八甲田山 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

たとえば公衆トイレ。

色に関して言えば女は赤系統、男は青系統でそれぞれのマークが表示されている。


女は赤やピンク、男は青や黒…

冷静に考えてみると、こういった男女別の色のイメージの根拠というのは一体なんなのだ

ろうと考えることがある。なんとなくわかるようで、まったくわからないのだ。


女性を表す色が赤やピンクというにはまだ理解できるような気もする。

あくまで割合の問題で、すべての女性が花好きだとは言わないが、やはり女性が好きな

花というものにはチューリップやバラなどの赤系統の色が多いから、そこから来ているのかな

って気もする。


理解できないのは男のほうだ。男のオレがいうのもおかしいけど。

物心ついたことから、青は男っぽい色で、赤やピンクは女っぽい色だという印象があったが

今まで見てきた風景を思い出してみても、男の子が好きそうなもので青色のモノなんて

ほとんどないのだ。


男の子はモデルガンとか戦車とか飛行機が好きだけど、ブルーの銃や戦車なんて見たこと

がない。 戦闘ロボだってザブングルくらいしか思い浮かばないのだ。

イデオンとかなんてむしろベースは赤ではないか?


小さい頃は赤やピンクのモノを買ってもらったりすると、やはり女の子っぽいような気がして

いやだった。

だけど戦隊モノのリーダー(男)が、ブルーやグリーンやブラックじゃなくて、レッドだったことには

不思議と違和感を憶えずに育ってきた。


色に関しては、素朴ながらもルーツが不明確な件が多い。




もう一つ、多様されるカラーイメージの使い分けが「黒」と「白」だ。


おとぎ話から特撮ヒーローものまでよく思い出してみる。

これも不思議なもので「黒」は‘邪悪’ 「白」は‘正義’と言ったような使い分けをされている

場合が多くはないだろうか。


おとぎ話で言えば、まさに「白雪姫」と「魔女」。

最近のCMで言うと、小○旬が出ている某炭酸飲料のCM.。黒と白の鳥の兄弟が出てきて

黒いほうは鬼に魂を売ってしまう設定。

白鳥とカラスという印象が強いのだろうか。そういった並びになると必然的にカラスのほうが

悪の象徴にされてしまってなんか不憫だ。


そういった物語系の中の設定でなくとも、やはり世間には

「黒=悪・恐怖・絶望」

「白=善・正しい・希望」

と言った観念が浸透しているのは否めないと思う。



だが、オレはたまに本当の恐怖や絶望を表す色は「黒」ではなく、実は「白」なんじゃないかと

感じてしまうことがある。


高倉健主演の映画「八甲田山」を少し前に観た時にもそう感じずにいられなかった。


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「クリフハンガー」「生きてこそ」「ホワイトアウト」…


いわゆる雪山系の映画はたくさんあるが、この八甲田山も広い意味で雪中サバイバルだ。


雪山サバイバルおよび雪山戦闘モノにおいての舞台背景はあたり一面視界のひらけない真っ白

な世界。

夜でも密室でもないひらかれた屋外にあるにもかかわらず、何も見えず、自分がどこにいるのか

もわからない。


まさに黒ではなく「白=絶望」といった世界観。


まだ夜や密室のほうが希望があるのではないか。

夜ならば、数時間待てば日が昇る。

密室なら、誰かが壁を壊してくれれば光が差し込む。


だけど雪山のような真っ白い空間には既に光があるのだ。そして壁はない。

だけど何も見えない。しかも夜になればさらに視界はきかなくなる。

「黒」と違って打開しようがないのだ。


真っ白で何もない部屋に人間を放り込むと、数時間で発狂するというような話をどこかで

聞いた気がした。


本当に恐ろしい象徴は「黒」ではなくて「白」なのかもしれない。



ま、色の話はこれくらいにして…


この「八甲田山」もCG全盛の今の時代の基準とする視点で見てしまったら、物足りないかも

知れないけど、昭和の心で鑑賞に臨めば名作。


上官が部下役の高倉健に向かって笑顔で

「そんな冬の八甲田山を歩いてみたいとは思わんか?」と聞くシーンがある。


あれは今の企業シーンにおける左遷や危険任務指令に通じるものを感じた。
あの上司の笑顔は言ってみれば赤紙のようなものではないだろうか。


誰だって戦地には行きたくない、だけど赤紙が届いたら、悲しい表情を見せずに名誉な抜擢を

されたという表情で喜んでみせなければ反乱分子とみなされる。


危険な真冬の雪山を何週間、何か月も歩く任務なんて誰だってしたくない。

そんな危険な任務を「お願いだからやってくれ」と頼むのではなく、いかにも名誉な任務を

与えるように笑顔で「やってみたいとは思わんか!」という上官。

ああいう役員て、いるよな(笑)


しかし、考えてみれば健さんも映画において南極とか、雪国の駅とか、網走とか、八甲田山とか

寒いところばかり行かされて大変だったんだろうなあ…。



あ、蛇足だけど最後のスタッフロールを見ていたら、クレジットに「大竹まこと」っていう

名前が出ていた。


「え? あの大竹まこと? それとも同姓同名の無名役者?」と思って、後で調べてみたら

やっぱりあの大竹まことが隊員としてチョイ役で出演していたらしい。


雪山を歩いている途中、精神やられて発狂して倒れてしまう役だったようだ。

オレは気付かなかったけど、これから見る人は注意してみたら面白いかも。

当時まだ20代前半あたりとかだっけかな。