海南チキンライス 夢飯 | 昭和80年代クロニクル

昭和80年代クロニクル

古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

ザ・ブルーハーツの「スクラップ」という歌。

歌詞の中に、

‘手にしたモノをよく見てみれば 望んだものと全然違う’

という歌詞がある。

 

苦労して稼いだ金で買ったモノだったり、あるいは他人からのプレゼントだったりと

シチュエーションは様々異なるだろうが、いずれにせよ自分で勝手に想像していて、

それとまったく違うモノが手元に来た時の落差によるダメージはかなり大きい。

 

―― チキンライス

 

それは子供にとって……いや、子供だけでなく大人にとっても魅力的な響きだ。

 

その名前と存在をはじめてしったのは、おそらく小学生の頃だった。

親戚のおばさんと一緒にデパートにいって、昼にその上階にあるレストランに食事に

入った時だったと思う。

 

今でいうレトロなレストランが当時でいう一般的なレストランだったので、入口前には

サンプルが並んだショーケースがあった。

 

「ケンちゃん、食べたいもの選びな」

と、おばさんにいわれたのだが、若くして優柔不断界のプリンスだったオレは例によって

なかなか決めることができるキョロキョロしていた。

というか、オレが優柔不断ということにくわえ、そのケース内に展示されているサンプルも

ほんの一部中の一部中で、あまり惹かれるモノがなかったということも決められない理由の

ひとつだった。

 

そんなオレの様子を見て、ここでずっと見てても決まらないとおばさんは悟ったのだろう。

とりあえず、中に入って席だけとって座って、そこでメニューみながら考えることにしようと

おばさんが提案した。

 

それでひとまず入店して席についたのはいいのだが、卓上にあったメニューを見ても

写真付きで紹介されているモノが少ない。

これは子供にとっては厄介だった。

 

よって、ここでもオレの優柔不断が炸裂することに。

たまりかねたおばさんがオレに助けを出そうと、メニューを見てオレが頼むべきモノを

一緒に探し出した。

 

そしてひとこと。

おそらく、子供ならみんなコレは好きだろうと思って、いったのだろう。

 

「ケンちゃん!『チキンライス』があるよ!」

 

その時はじめてチキンライスという名前を聞いた。

メニュー表には写真ナシで名前と価格だけしか載っていなかったが、

鶏肉の唐揚げ等が大好きだったオレだけに、未知の食べ物だけど、とても惹かれる

ものがあった。

 

実物がわからないだけに、子供のイマジネーションの中では白いご飯の上に

刻んだ唐揚げの破片が、たっぷりまぶされている‘オレのチキンライス’のビジョンが

どんどん肥大してゆく。

 

「じゃあ、それにする!!」

 

心を弾ませながら、オレはおばさんにそう答えた。

本当のチキンライスをしらずに……。

 

そして約10分後。

「お待たせいたしました。チキンライスでございます」

といって、やってきた店員がオレの前に一枚の皿をだした。

 

―― な、なんだ!? これは??

 

オレは目を疑った。

やってきたのはオレが思い描いていたチキンライスとまったく違う。

白いご飯の上に唐揚げどころが散りばめられているどころか、

タマゴのカバーをはぎとった単なるオムライスじゃないか、と。

しかも唐揚げどころか、オレの天敵である「タマネギ」があちこちに散りばめられ、

太陽に照らされたアルファルトの表面のごとく、天井のライトの照らされてオレを

あざわらうかのようにキラキラと輝きを放っている。

 

最初、店員が間違えて「玉子なしオムライス」をオレに」届けたのかと思った。

おそるおそるおばさんに訊いたら、

「それ、ケンちゃんが食べるっていってたチキンライスでしょ?」

と、当たり前のように言い放った。

 

違う……

これはオレが望んでいたチキンライスじゃない……

いや、みんなの間ではこれをチキンライスと呼ぶにしても、どうしてそんな詐欺みたいな

名づけ方をするんだ。

名づけるならば「ケチャップオニオンライス」か、もしくは「タマネギチキンライス」とするべき

じゃないか……

 

だが、時既に遅し。

現物はもう作られて、オレの前にある。

真っ白なご飯の上の刻まれた唐揚げがまぶされたチキンライスを想像し、楽しみにして

いただけに、オレの淡い期待心はゾウに踏まれた筆箱のようにバキバキ!ピキーン!!

と音をたたて見事に砕け散った。

 

あまりのカルチャ―ショックで、届けられたチキンライスをどうしたかは記憶にない。

おそらくだが、まったく手をつけないのも悪いと子供ながらにタマネギを必死によけながら

チビチビとすこしだけ口に運んで、そのほとんどを残したのだと思う。

 

いやいや、いくら好き嫌いはしょうがないとはいえ、頼んでおいて残したことについては

ご馳走してくれたおばさんにたいしても、お店の人にたいしても罪悪感はある。

だけどオレにいわせりゃ、アノ食べ物を「チキンライス」と命名するほうも悪い!(爆)

だって、赤いビジュアル的にも使用する破片の絶対数的にも主要を占めていることを

考えれば、どう考えても「チキン」という言葉の前につく冠言葉は「ケチャップ」か

「オニオン」のどちらかだろう?

 

百歩譲って、「オニオンケチャップチキンライス」ならば、まだ理解できる。

なのに、どうしてここでオニオンとケチャップという存在を隠蔽する??

これはやはり卑怯だ。

(この時点で読者さんの多くが「そんなこと、どーでもいいわ!」と思っているのはガッテン承知の助)

 

そんな苦い過去があり、心のナップザックにトラウマを入れて人生を歩いてきたオレは

つい最近までもその「チキンライス」という言葉を忌み嫌っていた。

 

だけど――

 

その反面、心の片隅では

「でももしかしたら、この広い世界のどこかにオレが求めていた『本物のチキンライス』が存在する

かもしれない」

と、ひとつなぎの秘宝を求める麦わら帽子の海賊少年の願いのような希望の灯がともっていた

ことは否めない。

 

そして数年前。

オレはその秘宝(に比較的近い存在)が、ある国にあることをBSの旅番組だったかMXの旅番組で

しったのだ。

 

その国とは――

 

昔々

スマトラという国の王子が新しい領土を求めて航海に出た時、

白いたてがみの獅子(シンガ)の住む島をみつけた。

 

王子はその島をシンガプーアと名づけた。

 

世界中の船やタンカーがいきかう海峡の国……

 

自由貿易によって西洋と東洋がとけ込む他民族国家…… ……

 

シンガポール!

 

(ジョジョの奇妙な冒険⑮より文章拝借w)

 

だけど、いうまでもなくオレにはシンガポールまでゆく時間も資金もピアノもない。

キミに聴かせる腕もない。アアアンアアン。

 

そこでオレは調べた。

都内でゆくことのできるシンガポールを。

求めているチキンライスがある店を。

 

目ぼしい店が2軒ヒット。

一軒は近場の立川。

もう一軒は23区だが西荻窪だ。

 

ちょっと遠いがせっかくだから今回は西荻窪まで足を伸ばすことにした。

 

そういうわけで先週末の夜。

 

『海南チキンライス夢飯 (ムーハン)』

東京都杉並区西荻北3-21-2徳田ビル1F

詳しくはココ

 

 

場所は西荻窪駅からすぐのところにある。

 

比較的早い時間にいったが軽食としても利用できるせいか、もうそれなりの人が

入っていた。

※画像は帰り際撮影したもの

 

店の中に入ると早くも異国情緒がプーンと。

 

ひとりだったのでカウンターの空いていた一番手前に通された。

天井にはプロペラ。シーリングファンていうんだっけ?

違ったらスマン。

 

 

いかにもシンガってる置物も卓上に。

やはり、まぁライオンとかになるようだ。

 

 

まぁライオンの左隣りにあるのは有名なアレだろう。

 

人類を脅かす大天災がきた日を想像するたび、フジテレビの球体と並んで

落ちるんじゃないかと構造上心配になるあのホテル&プール(笑)

 

宿泊者した泊まれないといわれているあのホテルの屋上の長いプール。

一見すると金持ちだけが入れるセレブ主義の鼻につくプールに見えるがオレはそうじゃないと

信じている。

 

あの奇抜で高級臭プンプンするプールのデザイナーと、そのホテルの経営者は

きっと人類を愛しているのだ。

 

だから、いつか未曽有の大洪水がシンガポールの街を襲い、そしてのみこんだ時、

人々は迫りくる濁流から逃げようとして、ひたすら高いところを目指すだろう。

 

そう、あのホテルの一番上へ……

つまり、あの船みたいな形のプールになっている屋上だ。

 

だが、それでも時間とともに水位は増し、近づいてくるカタストロフ。

いずれは屋上の高さまで水は到達する。

 

そして、勢いを増す水位が屋上にあるプールの底あたりまで達したその時、

船型のあのプールはホテルの屋上から離脱し、荒れ狂う水流の上を進み、

そこにいる逃げてきた人たちを安全な場所まで運ぶ役割を果たすのだ。

 

そう、あの船のようなプールの正体は、セレブ趣味を気取ったレジャー施設に

見せかけておいて、実はいざという時に多くの人を救う「ノアの箱舟」だったのだ!!

 

……

なーんてのはやはりオレの妄想力が生んだ虚構で、実際は単純な集客目的の

商業なんだろうな、フン!

世のセレブや成功者どもめ、

マーライオンに食われちまえ(爆)

 

「おい! くだらないシンガポール漫談はいいから、いい加減メニュー紹介しろよ!」

っていう声が聞こえてくるようだったり、来ないようだったりするので本題に戻ろう。

 

こちらのお店には他にもいろんなメニューがあるが、やはりここはチキンライス。

フライドチキンライスとかもあるが、王道で蒸しチキン。

 

サイズは小700円 中850円 大1000円と3パターン。

 

 

小だとかなり少なそうなので、ここはお決まりの中にした。

 

調理に時間がかかるものでもないようで、オーダーしてから比較的すぐでてきた。

 

 

海南チキンライス(中) 850円

 

 

そうそう!

タマネギもケチャップもなし。

 

チキンとライスだけで、これこそオレが求めていた正真正銘のチキンライスだ。

 

鶏のスープで炊いたご飯。

メインとなるゆで蒸しチキン。

ソースは、醤油・チリ・生姜の3種類。

スープは野菜たっぷりで、肉がメインのライスとのバランスとして最高。

 

 

チキンをフォークでさして、好みのソースにつけて味の変化を楽しんだり、

あるいはご飯にかけたりと、食べ方はお好みで選べる。

 

ご飯とチキンという、けっこう単純な料理で世間一般に浸透しているチキンライスの

ほうがどちらかといえば手間がかかりそうな気がしないでもないが、こちらの本物の

チキンライスは身近なところでなかなか食べることができない。

 

ご飯のほうも鶏の出汁が浸み込んでて美味しかった。

だたひとつ、中でこの量は男性には物足りないかも(^^;)

 

とりあえず、普段なかなか食べる機会のないシンガポールの味を堪能することができて

よかった。

ひとついい経験になった。

 

さて、念願の食事を終えたらあとは帰宅。

 

杉並区の西荻窪から府中まで自転車で来た道をまた引き返す ( ̄▽ ̄)

 

 

 

23区から都下までだとさすがに遠いような気もするが、いざ走ってみたら

片道1時間かからず来れることがわかった。

そして摂取したばかりのカロリーも消費できる。

 

オレはあまり活発に活動するタイプじゃないが、なにかやるならばできる限りの試みを

詰め込むというのが哲学なのでね(笑)