天国の駅 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

去年、長野の一泊旅行で泊まった宿「井出野屋旅館」


映画『犬神家の一族』の中で金田一耕助が宿泊したロケ地で那須ホテルとして

有名だが、もうひとつ、ある日本映画のロケでも使われたらしい。


オレは観ていないのだけれど木村拓哉や反町隆史が出演した『君を忘れない』と

いう映画のようだ。


趣のある昔ながらの宿というのは、やはりいろんな映画人の興味を引き、いくつかの

作品の舞台として登場するようだ。


過去に2回ほど訪れた群馬県の奥にある四万温泉の「積善館」。


この宿も一番有名なのは『千と千尋の神隠し』の油屋のモデルとなった件だが、井出野屋と

同じく、もうひとつ名作映画のロケ地としても使用されている。


大女優・吉永小百合が女死刑囚林葉かよを演じた『天国の駅』という作品である。


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言うまでもなく世代的にはサユリストではないのだが、やはり自分が行ったことのある場所が

映っている作品は観てみたいという思いがあったのと、ストーリーも決して嫌いじゃないような

印象だったので借りて観賞してみた。


まあ、結論から言うと泣いた。見事に。


――

天国の駅はたった独りでしか乗れない。昭和四十五年六月一日、東京拘置所の処刑場で

一人の女がこの世に別れを告げた。 林葉かよ――儚くも短い四十七年の生涯。

二人の夫を殺害し、世間から稀代の毒婦として指弾されながら、毅然として死刑台に向かって

いった女の顔には、愛を全うした者ゆえの美しさがあった。

(解説より引用)



最初の夫を殺害したあとに、妹ぶんの女性と逃避した温泉地の宿が積善館。

作品中では「大和閣」という名の旅館で登場する。


もちろん、あの内風呂も登場。観ていて感動した。



元禄の湯


男湯と女湯があるのだが、撮影に使用されたのが男湯だとしたら、かよを演じる吉永小百合が

浸かっていたのは真ん中の左側。


そうすると、オレもサユリ様がお浸かりになられたのと同じ浴槽に入ったということになる(笑)



この「大和閣」のご主人を演じていたのが津川雅彦。そして、ちょっと障害がある使用人を

西田敏行が演じている。


津川雅彦が色情魔のような役で、のちにかよの2番目の夫となるが殺害される。


津川雅彦やその他の俳優に凌辱される吉永小百合の体当たり演技はほんとにすごい。

これが女優さんのお仕事なんだなと驚かされる。



全体的にシンミリした流れの作品かと思って観ていたが、ところどころのサスペンス色が濃い。


鉄橋の上を走る列車から、着物の女性が川底へ落下してゆくモーションは、あえて今の時代に

観るからこそ、とてもセンセーショナルな映像に映った。



そして佳境になってから開始される西田敏行と吉永小百合の純愛。

もう涙ぼろぼろ。


林葉かよ――

日本一、優しい悪女にして死刑囚。


西田敏行の存在感と演技も泣けた。



「ただ、積善館のシーンが観てみたい」

そんな単純な思いが、結果として素晴らしい作品に巡り合わせてくれた。