箱根湯本温泉奇譚③かっぱ天国の野天風呂 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

かっぱ【河童】

①想像上の水中の生物。

②泳ぎの上手な人。

                 (集英社・新修広辞典第4版より)



―――


では前回の続きを。


とりあえず部屋で一杯飲みながらそれからの過ごし方を考えた。


泊まりだから風呂は10時までなら好きな時に何度でも入ることができる。

どうせ、何度か入ることになるのだから、湯上がりの冷えたビールがなくともいいので

さっそくひとっ風呂浴びにゆくことに。

(ご主人いわく、正真正銘のかけ流しなので10時には湯を抜いて清掃に入るとのこと)


部屋のある新館を出て、さっき歩いてきた階段を再び上がる。

正面には別の通路もあってこちらもかなりオレ好みの通路なのだが、こちらから行くと遠回りと

なってしまう。



通路



よっておとなしく来た道と本館内を通って向かう。

帳場のすぐ右側にある赤い階段を上ってゆくと風呂に続く廊下が目の前に延びている。



風呂1

どこか山小屋っぽい手作り感あふれる通路。

この通路も地味に歩いてみたかった。


自動販売機もしっかり設置してある。


定価よりもちょっと割り増し程度ならば、ここで冷えたビールやチューハイを買っても

よかったのだが、そこはさすが観光地の宿だけあって缶高値。

やはり抵抗があって買えなかった。ご主人申し訳ない。


画像で見えにくいが突き当りが女湯へと続く階段。

手前で左に向くと、男湯へと続く階段だ。



風呂2

ここもまた山小屋風。

カギの機能していない錆びたロッカーに色褪せたポスターといい、

まるで狙ったようにオレの興奮ポイントをつついてくる情景。


もしかしたらオレは前世で一度、かっぱ天国に来ているのかもしれない。



風呂3

レトロさは素晴らしいがこの脱衣所は冷暖房が一切ないために真冬は服を脱ぐのが辛いかも

しれない。まあそれも醍醐味ととるべし。


ガラス戸を開けると待望の風呂。


うおお、いろんな人のブログとかで見たままの湯舟があるではないか!

これが入口側から見たアングル。



風呂4


ちなみにかっぱ天国と、この野天風呂。


映画化されて今その公開を控えている花沢健吾原作のパニック漫画

「アイアムアヒーロー」の14巻でも舞台として登場している。

ただ、名前はかっぱ天国ではなくて「てんぐ天国」に変えられているが。


パンデミックによってZQNというゾンビになった人間があふれる箱根湯本に車で

入った主人公とその仲間が追い詰められて逃げ込んだ温泉宿「てんぐ天国」のモデルが

ここ「かっぱ天国」。


作者も取材か宿泊に来たのはあきらかだ。

名前以外、宿の外観や敷地内、そしてこの風呂の風景までそのまんま。

実際に訪れてみると、画の忠実さに感動さえする。


表紙イラストにある風呂もこの露天風呂である。

アイアムアヒーロー 14 (ビッグコミックス)/小学館
¥669
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奥にある洗い場のほうから入口を見たアングルはこんな感じ。


風呂5

左には岩場。


岩と岩の隙間から植物が伸びたりしている。


箱根の夜風に当たり登山鉄道の発車する音を聞きながら鄙びた感にどっぷりと浸かる。

これ以上の幸せはない。

高級リゾートには流れていない時間がここにはある。

お湯もとても上質で気持ちいい。


あっ!!


そういえばという感じで湯に浸かりながら思い出したのだが、訪問した人のブログによると

この風呂にはたしか、宿の名にあるように「かっぱ」の像みたいなものがあった気がした!


だが、今のところオレの視界にそのような像の姿は確認できていない。

女湯だけか? いや、たしかに男湯にもあったはずだ。


一度気になったらしょうがない。急きょ「かっぱ捜索隊」となって野天の岩場を探してみた。


……

うーん、どこにもない(-_-)


そんなはずはないと思うのだが。

しつこい体質のオレはもう一度よく岩場を見てまわった……



あっ!!!!



風呂6

よく見たらひとつの岩の上に「両足と水ヒレ」だけくっついたままになっとる!

足首から上はない。


どうやら理由があって外されてしまったようだ。


何があったのだろう。

まっさきに思いついた理由は酔ったマナーの悪い客が壊してしまったという流れ。

この線が一番有力かと。


若き日のみうらじゅんが大好きだったゴジラのぬいぐるみを盗んだ過去を告白したように

まれにそういったマニアが絡んでいる筋もあるので、悪質な像マニアやカッパオタクが、

カッパ像をカッパらっていったかサラっていった可能性も考えられないこともない。


でもやはり残った足元の悲壮感からすると何物かに壊された可能性が高い。

単純に老朽化してきたことから落下する危険を避けるために宿の人が取り外したという

平和な答えであることを望みたい。

しかし、せっかくのかっぱ天国だから、かっぱに会えなかったのは少し残念だ。


それはしょうがないとして、上質のお湯はじっくりと堪能した。

体が温度を蓄積したあたりに湯からあがって部屋に戻る。


夕飯を求めて再び駅前商店街へ。


意外と飲食店が少ない。少ないだけに観光客が集中している。


ちょっと考えたが、酒の買い出しもあるし今回のテーマは学生的な貧困旅行なので、おとなしく

コンビニで弁当をかって部屋に持ち返ってボソボソ食うことに。

こういうのもたまにはいい。


酒に関しては友人の考えでビールは断念し、氷と水とともに焼酎を買っておいて

また風呂入ったあとは冷えた水割りを飲むことにした。

よって黒霧島購入。


帰って夕飯食ったらまた風呂へ。

出たあと足湯に浸かりにいったら思ったよりも気持ちよくて、全身浸かりたくなってきて

また風呂へ。本日3度目の風呂。


なんでかわからないが、3度目のその日最後の風呂が一番気持ちよく感じられた。




はああ……極楽だ。




風呂7


次回、短めに最終回。