TATTOO | 昭和80年代クロニクル

昭和80年代クロニクル

古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。



よくある苗字なので個人特定はできないと思うから書いてしまう。
中学時代、同じクラスに「佐藤」という名の友人がいて、よくつるんで遊んだり
していた。

ちょっとワルな部分とオタクの部分の2面性をもつヤツだった。まれにこういう
タイプっている。

同じグループの中にUと言うヤツがいて、そいつが好きなプラモデルを買ったことがあり
その日、佐藤がUの家に遊びにいったらしい。

佐藤は絵を描いたり、模型を作ることは得意であり好きだった。
Uの家から帰る時、Uが買って作るのを楽しみにしていた組み立て前のそのプラモデル
をこそっと持ち帰り、自分の家で組み立てて、色まで塗ってプロ並みの完成品として
仕上げ、その状態で数日後しっかりUに返却したという。

組み立ての段階から楽しみにしていたUからすれば楽しみを奪われて迷惑意外のなんでも
ないが、そのエピソードを聞いた時にオレはゲラゲラ笑った。

他の友人にそれを話した時も、聞いたほうは
「勝手に持って帰って、綺麗に作って綺麗に色まで塗って返したなんて、嫌なヤツなのか
親切なヤツなのか、わかんないね!」
と同じく爆笑していた。


そんなカワリモノの佐藤。

当時、オレも学力偏差値に関して言えば低空飛行野郎だったが、
佐藤のほうはオレを下回るほどの超低空飛行野郎だった。
オレはかろうじて低いところを飛んでいるのが認識されていただろうが
佐藤のほうはおそらく管制塔のレーダーに終始反応していない。
それくらい、ちょっとオツムが弱い男だった。

ある日、美術の時間に自分のフルネームをゴシック体のローマ字で
スケッチブックに書くというテーマがあった。
難しいのは手書きで、いかにも印刷されたような字体に書くということ。

定規とペンだけを使用して

ICHIRO 
SUZUKI


といったように自分の名前を丁寧に機械で書かれたように手書きで書くのだ。

佐藤は英語やローマ字に関しても、理解力が弱かった。
発音する場合はなかば伸ばすようにもなる「さとう」の中の「う」をどう書けば
いいのかわからなかったらしい。

授業中に書き終わった佐藤の紙をチラ見してみた。

○○○○(下の名前)
SATOO

と書いてある……。

SATOUならまだわかる。

しかし佐藤は、口で発音する音のとおり、普通に伸ばしてサトーと書いていたのだ。
言っておくがこれはボケでも反抗でもなんでもない。これが佐藤の純真(笑)

佐藤はそう描いた紙をもって先生に見せにいった。
驚いたのはそのあとだ。

何を考えたか、美術教師はそれを「SATO」あるいは「SATOH」に修正させず
最後、みんなの紙と並べてそのままそれを壁に張らせてしまった。

「SATOO」を独特な表現と捉えたのか、それとも単純に面白いと思って修正させなかった
のかはいまだに不明。

壁一面に張られたの手書きローマ字表記のクラスメートの名前、その中で真昼の月のように
ひときわ目立つ「SATOO」

それを見てオレは思ったことがあった。
「なんか字ヅラがTATTOOに似ているな」と。

そう、時期を同じくしてその頃、中森明菜の「TATTOO」という歌が、ザ・ベストテンに
ランクインしていて、毎週のように流れていたのだ。


最初はそう思っているのオレだけかなと思った。
しかし、そこはやはり芸能音楽に多感な中学生たち。

彫刻刀で机に「かあくん」とか「パラダイス銀河」とか思い切り深く彫って先生から
おこられていたミーハ-女子たちもやはり、同じことを感じていたようだった。

紙が壁に貼られて以降、佐藤が何かやらかしたりするたびに佐藤のことを「サトゥー」
と呼び始めた。

ある授業の時、担当の先生が教師に入ってきたと同時に女子のひとりが先生に向かって
こう言った。

「先生!聞いてくださいよ!サトゥーってサイテイなんですよ! この前サトゥーが
教科書なくしたから1日貸してくれっていうからサトゥーに貸したんですよ!
そしたらサトゥーがそれをなくしたんですよ! だから弁償しろって言ったら勘弁してくれって言ったんです!しょうがないからおカネだしてまた買ったんです! そしたらその次の日になってサトゥーが『教科書あったから返す』 っていって新しいの買ったあとに持ってきたんです! 私、サトゥーみたいな男ってサイテイだと思います!」

と。

いや、まあ、その話はその話でちょっと面白いけど、それ以前におまえ、ただ「サトゥー」
って言いたいだけだろ!! とは感じた。


長々と書いたけど、まあ、それだけの話です( 一一)

中森明菜はとくにファンじゃないけど、人間的にはかなり好感持てるし名曲も
多いと思う。

個人的にはこの「TATTOO」が一番好きかな。
高校の頃は声を女声にしてカラオケでよくマネしてた。
自分でいうのもなんだけど、まわりからはけっこう似てて、さらにへたな女より
色っぽい歌い方だと評判だった。今は声まったく出ないけど。

ベストテンの時、真っ赤なピチピチの服きて、体クネクネさせながら歌ってたのは
かっこよかったな。

あとバックで動きそろえてトランペット吹いていた3人もかっこよかった。
あのうち一人はまだ痩せていた頃の芋洗坂係長。