そういえば米米クラブのカールスモーキー石井こと石井竜也の映画監督デビュー作品が
「河童」という作品だったことを記事書いているうちに思い出した。
まだ10代だった当時のバイト先のひとつ上の人が合コンで電話番号交換した女のコを映画に誘ったのだが、その映画が「河童」だったことでみんなから笑われていた記憶がある。
それはさておき続き。
怒涛でもなんでもない箱根シリーズ最終回。
到着日最後の風呂の湯を堪能して部屋に戻る。
その途中まだ入っていなかった帳場横にある無料休憩室に寄ってみた。
ここは日帰り客も無料で利用できる。
稼働している時間内であればここでビール飲んだり食事したりもできるようだ。
囲炉裏がいい感じ。
これをみたら真冬にも来てみたくなってしまう。
誰もいない囲炉裏と休憩所。その寂しさがたまらなく好きだ。
上の画像で言うと奥、入口入ってからだと右にあるのが河童に関する民芸品や
グッズを展示してあるショーケース。
先日行った群馬桐生の「芭蕉」はご先代が馬が好きだったとのことで店内いたるところに
馬の民芸品や骨とう品が置かれていたが、ここはやはり宿名にもなっているようにご先代か
今のご主人が相当河童に思い入れがあられたのだと見受けられる。
職人の技術を感じられるものからポップなものまでいろいろ並んでいる。
上に飾ってある絵は水木しげる氏が描いたようにも見えるが名前が確認できなかった。
そういえば幼稚園ぐらいの時に好きで毎朝見ていたピンポンパンにカッパのキャラがいたような。
カータン? よく覚えていない。
日テレの電波少年でも「かっぱ騒動事件」があったな。
Tプロデューサー(当時)が芸人にカッパのかっこうさせて遠野あたりの川辺に生活させ、
その写真を自ら撮影し、東スポに投稿したら、カッパ出現騒動が日本中と全テレビ局に広がった
かなりの騒ぎとなった。
その後、電波少年の自作自演だということが発覚して、日テレは大バッシングを受けたのだ。
懐かしい。
ショーケースにすぐ近くにはやはり「黄桜」のコマーシャルに出ていたカッパのイラストもあった。
これはおそらくあるだろうとは予想していた。
休憩室の様子をある程度みて空気を感じ終わったら部屋に戻った。
外をみるともう真っ暗。眼下には箱根湯本駅。
歩く人の姿も見えなくなった。
鳥たちは巣に帰り、登山鉄道も車庫に帰る時間なのだろう。
くつろいでいたらご主人ではない宿の男性が布団を引きにきてくれた。
笑いながら「男性ふたりとは寂しいですねえ」と言ってきたので
こちらも笑いながら「いえいえ、こういうのが楽しいんですよ」と返す。
気取らず人間味あふれるいいオジサンだったので会話も弾む。
日常生活で他人との会話があまり弾まないために、美容室にいくのも苦しく思えた
こんなオレでもこういう宿にきた時は会話が弾む。
湯西川温泉一人旅で泊まった宿で布団を引きにきてくれたオジサンもこのオジサン
みたいな感じだったなと思い出す。
あのオジサン元気かな……
オレはあまり人の幸せを願うタイプの人間ではないけれど、湯西川のあのオジサンは元気で
やっていてくれたら嬉しいし、今回のオジサンもこれからずっと元気でいてほしいと思う。
布団が敷かれたことによって部屋の隅に寄せられたテーブルで最後の宴。
自分でもよくわからないけど、オレは友人と旅に来た時、こうやって横に敷かれた布団があるのを
視界の片隅に入れながら、隅っこのテーブルで呑んだりつまんだり話したりするシチュエーションがたまらなく好きなのだ。
この感覚わかる人いるだろうか。
とりあえずビールがないので、氷で冷やした黒霧島の水割りを一杯。
かつて一時期ハマっていた時期もあったがここ最近芋焼酎は呑んでいない気がするので
何気に久しぶり。
ンまい。
たたみ敷きの古い宿で、風呂上りに浴衣姿で呑む酒はやはりいい。
風情がある。
我ご満悦である。
ボトルを4ぶんの3ほど空け、23時くらいに布団に潜りこんだ。
オレはもともと寝つきが悪く、この前のムーンライトでも一睡もできなかったように
今回も一睡もできなかった。
(そのへんに関しては旅による気分の抑揚のほかに、ここ数年のストレス的なものもある)
眠ろう眠ろうと思っているうちに、箱根の山に陽が昇る。
友人はまだ寝ていたので、ひとり部屋を出て朝の足湯に。
嗚呼、なんて気持ちがいいのだろうか。
漫画「アイアムアヒーロー」の作品中ではこの足湯周辺も暴れるZQNであふれて地獄絵図に
なっていたが現実世界のかっぱ天国の足湯は平和そのものだ。
昨晩布団を敷きにきてくれたオジサンが近くで掃き掃除をしていた。
この足湯もオジサンの担当だったようで、気を遣って
「入れたばかりだから熱くない?」
と聞いてきてくれた。
大丈夫。ちょうどいい。
このあと朝風呂一発入ったが、箱根の一泊旅もこれでおしまい。
来てよかった。泊まれてよかった。
宿も、宿の人も、お湯も個人的には全部良かった。
やはりオレは旅にきたらこういう宿に泊まりたい。
周囲の人間は旅行に行く場合、まず最初にいろんな観光地をまわるのをメインとして計画たてて
その周辺にある安いビジネスホテルとかに泊まるパターンが多いが、オレはまず宿優先!
風情と畳のある泊まりたい宿を探して、そのついでに周辺で観てまわれるところがあれば
せっかくだから寄ってみるという動き方が好きだ。
「犬神家の一旅(ひとたび)」の時もどちらかと言えば宿メインだった。
これからも余裕があればいろんな古宿、ボロ宿を回って歩きたい。
実を言うと、この「かっぱ天国」のあとに少したったら老松温泉「喜楽旅館」というところに
行ってみたいと思っていたのだ。
参考にはここを→日本ボロ宿紀行より 「老松温泉喜楽旅館」
観て頂ければわかるとおり、ボロ宿の領域を超越しているくらいの宿なので、宿泊を
誘ったところで誰もこないかと思うので、いつかひとりで行こうと夢見ていた……のだが
ネットで調べたら、つい少し前閉館してしまったとか。
ご主人の体力的な問題による決断らしい。
残念。
関東周辺だけでもまだまだお湯も人情も溢れるような古い宿がある……
いろいろ回って数年たったらまたふらっとこの「かっぱ天国」に癒されにこようかな。
今回はかっぱにもかっぱの像にも逢えなかったけど、なんだかオレにはご主人とか
布団敷いてくれたオジサンとかが、人間に姿を変えた温かいかっぱのようにも思えてきたよ。
心優しいかっぱさんが、疲れて人間不信になってしまった人を癒すために、箱根の駅裏の
山の上で素朴な宿をひっそりひらき、温泉でもてなしてくれている。
そんな気がした箱根最終日。
かっぱ天国さん、素敵な時間をありがとうございました。
また逢う日まで――