三島由紀夫「美しい星」他 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

ライオンズファンの皆様こんにちわ。柄沢晃弘です(嘘)

古すぎてわからない人多いと思うが、わかる人いたら嬉しいw


さて、西武×巨人の交流戦が後味の悪い終わり方したところで気を取りなおして

2日ぶりにブログの更新および本の紹介でもしよう(-_-)


美しい星 (新潮文庫)/三島 由紀夫
¥620
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もう20年近く前になるのかな? セイン・カミュとかが顏を銀色に塗りたくった宇宙人になって

UFOで宇宙飛んでる途中に遊ぶ金を卸したくなって、そのために「地球寄ってく?」と仲間に訊く

「むじんくん」というATM?のCMが流行った。


高校生くらいまで思い込みでずっと「台風一過」を「台風一家」だと思ってたように、

あの「むじんくん」も無人ATMだから「無人くん」という意味だと思ってたんだけど、

実は好きなだけカネをおろせるカネが尽きない意味での「無尽くん」だという事実を最近知った。


これって実はみんな結構フツ―に知ってたりすることだったの?

オレは約20年間ずっと誤解してたのだが。

「20年間も気付かない」ということは、ルバング島の小野田サンの次くらいのレベルではないか。


ま、前振りはさておきメインテーマはATMじゃなく、宇宙人のほう。

ずうっと前の宇宙人が侵略してくるような映画や漫画では、だいたい宇宙人はタコみたいな

フォルムとかカラダが小さくてアタマと目がでかいというスタイルが多いのだが、

最近の宇宙人映画では、ほぼ人間と同じ姿で紛れ込んでいる宇宙人が多い。


ヘタにアニメチックなデザインにしてチープに映るより、そういうふうに変身能力を持っている

姿にしたほうがリアルに映るだろうという製作サイドの意図だろうか。


たしかに宇宙人が人間に化ける変身能力も備えているなら、今、我々の周りにいる普通に

見える人間の何人かが宇宙人でもおかしくない。


今回紹介する本は、そんなふうに

「地球とは別の天体から飛来した宇宙人であるという意識に目覚めた一家」の物語。


実際に宇宙人であったのか、それとも一家の妄想であったのかはネタバレに近くなるので

ふせるが、読んでもあやふやにしてるところはあるのでなんとも言えない。

そこは読み手の想像力による。


三島由紀夫の作品の中では、珍しく特別枠的なジャンルである。

深いには深いのだが、他の作品に比べてエンタメの要素が強い。


全体的なテイストとかはSFっぽいのだが、その中でも現実や政治的思想が満遍なく交差し、

風刺色が強い。オレはSFというジャンルは得意ではないが、この作品はSFに興味なかったり

他の三島作品が苦手な人でも、かなり楽しめるのではないかと思う。


三島作品において、今まで文が古典ぽくて読みにくいんではないかとか、文章が難しいんでは

ないかとか思って敬遠してた人にはぜひ勧めたい。かなりオモシロイ。


ストーリーは解説から引用すると、

地球において核兵器を持った人類の滅亡をめぐる現代的な不安をSF技法を駆使して描く。

という作品。

一家は基本、美しい地球を救おうとする流れ。


三島由紀夫の生前の残した言葉や、作品を読むたびに思う……

実は、この人は今まだドコかに生きていて、ヒッソリと今の日本の現状を見てるんではないかと。


作品の中で書いていることが、ことごとく今に日本の憂国ぶりを指摘しているのだ。

たとえば「美しい星」の中ではこんな文章がある。以下引用。


「まやかしの平和主義、すばらしい速度で愚昧と偸安への坂道を辷り(すべり)落ちてゆく人々、

にせものの経済繁栄」


……まさに今のご時世のことを示している。やはり三島先輩はどこかで見ておられる!



またSFチックでありながらも三島先輩なりの飛びぬけ表現はアチコチで炸裂する。


「人間と犬との友情以上に美しい友情はないし、人間関係はみんな委員会になってしまった」


「火葬場はいらない。地球全部が火葬場になるんだからね」


「今や人類は自ら築き上げた高度の文明との対決を迫られており、その文明の名智ある支配者

となるか、それともその文明に使役された奴隷として滅びるか、二つに一つの決断を迫られている」


それらを全部ひっくるめて、人間は前へ進もうとする時、必ずうしろへも進んでいるのだと書いている。これらは市ヶ谷クーデター決行の前で語ってたことに通じるな。


中身を伴わない正義は悪にも劣ると、なんかの本に書いてあった。

文明の過度な発展は、破滅へのスタートといったところだろうか。

三島は、とにかく国の破滅が近付いていることは感じていたらしいと解説にあった。


そんな心境でもこんだけ風刺もエンタメも含んだ作品を作れるのは脱帽。


イヤ~、これは皆さんにも読んでほしいけど、政治家とか企業経営者とかに読んで

もらいたいね。




さて、今週のもう一冊。


友情 (新潮文庫)/武者小路 実篤
¥380
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武者小路実篤の本。


三角カンケイとはまたちょっと違う感じのする女子をめぐる男の親友同士の青春小説。

男同志和解してハッピーエンドというワケでもなく、またドロドロのまま終わるというワケでも

なく、こんなカンジの終わり方もリアルだし、読者に媚びて無くていいなあという作品。


オレも最初はそうだったのだが、ムシャノコージというお固い名前から、勝手に古めかしく

難しい文章の作品のイメージを持っていて敬遠してたが、いざ手にとってみたら普通の現代文

と同じで、すごく読みやすい。そしてオモシロイ。


初夏に向けおススメの一冊。