伊豆の踊子 | 昭和80年代クロニクル

昭和80年代クロニクル

古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

「ガラガラヘビのたまご」

と、いうのが売られているのを知っている人はいるだろうか。
厳密には今でも売られているのかどうかは知らない。
もう生産中止になっているのかもしれない。

子供の頃に家族で旅行に行った時、その観光地のお土産屋でよく見かけた。

縦の長さがちょっと短めの封筒で、その表に「ガラガラヘビのタマゴ」と商品名が
書かれており、その下にとぐろを巻いたヘビのイラスト(地方により異なる)が描かれている。

小さいころからヘビとかトカゲとかカエルが好きだったオレは、旅行先の売店で初めて
その商品を目にした時、いまだかつてない衝撃を受けたのだ。

南米でもないのに、この日本でヘビのたまごが買えてしまうのか!と。
しかもたったの数百円。

買いたい……そして飼いたい。
当時のオレは悩んだ。

その時に財布の中であったおこづかいで充分買えるのだが、そんなモンを買って
家に持ち帰った日にはぜったいに親に怒られるに決まっている。

「あんた! ヘビなんて、うちで飼えるわけないじゃない!」と。

黙ってこっそり購入して、隠れて育てようか。
でも孵化したあとのヘビってどうやって飼えばいいのだろうか?
甲虫が全滅して、今や空き家と化している虫カゴの中でも飼っても平気だろうか?
エサは何を与えればよいのだろうか?

小学校低学年には導き出せない答えばかりだったことで、オレはその「ガラガラヘビのたまご」
を買うのを諦めた。


真実を知ったのはそれから1、2年後。
なんと、オレがいたるところで見てきた「ガラガラヘビのたまご」は、実はたまごではなかった
のだ! そういうタイトルの「びっくりオモチャ」だったのだ。

たまごが入っているにしてはやけに薄いなとは感じていたが、純粋なガキんちょは
まんまと騙された。しかも1、2年間(笑)


内容はとても単純。


封筒の中にはヘビのたまごじゃなく、小さい厚紙のようなものが入っていて、そこに輪ゴムが
橋のように掛かっている。説明が難しいが、ピースサインをした状態で、立てている人差し指と
中指の先端にひとつの輪ゴムをかけてピンと張らせたような状態だ。
そして輪ゴムで出来た橋の中央あたりにちょっとしたオモリがある。

その輪ゴムは何回もねじった状態で封筒に入れて、封筒を薄い密封状態にする。
中でねじられている輪ゴムは、そのまま密封圧力で抑えられた状態だから、ねじれが解消されていないまま待機した状態になっている。

その状態のまま、誰かに
「これ、ヘビのたまごだよ。ちょっと開けて中を見てみな」
などと言葉巧みに封筒の中を覗くことを促し、相手が封筒の中を見ようとして膨らました
瞬間に、今まで中のものを抑えてつけていた圧力が解除されて、ねじれていた輪ゴムが
必死に元のねじれていない状態に戻ろうと回転し、その回転によってつけられているオモリが
ブンブンとまわり、封筒の内側から全体をビビビビと震動させる仕組みだ。

早い話が中を覗こうと封筒をあけて膨らました人間に「たった今、ヘビが孵化した!」
と思わせるようなドッキリグッズである。

なんともホノボノとした子供だまし。
オレは驚かないと思うけど、驚かない前に見事に騙された。

たとえばこれが近所のコンビニとかにあったら、そういうグッズだって気付くだろうけど、
これがまた、山とか川とか自然の多い観光地にある売店だと、なんとなくリアルさが増すのだ。


昭和の観光地の売店とか土産屋というのは木刀ばかりでなく、そういう変わった趣向の土産が置いてあることが多かった。


あと、もうひとつ……
ベールに包まれたお土産がある。

「空気の缶詰」なるものだ。

これはいまだに缶の中にある真実がわからないまま今日に至っている。
とくに高原とか山奥にある土産屋で見かけたような気がした。

「○○高原のおいしい空気」とか書かれた缶詰が棚に並んでいる。
これに関しては開けたら何かが飛び出るとかいったビックリグッズではなさそうだ。
中には本当に空気が入っているらしい。

ただ今でも疑問なのは、中身が事実美味しい空気だったとしても、本当に現場の空間から
採取したものなのか、それとも現場の空気に近いテイストで作られて密封された空気なのかと
いうこと。
今でもわからない。

仮に作られた空気が密封されていたとしてもそれはユーモアセンスの範囲内で決して詐欺とかには該当しないとは思うが、事実どっちなのかだけは今でも気になる。

でも、本当にその場所の空気だったらいいなと、なんとなく思う。
部屋に置いてあるだけで、(ちょっとキモい言い方すれば)ロマンチックな気分になる。

殺風景なワンルームだけど、その一角に小さな那須高原がある。小さな八ヶ岳がある。
小さな軽井沢がある……。そういう妄想ってなんか良くない?


川端康成という作家。

何冊かは読んでいるけど、正直あまり好きな作風ではない。
ついさっき「山の音」を読み終えたけど、難しくてあまりピンとこなかった(汗)
王道でつまらない答えになってしまうけど、個人的に一番好きだったのはやはり
「伊豆の踊子」

でもね、オレは周囲みたいに「伊豆の踊り子」を学生と旅の踊子の恋愛劇だというふうに見て
いないし、一番好きと言ってもストーリー的には正直そこまで面白いとは感じなかった。

オレにとってこの小説のメインは‘伊豆の風景’なんだ。
主役が風景で、登場する学生と踊子が繰り出す人間模様が背景みたいな捉え方。

男女の恋愛劇にはあまり興味ないが、川端康成が描く文字だけの日本風景はたしかに
美しい。
それが好き。

だから男と女がどうしたとかいうよりも、なんとなく自分の部屋から意識だけでも伊豆に
トリップしたくなったら、伊豆の踊子の文庫を手にとって2,3ページだけパラパラと読んでみる。そうすると雨にぬれた山道の草の匂いが漂ってきそうな感覚に浸れるのだ。

まったく読まなくとも、本棚に小説があるだけで、部屋の片隅で小さな七滝が
流れているような気分になれる。
まさに空気の缶づめを部屋に置いたり開けたりするのに近いものがある。

先日、図書館で映画版のDVDを借りてみた。
オレが生まれる前に作られた吉永小百合ヴァージョン。

伊豆の踊子 [DVD]/吉永小百合,高橋英樹,大坂志郎

¥4,104
Amazon.co.jp


ラスト含め原作とは異なる部分もある。

小説に関しては人間模様よりも風景と言ったが、この映画版に関しては
吉永小百合の存在感が完全に風景を食っていたように思えた。

やっぱり吉永小百合ってすごいんだな……
さりげない演技がすごい。臭くないし演技っぽくない。ヘタに力いれたり個性を出そうと
していない自然な演技なのに、見ていてなんだか意味もなく泣けてきそうになる。

犬神家の一族で珠代を演じた島田陽子を見た時も改めて感じたが、この頃の女優さんて
まさに無双なんだよな。美しさも存在感も。

今のイケメンとか美女とか言われている人って、たしかに整っているけど量産型。
「○○(他の有名人)にちょっと似ている」という言い方が出来てしまうけど、吉永小百合と
犬神家における島田陽子は誰にも似ていない。

誰かにちょっと似ているとか、誰誰系とかいった例えが不可能なのだ。
容姿だけでなく、演技も存在感も総合して、その人については「吉永小百合」としか
表現できない。無双という意味で。

ストーリーは格別どうとかなかったけど、伊豆の温泉街の雰囲気と吉永小百合の配役は
よかったかな。

高橋英樹もきらいじゃないし男前だけど、ちょっと番長ぽいというかバンカラというか
外見が体育会系過ぎる(笑)
伊豆の踊子実写化するなら、学生役はちょっと華奢で文化系っぽくて頼りなさそうな
役者さんのほうが合っていたような気もする。

そう言えば、中学の時の修学流行で乗ったバスのバスガイドさん、
ヨシナガサユリさんという名前だったな。本人もウリにしてたから今でも憶えている。
体型は本人とかなり違ったが……(^^ゞ



ああ~、伊豆行きたい!


そんなこんなで今夜もとりあえず更新したけど……

ご安心しないでください!
PCますますヤバくなってます!(安村風)