おもひでほろほろ③中生館の「かじかの湯」 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

続き。


前回最後に紹介した「月見の湯」。

左側の壁の奥に扉がある。


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この扉こそが幻想的な湯ートピアへと通じる扉なのである。


扉をくぐり、階段をおりるとそこには赤い橋がある。



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その道の先にある露天風呂が橋の上からもう視界に。


そう、あそここそ長い間憧れた風呂であり、今回の宿というか旅のメインといっても

過言ではないスポットである。



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渓流と同化した露天風呂

「かじかの湯」だ。



ついにここまでやってきた……

感激という以外の言葉がみつからない。




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岩間に温泉が噴き出した場所に作られた岩風呂。

目の前に清流を望みながら、四万の湯に浸かる。


オレは川沿いの露天が大好物であるゆえ、最高のシチュエーションだ。


すぐそばに佇む脱衣所のような休憩所のようなものがその場所をさらに演出している。




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この露天は夏しか開放されてない。

そして入浴するのにベストなのは7月~8月。


だからこの8月を狙ってずっと待っていたのだ。

(本当は7月末に来る予定だったのだが、前に記したとおり部屋が埋まってしまった)



さっそく入浴。


……なんという解放感。

生きててよかった。




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浴槽はふたつ。


奥はぬる湯だった。


最初は手前にあつめの湯に入って、のぼせてきたら横に移動するもいい。


ぬる湯のほうもじっくり浸かっているとだんだん温かさが体中にしみ込んでくるように

温まってくる。



しばし、湯に浸かりながら目を閉じて清流の音の世界に入り込む。

温と冷のシンフォニー。


こんな世知辛い世の中にも天国はあったんだなあと感動しながら四万の湯を毛穴という

毛穴で堪能する。


宿泊1日目、この湯は3回ほど浸かりにいった。

本当にお気にいり。


森と川に囲まれた大自然の渓流沿いの露天は素晴らしい。


だけど注意点がひとつ。



大自然には大自然の‘住人たち’がいる。


腐海の中に王蟲が生息しているように、この露天を囲んでいる大自然のなかにも住人たちが

いるのだ。

水辺や茂みを好む住人たちが……


そして彼らはお湯を求めて降りてきた人間たちの体温を感知すると、食事を求めて

こちらのほうへ動き出すという。


住人である彼らとは何者かおわかりだろうか?


それに関することが書かれた紙は、脱衣所の壁にも貼られている。



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そうです……


住人たちというのはズバり……




蛭なんです。






……



オレが入浴した時は彼らを目撃もしなければ襲撃もうけなかったが、山奥の森の中だけに

でてくる時はでてくるとのこと。



素っ裸の人間がやってくるのは彼らにとって鴨ネギ。

彼らのランチタイム(俗にいう‘ヒルごはん’というやつです)にされないように気をつけるべし。


ただ、そういうちょっとした危険性を踏まえながら自然を満喫するのもまた醍醐味ではなかろうか。


森羅万象。

この世に存在する生命体は人間だけではないのだから人間であることにおごってはいけない。

ヒルだっているところに生をうけて存在することが許されるべきなのだ。

山には山ビルが。

森や水辺にはチスイビルが。

井上和香の顔面には口ビルが。

タランティーノ監督の家にはキルビル。

なんのこっちゃ。




さて、肌と鼓膜と視界で湯と大自然を堪能し、のぼせるくらいになったらあがって部屋に戻る。




のぼせ気味の体と乾いた喉に「氷結」。これ最高。



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18時。


夕飯は旬の懐石料理。


すべて写しきれないけど雰囲気だけでも伝われば。


天ぷらに、冷やし茶碗蒸しに、その他いろいろ。



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鍋は自分で生卵を投入し、たまごとじにしてくださいとのこと。


例によって料理オンチのため、投入タイミングを誤ったようだ。


結婚願望はまったくないが、こういう時だけ人から

「早く奥さん見つけたほうがいいんじゃないの?」

と言われても返す言葉がない(爆)



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なんだかんだですべて美味しくいただいた。

おひつのご飯もからっぽに。


懐石料理の良さなんて、学生のころは理解できなかったがオレもオトナになってひとり

旅するようになって成長したもんだ。


食後にもうひとっ風呂。


あがってから地上波で放送していた「もののけ姫」をちょっと観る。

これまでも数回観たし、正直ジブリ作品の中でも「もののけ姫」はちょっと合わない作品

なのだが、こういった旅先で観るジブリ作品てなんか情緒的でいい。


ジブリ作品じゃないけど、去年長野いった時は「おおかみこどもの雨と雪」が放送されていた。

なんだかオレの旅のタイミングは金曜ロードショーのアニメ回と波長があうみたいだ。


23時。

もうちょっと四万の夜のしじまを感じていたかったけど旅疲れと湯疲れにくわえ、お酒の眠気も

あり、就寝。

耳に流れ込んでくる清流のシンフォニーは途切れない……。




翌朝、起床後と朝食後に朝日を浴びながらお別れの入湯。


なんて気持ちいいんだろう……




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午前10時前。

チェックアウト。



四万温泉バス停まで歩き、バスに乗って中之条駅に向かう。


到着後吾妻線で次の目的地へ。


あと1回か2回続く。