熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

まだまだ寒いけど、洋服ショップとかいくと冬服は既に安くなっており、

春に向けての服が目立つ場所に並ぶようになってきている。

 

書店も書店で、春に入社する新卒に向けてのフェアなのだろうか

例によって、どこどこの社長が書いたとかいうビジネス書だとか、

デキる営業マンになるためにやるべき、○つのことだとかいう本が

平積みされている光景をよく目にする。

 

ま、そういう本はそういう本で売れているのかもしれないけどね。

所詮はやっぱり、「作られたベストセラー」という印象。

つまりは話題先行型で行列ができるラーメン屋と同じ。

 

一度食べたことがあって、そのうえで美味いと思ったから並ぶんじゃなく、

みんなやメディアが美味いといっているから、並んでみようという流れで

なされる行列。

 

ビジネス書や自己啓発書も同様に、効果があるから購入するのではなく、

みんなが買っていたり、話題になっているから購入しようといった流れで

ベストセラーに勢いだけの拍車がかかってさらに売れる。そしてまた騒がれる。

 

経営論だろうが成功論だろうが、買いたい本を買うのは個人の自由だから

そこはべつにいいのだけれど、でもああいった類の本てページは多くても

なんとなく薄っぺらいし、信ぴょう性もない。

 

個人的な感情は抜きにしていったとしても、まず第一にそういったビジネス書を

読んでることをアピールするわりには出世している人間て見たことないし、

自己啓発書読んでるというわりには、「いや、アンタそのわりには人間性まったく前進してないよ」

っていう人間ばかり。

これまでの職場でも、そういう人がいくらかいた。

 

買ってる自慢や読んでる自慢はもういいから、羽ばたいて大きく出世するか人が変わった

ように人望集めるようになるかというような結果を持って、そういう本が人生の役に立つと

いうことを証明してくれれば、オレはそこは潔く認めよう。

 

買って読んでいる人たちのほとんどが出世したり、人間性が豊かにならないのであれば

それがもう本の質の良し悪しを暗黙で証明していることになっているのだとオレは判断している。

 

と、こんな感じの記事を今ままでも書いてきたオレなので、とにかくケン74というひねくれた

人間は経営者とか成功者とかいった権力をもつ人間が話すことには微塵も興味ないと思われている

方もいるかもしれない。

 

そんなことはない。

オレだって社長とか会長とかが書いた本やインタビューを読むことはあるのだ。

ただし、成功論ではなくて転落記。

 

理由はふたつ。

ひとつは純粋に幸福話よりも不幸話のほうが面白いという興味本位。

 

もうひとつはマジメな自分なりの考えで、読むならばそちらのほうがまだためになるということ。

人間、仕事や人生において、のぼりつめるのは時間が掛かり大変だけど、落ちる時は早くてすぐだ、

とよく聞く。

そのとおりだと思う。

 

自分が社会人あるいは正社員として今いる位置を冷静に考えて、将来の可能性の移行と

して近いのは、

「生涯トップに君臨する社長」と「やがて転落してゆく社長」のどちらかを考えてみる。

 

繰り返し書くが、のぼりつめるのは並大抵の苦労と才能ではむり。だけど落ちてゆくのは簡単。

「生涯トップに君臨する社長」と答えられる人間は相当自信のある大物か、もしくはただのアホだろう。

 

オレもアホではあるが、自分をよくしっている。

どんな仕事をやろうがどんな生き方をしようが、いつも「成功」よりかは「墜落」のほうが

近いところにあるという危機感を。

 

だからこそ、特殊な商才を持ったその人だったからこそ、できたようなことの自慢話をタラタラ

書いた本よりも、「こうして私はすべて失い、刑務所に入った」というような告白本のほうが

読んで、備えておく価値がまだあると思っているのである。

 

そんな流れをふまえ、先日図書館で数年前に逮捕されて話題になった大王製紙元会長の

井川意高氏の懺悔本を読んでみた。

 

 

 

最初はブックオフのハードカバーコーナーで発見したのだ。

200円だったから買ってみてもいいかなとは思ったが、なんかシャクだったので保留(笑)

その後、図書館いったら文庫版が既に置いてあったので、そこで読んですませた。

2、3時間もあれば図書館の椅子に座って完読できる内容だった。

 

つい最近の事件だったような気がするが、この人刑務所入ってもう出所してるから

なにげにあれから時間経っているんだなと感じた。

 

当時の事件の中身としては、カジノに熱をあげて子会社から106億8000万円の借り入れ。

そして逮捕。

 

もう金額が多すぎてピンとこない。

それでも不況不況と騒がれているここ数年、1企業グループだけで3桁の億が存在してる

んだなと思い知らされた。

 

とんでもない金額が動いたわりには世間がそこまで憎悪を抱かなかった印象があるのは、

やはり消費者や取引先を相手に詐欺を働いたとかではなくて、子会社という、いってみれば

身内からの搾取だったことが大きいかもしれない。

それでも犯罪は犯罪だが。

 

読む限り、同じことはもうやらないような雰囲気はたしかにあるが、レビューでもあるように

この人は能天気だ。

先日、サンジャポにも出演してたがやはりどこか人間的に薄っぺらい。

エリエールのティッシュみたいに薄っぺらい。

 

でも本を読むと、本人は父親がトップを務める会社に入社したあと、東大卒のボンボンと

社員からいわれるたくないために奮闘したと書いてあり、父親も厳格で、叱る時はゴルフ

クラブをふりあげたりするような人だったと書いている。

 

芸能界でも2世タレントが逮捕されたりすると、親がでてきて育て方を間違えたとか謝罪する。

たしかにそういうケースもあるかもしれないけど、でもやはり親がそれまでどんなに厳しく育てて

きたとしても、大人になってくる環境とかで人は変わってきてしまうと思われた。

 

自分が所属しているわけじゃないからあまりわかったようなことはいえないが、

芸能界だってきっといろんな甘い誘惑があるだろうし、危ない話を持ち掛けてくる人脈だって

生まれてしまいやすいだろう。

 

世間的にはまともとされる大企業だって同じ。

逆にヘタに出世せず、ずっと下っ端でいるほうが貧しいながらもおカネの大事さを忘れずに

いられるのではないだろうか。

 

マジメに汗水流して働いた結果で得た高収入だとしても、やはり所得が増えれば増えるほど

人の金銭感覚とはすこしずつでもマヒしてくるものだと思う。

そういう面ではこの井川氏みたいな元トップの人間のほうが、もっともっとといった欲に歯止めが

きかなくなるタイプだと捉えることもできる。

 

環境によって感覚がマヒしたり、信念が変わってくるという面では芸能人も井川氏のようなトップも

オレら一般市民もたいして変わらない。

ティッシュペーパーは二枚重ねだけど、芸能人も企業トップも一般市民もみんな紙一重なのだ。

 

当時の事件の結末はよく憶えていないが、本を読んだら引っ張りだしてカジノのつぎ込んだ

子会社の106億円は、父親が協力して別の子会社?を売却だかすることでなんとか済んだらしい。

 

この一文に関しては、なんとなく他人事で軽く書いているような印象だった。

トイレットペーパー作ってきたくせに、自分の尻ぬぐいもひとりでしっかりできていないじゃないか

という感じだ。

 

でも一応オツトメはしっかり終えて出てきたわけだし、テレビ観ててもある意味でキャラはたっている

から、これからもちょくちょく見かけたりはしそうだな、この人。

 

とりあえず、今後は

エリを正して生きてゆくのなら

エールを送ってくれる支援者もいることだろう。

 

済んだ事件のことはもう水に流して―― トイレットペーパーみたいに。