カレーライスにゃかなわない | 昭和80年代クロニクル

昭和80年代クロニクル

古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。



有名チェーン店のカレー、神保町でインド人が経営する本格専門店のカレー、
おふくろの味のカレー……

ラーメンと肩を並べて2大国民食のひとつとまで言われるようになったカレーは
今やどこにいっても食べることが出来るが、食べる人間のその時の状況なども含めたうえで
もっとも(に値するぐらい)のうまいカレーを食べることが出来る場所はどこか。

「スキー場のレストハウスのカレー」
これがオレにとっての正解。

ココイチやゴーゴーカレーその他のチェーン店も文句ナシにうまいのだけれど、
チェーンだけに他と比べて特別突き抜けてウマいというまではいっていない。

カレー専門店は個人の好みによって、もんのすごいうまい店と、舌に合わない店の落差が
激しい。そしてインドでは一般食であるはずのカレーが日本で売られると足元みられて
何故か値段が高い。

おふくろが作ろうが、恋人がつくろうが、はたまたキャンプなどの飯盒炊飯で自分達の手で
作ろうが、そのありがたみは別として不味い時は不味いのがリアル。

そんな中で、ある意味ずっと不思議でもあるのだがスキー場のゲレンデの麓や、リフトの
乗り継ぎポイントに点在するレストハウス(レストラン)のメニューにあるカレーライス
において、今までハズレに遭遇した記憶がない。
すべて美味かったようにすら思える。

最初のほうは例によってそれが単純に「気分の問題」だと思っていた。
水の入って泳いで疲れたあとに食べる‘海の家のラーメン’が美味いというのと同じ
理論だ。

ただこう言っては失礼だけど暗黙の了解のうえでみんな食べていると思うから書いてしまうが
海の家で出てくる醤油ラーメンはあきらかにチープである。
麺もおそらくただゆでるだけの簡単なモノで、決して酒井製麺や浅草開花楼とかで練られた
ものではない。街の中華料理で500~600円くらいで出てくるラーメンと同じようなものだけれど
それが海では1000円前後というなんともプレミアンな価格設定になっている(笑)

それでもみんなして買ってズルズルと啜って食べるのは、せっかく海に来たのだからという
開放感の後押しが大きいのと、あとやはりチープなラーメンであっても泳いでおなかがペコペコ
になったあと、水着のまま汗を流しながら食べると実際に美味いからというのがあると思う。

価格が1000円だとして、その内訳は500円がラーメン本体への支払いで、あとの500円は
雰囲気を買っているようなモノだろう。

だけど海ではなく自分の家にいた日の昼食時か夕食時に、同じラーメンを同じ価格で
買って食べたいかと言われたら、それはない。
あの醤油ラーメンはあくまで海で食べるからチープだとわかっていても美味いのだ。

そこでまた話を数行前まで戻す。

スキー場のカレーに関してもさっき書いたように、同じく単純に気分の問題だと思っていた。

朝早く出発して到着して、まだ眠くて寒い中で滑って腹ペコになったあとに
辛くて体が温まって目が醒めるような食べ物だからうまく感じるのかと。

たしかにそれもある。
しかし、レストハウスのカレーを食べているうちにだんだん気付いてきた。

「これ、雰囲気や状況を抜きにしても、ふつうにハイレベルの味なんじゃないか?」
という真実に。


海の家のラーメンはホントにスーパーなどで普通に売られている生麺を簡単にゆでただけの
ようなもの。
だけど、スキー場のカレーのあのコクは決してそのへんの店で売られているようなレトルトの
コクではない。(そう言っておいてもし普通に市販されているものだったらハズかしいけど)

色やとろみや辛さ、そして中に転がる岩のような牛肉の固まり。
かなり本格的なのだ。

ちょっとした繁華街の敷居の高そうな専門店で、同じ1000円で売っていてもそれほど
違和感ないような印象もうける。

レジャー施設における飲食店事情もだいぶ変わったと思う。
昔は違った。

たいしたものを提供しなくても店側からすれば「多少高くて美味くなくても、ほかに食べる場所がないから客は入るだろう」程度の認識は少なからず感じられた。
もちろん、儲け主義だけではなく土地柄食料の運搬事情や従業員確保のためにある程度の料金高め設定は存在するということは認めるが。

でもやはりレジャー施設内には高いだけで味が大したことない店が多い時代だった。

ところが近年はその勢力図が変わってきていて、ヘタすると多くの人が正規目的地として
目指す観光地やレジャー施設にある飲食店よりも、その途中にあるサービスエリアや道の駅の
飲食店のほうが勢いがあったり本格的になりつつある。

山や遊園地や温泉ではなく、そこにゆく途中にある「サービスエリア」を目的地として
繰り出すひとたちも少なくない。
実際にはやったことないが、オレもそういう「経由地めぐり」とかには興味ある。
サービスエリアのカルビ丼うまいねえ。

そういや、ちょっと前から気になってたふかわりょうのDVD、
「アーガイルの憂鬱・サービスエリアを愛した男」をツタヤかどっかでレンタルしてるの
見つけたらちょっと借りてみたいと思っているのだけれど、シュール貴公子ふかわの
シュールな企画だけにあまり要望がないのか、近所のレンタル店では在庫ナシだ(笑)
けっこう肩の力抜いてダラーと楽しめそうな気がすんだけどな。
みた人いたら感想教えてください。

また話が微妙に脱線したけど、元ブルーハーツの真島サンはカレーライス愛好家。
それで「人にはそれぞれ事情がある」というアルバムの中にもこんな曲が収録されている。

とにかくカレーライス推し。
カレー・イズ・ナンバーワンといった明るい曲。

高級ステーキよりも、フォアグラよりも、北京ダックよりも、身近で手頃なカレーライスが
一番だというようなことを醸しだすところに真島イズムを感じる。
陽気な高級志向批判にも感じられるのはオレだけか(笑)

やはり身近なものって身近過ぎて気付きにくいけどありがたきて偉大な存在なんだねえ。

そうそう「高級な品よりも身近な品を愛するエピソード」でひとつ思い出した話があった。

記憶にあいまいな部分もあるから断片的に間違ったとこもあるかもしれない。

タレントの伊集院光がたしか結婚記念日だか奥さんの誕生日だかの前日に、奥さんに向かって
「プレゼントなんだけど『指輪』と『アイスクリーム』どっちがいい?」
と聞いたという。

すると奥さんは迷わず「アイスクリーム」と答えた。

伊集院は奥さんのことが大好きなので、ちょっとひねくれていて高級思考がなく相手を気遣う
奥さんが「アイスクリーム」と答えることを当然想定していた。

奥さんから「アイスクリーム」という予定通りの答えを聞いた伊集院は奥さんに
「じゃあ、明日の朝出発しよう」と言って、翌日何もしらない奥さんをつれて飛行機に乗って
北海道までゆき、前もって調べておいた景色の綺麗な牧場に奥さんをつれていって、そこで
美味しいと評判の「アイスクリーム」を食べさせてあげたらしい。

なんとなく舌切スズメだっけ? に出てくる「大きいつづら」と「小さいつづら」の話に
似てるけど、あまり人の幸せを強く願わないオレでもこのエピソードを聞いた時には
「いい夫婦だなあ……」とちょっとほっこりしてしまったとさ。

おしまい



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