B'coz I Love You | 昭和80年代クロニクル

昭和80年代クロニクル

古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。




小学校の時のクラスにNという奴がいて、クラスのみんなから地味に嫌われていた。

性格が良くないという理由ももちろんあったのだが、あらゆることにおいて
とにかく自分でやらない、そして考えない。

テストがあれば近くにいるクラスメートの答案をカンニングし、図工の時間の自由工作とか
では、節操なく人のマネをする奴だった。

これも図画工作の時間のことだったと記憶するが、想像で自分の好きな風景を描くとか
いったような時間があった。

実際に写真を見たりとか、画家の絵を見たりしながらでなく、想像だけで描けば
山の景色だろうが、宇宙の光景だろうが、街中の日常だろうがなんでもOKというのが
先生の支持だった。

みんなそれぞれ好きな光景を描いており、オレが描いたのは海の中の風景だった。


子供なのでダイビングの経験なんて当然ないし、絵に関してもゴッホより普通にラッセンが
好きといったこだわりがあったワケじゃない。

小さい頃、毎年誕生日になると両親が図鑑を買ってくれて、その図鑑の中のひとつに
「海の生き物図鑑」があり、巻頭のほうがカラーイラストになっていた。

そのイラストのひとつに海中の風景があり、いろんな種類の魚とか亀とか蟹とかが
描かれていて、そのページがなんとなく神秘的かつ冒険的で好きだったので、そんなのを
描きたいと思ってのことだった。

「よし、海の中の世界の画をかこう」
とオレが決めて、机の上の画用紙に魚などを描き始めてから少し経ったとき、
Nがふらっと歩いて、オレの席に近づいてきた。

ちょっと前の様子から察するに、自分で考えることができないNはみんなが思いついた
風景を描き始めてからも、何を描いたらいいか思いつかず、教室の中をフラフラしながら
みんなが何を描いているのか盗み見して席を回っていたようだ。
その途中でオレの席にも寄った。

「何描いてるの?」
オレの画用紙の画を見ながら、Nがそう訊いてきた。

「海の中」
描くことに集中していたオレは単純にそれだけ答えた。

するとNは「ふうん」と興味ないようなそぶりだけして、そそくさと自分の席に戻った。
そして、今まで何も考えたり書いたりせずに教室内を歩き回っていたのに、急に机に
向かってなにかの画をすごい勢いで描き始めたのだ。

嫌な予感……。

時間が経過してゆき、画が完成した生徒から先生のところに見せにゆく。

誰よりも遅く描きはじめたNが、クラスの中でも早い段階で先生のところに見せにいっていた。
オレはその少しあとに完成して見せにいった。

オレの画を見た図工の先生はこういった。

「あら、○○君もN君と似たような海の中の画を描いたのね。N君の案が良かったから
マネしたのかな(笑)」

なんとなく事態は予想できた。

オレはさりげなくNの席の近くにゆき、机に置かれたNの描いた画を見た。

嫌な予感、どストライク。

海の中という世界感の案だけでなく、画の構図まで泥棒されていた。

絵画や漫画とかでよく見る◇形のエンジェルフィッシュが泳いでいるところまでソックリ
ではないか。現実の海ではもちろん、空想の世界であっても水深たった数メートルのところに
あんな魚がたくさん泳ぐことはないだろう。
小学生であるオレの乏しい空想と知識からなる構図だ。
だからこそ、他の画でそんなものがあればパクられたと逆にわかる。


それにしても先生の
「N君と‘似たような’海の中の画」
「○○君‘も’」
といったいい方からして、あとから提出したオレのほうがNのマネをしたと明らかに
思い込んでいる。

Nの描いたほうの画をみたところ、やはりオレよりも早く仕上げて提出しようと急いで描いた
様子が見られ、画全体はかなり雑な仕上がりだった。

ただNは性格もかなり歪んでおり、今回のオレの件に限らず誰かの考えたモノを先に提案しては、涼しい顔で、
「オレが自分で考えました」
「オレが先に考えました」
と平気で答える奴なのだ。

これだけでクラスから総スカンを食らう理由は十分すぎるほどご理解いただけたと思うが
それによりこの図工の先生も騙されて、オレとNのどちらが元祖だったかを見抜けなかった
ようだ。

図画工作の教師としての資質の問題も当然あるが、単純に‘Nが先に出して、オレがあとに
だした’ということから、オレのほうがマネしたという先入観が作動してしまったという
単純な勘違いもあったと思われる。


ここで書いたオレとNの場合に関しては、Nの確信的なパクリが明らかだが、こういった明確な
パクリの例とは別としても、本当に似たような作品が時期を近くして世に出た場合、
どうしても先に有名になったほうが先駆者で、あとからでたほうがパクりみたいに思って
しまうケースは少なくないと思う。


同じくらいの時期に、まったく別の場所でまったく異なる無関係の人物が、ニュアンスの
近い作品を生み出して、世に発信したとする。


発信したタイミングがまったく同じだとしても、作品を審査する人間によって片方は
日の目をみ、片方は報われないこともある。

報われなかったほうが時期を少し遅れて世にでたら、先に世にでていたほうのマネのように
とられるのは表現世界に生きる者の性(さが)かもしれない。


それで音楽ファンと業界が騒いだのが宇多田ヒカルと倉木麻衣の件。

某音楽番組において、宇多田がゲストの来ていた回に、MCが倉木麻衣について、宇多田に
「お前のパクリ」
といい、倉木はショックを受け一時休業?


たしかに順番的には宇多田が最初に世に出て、そのちょっとあとに倉木がブレイクした。

音楽に精通している人間からすれば全然別物なのだろうけど、オレのような、もっぱら
聴くほう専門の音楽シロートから見れば、正直な印象はたしかに「宇多田っぽい」
とは思った。

だが、シロートでもそこはさすがにパクリじゃなく、たまたま似たような年代の女の子が
似たような時期に世に出て、似たような音楽をやっているということはそれほど冷静に考えなくとも理解できる。

逆にまったく自分の音楽を持っていなかった若い女の子が、宇多田が有名になってからたった
数か月の短い間に、そのテイストをパクッてコピーしてあそこまでヒットさせられたのならば
それはそれですごいテクニックだと思う(笑)


そうねえ。
宇多田のあとに倉木が出現した時も、なんだか似てるなァって感じたけど、
椎名林檎がでてきたあとに矢井田瞳が出てきたときも「似てるなァ」って正直思った。

まあ、これも宇多田と倉木の件同様に、音楽ファンからすればまったく似ていないんだろうし
そこまでの音楽ファンじゃなくても、改めて良く聴いてみればやはり違うんだけれど、
ファーストインパクトは「あれ? これ歌っているのシーナリンゴ?」だった。


ちょっと挑発的な声の抑揚とクセ。
それにPVもどことなく、意図的にフォークっぽい高円寺カルチャー臭が画面から漂ってくる。


ただ、似ている似てないは抜きにしても、この曲はこの曲で好き。
収録されているアルバムもかなり前の発売時期くらいに買った。



そういえば、ずっと前……
おそらくまだ20代くらいの時だと思う。


ひとりだったか、誰かと一緒だったか忘れたが、渋谷に買い物にいった際にせっかくだから
街をふらついてみた。
(基本的にオレは渋谷という街が昔から好きではない。人が多くて歩くだけで疲れるうえに
目に飛び込んでくるのは浜○あゆみのニセモノと、ド○ゴンアッシュくずれみたいなのばかりで
落ち着かない。この時はせっかく来たからという交通費補いのセコさからw)

ある物の前の人だかりができていたので、気になりオレも近寄ってみた。
どうやらラジオ放送のブースのようで、みんなそのブースのガラスの向こうをみている
ようだった。

誰か有名人でもいるのかなと思い、つま先立ちで覗いてみると、ガラスの向こうのに
ヤイコ(矢井田瞳)がいた。

「おお、矢井田瞳だ」
と思って、少しの間観覧していた。

途中、CMにでも入ったのかブース内にちょっと緩い空気が生まれた時間があり
その時、ヤイコがガラスの外を取り囲むギャラリーを端から端まで軽くスーッと目で見ていった


ヤイコの視線の軌道上に一瞬オレがいた。と勝手に思った。
明らかにヤイコと一瞬目があった!と勝手に思った。


先にいっておくがオレは決してミーハーではない。
自分でいうのもなんだが、どちらかといえば硬派のジャンルに入ると思う。
だけど、この翌日はバイト先などで「矢井田瞳と目が合った!!」といってまわった(笑)


ダリダリ~♪ もいいけど、オレはこの「B'coz I Love You」が好きかな。
どこか昭和っぽいので。



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