリータからガルシアが

既に死んでいることを聞き、ガルシアの首を求めて旅に出るが・・・。

(amazonから引用)

 

おおまかなストーリーは上にあるとおり。

 

ある意味で、賞金稼ぎのため、ガルシアという男を殺してその首を持ってかえれば

100万ドルもらえるという話を聞いたのだが、実はガルシアという男は既に死んでいて

大地主はその事実をまだ知らず生きていると思っている。

 

これは賞金稼ぎとしては都合がいい。

もう既に死んでいるわけだから殺人という罪を犯すことなく、首さえ持ってかえれば

大金がもらえるのだ。

 

ただ、その首を手にするためには墓を掘り起こし、ガルシアの首だけを手にいれないと

いけない。

まあ、つまり殺人罪は回避できても墓荒らしと死体損壊の罪は避けられないのだけど、

それでも主人公ベニーはやはり大金が欲しいので、なんとかガルシアの首を手に入れようと

するわけである。

 

だが、その旅路の途中でチンピラに絡まれたり、首を横取りしようとする連中に強襲されたり

と次々面倒なことがおこる。

 

サム・ペキンパー監督はバイオレンス描写の巨匠と呼ばれていて、この作品のタイトルから

してエグそうな印象があるが、目を背けたくなるようなイタイ描写や残酷描写はない。

 

前に紹介した「ワイルドバンチ」と、あとは記事にしてないが「ビリー・ザ・キッドの生涯」と

この「ガルシアの首」の3作しかまだ観ていないが、ペキンパー監督のバイオレンスというのは

スローモーションを見事に活用した派手な銃撃や血しぶきであり、いわゆるスプラッター的な

要素はない。

 

なのでバイオレンスが苦手な人でもそれほど嫌悪感はないといえる。

初期の北野武映画の15倍はソフトな映像といえよう。

 

ただ、この映画のウリはバイオレンスよりも絶妙な気だるさ。

 

小バエがたかるガルシアの生首が入った袋とともに、車でドライブするベニー。

ひとことでいえば生首と一緒に旅する男。

 

冒頭の話じゃないが、たとえ罪に問われず、運べば大金をもらえるとしてもすぐ隣の助手席に

ハエがブンブンたかる生首入りの袋を置いてドライブなんて、恐怖面でも衛生面でもぜったい無理。

 

でも警察や通報者以外の目は気にせず、運転するベビーの異様な冷静さ。

ときおり流れるBGMは、危機感を煽るようなサスペンスチックな音楽ではなく、くたびれた

メキシコ音楽。

 

いや、作品中でくたびれているのはそれだけではない。

 

BGMだけでなく、主人公ベニーも、登場する女も、酒も、旅路に流れる時間もすべてが

くたびれているような印象。

 

退屈といえば退屈な映画かもしれず、映画ファンやペキンパーファンの間でも

好き嫌いがわかれた作品らしいが、それでも通にはやはり名作で通っている。

 

面白いつまらないは個人の感覚に委ねる映画だというのがオレの印象だけれど、

監督の持つ世界観がよく描かれている作品ということでは、たしかに名作といえると思う。

 

生首がキーではあるんだけど、首そのものや切断シーンを描いてないのがただ単に

過激さで売ろうとしているんじゃないのが伝わっていいと思う。

 

車での帰路、途中でかかわる人に「袋の中身」がバレないかというような緊張感も

よかった。

 

文芸春秋「戦後生まれが選ぶ洋画ベスト100」にて72位の作品だ。

 

 

蛇足だが、高倉健がでていた「ブラックレイン」という映画の中でも

日本にやってきた刑事役のアンディ・ガルシアが、バイクに乗って日本刀をかざしながら

走ってくる松田優作演じるヤクザに首を切断される衝撃的なシーンがあり、「ガルシアの首」

というタイトルを聞くたびにブラックレインのそのシーンを思いだす。