そんなレースに出走してない | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

第三者の考えによって、自分の知らない間に身に憶えもなければ興味もないレースに

参加したことになってて、そのうえ、そのレースで負けていたことになってたという経験は

ないだろうか?

オレは何度かある。


オレは弟がいるのだが、もう何年か前に結婚している。

それは別にいい。


弟が結婚したことについて、わざわざオレのほうから無関係な第三者に報告なんて

してもないし、する必要もないのだが、それでもたまに会話内で兄弟の有無とかを聞かれたり

また兄弟のいる場合は結婚しているのかという話題が出る時がどうしてもある。


ちょうど弟が結婚した時期に、それを聞かれた時、そこで嘘をつく理由もないので

「ついこの前に結婚した」と答えると

知人や同僚の何人かが、

「弟に先をこされちゃったね」とか「弟に負けちゃったね」

と言った。

披露宴会場でも、自分とどういう関係なのかよく把握していない親戚の人間からもそんな

ようなことを言われた気がする。


越された? 負けた??……



いやいやいやいやいや!


ちょっと待て! ちょっと待て! おニイさん!!

「越された」「負けた」って何ですの!?


ってな感じで、オレのキライな「9秒弱対戦車用ロケット弾発射器(ネットで反日だと噂)」の

リズムネタのセリフと被ってしまうくらいに聞き返したくなってしまう。


オレがいつ、

「結婚したい」

「弟よりも先に嫁さんを見つけたい」

「弟には先を越されたくない」

なんて発言をしたのだ??

それを聞いた人間がいるなら目の前に連れてこい。


オレはそんな「どっちが先に結婚するかレース」になんて出走して競った記憶はない。

そもそも出走する以前に、エントリーすらしていない。


参加した記憶もないレースに負けたとは、これまたおかしなことを言う人もいるものだ(._.)


なんだろうな。この奇妙な風潮は。


結婚に限らずに、恋愛段階(彼氏彼女が出来たとか)や組織の中での出世とかに関しても

弟妹や、年下の後輩とかが先にそういうステージに来ると、決まってその兄や姉、

あるいは先輩は周囲の人間より「先を越されちゃったね」とか「負けちゃったね」という

「敗者の烙印」を押される。


本人が「弟よりかは早く結婚したい」「後輩にだけは先を越されたくないわ!」とか

言っていたのならば、そこで掛ける言葉は「先を越されちゃったね」で間違ってはいない

と思う。


だが、そこにある第三者からの「敗北通告」は本人の意思とはまったく関係なく、

その第三者の勝手な意思と思いこみで通告されるものなのだ。


「誰もが結婚したいはず」

「誰もが下の人間より先に行きたいはず」


それが既に思い込み。言葉が多少厳しく、また例によってメンドウクサイかもしれないが

自分の価値観が当たり前という思い込みがそこにあるように感じられるのだ。


声を掛けるなら掛けるで、相手の考え方を考慮したうえで、それに合った言葉を掛けてきて

いただきたい。


「負けちゃったね」とか言ってくるのが家族とか親族ならまだいいのだが、披露宴とかで

身内でもない第三者が「弟に負けちゃったね」とか言ってくると、オレの家族でもない人間が

人の家族の中において何を勝手に「結婚レース」を開催しとるんじゃコラ、と言いたいような

気分になる。


世の中には結婚にそれほど興味ない人間だって多いはずだ。


百歩譲って考えよう。

結婚したい、したくないに限らず、生物学的における子孫繁栄のため(ヤリたいだけの男がよく

持ちだす理屈だとオレは思っている)に結婚して子供を残すという大義名分をふまえたうえで、

「弟のほうが人類を絶やさないという義務を先にしっかり実行したね」とか

「アニキのほうは少子化ストップにまだ役立ってないね」

とか言われるならまだ多少はナットクゆく。ムカつくとは思うけどナットクはする。


だけど相手の考え方を無視したなぐさめや、敗北通告はいらない。


大事なのはどちらが先に結婚したかとか、出世したかとかではない。

まして「先」はあくまで「先」にそういうステージに着いたというだけで、そこには

勝ちも負けもない。


「先」が大事なのではなく、周囲がどんな価値観を持っていようが、自分自身が身を

置きたいポジションを維持できるか、あるいは時間に関係なく、そこを目指せるかと

いうことなのではないだろうか。


「先」=「勝ち」といったズレた観念。

なんでも勝ち負けをつければよいというものではない。


だからオレは結婚式に限らず、あらゆるシーンで下の人間がおめでたいステージに立った時に

「負けた」「越された」と言われると正直、「は?」と言った表情になってしまう。

だって、そんなレースに出走もエントリーもしていないのだから。


たとえば、ラーメンに関して微塵も興味のない人がいて、オレがその人のところにいって

「今年は何軒くらいのラーメン屋廻った?」と聞いたとする。


聞かれたほうはラーメンなんて興味もないし、そもそもラーメン屋巡りなんてしてないから

当然、「いや……0軒だけど」とか答えるだろう。

そこでオレが

「0軒? オレもう20軒廻ってるよ。オレに負けちゃってるじゃん」

と言ったとしたら、言われた方は

「は?……(いやオレ別にラーメン興味ないし、そんな競争してないし)」

と思って呆然とするだろう。


「先をこされちゃったね」と言われた時のオレがそんな呆然とした心境だ。