2014年 8月14日
大きさだろうが高さだろうが財政力だろうが、とりあえずなんでも世界№1でないと気が済まない
我が国の建てた見栄の象徴「東京空木」を背景に備えるJR錦糸町駅にて男三人集合す。
予告通りに約2年ぶりの青春18きっぷ鈍行(快速)乗り継ぎ列車旅「早朝鈍行」決行にいたる。
先日までの天気予報では、予報士のアマタツさんも「千葉だけ昼ごろに雷雨を伴う可能性」とのことで、それを耳にした瞬間、台風に日光旅が頭をよぎる。
またしてもオレ(ら)の旅の不吉を暗示する神々のいやがらせ。
天体までも駆使してまでオレに快適な旅をさせたくないなんて、そこまで手をかけてもらって
逆に光栄だぜと思いながらも、朝目覚めたときにはほぼ晴天だったので、旅は決行。
そう、今回の目的地は千葉の名勝である某島および、房総半島一周である。
今までの「早朝鈍行」にて静岡、群馬、栃木、山梨と乗り継ぎまくり、まだ回っていない
エリアということで今回は「千葉」だ。
錦糸町に集合したあと、まずは総武線快速に乗り込み、とりあえず乗り換え駅の千葉まで。
千葉まで来たら、内房線の「上総一ノ宮行き」に乗り換えて、3時間ほどの鈍行ぶらり旅である。
お盆とはいえ、二日目といういうことと、多くの人間が急行のような手段を使うだろうと考えていたオレの予測が見事裏切られる。
上総一ノ宮駅で乗り変えた時、その乗り変え電車においてすでにシートが埋まっていたのと、
他にも乗ってくる客が多くて、しょっぱなからのシート確保出来ず!
ものすごくつまらないこだわりでお叱りもうけるかもしれないが、オレは鈍行によるローカル路線類の旅行乗車に関しては一人旅でも仲間との旅でもどうしても……いや、出来るだけ「ボックスシート」がいいのだ。
それはもちろん、仲間と居る時は話がしやすいというのもあるが、それよりも何よりも絶えず
進行方向の景色が見れるということと、ローカル線独特に風情があるから。
せっかくの電車旅行にきてまであの横一列シート座っていると、どうも通勤モードになってしまううえに、首をひねらないと風景が見えないではないか。
出来れば個室気分にボックスシートに座りたいという気持ちは誰も同じだとは思うけれど、誰とも話すわけでもなく、景色も観ているわけでもなく、ボックスシートで爆睡している人を見ると、
頼むから普通のシートで寝てくれ!っていいたくなる。
しかもほとんどが海水浴やバーベキューに行く集団でちょっとうるさい。
中学高校生くらいまでのオレだったら、そういう人たちであふれる電車のほうが夏らしく賑やかで
いいとか思っていたが、年齢とともに感性も変化してきて、どちらかというと、このお盆の時期なのに1人くたびれたスーツ着て、こんな方向に何しにゆくんだろうとか思わせるようなオッサンが乗りこんでいるようなどこか哀愁漂う鈍行列車のような雰囲気が好きになってきたオレにとって、そういう賑やかで明るい車内はどこか苦手。
とりあえずそういった「明るい大人数」は予想どおり、御宿あたりで大量に降りていった。
そして錦糸町から約3時間……オレは「太海」という駅で降りた。
木造の情緒漂う駅舎。
駅員室には駅員さんがひとり。
ここから徒歩で目的地を目指す。
民家の隙間からのぞくは海。味気ある狭い道を歩いてゆく。画面中央は友人。
防波堤沿いに突き当たり、汐風を左頬にうけとめながら右へ右へとてくてく。
防波堤の上を歩いているのは、もうひとりの友人。
駅から歩くこと12,3分。 右手には太海の漁村民家が連なる。
そして、目的地……正確には目的地のひとつに渡る船着き場へ到着する。
グリーンのシャツはオレ。
そう、今回の目的地のひとつめはこの渡し船発着所の目と先にある
『千葉県指定名勝・仁右衛門島(にえもんじま)』
である。
発着所で島の観覧料金1350円(往復渡航料含む)を払い、手漕ぎ船にのって島に渡る。
船は随時往復しており、一度で20人くらい運べる様子だ。
ジリジリとした太陽の光が首に刺さりそうな暑さの中で数分、迎えの船を待ち
到着後に他の客数人と一緒に乗りこむ。
船頭さんはふたり体制。 そしていざ、渡航。
ここで、「仁右衛門島」について少しだけ解説しておこう。
――仁右衛門島
それは南房総に浮かぶ島で、その名の通り個人所有の島である。
新日本百景にも選ばれている。
かつて源頼朝が合戦で敗れたあと、この島の住人である平野仁右衛門氏に助けられたという伝説があり、島の一部に今でも「頼朝の隠れ穴」なるところが存在する。
……
そんな伝説が語り継がれる個人の島に招待されるかのようにオレらと数人の観光客は
船に揺られながら向かっている。
オレたちはそこで楽しいバカンスを過ごそうとして、心躍らせていた………
しかしそれが「頼朝の亡霊」と名乗る殺人鬼による惨劇の幕開けになるとは、その時誰も
知ることはなかった……。
テテン、テン、テンテンテテテテ…テン テン テンテケテンテン テンテテテン~♪
テンテテテンテンテン!
ケン田一中年の
事件簿
Case.1 仁右衛門島伝説殺人事件
ウソです。ごめんさない。
そういう伝説のある島にボートで渡るというシチュエーションからして金田一っぽいなと
思ってちょっと‘やってみたかった’だけです。
島において当然そんな惨劇なんてないです。そしてそんな記事もないです。
ご島主さま、すいませんでした<m(__)m>
皆さ~ん!仁右衛門島はいいところなんで、次の休みは是非いらしてくださいね。
話を戻そう(爆)
5分ほどでもう仁右衛門島側の船着き場に近づく。
エメラルドグレーの湘南とは比べ物にならないくらい海水が透明できれいだ。
電気不足の人間界を鼻で嗤うかのように、水中では電気クラゲがゆらゆらと漂い
船着き場下にある岩の表面では青い蟹が戯れていた。
上陸してすこしだけ歩くと島の入口があり、ちょっとした売店などもある。
来ている客はほとんどが海水浴かBBQだ。
江の島にしても猿島にしてもそうだが、人間ていうものは年をとると島に来た時は
海水浴よりも、島の内部の自然や造形を楽しみたくなる。
泳いでも海水ってベタベタするじゃん(笑)
さあ、島の中へ潜入だ。
島全体はそれほど広くはなく30分か40分くらいで散策できる。
松尾芭蕉の句などが記された碑などがならぶ文学道みたいなところを進んでゆくと
どんづきにあるのはちょっとした展望台。
下に見える岩は「亀岩」と呼ばれているらしい。
画像だとわかりにくいがたしかにカメっぽい。
ここから引き返し、基本順路まで戻り、さらに登ってゆくとなんとなく沖縄ッぽい感じの風景に
なってくる。
そこで出てくるのが「仁右衛門邸」である。
こういう門構えって好きだ。
昔のちょっと身分高かった人が住んでそうな家で庭にはちょっとした池もあった。
家の裏手を抜けてゆくようなオレ好みの通路を通って島の深い部分のほうへと進む。
ここが「頼朝の隠れ穴」と呼ばれるところ。赤い鳥居の奥にある。
頼朝はここに隠れていたとかいないとか。
ホストの頼朝社長は隠れていないと思う。
この近辺には磯の岩場も広がる。
場所によってはウミウシとかアメフラシのような、なかなか見れない生物の観察も出来る。
……ようなことを少し前にアド街で言ってたような気がした(笑)
パワースポットのような岩もあったり。
磯遊びをする人たち、泳ぐ人たち、BBQを楽しむ人たち、オレらのように散策を楽しむ人たち。
それぞれが好きなように島を楽しんでいた。
あっという間に一週まわってしまった。
ここでひとつ。
オレはある勘違いをしていた。
たしかに、この「仁右衛門島」も一度来てみようとは思っていたから島に来たという行動は
予定通りでもあるのだが、もうひとつ、オレが見たかった風景、歩きたかった風景のあるのが
この島の中だと思い込んでいた。
それが島にきて、内部になかったことに気づいた。
そうか……オレが一番行きたかった場所は、さっきまでいた本土のほうだったのだ。
そう、この仁右衛門島から見渡せる、あの山の斜面にひっつくような太海の漁村。
それが判明したところで、オレらは約1時間ほどで島をあとにして、また向こう側の太海へと
戻った。
そう、アノ人の歩いた足跡を辿るために……
(続く)