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平等ゲーム (幻冬舎文庫)
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就活をしていた大学生の時に、溜池山王の雑居ビルの1室にある小さな広告代理店に
面接にいった。
雨が降っている中、電車を乗り換えて建物につきノックしてから中へ入ると、20代後半
くらいの感じの良い女性に奥の部屋まで案内され、「こちらへどうぞ」といわれた。
ノックして「はい、どうぞ」と返事がドアの向こうから聞こえてきたので入室すると
正面の長机の3人の面接官が微笑みながら座っていた。
中央にいる50歳くらいの女性(仮にナガタさんとする)は雰囲気と座り位置からして
社長だということがなんとなくわかった。
そしてナガタさんの左右にそれぞれ30代か40代くらいの男性がひとりずつ座っていた。
(仮にモリさんとサカグチさんとする)
おそらくナガタさんのすぐ下の部下だと思える。
オレが席に座るやいなや、ナガタさんは優しい笑顔で、
「雨降っていたから、大変だったでしょう」
と、労いの言葉をかけてくれた。
それから面接がはじまり、よくある無難な質問がナガタさんの口からでてきた。
モリさんとサカグチさんからはたまに質問がでるくらいで、ほとんどはナガタさんから
の質問だった。
けっこうアットホームな感じで面接も終盤に差し掛かったのだが、最後に耳を疑う
質問が女性であるナガタさんの口から飛び出した。
「それでは最後にひとつだけお訊きします。もしご縁があって入社頂いた場合、
さきほど○○さんを案内した女性が上司になるわけですけど、女性が上司になる
ことについて、なにか抵抗とかはありますか? そのへんは大丈夫ですか?」
……
いやいや、ちょっと待ってくれ。
それは今の平成の時代の質問か?
と、オレは心の中で思った。
男女平等だとかそういった論以前に、いくらアホな若僧だって新しい環境に入れば
男女関係なく「先にいたほうが上司、先輩」なのが当たり前だってくらいはわかる。
ナガタさんは本気で訊いてきているのだろうか?
だとしたら、それは女性として女性をどこかでまだ下に位置付けているとも捉えられるし、
あるいは、オレが男尊女卑の考えを持っている若者かもしれないという目で見られたかもしれないという方向の差別の可能性もある。
あまりにもあっけにとられたので、思わず普通に「大丈夫です」といった答え方をして
しまったけど、深読みすると、もしかしたらオレが「その質問自体おかしくないですか?」
と答えるかどうかテストしていたのかもしれない。
結局そこは不採用だったので、、あの質問の真相は闇の中である。
今でこそ、学級名簿やタレント図鑑とかでは女性の表示のほうが男性よりも先にきたり
賃金同一とかで男女平等がうたわれるようになってきた。
だけど、これは決して女性に媚びているとか後ろめたさを感じているからいうとかでなく
現実的にまだまだ世の中はオトコ社会であると思う。
地球上の歴史の中で、長い間「オトコ社会」が支配を続けてきたのは事実だと思う。
だからここ最近になって女性の立場が尊重されるようになってきても、トータル的には
まだまだ男のほうが優先されているというのはそれはそれで認めたうえ、謝罪もしたうえで
最近ちょこちょこ見え隠れしはじめた「男性差別」についても書いてみたいと思う。
あくまで個人的な見解であると同時に、決して批判ではなく、ひとつに思想としての
提示なので、女性の皆さんにふっかける意図は皆無なのでそこだけはご了承を(笑)
映画とかエンタメ系の施設とかで
「女性のお客様○割引」とか「半額」とかって
キャンペーンをやっているのをたまに見かける。
あと、飲食店とかでも
「女性のお客様はドリンク一杯サービス」
とかってのも。
普通に座ってモノを鑑賞したり、誰でも飲めるようなものを飲むという行為に
生まれてきた性別によって異なったり、ハンデになったりする能力や体質があるのだろうか。
そんなことにテクニックも生物学上の違いも関係ないと思う。
男の女も簡単に同じような作業量でできる行為ではないだろうか。
たとえば基本の量でもものすごく大盛りの量の店で女性の場合は数十円引きとかいう
ケースならばまだ理解できるのだ。
一部の爆食女王のような特別な女性をのぞけば、生物学上平均的にはやはり女性の
ほうが小食だから、同じ料金だったら損をしてしまう。
だから、そのバランスとしてはありだと思う。
あるいは同じ料金だけれど、量をちょっと減らす代わりに違う小皿を一品提供するとか。
だけど一般的な量で一般的な価格の店で同じ金払って、女性だけサービスあったり
映画館やその他の娯楽施設でも女性のほうが安くなるというのはちょっとオカシイ気がする。
世の中って女性にたいして優遇する点がちょっとズレてるんじゃないかと思う。
そしてヘンなところでそれが男性差別に転じてしまっているように思う。
たとえば、男女同一賃金法など。
一部の特殊な例をのぞいて、どんな仕事であっても性別問わず同じ賃金を払わないと
いけないという法なのだが、肉体労働とか配達業とかこそ、オレは女性のほうが
賃金的に男性よりも優先されてもいいんじゃないかって考えている。
それこそ生まれ持っての性別上の体力のハンデがあるから、同じ仕事でもやはり
女性のほうが大変だと思う。
さっきの爆食女王の例と同様に、なかにはアジャ・コングのように体格も良くて
ヘタな男性よりも力のある女性もいるとは思うが、それもかなりレアで、平均的に
見ればやはり女性の3K職場は男性よりも大変だと思う。
(力のある女性のたとえがアジャという発想が貧相なうえ古い)
だから、そういった仕事こそ女性が優遇される差別があってもいいような気がする。
映画見たり、甘いモノ食べたりするだけの行為に男も女もないんじゃないだろうか。
これね、あくまでオレの持論なんだけど、もしそこで性別による差別というかサービス
をするのであれば、今のいろんなお店がやっているサービスってむしろ逆だと思う。
一例ではあるがデザート一品サービスとかは女性じゃなくて男性に提案すべきだと思う。
その一方で、大盛りサービスとか男飯っぽいトッピングサービスとかは女性ではないだろうか。
甘いモノ好きだけど恥ずかしくて頼めないとか、そういうのを売っている店に入れない
っていう男性もいくらかいると思うのだ。
女性でも、大盛りやスタミナ系を頼みたいけど、男性がいると恥ずかしくて
頼みづらいっていう人もいると思う。
お金払って正式に注文するのは恥ずかしいかもしれないけど、逆にお店の人のほうから
「男性の方はナタデココ、サービスだけど食べます?」
「女性の方は大盛無料ですけどいかがですか?」
とかいってくれたほうが、それぞれのお客さんも
「あ、サービスだったら頂きます」
ってさりげなくいえていいんじゃないかなって思えるのだ。
(甘いモノのたとえがナタデココという発想が古い)
こうやってお店における価格サービスの男女差別の話をしているとでてくるのが
平均的な収入の差の件。
某東京都知事が開催した政治塾の受講料の例でいえば
女性に比べて男性のほうが高いことは賛否両論だった。
賛成派の意見としては「世の女性は男性よりも収入が少ないから妥当」
という声が多かった。
たしかに平均的なデータをとればまだまだそうかなあとも思わなんでもないけど
ケースバイケースじゃないかなあ。
その人はその人なりに苦労や勉強をしてそれだけ稼いでいるというのは認めるにしても
オレなんかの数倍数十倍稼いでいる女性なんて、この日本だけでも天文学的な数で
存在すると思うし。
早朝から夕方まで作業着が破けるようなハードな日雇いの仕事している男性がたまに
フンパツしてちょっといいお店に行って2000円のステーキを頼んでいるそのすぐ近くで
月収2000万のどこぞの女社長が気まぐれで同じ店に入って同じ2000円のステーキを
食べている光景で、日雇いの男性のほうがデザート出してもらえなくて、女社長のほうは
サービスでデザート出してもらえる光景ってのも、なんだか違和感があるんだよな。
うむむ、実に難しい。
答えは出ないな、こりゃ。
ちょっと前にニュースの特集で男女的なサービスにおける、あるお店を紹介していた。
そのお店は月曜日は女性デー、そして水曜日は男性デー、というように振り分けての
サービスを実施していた。
性別によるハンデとか能力の関係がないサービスをやるならば、それはベストな選択だと
思った。
あ、あと念のため。
そういったサービスを受けるお客さんのほうにたいしてどうのこうのいったり
批判めいたこというつもりもないし、思ってもいない。
これに関してはあくまで提供する側(お店・施設)の考え方や価値観の問題だと思うし、
オレだってもしどこかのお店に入って「男性の方はこちらサービスですのでどうぞ!」
といわれてなにか差し出されたら、ちょっと違和感を感じながらも戴けるものはしっかりと
戴くので(笑)
もらえる物は病気以外なら、なんでももらうさ。 にんげんだもの。
ただ、得するにしても、「どうしてオレは男というだけで、ここで優遇されているのだろう?」
といったことをしっかりと感じる感性だけは持っていたいと思う。
とりあえず「平等」について語ったところで、今回は冒頭に貼りつけた桂望実の
『平等ゲーム』を紹介。
ちなみにオレがここまで書いてきたことは本筋とはまったく関係ないのであしからず(笑)
――
「一六〇〇人、全員平等」の島がある。
仕事は四年ごとの抽選で決まり、住居は家賃も光熱費もタダ。究極のユートピアだった。
島生れの芦田耕太郎は、そこが夢の社会であると信じて疑わない。
だが、島民が欲を満たすために金のやりとりをしていると知った彼が動き始めた時、
理念に裏側に渦巻く小狭い人間の性が露呈する―。
(解説より引用)
もしも平等というものがそこに設定されたとしても、人間というものはその中で
自分だけ躍り出たくなったり、またその平等さえもあらゆるビジネスにしようと
するものなんだろうなと思わされた一作。
一度競争社会を作ってしまうと、そこから元に戻すのはもう難しい。
真の平等社会を創るっていうのは難しいんだろうな。
そして一回差別ができて、それが長い間続いてしまうと、人々の感覚は麻痺してきて
それが通常だと疑うことなく思い始める歴史が始まるのが恐ろしいとオレは思っている。
今回ももう一冊。
ちょっと趣向を変えてこちら。
『江ノ島西浦写真館』
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江ノ島西浦写真館
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観たことないけどドラマ化もされたビブリアなんとかっていう本を描いてた人みたい。
青春モノかと思ったがミステリーだった。
今執筆中の作品の舞台が江ノ島なので、描写などの参考や比較になるかと思って
借りて読んでみた。
実際の江ノ島には何度もいっていて景色や道を知っているだけに描写がさすがだったが
物語として個人的にこのテのトリックはちょっと苦手かもしれない。