◆「あとがき」と「解説」 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

スパンクマイヤは先発に回るのか

『あとがき』  ケン74


少し前に文学および執筆有志でもある友人Iと話した流れで

オレが今まで書いて応募した(落選)作品の中からどれかひとつを読みたいという嬉しい声を

頂いたので、データをメールした。本当はモノ書きのやりとりらしく紙の状態で直接手渡ししたかったのだが互いになかなか逢えないのでとりあえず電子でまる投げさせてもらった。


数日後、電話が掛かってきた。

「もらった作品を全部読み終えたんで感想伝えようかと――」 とのことだった。

早っ!

原稿用紙100枚だから一日で読めて全くおかしくないけど、集中してわずかな期間で読んでくれた

うえに、わざわざ報告の連絡までくれたのはうれしかった(泣)


友人I氏の渡したことがきっかけで先日に抜粋アップした落選応募作品は2作目である。

もともと、このコラム内で書いた

「シコ―スキーは先発に回るのか」

という短編ノワールのタイトルを微妙に変えて内容を加筆修正して長編に膨らましたものであり、概要と世界観はほぼ一緒だ。


世の中に翻弄される不器用な人間が最後に電車に飛び込むブラックな風潮批判作品として短編は書きあげた。

ありとあらゆる風潮や人間関係に嫌気がさした青年のこの世における唯一の心のよりどころと

なっているものはプロ野球であり、どんな状況にあっても気になってしょうがないのは贔屓チームに復活した助っ人外人投手「デボン・スパンクマイヤ」の起用法である。


長編作品として改めて新人賞に応募するにはやはり実在プロ野球団や選手の名前を出してしまうと問題になりかねないために、「埼玉西武ライオンズ」は「狭山セイラ―ズ」という架空の球団

(なんとなくゴロだけ似せておいた)に置き換え、実在助っ人のシコースキー投手に関しては

「デボン・スパンクマイヤ」という架空の選手をつくって差し替えた。


テレビ映画ナイトライダーに登場するデボン・シャイアーと、映画エイリアンに登場した

宇宙船副操縦士スパンクマイヤ―をあわせたのが名前の由来だ。


友人にも読んでもらったせっかくの機会だから、今回は冒頭などの一部だけオレの作風という

ことで公開しようと決断した。友人は「2作目でこの枚数とこの内容を書けるのはすごい」と評価してくれたが、今改めて読んでみても書き始めの頃だけにやはりツメが甘かったり、文章が破たん

してたりするのは自分でもわかるんでご了承を(笑)

落選作品とはいえ、練り直して別の賞に応募できないわけでもないから当初は一切ネット公開

しないつもりだったけど、この作品は修正再出撃させないことをほぼ決心したからアップする。


つい先日だったか。シリアに行こうとした学生がその理由として日本にいても息詰まるだけだし

居場所もないというようなことを言っていた。


だからと言って、戦地へ行って人を殺すという感覚はたしかにおかしいかもしれない。

またそういう判断も甘いかもしれない。だけどオレたちは、そういう決心をした若者を批判することはしても、そういう若者がこれからも最低限の生活をしてゆけるような世の中づくりをするべく

何か一歩でもアクションをおこしただろうか。

オレが学生だったころも、世間の空気はある程度末期だったが、今の若い学生はもっと可哀そうだと感じる。そしてオレらの同年代も。


「個」を持ちすぎる人間は個を持ちすぎるゆえに自分が正しいと信じすぎうまく生きてゆけない。

「個」を持たない人間は、信念も何もないから周囲に合わせて巧く生きてゆく。


友人に読んでもらったこの2作目ではそんな時代に翻弄された主人公の青年をとりまく絶望を描いてみた。


もちろん本来なら筋として全部読んで頂いてこそ概要が理解できるので、断片的だとスジやオチがわからない部分があって当然なのだが、さすがに原稿用紙99枚ぶんの掲載はムリなんで、あくまで作風や文体を知ってもらい意味でもダイジェスト掲載のようなもん。


さきほどリンクさせた「シコースキーは~」と大筋は同じようなもんなので、流れをはじめ、

話しの筋や結末はそれとほぼ同じだと思っていただければ。


また読んでもらった友人に対しては大変恐縮ながら、実際の文庫の巻末にある「解説」のような

ものを書いて寄稿してもらいたいと頼んでみたところ快く了解をもらい、さすがは映像や創作の

老舗となる学校で本格的なシナリオの勉強などをしてきたクリエイト思考をもっただけあって

読者様に向けたホントの小説巻末「解説」を!これは嬉しい。


友人にはオレの作品に対してヘタなヨイショや無理な批判はせず思ったことをそのまま

書きたいようにとお願いした。

「もしこの作品が世に出ると仮定したらどんな巻末解説を書いて発信してくれるか」という

発想も面白いと思ったのと客観的にどういう作品に見えるのか知ることが出来るかなと

思っての企画である。


友人に寄せて頂いた「解説」は下に掲載させて頂く。

なお、純文学には必至である人間の汚い部分をはっきりだした解説なので一部の言葉も

寄稿してくれた友人の文学思考に強さとして尊厳し可能な限り少ない修正で転載させて

頂いた。

(純文学の解説にあたってストレートなきわどい表現は当たり前のことで差別でもエロネタでもないのだが一応アメーバの検閲に引っ掛からないように多少の修整だけさせてもらった)


拙作である本編全部を全力で読んでくれ、また全力で読者向け解説を寄稿をしてくれた

友人I氏に心から感謝する。


2014年 11月7日 ケン74





スパンクマイヤは先発に回るのか について

『解説』 友人代表I



すべてがばかばかしい、そんな想いに駆られたことはないか。

喰うために人は仕事をする、それだって最低限の理由でしかない。

仕事が全てとは本当に君の言葉か?
働いたら負けも本当にそう思うのか? 軽蔑と畏怖。人はなんのために生きている? 知りたければビジネス書なんか読むな。
 

面接官に唾をはけ。インターネットも見るな。考えろ、小説を読め。


野球選手のスパンクマイヤは先発に回れるだろうか?この小説の主人公はそれが気になってどうしようもないらしい。


主人公とは名ばかりの最底辺野郎。面接では小馬鹿にされて、家族からも愛想を尽かされている。虫けらみたいな奴。俺らと同じ。

おまえもすぐにそうなる。それがどうした。楽しいかこの野郎。

どうでもいいだろ。おまえはどうだ?彼女が自分に気があるとでも思っているのか?んなわけねえだろ。だれもバカにできない。俺はエロゲーの続きが気になって仕事どころではない。仕事中もおっ勃ってしょうがない。上司に呼ばれて、ご褒美でもくれるのかとおもったら、営業成績で怒られて。キャバ嬢にメールを送るのに余念がない。メールを教えたのは俺だ。おまえに必要なのはスマホじゃなくて●●ホ。

幾つ受けたのかわからないほどの面接、その末にたどりついた会社は

クソ溜だ。


今ではこの小説に書かれたことは我々の世代では、掃いて捨てるほどある日常の風景。自分だけゴールに上がれば、見えなくなる世界。下の者は上の者の足を引っ張って辛酸をなめさせないことには収まらない憎悪で渦巻いている。


きれいにメイクしたOLが闊歩している。誰も脳内で犯しているだけ。綺麗でいてくれてありがとう。恋愛なんて書かれていない、いい女も登場しない。そんなのは仕事がない人間には資格がないからだ。せいぜい街ゆく女を視●する。だけど目をあげられない、スーツを着たイケメンが蔑む目で見るからだ。視線ってほんとに突き刺さるんだなって知った。



面接官は地球人に見えなくなってきている。わからない言語を軟体動物のような口なのか性器かわからないようなところから異様な音を発しているだけだ。理解できない言語に適当に答えていたら、不合格だ。まるで秘密結社にでも入るかのような厳重な試験。主人公が落ちたのは面接官の暗号を解けなかったからなのか。



どうでもいいじゃないか。彼らも血を流す。なら殺せる。会社を出て、工事現場で手頃な手にしっくりくる鉄パイプを盗んで、彼、彼女をまてばいい。意識が残るようにまずは足を砕く。そのとき、はじめて意味のわかる人間の言葉を発するのだ。


だけど、彼はそうしない。


なぜなら、スパンクマイヤが先発になるかどうかが気になって仕方ないからだ。刑務所に入れば、テレビもおいそれと見れやしないし、安い発泡酒も飲めなくなる。それだけだ。命拾いしたな。



だれか教えてやれよ、スパンクマイヤは先発なのか。


それは小説の中ではわからない。彼の妄想なのか、そんな情報はなかったんじゃないか。ただ、そうだったらいいなと思っていたら、いつの間にかそうに違いないと思い始めている。


でもおまえだってそうだろ。


たぶん先発じゃないんだよ。いつも現実は俺を裏切る。でも考えちまうんだよ、そうだったらいいなって。死んじゃったからわからないけれど、俺の期待がもう裏切られることはない。明日の朝刊に俺の事故とスパンクマイヤの先発結果が乗れば、すばらしいだろうな。

だから読者はスパンクマイヤの先発がどうなったのか、なんとかくそったれな毎日を生き延びて知ってほしい。だって俺たちが生きてる理由なんてそんなもんだろ。他人の言葉で大げさな理由を見つけるな。自分の言葉で、生きる理由を見つけろ。


友人代表 I