野坂昭如「戦争童話集」他 | 昭和80年代クロニクル

昭和80年代クロニクル

古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

戦争童話集 (中公文庫)/中央公論新社
¥555
Amazon.co.jp

ノサカアキユキと言ってイメージするのは2つ。


ひとつは大島渚監督の顔面を殴ってメガネふっとばしたあと、マイクで殴られるという

反撃をうけ、その際マイクのスイッチが入ったままだったため、アタマを殴られた瞬間に

「ポコッ!!」と音がなった人。


そしてもうひとつ誰もが見て、涙と鼻水の大洪水になった「火垂るの墓」の原作者。

やはり、戦争の語り部のひとりというイメージがある。


イメージはあったといいつつ、先日図書館で偶然目にするまで、その本の存在は知らなかった。

それが「戦争童話集」

タイトルにつられて手にとってみると、デザインも本自体もかなり年季が入っていて古そうだった。

(ちなみに上に貼りつけている表紙のイラストではない。借りたやつそのままのはなかった)


いくつかの短編集であり、兵士とかというよりも、戦時中という環境下の中における子供や

動物やらの悲しいストーリーを描いた作品であり、童話というだけあって幻想的というか擬人的な

エピソードが多い。


たくさんの話がつまっているだけに、ちょっと退屈な話や、わかりにくい話もあるが

なんといっても、一番最初のエピソードである

『小さい潜水艦に恋をした でかすぎるクジラの話』が切ない。印象ぶかい。そして重い。


戦争中、海上には爆撃機が飛び交い、また海中には各国の潜水艦がもぐりすすんでいる。

そんな海の中で、出掛ける途中の一匹の純粋なクジラ。


クジラは目的地に向かう途中に見つけた日本の小さい潜水艦を同じ海の仲間だと思い

恋をする。

その後、クジラと潜水艦のクルーとの交流描写もすこしあった気がしたが、そのヘンの詳細は

あいまい。すまん。


クジラはずっと潜水艦についてまわり、じゃれついたり、ボディーガードして、そんな生活を

楽しむが、ある時、その日本の潜水艦がアメリカの敵機(潜水艦だったかも)に発見されて

しまう。

とまどって焦った日本の潜水艦の動きを見たクジラは、潜水艦がはしゃいでいるのかと思って

一緒に遊ぼうとそばにすりよる。


その時に、敵機の原子力爆弾が潜水艦に向けて発射された。

そんな状況をわからないクジラは潜水艦にぴったりとくっついたまま。

そして……

爆弾は、じゃれて楽しそうにするクジラに命中し大爆発……

クジラは体がバラバラになってふっとんだ。

日本の潜水艦はクジラが身代わりになったことで助かる。

……というお話。


たくさんのいろんな話がつまった短編童話集なのに、一発目からこんなにも涙腺破壊力の

あるような話……

打線で言えば四番でなくて、一番にいきなりバースやバレンティンを配置するようなシフトは

反則ではないか。うるうる。


オレは説明がヘタだから、これまでの説明だと、「たいした話じゃないじゃないか」と思われるかも

しれないが、これはぜひ一度読んでいただきたい。


戦争じゃなくても、あらゆる争いにおいて、闘っているモノ同志はある意味別にどうでもいい。

でも、その環境に巻き込まれた人はホントに悲惨である。


童話とはいえ、そこは野坂氏。

文体にも独特の野坂節が浮き出た作品である。




今回のもう一冊は軽いモノを紹介しよう。

この人の作品は実ははじめて読んだ。有川浩サンの作品。映画はみてないけど。

阪急電車 (幻冬舎文庫)/幻冬舎
¥576
Amazon.co.jp

文章表現勉強のために、最近は純文学以外にもバランスよく大衆小説も読むように

している。「阪急電車」は思っていたより面白くて、ほっこりした。


関西方面には昔、出張で何度もいったけど担当営業エリアの問題でJRや南海や近鉄や

地下鉄ばかりで「阪急」はほとんどと言っていいほど乗れなかったので、これ読むと少しだけ

乗りたくなる。


サークルとか習い事は、価値観や趣味がある人間があつまるけど、会社はまったく別べつで

バラバラな人間が入ってくるということはよく聞くけど、実は会社に来る前に、もっといろんな人間が必然的に集中してあつまってさらに密集している空間があり、それが電車なんだな。



遅い時間まで飲んでて、店でてなんとか駅のホームまでかけあがって終電に間にあったけど

到着駅までに既にギュウギュウの満員で、これに乗らなかったらもう帰れないというその電車が止まった瞬間、自分の列の前にとまった車両の中のドア前だけ、まるで避けてるかのように不自然に空間が出来ているというのは本当に勘弁していただきたい。

いやでもそれに乗らないと帰れないし、かといって今さら他の車両ドアの列の最後部に並びかえても乗りきれない(怒)