八つ墓村 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

話題の映画だった「ラ・ラ・ランド」を昨夜観た。

 

公開当時もほぼ興味なかったけど地上波でやるのであれば

とりあえず観ておいてもいいかなと。

今週はまだ映画1作品も観ることができていなかったから。

 

とにかく映像が美しいというふれこみだったが、たしかに美しくて

クオリティとしてもとても素晴らしい作品だなということには納得だった。

 

が……

今これを読んでいる人であの映画が大好きだとかいう人がいたら大変申し訳

ないがオレにはダメだわ、アノ世界観は。

世間的に見て受賞当然の立派な作品というのは理解もできるし素直に

素晴らしいんだろうなとは認めるが、批判とかじゃなくオレの個人的な好みとしては

正直合わなかった。

けっこう好き嫌いがわかれる作風だとは思った。

 

スポットなどでなんとなくわかってはいたが、やはりそのとおりの構成。

冒頭の大勢のダンスシーンで、「ああ、やっぱオレが不得意なこういうやつね」と。

 

・主役の男女を中心に世界がまわる「ラブロマンス」

・予定調和の「サクセスストーリー」

・「ミュージカル調」

 

オレの苦手とする3つの世界観が三色パンのように見事に一体化していて

観てて疲れてしまった。とりあえず最後まで観たが終盤のセリフなしシーンの途中

さすがに何度も寝落ちしそうになった。

 

作品にもよるが、基本オレの人間性や着眼点への軌道が歪んでいることもあって

恋愛や人生における幸福を描いた美しい世界観よりも、最後の最後まで救いようの

ない闇やドロドロしたような世界観が好きなんだろうな、きっと。

 

どうせ男女主演のミュージカル調の映画を作るのであれば、そんな映像が観たかった。

一台の車の中を舞台としたひとりの女性議員とひとりの男性秘書のやりとりを描いた

作品なんてどうだろうか?

 

女性議員がいきなり、

♪そ~んなつもりはないんですぅ~~~♪

とミュージカル調に歌いだして、共演の男性の頭をハイヒールでボカスカ叩きまくる内容。

タイトルは「ラ・ラ・乱暴」。

このブログの伝家の宝刀 「世間が忘れたころに蒸し返す」の術w

 

幸福や成功を描く世界観を素直に好きになれないこの性(さが)。

まさに歪みの極み。

 

でもそれがオレの個性。

オレの人間性の歪みはピサの斜塔の傾きのようなものだと自分で思うようにしている。

視覚バランスと建築上の安全面においてピサの斜塔の傾きは決してよろしいモノとは

いえないはずだが、あの傾きと危なさこそがピサの斜塔の個性であり趣きであるのだ。

もしピサの斜塔の傾きが修整されて直立に戻ったら、間違いなく今ほどの観光客は

来なくなる。傾いているからこそ人が来るのだ。

 

オレの持っている世界観や思想文章は歪んでいるかもしれないが、だからこそ

こうして読みに来てくれる人がいるんだと思う。

もしオレがまっすぐで無難な精神論や理想論ばかり書きはじめたら、新しい読者さんは

きっと来なくなる、と思う。

 

そんなナルシスな自己解釈からして既に歪みまくり(笑)のオレは、映像の世界観としては

「ランド」より「村」のほうが好き。

 

そう、アメリカの風景を舞台とした美しい世界描いた「ラ・ラ・ランド」と対極ともいえ、

日本の地方におけるおどろおどろしい世界と殺人劇を描いた横溝正史原作の

『八つ墓村』

 

 

 

昨年末にBSで放送されていたので観た。

 

この映画、名作だけにいろんな役者でリメイクやドラマ化もされててごっちゃになる。

おそらくこの映画(1作目?)も、もうずっと前に一度観てはいると思ったのだが、記憶にまったく

ないので改めて観てみた。

 

――

 東京に住む辰弥(萩原健一)は、自分を探していた祖父が目の前で毒殺死したことを機に、

故郷の八つ墓村を訪れた。そこは戦国時代の落武者惨殺の伝説に彩られた地であり、

やがてそこで謎の連続殺人事件が勃発する…。
   名探偵・金田一耕助には渥美清が扮しているが、ここでの彼は語り部に徹している。

日本中の鍾乳洞をロケしてつなぎあわせた村の地下洞シーンや落武者惨殺、村人32人殺し、

寺田家炎上などおどろおどろしい映像的見どころも多いが、それよりも大きな特色は謎解き

ミステリを超えて、怨念の実在を説く映画独自のストーリー展開。
   また、原作の舞台は戦後だったのを、映画では現代(1977年)に設定したことで、

祟りという概念が今なお根強く人心に根付いていることを、より強く印象づけることにもなった。

(amazonレビューより引用)

 

 

今こうして鑑賞すると、ありえない矛盾や、ミステリーサスペンスのはずが後半あきらかなオカルト

演出にスライドしている無理などが目につくのだが、そんな時代背景もすべてひっくるめて、

なんともいえない独特の不気味さが際立った名作なのが伝わる。

 

「ラ・ラ・ランド」でも、主人公のミアが花びらが散る夜の道を先のほうへ駆けてゆくシーンが

あり美しかったが、この「八つ墓村」でも同じように夜桜が散る中を向こうから山崎努演じる

要蔵がこちらに向かって駆けてくるシーンがあり、DVDのパッケージにもなっている。

 

こちらのほうは発狂した山崎努が顔を真っ白にして、鉢巻きに2本のライトを差し込み、

片手に猟銃、片手に日本刀という恐ろしいいでたちで、これから村人を皆殺しにゆくのに

向かって走ってくるシーンだ。

 

これがまた、なんとも不気味で背筋がゾクゾクするような迫力があるのだけれど、

背景の暗闇で散る夜桜と、要蔵の動きのスローモーション演出により、恐ろしく異形ながらも

どこか美しく目に映る。

参考までに動画添付(0:17) → ココ

 

オレはとくに過激なシーンや暴力描写が好きなわけじゃないけれど、多くの映画通が絶賛

しているように、山崎努演じる発狂した要蔵による村人の大量殺りくシーンはまさに圧巻。

(実際にあった津山三十三人殺しという事件がモデル)

 

村中を必死に逃げまどう村人たちを追いかけ、日本刀で首をはねたと思ったら、今度は

猟銃をぶっぱなすというシーンの連続には目が釘づけになる。

この映画一番の見どころだ。

 

冒頭と、ところどころで挿入される過去の村のシーンに登場する落ち武者役の

夏八木勲と田中邦衛もとてもいい味だしてた。

流れ着いた村の村人たちに裏切られ、殺されてゆくときの恨みと憎しみに満ちた

表情と演技は素晴らしい。

 

あと、どうでもいいことだがふたつほど気づいたことがあった。

 

「八つ墓村」は一応、金田一耕助シリーズであり、渥美清が金田一役で登場する

のだけど、主役は完全にショーケンだった。

ラテ欄みたときに一番目にショーケンの名前があったから、はじめはショーケンが

金田一役かと勘違いしてしまった。

渥美清は最後に謎を解いて、それを関係者に説明するチョイ役みたいなもので

金田一シリーズの構成としてはちょっと特殊。

 

それと、この「八つ墓村」を観ていたら、ショーケンが演じている役が、まだ赤ん坊の

ころ、火鉢に差し込まれていたアツい棒を肌につけられて火傷を負い、今でもその傷が

残っているというエピソードがあった。

 

憎しみの対象となる相手の産んだ赤ん坊の肌に熱された火鉢の棒をあてて火傷させる

っていう、ちょっとエグい演出なんだけど、「犬神家の一族」と「獄門島」でもまったくといって

いいほど同じシーンがあった記憶があるな。

 

映像によって監督が異なるのかもしれないけれど、もしすべて原作のまま再現だとしたら、

横溝正史は無意識にその描写を繰り返していたのだろうか気になった。