町田康の「告白」他 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

正月はまた数冊、本を読もうと思うと記事に書いた気がする。

有言実行にて図書館が休みに入る前の最終日に数冊借り溜め。

そのうちの1冊がコレ。以前から読みたいと思っていた。

告白/町田 康

¥1,995
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ミュージシャンにして芥川賞作家の町田康の『告白』
この人の本は何年も前に数冊読んだな。

読まないと布○寅泰が殴りに来そうな気がするしww

「告白」は長編で分厚いから年末から年始にまたいで読むには

ベストであった。数日掛かったわ。


この人が発してる匂いって何か嫌いではない。

文学派とアウトローの程良いMIXっぽさというかなんというか。


本の帯には

「人はなぜ、人を殺すのか」 とある。


この物語のモチーフは明治時代に実在した「河内十人斬り」という大量殺人事件を

モチーフにした町田アレンジヴァージョンである。

蛇足だがよく「最近の若者はキレやすい」とか「無差別に人を殺せる」とか言われるが

犯罪白書によると‘ずっと昔の若者’のほうがその時代に多くの殺傷事件を起こして

いるのだ。あたかも現代は情報やゲームが氾濫し、それらが若者を狂わせてるような

悪者に祭り上げられてるが、実際の統計では現在の若者をそうやって批判してる世代の

大人のほうが若かりし頃もっと多くの殺人などを起こしている。


恥ずかしながらオレはこの「河内十人斬り」に関しては知らなかった。

大量殺戮といえば他で日本では八ッ墓村のモデルとなった「津山三十人殺し」が有名で

それに関してはオレも興味を持ち本も前に読み、その「津山三十人殺し」と似たような

内容かと思っていたがなんとなく殺戮にいたるまでの内容は似て非なるモノのようだった。

津山三十人殺し―日本犯罪史上空前の惨劇 (新潮文庫)/筑波 昭
¥662
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「告白」に関しては殺人のキッカケは‘金銭と交際のトラブル’

百姓城戸平次の次男、ゴロツキの熊太郎が最後にこの十人斬りという惨劇を

起こすのだが、この熊太郎の周囲の人間もカネに汚く保身第一であり、

なんとも社会のリアルな生態を描いている。

舎弟分とのやりとりや心境の描き方もリアル。

本体はエグいテーマなのだろうが町田流アレンジによって爽快な仕上がりになっている。

ずっと昔が舞台の話なのにところどころバンドに例えたり横文字を出して表現する

掟破りな芸風はお見事☆


随所ズイショには作家ならではの教訓というか世に対する警告もちりばめられている。

とりあえず百聞は一見にしかずデス。



それと、この本は年末に借りたんだけど、ちょうどその時に記事でも書いたが友人Fが

部屋に飲みにきて、この本が置いてあるのみて


「あ、かなえのじゃないほうの『告白』があるね(笑)』 

って言ってて

ああ、そういえばかなえって読んだことないし映画版も観てないけどそれもあったなと

思い、町田の「告白」を読み終わったあと勢いで湊かなえの『告白』も借りて読んでしまった。

告白/湊 かなえ
¥1,470
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何気に借りて読んだのだが、コレけっこう面白い。

一気に読んでしまった。

チャプタ―によってそれぞれの登場人物からの視線に変わる。

ちょっと安部公房の「箱男」っぽい。

そして最後にすべてがつながるというか元の主人公の視線に戻るミステリー。


娘を教え子の生徒の手により殺された女性教師を軸において話は進むが

それぞれの心の矛盾とかが描かれていてすべての人物の立場を比較すると

楽しめる。


オチに関しては言えないが、

識者からすれば問題、被害者家族からすればその計画も当然というような

オチが読者を待っている・・・。


うまく言えないが、ミステリー好きからすれば

「なんとも心地よい納得のいく‘後味の悪さ’」 と言うところか。

ちなみに、コーシロ―の娘が出演してた映画版のほうは観てないんで、

原作に忠実なのかもオモシロイのかもワカリマセン。